異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~

梅谷シウア

2-1冒険者始めました

 はぁ、昨日はマイカにあのあと散々振り回されて疲れたなぁ。まあ、今日からしっかりクエストとかやって稼がないとな。
「朝だぞ、起きろ。今日はギルド行って依頼受けるぞ」
「う~、あと5分。あと5分でいいから~」
 いったい何度、あと5分って言う気なんだよ。まぁ、慣れない環境で疲れてるのも分かるけど、起きてくれないと困るんだよな。
 元の世界とは逆で、早く起きたユウトが、あと少しと、言い続けるマイカを布団から引きづり出すところからこの日は始まった。
「そろそろ起きないと飯が食えないぞ」
「ユウくん、おはよ~」
「おはよう、ようやく起きたか」
 とはいえ、俺も少し前に起きたんだが。
「ところでさぁ、今日は何するの?」
「今日からしばらくはギルドで依頼受けて稼いでいくしかないと思う」
 金銭面は、まだいくらかあるとはいえ、余裕があるとはいえないからな。
「いいけどさぁ、また倒れないでよ」
魔力使い切って倒れたこと心配してくれてんのか。
「まぁ、無理はしない。最初のうちは魔力とか、魔法の威力とかコントロールする練習も含めて簡単なのをやるつもりだから」
「そっか~、私も力になれるように頑張るよ~」
 マイカは安堵したようで、普段ののんびりとした口調で返事をする。
「そりゃ助かる、一緒に頑張ろうな」
「うん、でも今は朝ご飯が大事だから早く食べに行こ~、もうすぐ朝ご飯の時間終わっちゃうよ~」
 元の世界で、俺に朝食を食わせないで学校に連れて行ったやつの台詞とはとても思えないな。
「あぁ、分かった。分かったから、引っ張るな」
 マイカは、元の世界に帰れないのがつらいんじゃないのか、王城から抜け出した事を後悔してるんじゃないか、などと考えていたユウトだが、マイカの笑顔と元気さを見て、そんな考えは頭の隅に追いやり、マイカに1歩後ろからついていった。

 *****

「いやぁ、ご飯美味しかったね~」
「まぁ、そうだな」
 宿代とセットとはいえ、少し高めなだけあって、美味しいものではあったが、この金額を毎回払うのは、少し憚られるな。
 元の世界では、2人とも料理が全くできなかったので、この世界での問題は、食になってきそうだなとユウトは思いつつも、笑いながら誤魔化した。
「じゃあ、ギルドにレッツゴー」
「お、おぉー」
 朝から元気に街中で声を上げるマイカに、少し呆れながらも、ユウトはマイカについて行った。

