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第三十一章 管理人

客がいなくなった酒場を後にして
ジローに乗りドルガさんの後ろをついていく

「ドルガさんドルガさん?マイホームはどこにあるのでしょうか?」
「グラフ城の近くでな・・・川が近くに流れてる場所なんだげども行った事あるが?」
「いや、ないですね、そもそも城に興味がなかったのもありますしグラフ街の中に川が流れてるのすら知らなかったですね」

ドルガさんが頭を抱えている

「おめぇ・・・どにかくその川では新鮮な魚やジン魚の稚魚も取れる、食材には困らねぇ」
「自給自足良いですね、しかし俺は経営学とか全然わかりませんがその辺は大丈夫ですかね?」
「その辺は大丈夫だぁ、スタッフが二人残る、仕入れや財政管理は任せればいい」

あれ?俺いらなくないか?なんでそんな物件を譲ってくれるんだ?
顔に出ていたのかドルガさんが肩を叩きながら補足してくれる

「さっきも言っただが城の近くでな、時折お偉いさんが来るんだ・・・最低でもそいつらの舌を満足させれる一品が出さなくちゃいけねぇ」

そこまで腕を買われているとは
ドルガさんに肩を叩かれずり落ちそうになりながらもニヤニヤしてしまう
出来心で厨房の悪夢を完遂してしまったがなかなか人助けはするものだな
そうこう話している間にドルガさんが立ち止まる

「ついだぞ?」

人々の喧騒から少し離れ、小道に入った所
木々の間から光が漏れ、川のせせらぎが聞こえてくる
少し視界を上げるとグラフ城が目に入る
木造ながらもしっかりした建物の前で水色の髪をした親子が談笑している

「ふおー!すごいっすね!これが俺のマイホーム!」

隣でドルガさんが嬉しそうに笑顔を向けて来る

「気に入ったが?クラウスざま!この人が新しい管理人だ!」

俺の大声にビックリしたのか二人が目を見開いてこちらを見ると
隣のドルガさんを見て納得したようにこちらに歩いて来る

「初めまして、わたくしこの家の雑務をしておりますクラウスと言います」
「同じく雑務をしてます!アクアです!」

見た目まだ若く、綺麗に整えた髭が特徴の短髪クラウス
今の俺と同じぐらいの背で、髪を腰まで伸ばしている元気そうなアクア

「あ!その!俺!アズ!よろしく!」

俺のガチガチの挨拶にドルガさんが噴き出す
いくらドルガさんでも怒る時は怒るぞ?

「そういうわけで今日からここがアズ、おめぇのホームだ、何かあったらクラウスざまに聞くといいぞ?」

クラウスが姿勢を正しこちらに礼をする

「その!自然体で良いです!逆に緊張するんで!」

察してくれたクラウスが姿勢を崩して頭を撫でて来る
不思議とダンディなクラウスに撫でられると嫌な気はせず緊張がやわらぐ

「あー!お父さんばっかりずるい!ねーねーあずちゃん!あなた料理上手なんだって?なんか作って!」

アクアに引っ張られて店内に入る
途中ドルガさんが髪の色も似とるし、家族にしかみぇねぇなぁとか言ってた気がする

酒場のチェーン店とは思えないくらいオシャレな内装
厨房には一通りの道具が揃っている

「うわーすっごい・・・これ全部タダか・・・」

水槽には、触手頭に魚ボディのジン魚の稚魚
ガラスケースには綺麗に洗浄されたサンドワームがうごめいている

食材とわかっていても吐き気を催すのは俺だけじゃないはずだ
そんなガラスケースからサンドワームを手づかみで取り出すアクアさんマジリスペクトっす

「ほらほら!何作る?お父さん達まだ外で話ししてるし私も頑張るよ!」

サンドワームを調理台に乗せて包丁を振り回すアクアに頭を抱えつつもマイ包丁を取り出す

「食材は丁寧に!あと刃物は振り回すと危ない!とりあえずなんか作るから目の届く所にいて」

アクアが目をパチクリして恥ずかしそうに腰掛けに座る

「あずちゃん私と同い年ぐらいだよね?歳が近い子いないから嬉しくて!」

まずちゃんはやめてくれ
しかしここまで嬉しそうに言われると歳を訂正するのも良心が痛む・・・ここにフーキがいてくれれば・・・
そういえば明日は決勝だったな、せっかくだからお弁当ぐらい作っていってやるか
フーキにメッセージを送る
考え事をしていても手は動くようで気づいたらサンドワームの蒸し焼きビビンバが完成

「あずちゃんすっごーい!これ美味しいよ!」
「食べる前にはいただきますだぞ!」

なんだかルピーを思い出す、料理店の事を教えとくか
ルピーにメッセージを送る
ポーン
返信はや!

