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現実逃避から始まるメンヘラ狂騒曲

片山樹

2

「はぁー」
 先が思いやられる。
本当にこの状況をどうすればいいのだろう。

従妹と言えど同年代の女の子とひとつ屋根の下で暮らす。青春真っ只中の高校2年生という身分の俺にとってそのシチュエーションというのは興奮してしまう。
だってさ、普通にラノベやアニメとかではこんな展開の時には色々と起こるじゃんかよ。
エッチな展開ってやつ?
まぁー起きるとは思えないけどさ。

「それよりも……」
 後ろを振り返り、ドアを思い切り開ける。
ガツン!? 何かに当たった。
ドテっ!? ん? コケた?
 部屋から2メートル先に吉乃坂美穂が倒れていた。

「おい……何やってんだよ。部屋の前で……」

 吉乃坂美穂が「痛いよぉ〜」と言いながら右側の頭を擦る。倒れた衝撃でワンピースが乱れ、太ももの部分がめくれ、パンツが見えそうで見えない。

「悠斗と久しぶりに会ったから。お話したかった……」

 美穂が視線を俺から逸らしながら言う。
白い頬が徐々に赤くなっていく。

「………………」
 言葉が上手く出てこなかった。
こんな時ラノベ主人公なら素敵な言葉を女のヒロインに言うのかもしれないけど、俺はそんな奴では無いから良く分からない。

「………………」

 沈黙が俺と美穂の間に訪れる。
だが流石にマズイ。
俺と美穂はこれから夏休みの間一緒に暮らすから……出会ってすぐに気不味い関係になるのだけは……。

「あ、あのさ、俺も美穂と話したい。俺さ、美穂がそんなこと思ってるって知らなくて……。学校でも俺ぼっちで誰とも喋らなくて……喋ろうと努力しても何もできなくて……その……俺、だから、その……俺、その……俺さ、美穂に嫌われてるんじゃないかって思って。美穂にキモいと思われてるんじゃないかって思って。それで自分の部屋でゲームして時間潰そうとして……そのなんか……」


 俺、何言ってんだ。
本当に何を言ってんだ。
こんなこと言われたら困るだろ。
ぼっちとか自分で言って自爆だろ。
まじて笑える。本当に何が俺はしたいんだろう。
それにめちゃ喋ってるし、早口になってるし、コミュ障万歳かよ。まじで。

 だが、俺の口は止まらなかった。

「俺……美穂と話がしたいんだ! 沢山話をしたい! 美穂との昔の写真を見て可愛いと思って……会いたいとずっと思ってて……本当に下心有りまくりだったけど……本当に会いたいと思って。俺、何故か覚えてるんだ。あの日、海に行った日」
 急いで自分の部屋の机に飾ってある写真を取り、彼女の元に戻った。
ガバッと手に握った写真を見せる。

「この日のこと……少しだけ覚えるんだ。美穂と一緒に遊んだ時のこと。めちゃくちゃ楽しかったのを覚えてるんだ。だからさ、その……なんていうか。なんていうか。あのさ……俺、それが俺の一生の宝物なんだ」

 言い切った。俺の言いたいことを言ってやった。
なんか……もう、俺の心の底から気持ちを伝えた。

「………………」
 ほら彼女黙りこくっちゃったよ。
そりゃそうさ。いきなりこんなことを言われたらそうなるよ。うんうん、そうだよね。

 腕を掴まれた。
最初その力は弱かったが、次第に強くなっていく。
そしてその力が最大に強くなった時、 
「わ、わたしも!?」
 彼女が涙ぐんで俺を見つめてきた。

「わ、わたしも……わたしも……引きこもりで。学校行かなくて。不登校児で。周りの人と仲良くできなくて。つまらなくて。だけど悠斗があの日、わたしに言ってくれたから。約束してくれたから。わたし、生きる希望ができて……それでそれで、それで……」
 彼女の目から涙がポタポタと頬に一縷を描きながら流れていく。

「わたし、悠斗のことが好きなの! 大好きなの!」

 彼女が俺に抱きついてきた。
ほのかに香るジャスミンの匂いが俺の鼻孔をくすぐる。

「俺も美穂のこと好きだ」

 俺達はそのままベットへと向かい、お互いにお互いを慰めあった。


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