異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

2ー6.5空から女の子が……

side トモキ
 こっちに来てもう1ヶ月ちょっとか……
 トモキは部屋の片隅で、この世界に来てからのことを思い出していた。

 *****

「おお、無事だったか。ルイナ、ユーリ。襲われたと聞いて心配したぞ」
「全然問題ありませんわ」
「ねえさま……」
 トモキは先ほど助けたルイナとユーリに連れられて、王城へとやって来ていた。
「無事なら結構、ところでそこにいる、2人が連れてきたぬぼっとした人は?」
 トモキは、ぬぼっとした人と言われて少し落ち込みながらも国王の前に出る。
「この方は、旅人のような人でして、私たちが襲われていたところを助けてくれた方です」
「おお、そうか、そうか」
 国王は、品定めをするようにトモキをじっくりと見ていく。
「是非この方にお礼をと思いまして、ここに連れてきた次第です」
「まぁ、そんなところね」
 トモキはなにをしていいかも分からなかったが、国王に頭を下げ自己紹介をする。
「旅人をやっております、トモキと言います」
「トモキか、よくやったな。褒美をやろう。何が良いか?」
 トモキは、やってくる途中に見てきたこの国の雰囲気を気に入っており、住むところもないこの状況を振り返り1つの欲しいものを決める。
「おこがましいかもしれませんが、屋敷が欲しいです。実は旅の途中で山賊に持ち物をほとんど持っていかれてしまって」
 少し嘘が混じってしまったので、心配になってルイナを見るが指摘する様子もなく安堵する。
「そうか、それは災難だったな。そんな状況だったにもかかわらず娘たちを助けてもらって、なんとお礼を言えばいいのか。しかし、そうか……君には、屋敷を与えよう。それと、王国名誉騎士の称号を与えよう」
 国王はトモキに頭を下げ、改めて礼を言うとトモキに屋敷を与えることを約束する。
「えっ、あ、ありがとうございます」
 トモキは屋敷が簡単に手に入ることになり、少し驚きながら返事をする。
「お父様、いいんですか? 王国名誉騎士なんて称号を与えてしまって? あれは、貴族称号ですよね」
 トモキは、ルイナの言葉で軽く聞き流していた王国名誉騎士の称号の大きさに驚きが隠せなくなる。
「ねえさま、お父様の決定ですよ」
「でも、納得いきません」
 トモキはルイナの言葉に納得して、強く頷くが、国王はトモキがやったことのすごさを繰り返す。
「何を言っているのだ? 彼は傭兵側に立つことだって、ここに来る途中でお前達を人質にすることだってできたのだ。そんななか、善意で助けたうえに、ここまで護衛してくれたのだろう」
「そ、そうですけど」
「トモキ改めてお願いしたい。王国名誉騎士は、貴族称号なんだが引き受けてはくれないだろうか? 王国名誉騎士には王国親衛騎士団の名誉団長という役割も含まれていてな。傭兵の中には、王国親衛騎士団のものもいたという報告があるんだ。そこで、偵察を含めて、しばらくの間名誉団長として、指導もしていただきたい。もちろん給料も弾むぞ」
 国王は、ここぞとばかりにトモキに頼み込む。対するトモキは断る理由もなく、金もないのでしばらく考えたフリをして了承する。
「自分でよければ、その仕事受けさせてもらいます」
「そうか、それはよかった。よし、トモキを例の屋敷に案内するんだ」
 どこからともなく現れたメイドに連れられて、トモキは王城を後にする。
「承知しました、ご主人。ではトモキさんこちらへ」
「あっ、はい」
 メイドに連れられて王城を出てから歩くこと数分、トモキは一等地と思われる場所にある大きな屋敷の前に来ていた。
「では、メイドを数名至急派遣します。何か不備などあればすぐに。それと、貴族になるので、苗字を考えておいてください」
 しばらくの間、屋敷にトモキが困惑していると、メイドが9人やって来た。そして本人を置いて、それぞれの仕事を始めた。
 トモキが正気を取り戻し、屋敷に入ったのはメイドたちが来てからもう少し時間がかかった。
 それからあまり日も経たぬ間に、称号の授与式が行われ、トモキは貴族の仲間入りをし、王国親衛騎士団の名誉団長の仕事も始まった。