 *****

「おはようございます、今日はどんなクエストがありますか~?」
 お前は何、ここに通いつめてたっけ? 違うよね? 昨日登録したくらいしかここにきてないよね? なんで、そんなにあれなの?
 マイカはギルドでも元気よく、まるで今までもずっと来ていたかのように挨拶をするものだから、ユウトは少し戸惑っていた。
「あっ、おはようございます。マイカさん、それにユウトさん」
 えっ、昨日登録してくれた人じゃないよね。いつの間にそんなに親密になったの?
 マイカの挨拶に、ギルドの受付のおねえさんも同じような明るさで、返事をするものだから、ユウトはついていけないなと思っていた。
「あーっと、おはようございます」
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「クエストの受注に来ました」
 うわー、凄い。周りから妬みやら、嫉妬やらが含まれた視線が。やめて、俺は悪くないの。
 ユウトがマイカのような美少女と一緒に、冒険者ギルドという、女っ気のない場所に来ているのに対して、ギルド中からユウトは嫉妬に満ちた眼差しを当てられる。
「ところでユウくん、今日は何するのさ? 簡単なのがいいんでしょ?」
「簡単なのですか? モンスター討伐系でいいのなら簡単で、稼ぎやすいのがありますよ。周辺のモンスターは少し厄介ですが、昨日の討伐量を見ると、大丈夫だと思いますが?」
 どうしようかなぁ、稼ぎやすいのがいいんだけど、嫌な予感が。
「おい、あれってもしかして、ゴブリンの討伐部位を大量に持ってきたって男じゃないか?」
「でもそんなのが、あんな適当な装備なのか?」
「案外そうなのかもしれないぞ」
 ユウトの嫌な予感は見事的中し、周りにいる冒険者は、ユウトについて話し始めてしまった。
 受けた場合は、周辺の厄介なモンスターに、襲われる可能性があるよな。受けなかった場合は、周りにいる集団に弱そうだと思われ、絡まれるだろうな。厄介なモンスターからなら、逃げられるか。
「くっ、う、受けます」
「うっ、受けてくれるんですか?別に、無理に受けなくてもいいんですよ?それでも、受けてくれるんですか?」
 ちょっ、身を乗り出さないで、近い近い。あっ、割とでかい、ってか、いい匂い。
「大丈夫だよね~、ユウくんは」
 ちょっと、マイカさん。さっきの元気さはどこに言ったの? 何が気にくわないのさ? なんでそんなに怖い笑顔できるの? 周りの冒険者の皆さんも、そんな視線を向けないで。
 ユウトは、マイカに怖い笑顔をされながら足を踏まれ、周りにいる冒険者からは、嫉妬と殺意に満ちた視線を向けられた。
「じゃあ、プチリザードマン討伐お願いできますか?」
「では、無事に戻ってきて下さいね」
「えぇ、まぁ、善処します」
 無事に帰ってこれる気がしない、主に味方からの攻撃が心配だ。なんで機嫌悪いのさ、今にも攻撃してきそうで怖い。
「無事だといいね~」
 怖い、怖いよ、超怖い、なんでそんな黒いオーラ出しながらそういうこと言うの、まるで今から沈められそうじゃん、俺が。
 ユウトは、マイカの言葉に恐怖し、冷汗をながし続けた。
「じゃあ、行くか」
「うん、そうしよ~」

 *****

 ユウトがやっとの事で、マイカを落ち着かせ、町を出るのに1時間近く経っていた。
「ところでさ~、町を出てから聞くのもなんだけどさ、どこでプチリザードマン出てくるの~?」
 確かメニューにモンスター分布図があったはず。
 ユウトはメニューの機能の1つ、モンスター分布図を見つけると、メニュー機能のマップと、照らし合わせた。
「すぐ前に山が見えるだろ、あそこの麓の辺りにある岩場みたいな場所だ」
 どうやら周りにいる厄介な奴はリザードマンのことらしい。分布図で見るとよく分かる。
 リザードマンは、プチリザードマンの親に当たるモンスターで適正討伐ランクはC以上と、かなり強いモンスターだ。
「リザードマンがいるから気をつけろよ、ゴブリンなんかよりも圧倒的に強いぞ」
「リザードマンの見た目ってどんな感じなの~?」
 ユウトはメニューを開くと、モンスター辞典を見つけ、その説明書きを読み上げる。
「えっと、見た目は小さなドラゴンのようだが、大きさは約3メートル、最大の特徴のブレス攻撃は、広範囲に高温度の火を吹き、火傷状態にする。適正討伐ランクはC以上、水属性攻撃が弱点。って書いてあるな」
「それってもしかしなくても、あそこでこっちを睨んできてるモンスターだよね」
 おいおい、マジかよ。
 ユウトは、マイカの指差す方向へと視線を向け、リザードマンの姿を確認した。
「どうする、マイカ。戦う? それとも、逃げる?」
 戦う方法はあるが、勝てるかどうか。
 ユウトは、いくつか戦う方法を、事前に考えていたので、その方法を使うべきかを、考えていた。
「ユウくんが、戦うって選択肢を出してくれるってことは、勝てないわけじゃないんだね~。なら私は、それにかけてみたいな~」
「危なくなったら逃げる、それでいいな?」
「うん、分かってるよ。」
「じゃあ作戦を伝える。」
 ユウトは、リザードマンから少し距離をとり、マイカに作戦を告げた。
「わかったよ~、任せて~。」
 じゃあここは、リザードマン狩りと行きますか。

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