[すぐいきます、場所を教えて下さい]

今彼女に来られたらゆっくりする時間がなくなる!
俺は気づかないふりをする事にした

「所でここって居住スペースあるの?アクア達と同居?」
「あるよー!あずちゃんの部屋は一階!でも残念だけど私とお父さんは離れた所に住んでるのー」
「てっきり二階スペースに住んでるのかと思ったよ」
「二階は客室でねー!定期的なしゅうにゅーが欲しい時に部屋を貸し出したりするんだよー!」

アパートとか宿屋とかそんな感じだろうか?

「食材がサンドワームとジン魚しかほぼ残っていないのはなんでだろう?」
「それはこの店を畳む予定だったからだよ」

クラウスさんが厨房の入り口でアクアを抱き上げている
あれ?ドルガさんは?
俺の視線に気づいたクラウスはアクアを下ろす

「ドルガさんは酒場に戻ったよ、お客様がいなくてもあそこのトップだからね」
「なるほど、しかし食材がこの二つと少しのストック・・・これは頑張らなくてはいけないかもしれない」

目の端に入った冷蔵庫に今持っている食材を投げ込む
投げ込んだ食材を見てクラウスさんが驚く

すごいね・・・特にこの量のドラゴンの肉なんてよく持ってたね

「色々あって」

この間のドラゴン討伐、報酬は出たが千にも及ぶ討伐隊、その中から抽選形式で分配されたので殆どの人が報酬はなかったのだが
俺は頑張ったで賞といらないからあげると鱗諸々剥ぎ取られた丸裸のドラゴン丸々一頭分貰ったのだ

「まさかこんな場面で使う事になるとは」

ポーン!という音と共にフーキからメールが返ってくる
仕方ない!明日のフーキの為にドラゴン肉でスタミナ弁当を作るか!

新しいマイホームにてクラウスさんから一通りの説明を受け
外のベンチにサンドウィッチ片手に座り
これからの方針を考える

クラウスさんは食材の定期的な補充、財政管理
アクアは部屋の掃除等をやっているらしい

「まず調理スタッフが誰もいないっていうのが問題だよな」

流石に俺一人で全部できるほど甘くない
アルバイト募集のクエストをギルドに貼ってもらうとしよう

二階スペースの部屋は四室、管理人の自由に使って良いそうだ
部屋の内装は管理人部屋と同じでベッドと机、椅子にクローゼットがあるだけである
アパート形式で定期的に収入を得るのもありとの事だ
回復するだけなら宿を取るより断然安くなる

需要がないわけではないよな・・・?
こちらは入居者募集の張り紙をドルガさんの宿屋に貼らせてもらおう

「あずちゃんあずちゃん!管理人の服持ってきたよ!」
「おー!そんな物まで支給されるのか!ありがとうアクア!」

アクアの頭をポンポンと撫でて受け取った装備をそのまま着用
見た目は割烹着にしか見えないが

管理人の服
防御+1
生産速度+1、生産量+2

「ステータスが生産職向けなのか・・・」

生産職用の装備がある事すら初めて知ったよ

「なにはともあれ!まずは名前だな!」

この建物の名称は現在無い
元々はドル支店という名前だったらしいが、俺が管理人になる事で自由に決めて良いとの事だ

「いざ決めるとなると悩むな・・・んー」

あんまり考えても仕方ない、安直だがここは・・・

「ここは木漏れ日荘にしよう」

<木漏れ日荘がアズのホームに認定されました>

唐突なシステムログ、まだ俺の所有地じゃなかった!?

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