転移魔王の異世界全力征服

一姫結菜

第四話 魔王に生まれた日

俺は少し前までは普通の高校生であった。

一部の人からは彼女がいて、高校生ながら大手の同人サークルの絵描きともなれば普通でないと言われるかもしれないが、大なり小なり少しは人と違う所は誰にだってあるだろう。
それにこの状況との比較ともなれば、普通と名乗っても可笑しくはないだろう
俺の現在の姿はネクロスフィアの四大魔王の1人、ルシファーになっていた。
あの不思議な空間から転送されて一変。
いつもの見慣れた姿ではなくなっていた。

髪の毛は白く女のように長髪だし、頭には2本の角が生えている。
背中には8本の翼がある。さらに尻尾なのか触手なのか分からないけど、それらしきものが腰より少し下から3本もある。
手のサイズも5倍くらい大きくなって、恐竜の爪見たく太く鋭いのが生えている。
身長も前は170センチだったのに、今ではそのまま2倍以上。4メートルくらいはある。
見た目は既に魔王そのもの。
だ、実際に動かしてみるとこれまでの自分の身体のように動く。また、声帯も変わっていないのか声はいつも通りのハルカが言うやる気のない声。覇気のない声。
基本的にハルカは彼氏である俺にも全くの容赦がない。言いたいことは言う。そうしないと、本人曰く「身体に毒」だそうだ。

「それにしても、魔王城だから仕方ないけどさ。蜘蛛の巣とか壊れたシャンデリアとか割れた窓はないでしょ。ちゃんと掃除しろよ」

魔王として初めにしていることは掃除だった。
だが、仕方ない。部下とかに命じたところ、これで十分だと言うから、掃除道具を持ってこされて魔王自らの掃除している。

「魔王様。掃除など他のものがやります。自ら、やられることでは」

「さっき、掃除しろって命じたらこの状態でちゃんと掃除したとかいうからだろ。本当に使えないな」

「・・・・・・すいません。魔王様に舐めた口を聞いた輩はきちんと私が自ら掃除してきますので」

「そんな事しなくていいから、申し訳なく思うなら手伝え。あと、城の修理を急がせろ。こんな劣悪な環境我慢出来ない。ダニ一つ残らず、掃除しろ。いいな」

「分かりました。全軍に通達いたします」

きっと偉い立場であろう悪魔が俺が怒ると、顔色変えて部屋から出て行った。

「それにしても、さっきの子は俺好みかもな・・・・・・・・・・・・すいません。嘘です。浮気じゃありません」

何となく思ったことを口にしてしまったが、何故かハルカの顔が頭に浮かんだので全力でとりあえず謝った。

ハルカはのほほんとした顔でゆるふわ系。勿論、大好き。愛してる。結婚したいと思っている。
だが、俺の顔の好みはどちらかと言えばさっきの子みたいなクールお姉さま系かもしれない。あくまで、好みの顔の話。
・・・・・・オレ、ウワキシナイヨ

「それにしても汚い。一層の事、近くの王国でも占領するのが早くね? きっとメイドたちが綺麗に掃除しているだろうし。俺、魔王だからな」

善は急げだ。
俺は頭の中に浮かぶゲームコマンドからフライの魔法を選択する。
やり方は魔王として目覚めてから自然と理解していた。

4メートルもの巨体が宙に浮き上がる。
あとは、思いのまま。行きたい方向に行くと思うだけで、勝手に進む。
やたらと天井が高いおかげで、室内でも自由に飛べる。
初めは苦労するが、数分のうちに空を飛ぶ感覚にも慣れた。

「では、行ってくるぞ」

いつもの習慣で部屋には俺しかいないのに、出かけてくると一声かけた。

壊れた窓を突き破り、外に出る。
城の周りは森に囲まれており、それらを包み込むように山脈が取り囲む形になっている。
冒険者からしたらかなり攻めにくい地形になってる。

それからも高度を上げ、どんどん加速していく。トップスピードは 時速100キロくらい。高度を上げすぎたせいか、周りの景色が変わらないのでスピードを出してもあまりそれを感じない。
景色は山脈を超えると、またしても森。そして、ぼちぼちいくつか村があり、街がありを繰り返しているうちに20メートルの巨大な外壁が守る豪華な城を発見した。