 *****

 この1ヶ月の事を思い出し、改めてすごい1ヶ月だった事を確認したトモキは気を紛らわすために散歩に出かける事にした。
「ちょっと、散歩に行ってくるよ」
『いってらっしゃいご主人様』
 やっぱり、ご主人様呼びは慣れないな。さて、今日は路地裏の屋台でも見に行こうかな? 路地裏というと悪いイメージが強いけど、ご飯は美味しいし、悪くないんだよね。
 トモキが表の通りから少し外れた、路地裏に入っていく。
「キャァァァァ!!」
 トモキがのんびりと歩いていると、上から少女の悲鳴が聞こえる。トモキは上を向いて確認しようとしたが、目の前に白い布が見えたと思った瞬間、体に衝撃が走りグハッと声が漏れる。そして、落ちてきた少女の下敷きとなる。
 トモキは現状を把握することも出来るはずもなく、まずはなんとか立ち上がろうとする。
「いてて、すみません、大丈夫ですか?」
 落ちてきた少女は無事なようで、トモキの上からトモキが怪我をしていないかを確認する。
「うん、まあ、なんとか。起き上がれないから退いてくれるかな?」
 トモキは上に乗っていた少女が立ち上がってから、1つ遅れて立ち上がる。
「あっ、すみません」
「ありがとう。僕は、トモキ・ナーミよろしく。ところで怪我はない?」
「大丈夫です。私はユウコです」
「女神様に放り投げられたんだよね? 上空に」
 トモキは、そういえば女の子が来るって話をしていた事を思い出しそう問う。
「なんで分かったんですか?」
「ここじゃなんだし、僕の屋敷で話そう」
 それは僕も放り投げられたからね。なんて思いながら、トモキはユウコを屋敷へと連れて行く。
「分かりました」
 2人は無言のまま、屋敷に向かって歩いて行く。それほど遠くにいたわけでもないので、5分としないで屋敷の前に着く。
「ここが僕の屋敷だよ」
「大きいですね、貴族なんですか?」
「まあ、そうだね」
 トモキとユウコが屋敷の前で話していると、メイドが出迎える。
『お帰りなさいご主人様、今日はお早いですね』
「僕に客が来ている、お茶を頼むよ」
『かしこまりました』
 トモキは自分の部屋にお茶を持ってくるように頼むと、自分の部屋にユウコを連れて行く。
『お茶でございます。ごゆっくりどうぞ』
 他愛もない話をしていると、メイドが紅茶と茶菓子を持ってやってくる。メイドが部屋を出たのを確認してから、トモキはようやく話を切り出す。
「やっぱり君も、あの適当そうな女神に会ったの?」
「はい、会いました」
「あー、敬語とか疲れるでしょ。気を抜いていいよ」
 ユウコは少し驚いてから、少し砕いた口調で話を続ける。
「えっと、女神様は、あんたの恩人のとこに送るねーって言って」
「やっぱ、あの女神適当だな。ところで#恩恵__ギフト__#とかもらったりした?」
「回復魔法に特化する、あれです。なんでしたっけ?」
 そうか、とトモキは呟くが、ユウコには聞こえなかったようで、ユウコは何かを思い出したように話を続ける。
「ところで女神さんが恩人と言っていたんですけど、もしかしなくても、雛見智樹さんですよね」
 トモキは元の世界での自分のことを知っている事を少し疑問に思ったが、あの女神が説明したんだろうと納得した。
「まあ、僕は元の世界では雛見智樹だったよ」
「そうですか、やっぱり。元の世界では、すみませんでした。私が不注意だったばかりに」
 ユウコは、トモキが庇った事をしっかりと覚えていたようだった。
「もう済んだことだし、気にしなくていいよ。それより、お金ないでしょ、うちに泊まる?」
「そんな、申し訳ないです。確かにお金はありませんけど」
「部屋は余ってるから、気にしないでよ」
「分かりました」
 トモキは、ユウコをなんとか説得してユウコを屋敷に泊めることにした。

トモキ side out





side ミーシャ
 ある日の夕方、ニカはミーシャに声をかけて買い物に出かける。
「私は今から、買い出しに出かけてきます。ミーシャ留守を頼みますよ」
「ニカさん、任せて下さい」
 ミーシャは無い胸を張って留守番を引き受けたものの、掃除を始めとするメイドの仕事は大体終わってしまって暇だった。そんなミーシャはニカと一緒に使っている部屋で1冊の本を見つけた。
「なんだろうこれ? 『私のメイド日記』?」
 ニカが書いたと思われる日記を見つけたミーシャは時間潰しといいながらその日記を開く。

○/□
 私は、もともと貴族の生まれでした。けれど、我が家は、色々あって財産を失ってしまいました。私はその時に、家に売られました。そして奴隷商店の商品になりました。
 もう絶望しかありませんでした。
 売られてから半年程たったある日、若い少年が私を買いました。
 驚きです。彼はどうやら魔王軍の幹部を倒したらしく、女の人が2人仲間にいました。
 そして、彼の屋敷の奴隷メイドになりました。
 ご主人はとても変わった人で、奴隷の首輪を付けません、更に屋敷は任せたみたいなことを言って旅に行こうとしています。連絡用にと言って、あっさりと#魔道具__マジックアイテム__#を渡してきました。逃げられるかもしれないのにもかかわらず。決め手は、奴隷というよりも、メイドみたいな感じで私たちを見ているんでしょう、結婚もしていいと言ってきました。驚きを通り越して、呆れてしまいそうでした。そして、ご主人は旅に行く準備をしています。正直こんなにいい人だとは思っていませんでした。
 だって、女の人を2人も待たせて、私を含む女の奴隷を3人も買う人ですよ。国から逮捕状も出されてるという、どう考えてもまともとは、思えませんでした。

