高校サッカー 〜一人の少年の物語〜
七話『全国前の前哨戦』
しんと冷えた空気に満たされた今日の朝、来週に全国大会を控えた函南高校は、地元大学との練習試合に臨んでいた。
大学生チームは持ち前のフィジカルの強さと足の速さを活かしてスピーディーなサッカーを展開してくる。
しかし、函南高校も負けてはいない。
全国の中でもトップクラスの実力を誇る函南高校も、負けじと相手のスピードについて行き、持ち前の強固なディフェンスで大学生チームの侵攻を許さない。
そんな中、函南センターバックの斉藤がボールを奪うと、すぐさまフリーの中央に位置するポジション、トップ下の茅野にボールを出す。
「ターン!」と言う斉藤の指示で茅野が前を向くと、キーパーが前に出ていてがら空きのゴールにシュートを打つ。
しかしゴールラインを割ろうとしている寸前でキーパーの手が伸び、ゴールバーの上へと弾き出される。
「いやー惜しい茅野! ドンマイドンマイ!」
周りは茅野にそう声をかけ、コーナーキックへと意識を切り替える。
しかしやや浮き気味になってしまったクロスボールは、しっかりとキーパーにキャッチされてしまい、お返しとばかりにキーパーが低いライナー性のボールを味方の右ウイングに送った。
ボールが胸元にピタリと合わさり、勢いを吸収されたボールはそのまま相手の足元に落ち、ドリブルでサイドの深くまで侵入してくる。
途中でボールを跨いで進行方向を誤魔化すシザースと呼ばれるフェイントで函南サイドバックを引き剥がしてさらに縦に侵入すると、そのままクロスを上げられ、ペナルティースポット辺りでボールを合わせられる。
ボール左上隅へと向かっていくが、三十センチほど枠外にはずれて行った。
「高橋! 簡単なシザースに置いていかれるな! 斉藤もしっかりマークついとけ!」
祐一は二人に叱咤する。二人は「ごめん!」と言うとすぐに切り替えてポジションに戻って行った。
次に試合が大きく動いたのは前半終了間際、今度は相手のクロスボールを祐一がキャッチすると、素早く右サイドの選手にボールを出す。
放たれたパントキックはライナー性の軌道を描いて、前方のスペースに落ちる。
そしてそのボールを拾った右ウイングはフリーになっていたファーの選手にクロスを上げ、受けた選手がそのままヘディングでゴールに押し込んだ。
「よし! まずは一点だ」
そこで前半終了の笛が鳴った。後半も攻守の入れ替わりの激しい試合展開となったが、函南高校は祐一を中心とした守備陣が失点を許さず、またトップ下の茅野を中心に攻撃の起点を立て、後半も一点を追加して函南高校が二対〇で勝利し、試合を終えた。中々悪くない結果である。
「高橋も斉藤は前半のあのプレーは無しだぞ。全国にはもっとクロスの上手いフォワードや決定力の高いフォワードがいるからな」
「いやわりぃわりぃ、思ったよりスピードがあってはがされちまった」
「俺も相手が予想以上にクイックに動くもんだから置いていかれちまったよ」
「全国ではしっかりやってくれよ」
高橋と斉藤はしっかりと祐一に釘を刺されていたが。
大学生チームは持ち前のフィジカルの強さと足の速さを活かしてスピーディーなサッカーを展開してくる。
しかし、函南高校も負けてはいない。
全国の中でもトップクラスの実力を誇る函南高校も、負けじと相手のスピードについて行き、持ち前の強固なディフェンスで大学生チームの侵攻を許さない。
そんな中、函南センターバックの斉藤がボールを奪うと、すぐさまフリーの中央に位置するポジション、トップ下の茅野にボールを出す。
「ターン!」と言う斉藤の指示で茅野が前を向くと、キーパーが前に出ていてがら空きのゴールにシュートを打つ。
しかしゴールラインを割ろうとしている寸前でキーパーの手が伸び、ゴールバーの上へと弾き出される。
「いやー惜しい茅野! ドンマイドンマイ!」
周りは茅野にそう声をかけ、コーナーキックへと意識を切り替える。
しかしやや浮き気味になってしまったクロスボールは、しっかりとキーパーにキャッチされてしまい、お返しとばかりにキーパーが低いライナー性のボールを味方の右ウイングに送った。
ボールが胸元にピタリと合わさり、勢いを吸収されたボールはそのまま相手の足元に落ち、ドリブルでサイドの深くまで侵入してくる。
途中でボールを跨いで進行方向を誤魔化すシザースと呼ばれるフェイントで函南サイドバックを引き剥がしてさらに縦に侵入すると、そのままクロスを上げられ、ペナルティースポット辺りでボールを合わせられる。
ボール左上隅へと向かっていくが、三十センチほど枠外にはずれて行った。
「高橋! 簡単なシザースに置いていかれるな! 斉藤もしっかりマークついとけ!」
祐一は二人に叱咤する。二人は「ごめん!」と言うとすぐに切り替えてポジションに戻って行った。
次に試合が大きく動いたのは前半終了間際、今度は相手のクロスボールを祐一がキャッチすると、素早く右サイドの選手にボールを出す。
放たれたパントキックはライナー性の軌道を描いて、前方のスペースに落ちる。
そしてそのボールを拾った右ウイングはフリーになっていたファーの選手にクロスを上げ、受けた選手がそのままヘディングでゴールに押し込んだ。
「よし! まずは一点だ」
そこで前半終了の笛が鳴った。後半も攻守の入れ替わりの激しい試合展開となったが、函南高校は祐一を中心とした守備陣が失点を許さず、またトップ下の茅野を中心に攻撃の起点を立て、後半も一点を追加して函南高校が二対〇で勝利し、試合を終えた。中々悪くない結果である。
「高橋も斉藤は前半のあのプレーは無しだぞ。全国にはもっとクロスの上手いフォワードや決定力の高いフォワードがいるからな」
「いやわりぃわりぃ、思ったよりスピードがあってはがされちまった」
「俺も相手が予想以上にクイックに動くもんだから置いていかれちまったよ」
「全国ではしっかりやってくれよ」
高橋と斉藤はしっかりと祐一に釘を刺されていたが。
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