異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

5-7.5救出、戦うということ

side ラピス
「不思議なほどにこっちには人がいないな。」
 ラピスは、地下牢へと続く廊下を進みながら言う。
「やっぱり、多くの一般兵は上にいるんじゃないですか?上はかなり騒がしかったですし。」
「まあ、人がいないなら楽に終わっていいんだけどな。」
 2人はそれからも、地下牢へと続く廊下を、階段を進み、特に何かが起こるわけでもなく地下牢についた。
「さて、ミレナ達はどこにいるかな?」
「ラピスさん、気をつけてくださいね。魔法はここでは使えませんから。」
 オルトは十数メートル間隔で範囲をカバーするように置いてある、魔法妨害石を見つけて、そう言う。
「こいつらは魔法にはならないだろ。」
 ラピスはそう言いながら、2丁の改造エアガンをオルトに見せた。
「しかし、地下牢もかなり広いですね。」
 先ほどから大して変わらない景色を眺めながら、オルトはラピスと共に進んでいく。
「あの辺りじゃないか?話し声が聞こえるだろ。」
 ラピスが指差した場所は、もう少し先のところで、地下牢にもかかわらず、女性の話し声が聞こえてくるところだった。どうやらオルトも同じ考えらしく、ラピスに頷くと、少し慎重な足取りでそこへと向かっていく。
どうやら当たりか。
「えっと、お久しぶりです。助けに来ました。」
「まさかこんなに早く来るとは思ってなかったよ。いや、まさか幻覚。ラピス君に会いたすぎて幻覚が見えて来たのか。」
 ミレナは、ラピスが来たのが信じられないようで、右往左往し、自分の頰を抓ったりしていた。
「ミレナ、幻覚じゃないから。とりあえずそっち側の壁に行ってくれ。壁ぶち抜いて脱出できるようにするから。」
 全員が反対側の壁に行った事を確認すると、魔法妨害石をエアガンで破壊し、身を守れるような魔法を使うことを指示する。
 そして、開いている隣の牢に入り、威力を確かめるためにミレナ達のいない牢側の壁に、改造エアガンを使い、ファイヤーボールを手始めに、1発撃ち込んでみる。
 ラピスの撃った弾は見事に中心にあたり、爆発し、壁には亀裂が入り、ひと蹴りするとその壁は見事に砕けた。それを確認したラピスはミレナ達の牢の壁にも同じように、中心にエアガンの弾を撃ち込み、爆発させた。その後、牢の中からカズヤがひと蹴りをし、壁は崩れ、一斉に脱出することに成功した。
「ラピスくんだ。ラピスくん。ラピスくん。」
「はいはい、本物のラピスだよ。とりあえず無事でよかった。」
 ものすごい勢いで、ラピスに抱きついて来たミレナの頭を撫でながら、ラピスは上で戦ってる、ユウトとトモキ、魔族について説明し、カズヤとカンナ、ユウコはユウト達に加勢し、他はこの場を離れることになった。
「じゃあ、俺たちもこの場所から離れましょう。」
 爆発音を聞いた一般兵と戦うことになっても面倒なので、ラピスとオルトが護衛をしながらもと来た廊下を戻っていく。特に何かをされたわけでもないが、精神的には参っている様子の女性陣に合わせながら、ゆっくりと王城を後にした。

ラピス side out





side カンナ
「ようやく出られたな。」
「そうね。早くユウトさんに合流するわよ。聞いた話通りなら、王室にいる国王と戦うとか言っていたし、王室に向かっているはずよ。」
「私は頼まれた事があるから途中からは、別行動させてもらいます。」
「そうか、分かった。まあ今は迫ってくる一般兵を無力化させるよ。」
 カズヤは固有能力である一点集中を使い、聴覚を特化させ足音を聞き、臨戦態勢に入るように伝える。しかし、カンナが先に一人で行ってしまい、固有能力である魅了チャームを使い、あっという間に倒してしまった。この後も何度か一般兵に襲撃されながらも、同じ方法で突破し、ようやく、ユウトたちが進んだとみられる廊下までやってきた。
「なんだここ。なんで兵士たちは壁に沿ってぶっ倒れてるんだ?」
 カズヤたちが見かけた一般兵はユウトの重力魔法グラヴィティによってねじ伏せられた者たちだった。
「さすがというか、なんというか。」
 どこまでも規格外で、圧倒的なユウトに言葉を失ったカズヤたちは、その場から動けなくなりそうになったが、いち早く正気を取り戻したカンナによって、何とか正気を取り戻し、ユウトたちの後を追った。その後すぐにユウコと分かれて、王城の次のフロアへと続く階段に差し掛かった。
 その階段を一歩一歩進むにつれ、気のせい程度で誤魔化せていた血の匂いは濃くなり、最後の段を上り切ったその先で、一人血まみれのクラスメイトを発見する。
「嘘、だろ。」
 その生徒は右肩から左の腰まで続く一本の切り口から血を流していた。もう呼吸もなく、小さな虫が少したかっているのを目にし、2人はこの戦いの恐ろしさを知った。
 気分が悪くなり、吐き気も襲ってくるがそれを何とか我慢し、進んでいく。次に目にすることになったのは、体の一部が切り落とされたクラスメイト達だ。その切り口は鋭利な武器で一閃、といった感じで、その中に加勢しようとしている友人の姿はなく、その友人の恐ろしさが、クラスメイトの死よりも、大きくなった。
 カンナに落ち着かされること数分、カズヤの震ええていた足も、ようやく落ち着き、息を整えることがようやくできるようになった。
「これくらいは覚悟してたんじゃないの?ユウトさんは、一つのために他を捨てることをためらわないのくらい知ってるでしょ?国王に従った、ユウトさんの敵になった。ただそれだけのことよ。ついてくる気があるなら早く起き上がりなさいよ。」
 カズヤは、立ち上がると気合を入れなおし、金属音や、爆発音が鳴り響く部屋へと向かっていく。

カズヤ side out

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品