話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

BioGraphyOnline

ツリー

第五十三章 クラーケン


クラーケンが触手を動かす度に船が沈む

『我らが偉大なる船長!キャプテンドレシア!』
『海の支配者は我ら海賊!』
『今我らも貴方様の所へ!』

戦場には海賊達が狂気に満ちた表情で海に飛び降りていく地獄のような光景が映し出される

           ◇

臨戦態勢をとっていた俺達に海王からメールが届く

[海賊討伐の目的は達成した、各自撤退せよ]

メールを受け取った冒険者達の船団が撤退を始めるが
その後ろを巨大な触手が追いかけていく

『もうだめだ・・・勝てるわけがない・・・』
『やつは伝説の海の悪魔だぞ!』
『逃げるんだぁ・・・!』

避けきれなかった船団がまた一つ沈んでいくのが見える
このままじゃ全滅だ!
杖に跨り船員に指示を出す

「皆!ここは俺に任せて逃げるんだ!」

俺達冒険者は最悪死に戻りが出来るがオクトリア兵は死んだら終わりだ
杖で飛翔すると背後で船員達の叫び声が聞こえる

『なにやってんだよ船長ぉぉぉ!』
『子供船長ぉぉぉ!』

まったく・・・なんて声出してやがる・・・
触手に衝突寸前で縦回転
杖のバーナーで触手を焦がすがダメージは無いに等しい
触手は俺を全く気にせず船団を追撃する

「なんとかしてヘイトを奪えないか・・・?」

触手は尚も船団を追撃しようとし・・・ん?
8本の触手のうち5本は同じ船団・・・否、同じ船を狙っている
誰かのスキルか・・・?こんな芸当が出来るのは・・・

「あ!もしかして!」

急ぎ狙われている船団に接近すると見知った顔が乗っているのを確認する
甲板で腰を抜かせている冒険者に声をかける

「グレイ!」
「のあああああ!?なんだアズか・・・」

触手はグレイの無意識の敵視スキルに反応している・・・!
このまま船でヘイトをとり続ければ・・・

触手が船をかすり一際大きく揺れる
船じゃ持ちこたえれない・・・!

「グレイ!ちょっと来い!」
「いやだね!アズも俺を囮に使う気だろ!?」

逃げ出すグレイをフーキが捕まえる
いたのかフーキ・・・というよりこの状況
もしかしてフーキも同じ事考えていたのか?
よく見ると船の中は冒険者で構成されている
俺の視線に気づいたフーキが苦笑する

「NPCを無駄死にさせるわけにはいかんよ・・・」

フーキの発言に周りの冒険者が歓声をあげる

『流石兄貴!』
『そこに痺れる憧れる!』
『俺達のリーダーは兄貴一人!』
『フーキさんバンザイ!』

・・・フーキの親衛隊か何かだろうか
フーキは俺の怪訝な眼差しに苦笑いを浮かべている

そんな親友を見ながら、俺は毎度お馴染みになりつつあるロープを作り出しグレイを簀巻きにして杖に括り付ける

「ちょい待ちアズ・・・!」

何をしようとしたか察したフーキが俺を止めようとする
フーキが言いたい事はわかる
リアルに何が起きるかわからないとでも言いたいのだろう
だがこの船では長く持たないのは見てわかる

