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第四十五章 ダイヤモンドの価値

クラン レイノール商店

 生産系最大のクラン
ここに来れば大抵の物は揃うと言われる商店だ

俺は売買窓口に先日作ったダイヤモンドとカーボン材、炭を売りに来ている

「これは珍しい!」

 俺の持ってきたダイヤモンドを見ながら黒髪ロングの青年が叫ぶ
BGO内でダイヤの存在は現在把握されていないのだから当然である

 しかも素材の品質は98%と表示されている
店員の驚く姿に口元をムニムニさせながら黒髪ロング・・・レイノールさんに尋ねる

「それで・・・いくらぐらいになりそうですか?」
 「ううむ!現在BGO内ではダイヤモンド等発見されていないからなぁ・・・」

 悩むレイノールの傍になんだなんだと商店の仲間が集まって来る

『なになに?・・・ダイヤモンド!?』
 『ダイヤモンドなんて希少な物・・・いくら払うよ・・・』
 『しかしギルド長、ダイヤモンドの有用性もわからない今高額の値段を提示するのは危険かと』
 『そもそも実用性が無さそうだ』
 『まずは入手方法じゃね・・・?』

 商店の仲間と話しながらレイノールがこちらを振り向く

「アズ様、ダイヤモンドの入手法の情報から値段の交渉に入って良いかな?」

ダイヤモンドを売りに来たのに情報からとは・・・
 そう思いながら近場にあった炭素を分解する
緑の部分を優しく削いでいくと店内に風が吹き
ごとりとアイテムが落ちる
結果はカーボン材

 「こうやって空中の精霊を分解してるんですが・・・失敗しましたね」

どうせならかっこよくここでダイヤモンドを生成したかったが・・・
 ダイヤモンド生成の失敗に肩を落とす

だが周りは驚愕の目でこちらを見ている

『おいおい・・・無から生成したぞあの子』
 『つまり生成に元手の費用はかからない・・・』
 『あの子の持ってきた素材数からして恐らく成功率は2%あたりか・・・?』
 『精霊の分解・・・そもそも精霊術事態珍しいというのに・・・!』

 俺が持ってきた物は今のところ

<炭30=30R>
 <カーボン材68=204R>
 <ダイヤモンド=査定中だ>

 商店内が再びざわめく
 レイノールは冷や汗を浮かべながら重苦しい声を発する

「今の情報は相当な物だ・・・あまり軽々発言しないほうが良いかもしれない」
 「聞いてきといてなんじゃそりゃ・・・」
 「仲間が言ってたのもあるが精霊術事態が珍しいんだよ、もし盗賊ギルドに知られたら君の身・・・精霊術使い全員の身が危うい」

どうやら予想以上に危険な発言だったらしい
俺がゴクリと喉を鳴らし顔を引き締める

「それで・・・今の情報料なんだが・・・5000Rでどうだろう?」
 「情報だけで5000R!?」
 「それでも安い方だよ・・・ただ現在うちのクランの貯金だとそれ以上は厳しいんだ・・・申し訳ない」

いやいや!5000Rですよ!?それで少ないって・・・・

木漏れ日荘の月収は住人からそれぞれ100R
宿屋一階解放で一回500Rだぞ!?
たった情報一つでうちのアパートの売り上げを大きく上回ってるじゃないか!?

 「5000Rで良いです!」

 予想以上の大金の定時に思わず叫んでしまった
 レイノールは汗を拭きながら頷くと先ほどまでとはうって変わって営業スマイルを展開する

「では次にダイヤモンドの査定額ですが・・・一個50Rでどうでしょう?」
 「ほぇ?」

5000Rの後に来ると途端に安く思え変な声が出る
 だが今までの情報から整理したらそんな物なのかもしれない
 原価不明、取得は難しいが元手不要の大量生産可能
 正直加工できるかどうかも難しい

頭を悩ませている俺にレイノールさんが笑みを浮かべ更に続ける

「現在ダイヤモンドを取得できるのはアズ様だけ・・・うちのクランだけに毎回売ってくれるのであれば・・・」

どこからかソロバンを取り出すと営業スマイルを向けてくる

「倍の金額の100R払いましょう!勿論相場が決まれば相場の代金を払いますよ!」

ずずぃっと俺のほうに顔を近づけるレイノールさん
情報で5000R・・・それに倍の値段で買い取ってくれるなら・・・

「わかりました!じゃあ100Rでお願いします!」

レイノールさんと握手をして商談が成立
Rを受け取るとアイテムストレージにしまう

「ありがとうございました!今後もレイノール商店をごひいきに!」

 商談成立
 店の外で手を振ってくれる店員を背にして木漏れ日荘に戻る俺は・・・

「あいつ今俺の事見てなかったか!?」

 大金を持っている事により疑心暗鬼になっていた

「あいつ・・・ずっとこっちを見てる・・・まさか・・・」

こちらを見ていた冒険者を穴があくのではないかというほど見ていると
冒険者は顔を赤らめそそくさと逃げ出してしまう

 やはり・・・やつは盗賊か何かに違いない
注意深く周りを観察するとまだ何人かこちらを見ている

「金の匂いに敏感なやつらめ・・・!」

 警戒しながら睨みつける

『『ありがとうございます!』』

なんだ!?どういうことだ!?
まさかこいつら・・・!今から大金を奪うから礼を言ったのか!?
 恐らく今俺は顔が真っ青になっているだろう

風をまとい一気に街道を駆け抜け木漏れ日荘に着く

「なん・・・とか・・・無事につい・・・た・・・」
 「おーうアズじゃねえか!どうしたんだそんな血相変えて?」

 !?
 普段外に出る事が無いグレイが手を振りながらこっちに向かってきている
 ば・・バレている・・・?いや・・・たまたまだ・・・彼は極稀に宿代を稼ぎに外に出てくる
 きっとその日なのだ

「いやー金がそろそろつきそうでさーなんとかなんねーかなー?」

グレイがこちらをチラチラと見ながらわざとらしく言ってくる
 バレている・・・これは確実にたかりに来たのだろう・・・こうなったら先手必勝!

 「どこかに家賃を払わなくてもゆる・・・あいたたた!何事!?アズ!?アズさん!?」

 尚もたかろうとするグレイに周りのありったけの精霊をぶつけると包丁を取り出す

 するとグレイは土下座をしだす

「じょ!冗談ですから!ね?ちゃんと払いますから!」
 「冗談・・・?」

その言葉を聞いて包丁をしまう
全く・・・心臓に悪い冗談である
街に全力疾走していくグレイの背を見ながら木漏れ日荘に帰宅するのであった

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