異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

6-9出発、過去を求めて

 ニカとミーシャのサプライズによって、結婚式を挙げてから数週間。ソファで伸びていたユウトは、何かを決意したように起き上がる。
「そうだ、魔族領行こう」
「何言ってるんですか? 魔族領ってそんなノリで行くところじゃないですよ、ご主人」
「そうだよユウくん。京都行こうのノリで言うものじゃないよ」
 リビングでユウトと同じようにのんびりしていたマイカと、ニカはユウトの言葉に大きく反応する。
「いや、ほら、元魔王の父親の足跡探しでもって思ってね」
「そういえば、義父さんおとうさんってこの世界で魔王やってたみたいな話を女神が言ってたね」
「ご主人の強さは、遺伝的なものとかもありそうですよね」
 ユウトの父は元魔王、母は最凶と恐れられた元大魔導士。ユウトの強さは遺伝子レベルで保障されていたのかもしれない。
「それに、リーティスの親にちょっとした心当たりが出来たからな」
「なるほどね。リーちゃんの為か」
「リーティスちゃんの為とはいえ、無理はしないでくださいよ」
「もうあんなムチャする気は無いよ」
 ユウトは義手になった右腕をみながら言う。
「まあ、上級魔族には命はあんまり狙われないと思うから、うまくザコの監視の目を逃れられるかだな」
「上級魔族は魔力の質とかも分かるらしいしので、その点は安心かもしれませんね」
「一応魔王家の血引きだし、相手が阿保でもない限り襲われないと思う」
「なら良いのかな~?」
 じゃあ準備整えよっか、というマイカの言葉を聞けるまで、話し合いは続いた。準備などもして、出発することになったのはそれから3日後の事だった。
「また旅行なんでしょ、パパ」
「そうだな。今回は遠くだし、のんびり楽しもうな」
「うん、のんびりするの」
「こんなに呑気に魔族領に行くのは、どの世界探してもうちのご主人だけな気がします」
 ニカとミーシャは、主人のおかしな旅行に少し不安さを感じながらも、まあ大丈夫かなとユウトたちを送り出した。
「ユウくんと、野宿するのも久しぶりだね~」
「まあ、早い段階で屋敷も手に入ったし、あんまり動き回ることなんてなかったからな」
「ママとパパってどんな世界にいたの?」
「魔法がない世界だよ。魔法じゃない化学ってのが物の考え方の基本だったんだよ」
「パパは元の世界で、魔法が無くてもすごかったのよ」
 マイカは、ユウトの神童エピソードをリーティスに沢山聞かせる。
「パパ、すっごいの。もうパパと結婚する」
「俺は、ママと結婚したからなぁ。リーティスもいい人を見つけて、ドレス着させてもらいな。いや、リーティスに釣り合う男はこの世界にはいないな。俺がもらうか」
「ユウくん、バカなこと言わないの。リーちゃんも、パパは10何年も前から私のなの」
 えっ、そうだったの。いや、まあ、マイカのものだったのか?
「パパの独り占めずるい。ママは少し自重して」
 ああ、なるほどこれが幸せってやつか。この世界に来て色々あったけど、悪くないな。
 ユウトは2人の様子を温かい目で見守りながら、のんびりと進む馬車に身を任せ意識を手放す。
 そんなかんじの日を何度か繰り返すと、馬車の終着点。魔族領の近くの村に着く。ここからは魔獣が多くなるので人は寄り付かないし、馬車も進まない。ここからの野宿は、マイカとユウトが交互に魔獣除けを展開していく予定だ。
「しっかし、寒いな。2人とも大丈夫か?」
「私は防寒着来てるから大丈夫だよ。リーちゃんもさっき着せたから大丈夫なはず。リーちゃんは寒さより眠気だろうし」
「馬車乗ってる間ずっとマイカと遊んでたもんな。マイカも疲れてるだろうし、今日は村の宿とって休むか」
「そうだね〜。リーちゃんを負ぶって移動するのは疲れそうだし」
「負ぶるのは俺だけどな」
 眠気に負けそうなリーティスをユウトが負ぶって村に入る。そして宿で家族部屋1泊分の代金を支払う。
「これから、魔族領行くんでしょ? 何が目的なの?」
「前も言った通り、リーティスの親に心当たりが出来ただけだ。多分俺の叔父で現魔王だろ」
「どういう事? ユウくんが魔王の血を引いてるとこまでは分かるけど」
「俺は魔王の血引きだろ。魔力にも魔王の力が混じってるんだと。だからリーティスは魔力で俺を親じゃないかって勘違いしたって可能性の話だ」
 そっか、とマイカは少し寂しそうにつぶやく。
「まあ、メインは俺の親の過去を探す事だ。リーティスの件はついでだからどうなるかは分からん」
「リーちゃんの親探しもしっかりやってあげてよ。寂しいけど、それが正しいんだから」
「俺も寂しいけど、それが答えだよな。リーティスを返したら、しばらく2人でのんびりするのもいいかもな。そろそろ寝るか」
「そうだね〜」
 リーティスの親探しと、ユウトの親の足跡を探すために魔族領を目指す、ユウトたちは少し早めに眠りについた。

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