早速、俺は減速してから、壁の入り口のようなところに降りた。
初めてだが、やり方としては頭で降りようと思うとほぼオートパイロットで着地した。

門番の男にでも話しかけるかと思ったが、何人かいたはずの商人たちは荷車を捨て、馬で逃走。
城の門番もがくがくと震えながらも槍を構えて好戦的な姿勢をとっている。

「…………少し落ち着け。何もいきなり襲おって訳じゃ…………」

「魔王め。何故こんなところにいるんだ?」

城の兵士たちや冒険者がぞろぞろ出てきて話し合いが出来る状況じゃない。
そもそも、自分が魔王であることをすっかり忘れていた。

「やれ。魔王ルシファーを倒すのだ」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

兵士や冒険者が一斉に襲ってきた。こちらはまだ何もしていないと言うのに。野蛮なのはどっちだと言う話をしても仕方ない。

30人くらいから猛攻を受けている状況。こちらとしてはピンチなはずだが、俺のHPゲージは一ミリも減っていない。確かに、地味に痛いと言うか手にバッタを乗せているような感覚だ。効果音で言うとチッ程度。きっとこのペースだと一生かかっても俺を倒せはしないだろう。

「元々、NPCには期待してなかったしな。当初の予定通りに城をもらっちゃいますか」

頭の中のコマンドからあまり強くなさそうな呪文を探す。このゲームやったことがないので、魔法の種類までは分かるが実際に、それがどんな魔法なのか? 威力はどれくらいか? 効果範囲は?。再使用までの時間は? など分からないことの方がまだまだ現状では多い。

取りあえず、中レベルのに当たる第5段階魔法。カルマ・ガエンを発動してみる。
選択すると、自動で体が動く。今回は何もせず、足元に赤い色で描かれた魔法陣が現れた。そして、魔法陣はどんどん広くなり、冒険者や兵士たちが全力で魔法陣の外へと逃げ始めた。だが、拡大速度の方が断然、早い。そして、魔法が起動した。

ちょうど俺の位置から少し離れた場所から、魔法陣全体に3メートル級の火柱が隙間なく上がる。

「熱い…………まだ、俺は死にたくない」

「こんなところで」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァ」

苦痛の悲鳴が四方八方からから聞こえてくる。それは説明されたゲームのものではなく、明らかに現実味を帯びていた。

魔法が終わると、大地の色は草原から一気に黒い焼け焦げた大地へと変貌していた。
しかし、一番目を引いたのは強烈な臭い。
少し嗅ぐだけでも、吐き気が止まらない。そして、あちらこちらに転がっている焼け焦げた人、人、人だ。

思わず、吐いた。口からはちゃんとゲロが出た。勿論、吐いた後の強烈な口に残るゲロの味。
これはゲームなんかじゃない。現実だ。そう思うには十分だった。

「ゲームじゃないのかよ。なんで本当に人が死ぬんだよ。何なんだよこれは…………」

悪い夢でも見たかのような最悪な気分。
ちょうど城の反対側は馬が一頭だけで走っている姿が見えた。

「さっきのはたまたまだろ。コール・ブラスト・エリミネーション」

適当に第10段階の魔法を撃った。
右手に描かれた黒い魔方陣から黒い圧縮された波動が一直線となり、馬を撃ち抜く。馬は一瞬で名のレベルに分解され跡形もなく消え、魔法はそのまま森を真っ直ぐにどこまでも進む。
今回は魔王を撃つと手が自由に動くので動かすとそれ通りに軌道が曲がり、全てを跡形もなく消し去った。

すると、遥か遠方にさっき飛んできた魔王城が見えた。
それを見た兵士たちは戦う気もなくしたのかその場に倒れこんだ。

これは現実だ。俺は今、あいつらによってネクロマンス・オンラインとそっくりな異世界に魔王として召喚されたんだ。

「俺は…………人を殺したのか」

ゲームではなく現実で人を殺してしまった。
意味もなくたくさんの人を殺してしまった犯罪者になってしまった。こんなんじゃ、もうハルカに顔向けできはしない。
それならば、せめてハルカが俺と同じ思いをしないように世界を征服しよう。
こんな思いをするのは俺だけでいい。ハルカの為なら、俺は世界すら滅ぼして見せる。
俺は修羅の道を行ける

「テレパス起動。配下の諸君。道は作ったぞ。取りあえず、この国を征服する。全軍、俺に付いて来い」

魔法で全軍を呼びつける。そして、

「名も知らぬこの国の諸君。ここは今、この瞬間をもって俺の国となった。脆弱な人間はいらない。滅べ」

魔王らしく宣言する。

「禁呪 ニヴルヘイム」

長広範囲に及び、魔法陣が描かれる。
禁呪と呼ばれる最強呪文。再使用時間には1か月もかかる魔王にしか使えない人類を滅ぼす力。
世界に終焉をもたらす最強の力。
効果範囲の気温は0度以下にまで下がり、すべてが凍って行く。人も森も、鳥もすべたがだ。
そして、この氷は一生溶けることは無い。もうこの地は死んだのだ。
禁呪の力によって。







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