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第四十七章 海賊ギルドの活発化


木漏れ日荘にて夕食の準備中
ホールから聞こえてくる声に耳を傾ける

はて?今日はお食事処はひらいてないはずなんだが・・・?
疑問に思いながらもホールに向かうと最近顔なじみになりつつある人物と珍しい人物が視界に入る

円卓の騎士団クランリーダー ランズロット
色黒に無精髭を生やしたおっさん
漁業組合 サブマス イッカク
そして見慣れぬ人物
日焼けでコンガリ焼けた肌にボブショート
肩幅や身長は成人男性より一回り大きい
それぞれ三人の男がこちらを沈痛な面持ちで見ている

「お客・・・じゃないですね?どういったご用件でしょう」
「やぁアズ君!少し相談が・・・」
「これはわしらの統括するエリアの問題ぜよ」

話し始めたランズロットさんをイッカクさんが手で制する
隣では威圧感のある男が頷いている
用心棒かなんかか?名前は・・・海王?

「実はここ最近わしらの統括する南エリアと海上都市の間の海域に海賊がでるんじゃ・・・」
「か・・・海上都市・・・!海賊・・・!」

南エリアはヌレー河川ぐらいまでしか攻略していないがその先には海上都市があるのか・・・!
そして当然海と言えば海賊!ゲームで海賊はお約束ですよね!

にやけそうな顔を引き締めながら話の先を促す

「海賊が何か悪さを?」
「そうなんじゃい・・・と言っても最近ギルド長が交代してからなんじゃい」

ギルド・・・?クランじゃないのか?
俺の顔に疑問が浮かんでたのかランズロットが答えてくれる

「ギルドは元々この世界にあった組織団体、クランは僕らプレイヤーが作る団体なんだ」

なるほどなるほど

「前ギルド長は良い海賊でね・・・街の住民に慕われてたんだが・・・」
「最近暗殺されたんじゃい」

暗殺という言葉にゴクリと喉がなる

「NPCの無限沸きシステムが無くなった事によりサブマスがリーダーになったんじゃが・・・」
「そいつがあるクランにそそのかされて悪さをしている」
「あるクラン?」
「赤金の鷲という元はチンピラのクランだ」

ランズロットさんいわく赤金の鷲はNPCの人身売買を主とするクランで
その勢力は南エリアだけでなくあらゆる都市に点在しているらしい
だがとりわけ被害が大きいのが・・・

「そのクランの傘下に海賊が加わり南エリアの人々が続々とさらわれとるんじゃ」

随分と物騒な話だ

「つまり俺に海賊ギルドとクランの討伐の依頼を・・・?」

俺は強いほうじゃないし他の人が適任だと思うのだが・・・
顔に出ていたのか再びランズロットさんが疑問に答えてくれる

「正確には違う、君には囮になってほしいんだ」
「はぁ・・・囮・・・?」
「HPゲージが見えないNPC海賊がさらうのは強い冒険者を避けて12歳以下の子供が主なんだ」

確かにこのゲームでは年齢制限がかかっているのでよほど元が小さくないと冒険者で12歳以下はいないだろう
敵ながら中々考えているじゃないか・・・
・・・ん?

「そこでアズ君にはわざと捕まって敵本拠地の場所をチャットかメッセージを飛ばしてほしい」
「そこをわしらで一網打尽にするんじゃい!」

やっぱりそういうことか!?
小さくなった俺にぴったりな仕事ではあるが!?
まぁ断る理由も無いし・・・人身売買というのはあまり好感は持てない
捕まったとしても冒険者ならログアウトすれば良いだけの話なので・・・

「わかりま「ちょい待ってくれへん?」

俺の承諾の発言にフーキが言葉をかぶせる
というかいたのかお前

「その作戦・・・アズが危険やないか・・・?」

フーキの真面目な表情に三人は顔を見合わせる

「確かに危険だがゲームプレイヤーなら被害は無いに等しい」
「もしそれがゲームプレイヤーに害があるとしても・・・?」

何言ってるんだフーキ・・・
馬鹿兄や姉のようにゲームとリアルの区別がつかなくなったか・・・?
フーキが真剣な表情でこちらに耳打ちする

「アズ、リアルでその姿になるなんて事があったんや・・・危ない橋は渡らん方がええよ」

・・・!
確かに最近リアルでおかしなことが起きている
ゲームの容姿にゲームの力・・・念には念を・・・という事か・・・

「すみませんランズロットさん・・・少し考えさせてください」
「そうか・・・仕方ないね、僕達も君を危険にさらしてまでやる作戦じゃなかったよ」

ランズロットさんは少し寂しそうな顔をすると二階に上がっていく
しばらくするとグレイの悲鳴が聞こえてくる

『さぁグレイ君!私と一緒に無限の海に!』
『く!くるなぁぁぁ!てかなんでパンツ一丁なんだよ!』
『これは海パンだよ!海で戦うんだ!もちろん君の分も用意している!』

なんだか上の階がうるさいがいつもの事なので無視する
イッカクさんと海王さんが残念そうに立ち去るのに少し心が痛むがフーキの言う事も一理ある
フーキは二人が出ていくのを確認した後俺の頭をポンポン撫でて外に出ていく
それにしても・・・海上都市か・・・物騒な話が無ければ行ってみたいな・・・

考え事をしていると頭上から姉の声がかかり抱きしめられる

「ひーろ!」
「うわあああ!やめろぉぉぉ!歳を考えろぉぉ!歳を・・・!」

腹にブローを決め距離をとるとアイテムストレージから杖を取り出し姉に叩きつける

効果はバツグンだ!

姉がギブ・・・ギブ・・・と言いながら片手サイズの白旗を振っている
そんなものよく作ったな!ゲームを満喫しているようでなによりだよ!
最近はルピーやアクアがターゲットになっているので油断していた!

「そういうのはアクアにしてやれよ・・・何故か姉さんに一際なついてるから喜ぶと思うぞ?」
「えー?ひろ聞いてないの?アクアちゃんクラウスさんとお出かけ中だよ?」

そういえばしばらく家族旅行に行ってたんだった

「旅行かーいいなー」
「ひろも私や木漏れ日荘の皆と家族旅行に行こうよー」

姉の無邪気な笑顔には木漏れ日荘の住人は皆家族と書いて見える

「場所はそうだなー・・・アクアちゃんが行ってる海上都市シアンフォールド!」

そうか・・・アクアとクラウスさんはシアンフフォールド・・・に・・・
先程までの会話が脳裏によぎる
いや・・・まさか・・・流石にないだろう

「どうしたのひろ?顔色悪いよ?」

心配して姉が顔を覗き込んでくる
いくら海賊の活動が活発になってるからといってアクアやクラウスさんが被害にあうことはないだろう
だが絶対被害に合わないとも言えない
冷や汗を垂らしながら全速力で部屋に戻る
後ろでは姉の困惑の声が聞こえる

「わわ!ひろ!?どうしたの!?」

先日作った装備をアイテムストレージにしまっていく
重量オーバーにならないギリギリの所までアイテムをしまうと
尚も呆けている姉に伝言を残し杖にまたがる
あまり練習は出来ていないが・・・!

精霊を杖に集中させ空中に浮かぶ

「姉さん!今から木漏れ日荘全員で旅行に行くよ!」
「ほんと!?やったー!」

危険な芽は潰しておくに限る
喜ぶ姉の姿を見ながら作り笑いを浮かべるのであった

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