転移魔王の異世界全力征服

一姫結菜

第二話 運命の2人の異世界召喚

俺、ハルキとハルカがいつ出会ったのかと説明するのはかなり定義が難しい。俺の感覚からすれば、物心付いた頃にはいるのが当たり前だった。逆に、今となってもいない時を想像する方が難しい。

親から聞いた話だと、2人は同じ病院で母親同士が同じ病室で殆ど同じような時間に生まれたそうだ。
そもそも、母親同士が小さい頃からの幼なじみで親友だったそうだ。
その後も、同じ大学に行き、同じ職場で働いていると言う。結婚相手はそれぞれ何の接点もない相手柄で、結婚してからは互いに仕事を止めて、ほとんど会わなかったらしい。

それが偶然か同じタイミングで子供を授かり同じ病院にたまたま入院したらしい。
そのことを運命だとか言って、二人はそれぞれの旦那を説得して近い家を借りたらしい。
その流れで俺とハルカはその後も家同士が隣りで、親同士が旧知の仲だったことから、一緒に遊ぶ時間が自然と長く、物心ついた時にはいつも一緒にいた。

しかし、恋愛漫画のようにお互いがお互いの気持ちに気が付かないなんで展開もなく、5歳の頃には自然と結婚の約束をして、小学校からは学校中の誰もが知るバカップルとして有名になった。
その時から始まったのだろうか。ハルカはとても可愛かった。彼氏の贔屓目でもなんでもなくだ。
おかげで、俺は男から仲間はずれにあったりすることがかなりあったけど、そんな時には必ずハルカが助けてくれた。
その時からだろうか、「君がいれば、他に何もいらない」と俺が思い始めたのは。

だが、お互いがお互いを縛るようなことはしなかった。それも長く付き合っている理由の一つかもしれない。互いに関心がない訳じゃない処も味噌だ。
ハルカは女子サッカーのJrユースに所属しているバリバリの運動部系。未来の日本代表候補とも呼ばれている期待の星だ。
俺は美術部に所属している。自分で言うのもなんだがいくつも賞を取っていて美術部の星とか顧問から呼ばれている。が、世間から見れば、じめじめ文化部員に過ぎない。
こう見ると完全に共通点がないように見える。
だが、俺とハルカにはある特別な趣味があった。

「ねぇ、聞いてるの?」

放課後の美術室第2準備室に俺とハルカはいた。
元々、部員が少ないのと、賞を何度もとっている期待のエースとのことで普段使っていない部屋を俺専用のアトリエとして、顧問の先生が貸してくれているのだ。
部屋の広さは9畳の長方形で広くはないが、一人で専用に使うには十分である。

「原画作業どこまで進んでいるの?」

「これが恐ろしいほど順調に進んでいて、俺でも危機感を覚えるレベル」

「あのね。締め切りは刻一刻と迫っているのよ。しかも、運悪く私は合宿があって1週間はスクリプトクムの手伝えないんだからね」

「何とかなるでしょ。前回よりは進んでいるしさ」

「前回は切り札インフルエンザを二人して使って2週間も学校を休むことになったんだからね。それに、今月は5月。流石にインフルエンザは使えないでしょ」

「そうなんだよな。でもさ……」

俺は全然進んでいないキャンパスを見る。一応、下書きではゲームのメイン背景で使う中世ヨーロッパにありそうな景色が書かれている。自分でもかなりのクオリティーだとは思う。だが、

「本当に時間がない。こないだテストの勉強忘れて試験挑んだら大半が赤点で大量の補習と課題を受けることになったのは相当な痛手」

「常日頃から勉強してないからいけないのよ。それに私、赤点とりそうなら勉強教えてあげるって言ったよね。こう言う事態は目に見えていたからね」

「だってさ、勉強をしよようと思った時には登校時間の5分前だったんだもん。そもそも、ハルカが原稿を遅らせに、遅らせたのが原因だろうが。そもそも、ほとんど2人だけで同人ゲームを年に二作も作るなんて無理ゲーに近いのに未来のなでしこジャパンのエースなんて呼ばれながら、成績優秀な優等生とか流石に無理があるだろ。そのせいで、俺なんか馬鹿な落ちこぼれなんだぞ」

「それは彼女としてもどうにかしろと言いたいけどね。でも、ハルキだって美術部のエースでしょ。文化省から何枚も賞状をもらっているんでしょ。しかも、こないだ描いた絵が一千万で売れたとかで。そのうえ、コミケでは大量な黒字を出す壁サークルの大人気イラストレーターでしょ。人のこと言えないくらいの経歴じゃない。もう、学歴不要でしょ」

「それはな。でも、お前と一緒に出来るだけいたいし。それに美術部だって大半が原画の背景を描いているだけだし。それを先生が勝手に賞に出したらたまたま入選しただけだしな。一千万円の絵は流石に、俺もビビったわ。申し訳ないから九百万円はどこかに募金したけどね。そんなに金があったところで人を狂わせるだけだしな」

「そこらへんの無欲なところがハルキの好きなところなんだよね。まぁ、私の好感度は生まれてからずっとマックスだけどね」

笑顔でハルカにそう言われるだけで俺は十分、幸せだと思う。だからこそ、金は必要最低限以外は稼いでもすぐにどこかの団体に寄付してしまう。金は災いの元だと知っているからだ。

「でも、私の好感度だけじゃ原画は一枚も仕上がらないけどね。取りあえず、コンクール用兼、メイン背景を仕上げるのが先決かな。私も、練習あるけど合間に、ゲームで使えような背景の写真とか集めているから。音楽の方の対応も私がするね。まぁ、あっちはプロだからね。シナリオ原稿送ったら、喜んで創作意欲が沸いたとかで結構なり量の音声データが送られてきてたよ。それに今回は5作目として、声優さんにも声当ててもらうことになっているからね。もはや、同人の領域を超えている感は若干あるけどね。そこらへんの仕事も私がやってあげるから。ハルキはまずは絵を描いて」

「了解。まぁ、何とかするよ。結構、俺たち落としたことないんだしな」

「そうね。私達、オラシオンならやれる」

「本音では次回からは年一くらいがいいんだけどな。どうせ、俺ら営利目的も出もない趣味だしな」

「これまでの会話が台無しだよ。まぁ、ともかく今日は帰りましょ。もう8時だし、強制帰宅時間だからね。帰り、ファミレスでも寄って行く?」

「それいいな。今日、俺の家晩飯無いからな。たまには恋人らしいことでもするか」

俺は素早く帰宅準備を終えると、ハルキと手をつないで校舎から出た。
俺たち、2人は昔からの習慣でこうして手を自然とつないでいる。が、それをかなりの確率で冷やかされたりする。でも、そんなことも2人は慣れた。

しばらく無駄な話を楽しく歩いていると突然、不思議な感覚が全身を襲った。まるで、今にも宙に浮きそうな浮遊感だ。

「おい、ハルカ」

ハルカの方を見ると、同じく不安そうな顔をしている。

「ねぇ、これなんなの」

「分からない」

突然、俺の足元に召喚陣が描かれた。見ると、ハルカの足元にも同様なものが描かれていた。

「まさか、異世界召喚だと」

「そうみたいね。でも、大丈夫。私とハルキが一緒ならきっと何処でもやっていける。そっちで会いましょう」

無理している感が若干感じられる自信満々のハルカの台詞に異世界召喚をこれからされると思い不安だったが安心した。きっと、どんな過酷な世界であろうともハルカと二人でならやっていける。俺はそん底、そう思った。


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