異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

6-2.5一方そのころ

side ラピス
「ラピス、疲れてそうだけど大丈夫?」
「そんなに疲れてそうか?」
「うん。今のラピスは、僕じゃなくても疲れてそうだなぁって思うほどに疲れが表に出てるよ」
 確かに疲れてはいるけど、そこまでか。最近忙しかったもんな。
 ラピスはこの一か月まともに休むどころか働き詰めだった。休みといえる休みはミレナとの結婚式だが、それすらあちこちに気を使っていたので休めていたとは言い難い。
「ここ最近は城を直したり、メルクス王国関連でドタバタしてるし」
「それもそうだろうけど、貴族やらの前で気を使い過ぎてるんだよ。少し風にでもあたって休んできたらどうだい?」
「まあ、そうするか」
 ラピスはどうせならと風に当たるがてら、ユウトの様子を見に行くことにしてバルコニーに向かう。
 そこではユウトが涙を流しながら、マイカにプロポーズしているところだった。
「ユウトの言ってたのはこういう事か」
 ユウトの覚悟の強さに、自分が情けなくなって溜め息をついた。
 ほかにもユウトの様子を見に来ていたようで、声を押し殺して泣いているようだった。
「あと、そこ。のぞいてるの分かってるからな」
 ユウトに睨まれラピスはひっそりとパーティ会場に戻っていった。
「あれ?案外早く戻って来たね。どうしたの?」
「いや、ユウトとマイカがちょっとな」
 ラピスは先ほどの光景を思い出して苦笑いした。

ラピス side out





side カズヤ
「あれはユウトさん?どこに行くのかしら。カズヤ、ついていくわよ」
 カンナはその場にいたカズヤの腕をつかむと無理やり引っ張っていこうとする。しかし、カズヤはユウトを追いかけるのに反対のようで、動こうとしない。
「いや、やめとけよ。どうせろくなことにならないし」
「いいから付いてきなさい」
「俺は警告したからな。まあついていってやるか」
 カズヤは溜め息をつくと、先を行くカンナの後ろをついていく。ユウトがやって来た場所はバルコニーだった。
「邪魔にならないように、ほかの場所からユウトさんを見守りましょ」
 やめとけよと、カズヤは最後の忠告をするが、カンナはやめる様子を見せない。
 それから間もなく、ユウトのいるバルコニーにはマイカがやってくる。
 声がはっきりと聞こえるわけではないがどんな話をしているのかは、それとない雰囲気で分かった。
 それからしばらくするとこの場所にも聞こえる涙交じりの声で一言いう。
『だから、マイカ。俺と結婚してください。』
 その言葉を理解した瞬間にカンナは泣き崩れ、カズヤはやれやれと溜め息をつく。
「どういう関係なのかしら、あの二人は」
「とりあえず落ち着け、話はそれからだ。これ貸してやるから」
 カズヤはジャケットを渡して、カンナが泣き止むまで待つ。
「落ち着いたか?とりあえずジャケットも酷いし、パーティ会場に戻れないし宿に行こうぜ」
「そうね。この格好も疲れるだけだし」
 宿に着くとシャワーを浴びてからカズヤの部屋にカンナがやって来た。
「もうある程度は落ち着いたんだな」
「ええ。シャワー浴びて少しは落ち着いたわ」
「分かった。ざっくり説明すると俺もだが上川とユウトは十年くらいの付き合いなんだよ。小六の頃からいろいろあって上川は別の学校だけどな」
 カンナが頷いているのを確認すると話を続ける。
「まあそれが原因で神童って呼ばれていたユウトは変わっちまったんだ」
「そうですか。でも私中学生の頃ユウトさんに助けられましたよ」
「喧嘩に暮れてた頃の事だろ。しょっちゅう誰かしら助けてたけど、あいつの眼中にはなくて喧嘩をするのに邪魔なものを取り除いてただけだよ」
「そうなんですか」
「それから上川はユウトと同じ高校に来たけど、ユウトは自分の所業で傷つけたくないってふさぎ込んでたんだな。それからこの世界で暮らしてああなったんだろ」
「十年近い付き合いね、私には何が足りなかったのかしら」
「いや、カンナさんは頑張ってんだろ。ユウトの心の奥底に上川がいただけだし。強いて足りなかったものがあるなら、付き合いの長さだろ」
「やっぱりつらいよ。なんで私じゃダメなの?ねえ、答えてよ」
「それは俺に聞かれても困る」
 またしても泣き出すカンナを撫でながら夜が明けるまで過ごした。

カズヤ side out

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