「悪いフーキ・・・今回は譲れない」

尚も食って掛かろうとするフーキの肩を討伐作戦会議にいたフード女冒険者がたたく
何か言いたげなフーキだったが諦めたように首を振る

「気ぃつけていってき・・・」
「おうともさ!」

尚も暴れるグレイを杖に巻き付け触手の中心に飛翔
すると同時に8つの触手のヘイトがこちらに集まり攻撃してくる

「うぉぉぉああああ!」
「・・・思ったより迫力が凄いな」

迫って来る触手をギリギリの所で回避する
巨大な触手は一つ一つがまるでビルのような大きさだ
動きは遅いとはいえこうもデカイとよけるのが難しい

「ブヘァ!ちょ!アズさん!?もうちょヘギィ!」

異音が気になるが嵐のせいだろう、味方の様子は・・・

「な!」

視界に触手を囲むように攻撃する船団がうつる
一斉送信したのか、フーキからメールが届いている
この隙に逃げれば良いものを・・・

口をムニムニさせながら全力で上空に飛翔する
触手は俺達を追うように天に向かってそそり立つ
これで囲みやすいだろう?
俺の意図をくんだのか船団は触手を囲み良い具合にダメージを与えている
だが攻撃の余波で徐々に船団の数が少なくなっている
今も新たな船が・・・フーキが乗っていた船が沈む

「フーキ!」

救援に向かおうと杖の向きを変えた所で目の前に巨影が映る

「しまっ!」

触手が俺達をはたき落とそうと伸びてくる瞬間キィンという音と共に閃光が走る
な・・・何事だ!?
巨大な触手の切り後には金髪の少女が大太刀を手に立っている

「ルピー!?」

こちらに気づいたルピーが何かのメモをこちらに見せてくる

[たこ焼きが良いと思います]
「・・・」

俺の無言を肯定ととったのか、親指を立てて触手を解体していく
あの子やっぱ強すぎませんかね?
彼女にはクラーケンが食材にしか見えていないようだ

「アズ!アズさん!?後ろ!後ろぉぉ!!」

ルピーに気を取られて反応が遅くなった
二つ目の触手が俺達目掛けて伸びてきている
今度こそ万事休す・・・

衝突の刹那、ズガンという音と共に触手の攻撃が止められる
海王が両手で斧を持ち空中で巨大な触手を止めていた

「ヌゥン!・・・ここは・・・任せろ・・・」

掛け声と共に海王が触手を海原に叩き落とし追い討ちをかける

「なぁグレイさん」
「どうしたんだいアズさん?」
「もしかして俺達弱いのかな?」
「いやー・・・あいつらが異常なだけじゃないか?」
「あの二人は異常だったとして・・・冒険者ってタフだな・・・」

視線の先には船なんてなんのその
触手をクライミングしながら攻撃する冒険者達がいた

『漁業組合諸君!大物のお出ましじゃい!』
『海野郎共に遅れをとるな!小鳥の会!放て!』
『我らが子供船長を守れ!』
『こんなゲソ野郎に負けてられっかよ!』

冒険者達により三本目の触手が沈黙する
海に沈む触手の上で冒険者が勝利の咆哮をあげている

『いけるぞおめえら!』
『この戦いが終わったら俺・・・子供船長の部下になるんだ!』
『なんだ・・・結構倒せるじゃねえか・・・』

3本目の触手が沈みあと5本になったところで空気が変わる
5本の触手の中心が渦巻き海の中からタコともイカとも見える名状しがたき怪物・・・クラーケン本体が現れる

クラーケンは一度こちらを見ると冒険者の方を睨み触手を動かす
今まで俺達を狙っていた触手が意思を持ったように動き出す

ヘイトがとれない!?
異変に気付いた冒険者は各自防御態勢をとっているが・・・クラーケンが大気を吸い込み出す
クラーケンの体が大気でギリギリまで膨張すると巨神兵の如くスミを吹き出し冒険者を薙ぎ払う
スミで吹き飛んだ冒険者はHPが残り1割になり暗闇状態になる

「死亡者はいない・・・くらったら確定でHP1割と暗闇か・・・!」

暗闇状態の冒険者を意思を持った触手が襲い兵力が減っていく
今まで空中ジャンプでギリギリかわしていたルピーが触手を避けきれずに粒子となって消える
斧で触手の攻撃を耐えていた海王を3本の触手が締め付けるように圧殺する

「くそ!?やっぱり無理だったか!?」

諦めかけたその時視界が白く染まり天より雷鳴が走る
海の悪魔クラーケンは焦げた匂いをまき散らし天災によってあっけなく海の中に沈んだ

<レイドボス:クラーケンが解放されました>

「BioGraphyOnline」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く