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第四十八章 海上の宣言!

ヌレー河川を海まで南下
ヌレー海域とオクトリア海域の中心に位置する都市シアンフォールド
かつて3賢者の一人がオクトリアからグラフに移動する際
海での睡眠に癇癪を起こし海底を隆起させて作られた
その後グラフとオクトリア間の移動時の休憩所となっていたが
オクトリア三世の「かいたくしよぅよ〜」の一言により都市開発された
グラフ、オクトリア両国の商業の要として繁栄したが現在は転移魔法の発達で衰退している
                                                                  グラフ幻想譚

          ◇

「アズ君は思ったより心配性だね」

海上都市の砂浜で木漏れ日荘一向と離れたパラソルの下、クラウスさんが悪戯っぽい笑顔を向けてくる

「うー」

恥ずかしさで机に突っ伏しながら呻く
結論から言うとクラウスさんもアクアも無事だった

イッカクさんにPT申請を送った俺達チーム木漏れ日荘は転移ポータルにて海上都市シアンフォールドに到着した
そこで俺が目にしたのは鎧を着た複数の人間に囲まれたアクアとクラウスさんの姿!
牽制に精霊を撃ちながら間に割って入った所でクラウスさんに止められたのだが
説明を聞くとこの鎧の人達は王国近衛兵らしい
アクアが攫われるかもしれないという俺の心配は杞憂に終わった
というのもクラウスさんの後ろには王国近衛兵が数人立ち常にアクアとクラウスを守れる位置に陣取っているからだ
現在もパラソルに向かって怪しい視線を向けている大男に睨みをきかせている

グラフの良い所に住んでる辺り実はクラウスさんって貴族かなんかなのか?
砂浜で楽しそうに遊ぶアクアや木漏れ日荘の面々を見ながら溜息を吐く
皆には今回旅行としか告げていない
姉に連れてこられたルピーはもちろん
グレイに関しては無料で旅行と言うと喜んでついてきた

「ひろもこっちにおいでよー!」
「さ・・・サトミさん!そっちは危険エリアです!」
「・・・?グレイお兄ちゃんの足元に何かいるよ?」
「え?アッー!なんだこの触手は!」

姉を追いかけて危険エリアに突っ込んだグレイがジン魚に襲われ・・・
そのジン魚をハンターの如く狩るルピー
そんなやり取りを太陽のような笑顔で笑うアクア

これはほんとにただの旅行になりそうだ
和やかな風景にこの日何度目かの溜息を吐くと水着に着替えるべく屋内に入る

「アクアちゃんだね?」
「・・・は?お」

人目の少ない屋内に入った所で騎士達に睨まれていた大男に話しかけられる
お前誰だ?と言おうとして口を閉じる

こいつ今アクアと言ったか?
しかも先ほど怪しい視線を向けていた男だ
俺とクラウスさんは髪色が似ているのもありよく親子と間違われるが・・・
まさか例の海賊?
・・・試してみるか

「おじさんだ~れ?」

俺はできうる限り子供っぽく尋ねる

「・・・・」
「・・・・」

おい・・・なんか言えよ・・・
二人の間に静寂が訪れる
大男はポカンと大口を開けて呆然とし
俺はあまりの恥ずかしさにその場でうずくまりたくなる衝動に襲われている

「ッハ!?お・・・おじさんはわる~い人攫いだよ!」

正気に戻った大男はいやらしい顔を浮かべながら口元に何かを押し付ける
途端に眠気が襲う
やっぱりこいつ・・・例の海賊か・・・

              ◇


ガタンという大きな音で目が覚める
次第に覚醒する意識と共に埃の匂いが鼻の中に充満する

「ここ・・・は・・・?」

揺れるカンテラがキィキィとなり
不衛生な布の隙間からネズミがチューチューないているのを感じる

目の前には大きな鉄格子

「見たところ牢屋の中のようだが・・・」

意識を失う前の情報を思い出し自分が攫われたと仮定する
地面が揺れている・・・ここは船の中なのだろう
周りには同じく攫われてきたであろう子供が4人はいる

<クエスト:誘拐された子供が発生しました>
<成功条件:海賊に誘拐された子供を無事に家まで送り届ける>
<失敗条件:NPCの誰か一人でもHPが0となる>
<成功報酬:1万R、海獣のアミュレット>

急いでステータス画面を開きメッセージやチャットを送る

<システムログ:このエリアではチャットを送る事はできません>
<システムログ:このエリアではメッセージを送る事はできません>

一度ログアウトして皆に連絡を・・・
そう思いながら周りの子供達を見回す

『うぅ・・・おかあさん・・・』
『おうちに帰りたいよぉ』
『グスッ・・・ひっぐ』

もしもその一瞬で海賊が来たら・・・そう思うとログアウトは出来ない
しかし一人で守り切れる自信も無い
どうしたものか考えていると一人の子供が立ち上がる

「皆!大丈夫だ!僕はこう見えて冒険者なんだ!」

赤色ショートの子供が名乗りをあげる
背丈は今の俺と同じくらいだろう
子供達が「ほんとうに・・・?」と期待の眼差しで名乗りをあげた子を見つめる

「僕の名はアレク!君達を無事家まで送り届ける事を宣言する!」

アレクは子供達の視線にたじろきながらも声高らかに宣言する
周りの子供達の雰囲気が明るくなるのを感じる
明るくなった子供達とは対照的に俺の顔は険しくなる

アレクは・・・NPCだ・・・

ただの子供が勇気を振り絞って皆を奮起している
ほんとの冒険者の俺が・・・何を臆病になっているのか

「俺も冒険者だよ・・・アズだ」

俺の言葉にアレクが驚きの表情を浮かべ尋ねてくる

「君・・・でも冒険者に子供はいないはずじゃ・・・」
「それはお互い様だろ?それに俺はこう見えても君より大分年上だ」

アイテムストレージから杖を何本か取り出すと子供達に分配する
何も無いところから出てきた杖を驚きながらも全員必死に握りしめている

「でも正直相手の実力が未知数なうえ俺は強くない」

俺の言葉に子供達が不安の表情を浮かべる
背中を向けて牢屋の鍵の開錠を始める

「だから自分の身は自分で守るぐらいの気構えでいてくれ」

厳しいかもしれないが事実を正直に伝える
泣き言の一言でも飛んでくると思ったが開錠を終え後ろを振り向くと予想に反して皆真剣に頷いているのが見える

『僕達も・・・がんばる・・・!』
『冒険者が二人いるんだ!大丈夫だ!』
『ここここの私に恐れなんてありません!』

最後にアレクが俺から受け取った杖を握りしめ改めて宣言する

「君達には僕がついている!安心してくれ!」

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