異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

8ー1一息つかせてくれ

 魔族領サルタスからユウトたちが戻ってきた時には、寒さは何処へやら、と言いたくなるほどすっかり暖かくなっていた。
「久しぶりに帰ってきた気分だ~」
「まあ、2ヶ月くらい留守にしてたからな」
「えっ、ご主人、それにマイカも戻って来たんですか」
 スぺレイヤーに戻ってきた、ユウトたちを真っ先に見つけたのは、ニカだった。
「おう、さっき戻ってきたところだ」
「この人は主人マスターの愛人ですか?」
 ユウトの陰から顔を出したツーは、ニカを指差してそう言う。
「違うぞツー。俺はマイカ一筋だし、ニカはうちで働いてるメイドさんだ」
「そうですか、分かりました」
 ツーは少し面白くないなと言いたげな様子でそう頷いた。
「えっと、ご主人そちらの方は?」
 ニカは少し取り乱しながら、ユウトに問う。マイカは一筋と言われて満足らしく、ご機嫌でユウトと腕を組んでいた。
「ん? ああ、魔法研究所から連れてきた魔工人形マジックドールのツーだよ。魔法研究所は今、ツーの中にあるんだ」
「魔工人形? 魔法研究所? もしかして、伝承にある女魔導士さんのですか?」
 ニカは顔を青ざめさせて、そう言う。というのも人間のように自由に動ける魔工人形というのは、伝承にある女魔導士以外が作れるものではないからだ。
「伝承ってのがどんなのかは分からないけど、俺の母さんが使ってたらしい地下にある魔法研究所から連れてきた」
 ある程度想像していたとはいえ、事があまりにも大きなものなので、ニカはその場で動けなくなってしまった。
 ユウトは、一つ溜め息をつくとニカを負ぶって、マイカに睨まれながら屋敷に戻った。
「えっ、あっ、ご主人おかえりなさい」
 ユウトとマイカ、ツーを迎えたのはミーシャだった。
「ただいま。元気にしてたようで何よりだ」
 ユウトは負ぶっていた、ニカをソファーに座らせてから、自分もと言わんばかりに腰を下ろす。
「ふー、久々にのんびりしたいね~」
「確かに、のんびりしたいよな」
 それからユウトとマイカがのんびり過ごしていると、日も傾き始めた頃に走ってラピスがやってきた。
「ユウト、話がある」
「ん、どうしたんだ? ってかお前一応国王だろ。もう少し国王らしい態度でだな」
「そんなことはどうでもいいんだよ。食糧の輸入が出来なくなるかもしれないんだ」
 ユウトは、どういうことだと言いながら真剣な面持ちでソファーに座りなおす。すると、2人の雰囲気を察した皆はその場から去っていた。
「じゃあ、説明するぞ」
「ああ、任せた」
 ラピスは、息を整えるために深呼吸をしてから話を切り出す。
「この国は、宗教とかあんまり気にしてないだろ」
 そうだなと、ユウトは軽く頷く。
「それでだ、この国ってのは例外的なことが多すぎるんだよ。女性が政権持ってることとか、奴隷がいないこととか、それに商業国だろ。それからルガシオ教が元の国、ウルヴァニラでは信仰されてたろ。だからなに、大元みたいなのに目をつけられてるらしい」
「なるほど。それで教会の大元から目を付けられてるんだな。食糧とかは圧力かけて止めようってか」
 ユウトは軽く考え始める。そして少し間をおいて話しだす。
「とりあえず農業関連で対策するか。ローテーションさせて作るところと、休ませるところ。休ませてるところは家畜育てるか。武力行使はないよな?」
「お前がいるのに武力行使はしないだろ。相手はそんなにバカじゃないだろうし」
「おい、それどういう事だよ。俺ってなんか恐ろしいものだと思われてる?」
 ラピスは乾いた笑いをして、ソファーから立ち上がる。
「じゃあ、詳しい話は王城で話し合うか」
「おい、ひと休み位させてくれよ」

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