○/▽
 メイドとしての仕事が本格的に始まりました。この屋敷は広いので掃除だけでも大変です。けれど、ご飯も自炊すれば食べられるし、お風呂にも入れます。楽しみなことを考えながら、仕事をするとあっという間です。今日は仕事も早く終わったので、ケイタイとかいう#魔法具__マジックアイテム__#をいじってみることにしました。
 ご主人とマイカさんが楽しそうにしている絵などが見れました。この#魔法具__マジックアイテム__#は謎です。仕事終わりに謎を解明して行きたいです。

「これって、ニカさんの日記だよね。まずいよね、怒られるよね。バレる前に戻しておこう」
 ミーシャはつい夢中になって、日記を読んでいたが玄関のドアが開く音を聞いて、我に戻り焦りだした。
「何がバレるんですか? ミーシャ」
 普段よりもトーンの低い声が、ミーシャの真後ろから聞こえる。ミーシャは恐る恐る首を回して、後ろに立っていたニカにおかえりとだけ言う。
「なんでミーシャは、私の日記を持っているんですか? 読んだんですか?」
 そこにいたのは、普段の優しい面影何処へやらと言うべきなほどに、怒っているニカがいた。
「覚悟はよろしくて?」
「うわぁぁー!!」

ミーシャ side out





side カンナ
「カズヤ、そろそろ強くもなってきましたし、『スペレイヤー』に行ってみませんか? ユウトさんに会える気がしますよ」
 旅に出てから早数週間、カンナはこんな事を言い出した。
「そうだね、行ってみる価値はあると思うよ」
 カズヤは少し考えてから、まあと返事をする。
 私たちは、モンスターをたくさん倒しただけあって十分強くなったし、とても早く成長していると思う。
「とりあえず、スペレイヤーの隣町で宿をとって、それから明日行ってみる?」
「早く着きたいじゃないですか。野宿でいいですよ」
「いや、でも……」
「何、なんか文句でもあるの?」
 カンナは、文句があるなら言いなさいよ、もちろん聞くだけだけど。と言いそうな感じでカズヤに問う。
「いや、風呂とかに入らなくていいのかなー。とか思ってまして。ほら、ここんとこずっと野宿だったでしょ」
 カンナは自分の服の匂いを嗅いで、すっかり忘れていたと顔を青くする。
「そうですね、宿に1泊してから行きましょうか。情報集めも兼ねて」
 幸いな事に、モンスターの討伐を沢山していたので資金には余裕のある2人は、少し高めのしっかりした宿に泊まる事にした。
「じゃあ、行きますよ」
「今から!? 少し休まない? まだ余裕で間に合うし、疲れてるんだけど」
「つべこべ言わずについてきてくださいよ」
 あの自称幼馴染の魔の手からいち早く、ユウトさんを救い出さなくては。

カンナ side out





side マイカ
「はぁ、ユウくんにも困ったなぁ」
 マイカはユウトのいないリビングで小さく呟く。
「どうしたんですか? マイカさん」
「エリさん。まあ色々とユウくんの近くにいると楽しいけど、あれだな~って思ってね~」
 マイカは近くにいたエリが、独り言に反応した事にすこし驚く。
 勝手に女の奴隷買っちゃうし、魔王軍幹部倒す方法考えて、それで倒して、エリさん連れてきちゃったし。フラグ体質ってやつなのかな? 感情を表に出さなくなってから何考えてるか、はっきり分からなくなっちゃったし。
「そうですね、ユウトさんはすごい人です。でも近くにいると心配事が多いです」
「かっこいいし、頭もいいんだけど、無愛想だし」
「昔からなんですか?」
 昔か、ユウくんはいつだって優しかったな。それに、明るかった。あの時までは……
 マイカは過去のことを思い出して、少し苦い顔をしてからエリに返す。
「昔はね、ある事件が起きる前までは、感情的に動く分かりやすい子だったんだけどね」
「何があったんです?」
「ごめん、今はまだ話せない。心の整理がついたら、奴隷メイドちゃん達と、ミアもいる時に、全部話すよ」
 過去に何があったのかも、この世界の人間じゃないことも。
「ごめんなさい、少し踏み込み過ぎました」
「気にしないでいいよ、これからもよろしくね」
「よろしくね」
 まあユウくんは渡さないけどね。

マイカ side out

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