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第六十七章 ルピーの生態

冒険者ルピーの朝は早い
彼女は学校がある為、基本早朝と夕方から深夜にかけてのログインが基本だ
今日も朝5時ぴったりにフレンド欄のルピーの名前が白くなる

[お腹が空きました]

彼女がログインしてまずする事は、木漏れ日荘の管理人に食事を催促する事から始まる
管理人も慣れたもので適当に昨日作った晩飯の残りを提供する

この晩飯の残りをたまに深夜帯に食べているようで
犯行の次の日には残り物が全部無くなっているから犯人はバレバレだ
管理人も朝の手間を減らすために本気で残り物を守りに入る為
夜間帯から朝にかけて残り物争奪戦線が起きる事がある


早朝のご飯を食べたルピーはまず街に繰り出す
行き先は貧民街、勘違いしそうになるが決して乞食に来ているわけではない
極稀に空腹で倒れている事があるが決して乞食ではない

今日は春日式道場に向かっているようだ
道場の中からは朝早くから門下生の鍛錬に励む声が聞こえてくる
道行く人々は中にいる筋骨隆々な男達の熱気に顔を顰めている

そんな道場にルピーはなんの躊躇もなく入っていく
門下生達は驚き、師範達が不敵な笑みを浮かべている

ルピーは剣の達人、最近では剣豪と呼ばれている
その為試合の申し出が多いのだ
剣豪ともなればやはり責任感というものが出てくるのだろうか?
ルピーの目にはいつもと違う輝きが見える
視線の先には報酬のご馳走が並べられている気がしないでもないが気のせいだろう

結果だけ伝えて問題ないだろう
一試合1分もかからなかった
彼女の攻撃はそれほど速く強かったのだ
そして師範達の無様な姿に呆れた門下生が去っていくのも恐ろしいほど早かった

こうして泣き崩れる師範の横
至福の表情でご馳走にありつくルピーは、今日も一つの道場を潰す事になった

定番の道場潰しが終わった後は再び木漏れ日荘に帰還する
数ある木漏れ日荘ルール
その中に皆んな揃っていただきますというのがあるからだ
多分無くてもルピーなら来るだろうけど

簡易な朝食を終えたルピーは体をほぐしながら今度は露天通りを歩く
常日頃からクエストで稼いだRで食べ歩きをしているのだ

彼女が歩いた通りの料理は全てなくなる
なので冒険者が露店で食事を食べるには朝早くから並ばなくてはならない

今日は露店通りを抜けた先の城前広場でイベントが開催されている

フードファイト

もう語るまでも無い気がする
このイベントに関しては餓狼、早食い、大食い、この三つのスキルを所持していればいるほど有利だ
特に餓狼スキルは必須級だ
ちなみにルピーは三つのスキル全てを所持している

運営はなぜこんな糞イベントを実施したのだろうか?
当然のように一位の台の上に載っているルピーに王国近衛兵が何か言うと
ルピーは城の中に入っていく


所変わって路地裏の物陰にて

「予想通り食べてばっかだったな・・・」

城の中という追跡不可フィールドに入っていったルピーの後ろ姿を見送りながら木漏れ日荘に帰還するアズであった


                    ◇

金髪のイケメン、グランが手をパチパチ叩く

「やぁやぁ!皆さんよく集まってくれましたね〜」

城の食卓に座る人物をグランは眺める

<円卓の騎士団>リーダー、ランズロット
<漁業組合>リーダー、海王
<剣豪>ルピー
<赤金の鷲>リーダー

グランはうんうん頷くと片手で顔を覆う

「皆さんに集まって頂いたのは他でもありません!最近我が妃を狙って賊が入るんですよ〜」

本来なら焦っていても良さそうなものだが、グランはニコニコと話を続ける

「皆さんにはその賊を討伐して欲しい!」

両手を広げるグランにランズロットが訝しむように視線を送る

「・・・それで?その賊というのには目星がついているのですか?」
「ええ!ええ!もちろん!†断罪者†というクランなんですがね!」

ランズロットの動きが止まる

「皆さん是非力を貸して頂きた「断る」」

グランが最後まで言う前に海王が机を叩きながら発言する
彼にしては珍しい強い言葉にランズロットは身をこわばらせる

「・・・お前は・・・信用出来ない」

グランをひと睨みすると海王が去っていく

「あらら?嫌われちゃいましたかね〜?赤金の鷲さんはどうですか?」

話を振られた赤髪が椅子にもたれかかりながらグランに視線を送る

「その前に一つ良いか?」
「ええ!ええ!どういったご用件で?」

赤髪は一つのスクリーンショットをグランに見せる
そこには金髪のレイピア使いが写っている

「こいつに見覚えはあるか?」

赤髪の疑問にグランは目を細めると顎に手をやる

「ん〜私の記憶には無い人物ですね〜?この人が何か?」
「いや・・・協力してやっても良いが城の部屋を貸せ」
「ええ!ええ!もちろん!ありがとうございます!」

赤髪の提案をグランは許可する

「それでは〜円卓の騎士団さん」

ランズロットは眼鏡を弄りながらグランを見据える

「わかりました、協力致しましょう」

グランと視線が重なりピリピリした空気が流れる
そんな空気の中ルピーはひたすら飯を平らげていた

[今日もご飯が美味しいです]

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