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第六十二章 フォレストトレント

障害物の無い円形フィールド
目の前には家程の大きさを誇る大樹がそびえたっている

「おいフーキ・・・まさかこれか・・・?」
「そのまさかやで」

目の前の大樹に圧倒されながらPTメンバーが全員フィールドに入る
ドシン!という音と共に大樹の腕が落ちて・・・否、振り下ろされる
逃がすつもりはないというように円形フィールドが茨で覆われ、逃げ道をふさがれる
大樹の一部が不自然に窪み、顔のような形を形成する
大樹の頭上にHPゲージが三列並び名前が表示される

「フォレスト・・・トレント・・・!」
「まぁ大きい・・・」
「これが樹海の主か、悪いが倒させてもらう」
「作戦通りいくで!AKIHOとサトミ姉さんはフォレストトレントの右腕!わいは左腕!」

アレクと二人でジローに乗り二人で炎の弾幕を張る

「俺とアレクは後方支援だな!」

アレクはまだ上手く精霊を扱えていないのか炎弾がふらふらと変な方向に飛んでいっている
今回のフォレストトレント戦は良い経験になるかもしれない

飛び出してくるフォレストビーを各個撃破していると
ガキィィンという音に視線をやる
アキホとフォレストトレントの枝がぶつかり合っている

「いや!なんで金属音がするんだよ!」

そんな俺のツッコミを一切気にせずアキホが攻撃を捌く

「まぁ・・・すごく硬い・・・これじゃあ斬れないわね」

今度は反対方向からドカーン!と爆音が鳴り響く
フーキがフォレストトレントの枝を殴り飛ばしていた

「いや!なんで爆音がするんだよ!」

そんな俺のツッコミを一切気にせずフーキがフォレストトレントの本体に突っ込む
フーキがフォレストトレントを殴る度に爆音が鳴り響き、フォレストトレントが苦しそうにうめき声?をあげる

しばらくそんな状態が続くとフォレストトレントがAKIHOの対処をしていた枝を振り下ろし地面を揺らす
地響きに耐えるAKIHOとフーキとジロー
俺とアレクはジローにしがみつきながらフォレストビーを起爆させて数が増えないようにする

腕を振り下ろした事により隙だらけになったフォレストトレントにAKIHOが突っ込もうとして・・・
全員の動きが止まる

「あら?」
「なん!?」
「新技!?そんな情報なかったで!?」

地面から大量の蔓が飛び出してきて俺達を拘束する
動きを封じられた一瞬のうちにフォレストビーが溢れ
拘束された俺達に襲い掛かって来る
迎撃を試みるが・・・

「くぅ!火力が足りない!?」

チャンスが一転してピンチになってしまった
最悪アレクだけでも逃がせれば!
だがアレクも身動きを封じられている
どうする!?どうすれば!?

『嘆かわしい・・・』
「!?」

唐突に頭の中に声が響く

『我を取り込んでおきながらこの程度とは、全く嘆かわしい』

頭に直接流れる言葉が誰のものか思いつく

「炎の・・・魔人!?」
『貴様は既に上位の精霊を使える、何故使わぬ?』

上位精霊を使える?確かにスキルで契約は出来るが・・・上位精霊なんてあった事なかったはずだが!

『唱えよ』

と・・・唱える?
・・・ついに俺の真の力を解放するときが来てしまったようだ・・・・

「全てを焼き尽くす業火よ・・・我が手に宿りて顕現せよ!」

俺の言葉の一つ一つに炎が集まっていくような気がする

「フレイムサモン!!!!!」

フィールドにはフォレストビーの羽音だけが響く
俺は羞恥で顔が赤くなるのを感じてその場にうずくまろうとして・・・
体が拘束されていて顔を隠す事も出来ない事に気づく

『なんだ今の呪文?は』

すみません聞かなかったことにしてください・・・
脳内にかつての強敵の声が!このシチュエーションで少しテンション上がってました
でも呪文とか知らないんですけど?
恨み目がましい目をしながら頭の中に呼びかける

『で?呪文ってどんなのだよ』
『なんだ・・・それすらわからないのか』

若干呆れが入った声音の炎の魔人にイラっとするも黙っておく

『いいか?こうだ』
「※※※※」

勝手に呪文が口から出る
呪文は俺の魔力を搾り取りながら形を成していく
あまりの熱気に目を閉じてしまう
目を開くとそこには全身が炎で出来た・・・人間大の炎の魔人が立っていた

「貴様の魔力ではこの程度か」

魔人が自分の体をマジマジ見つめるとため息を吐く
その溜息で近づいてきていたフォレストビーに引火、爆破していく
炎の魔人の出現に驚いたのか、フォレストウッドの蔓が緩む
蔦に絡まれていたフーキが恐る恐る近づいてくる

「おいおいアズ・・・まさかまた意識乗っ取られてないよね?」
「なんでそうなるんだ?」
「アズが操られてた時散々こいつらと戦ったんよ・・・」

フーキが遠い目をしている
おそらく炎の精霊術師戦の時だろう
上級精霊もその時に勝手に契約されていたのかもしれない

「それは・・・なんかすまん」

だがフーキの言葉に一番反応したのは炎の魔人だった

「我をあのような下級と一緒にするな」

炎の魔人が怒りながらフォレストトレントに手をかざし・・・
残っていたHPを全焼させる
あまりの光景にフーキがポカンとしている
その様子を見た炎の魔人が楽しそうに笑みを浮かべる
と消えていく

「いやいや!まだ聞きたい事あるから!」

再召喚して話を聞こうとしたが
精霊の盟友のスキルにクールタイムが表示されている
600分・・・10時間!?
召喚にMPを全部使いクールタイムが10時間・・これは最後の手段だな・・・



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