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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

それぞれが決めたもの

太陽が一日の役目を終え、赤く染まり沈んでゆく。照明が少ない部屋の窓から赤い光が差し込み、手元を照らす。

「ん?もう夕方か」

読んでいた本から目を離し、長時間の読書で凝り固まった体を動かす。ポキポキという音が気持ちいい。

弥一がいるのは王都中心街から少し離れたところにあるアーセラム聖堂王国王立図書館だ。収納されている本の総数は100万冊以上にも及び、地下には数百メートル下まで本棚がらせん状に並んでおり、圧巻の一言。

弥一はここに散歩がてら寄ったのだが、つい読書夢中になってしまった。

んん~っ!、と体を動かしていると、机のスマホからブーブーとバイブ音がし、画面が明るくなる。画面を見るとセナからのラインだ。

『ユノちゃんが待ってるから早く帰ってきてね。』
『今日の晩御飯はカレーだよ♫』
『好きだよ♡』

「はは、まったく」

愛いっぱいの一文に、弥一は照れ臭そうに頬をかく。とりあえず『わかった、今から帰る』『俺もだ』と送る。

「さて、帰るとす......っ!」

席を立とうとして背後に微弱な気配を感じる。ごくわずかなもので普通は気づかないだろう。魔術師である弥一だから気づくことができた見事な気配の隠蔽だ。

後ろを振り向かないまま、青のジャケットの中に手を伸ばしレルバーホークのグリップを握る。

「......誰だ」

弥一が声をかけると、コッコッとブーツの足音が聞こえる。そして出てきたのは、

「私だよ、日伊月君」

「.....!ヴィディルさん!?」

アーセラム聖堂王国国王ヴィディル・バース・アーセラム、その人だった。黒い地味な外套を羽織り、護衛も連れづに一人でいることから、お忍びで来ているのだろう。

ヴィディルは弥一の隣に座ると持っているスマホが目に入る。

「ははは、お熱いことで」

「あ、あはははは....」

顔を真っ赤にして頭を掻くと、ヴィディルが懐からスマホを取り出す。

ヴィディルのスマホは弥一が作って渡したもので、クラスメイトのスマホを改造した時に、非常用として渡したのだ。弥一たちのスマホほどいろいろなことができるわけではないが、ラインや電話などはできる。

そうしてヴィディルがスマホの画面を見せると、そこにはラインで弥一とセナと同じように、ヴィディルとその妻のやり取りがあった。内容は同じようなもの。

「うれしいのだが、どうも恥ずかしいものでね」

「わかりますよその気持ち」

二人そろって恥ずかしそうに頭を掻く。しばらく談笑をした後、そういえばと弥一が口を開く。

「そういえばヴィディルさん、どうしてここへ?」

「君に用事があってね」

「え?俺にですか?」

「世界六大迷宮についてだよ」

「.....!」

世界六大迷宮。20年前に現れた世界中に散らばるすべての迷宮の中でも超高難易度な六つの迷宮のことで、その正体は、5年前行方不明になり死んだと思われていた弥一の父親、日伊月甲明が手掛けた迷宮だ。

それぞれの迷宮の最深部では甲明が作っ魔導人形が守っており、地下には甲明が設計した【世界を渡る船】の部品が置かれている。

今の弥一の目標はすべての迷宮を突破し、【世界を渡る船】を作り、甲明を探すこにある。

「いったい何を知ってるんですか?」
「うむ、これを見てくれ」

そう言ってヴィディルが胸が元から取り出したのは一枚の封筒。表にも裏にも何も書いておらず、中には一枚の手紙が。

「これは?」
「それは世界大迷宮について書かれた手紙だよ。二十年前、王宮に届けられたものだ」
「ーーー!!」

その言葉に弥一は絶句する。二十年前に届けられた手紙、それは甲明の手紙に他ならない。

「.....開けても?」

「ああ。迷宮の製作者が君の父親であるのなら、これは君が父親を探す手がかりになるかもしれない」

渡された手紙に手が微かに震えるのを感じる。これまで二つの迷宮を攻略してきたが、甲明を探す手掛かりになるようなものは見つからなかった。もしかしたらこれが手掛かりになるかもしれないと思うと、心臓が鳴る。

そして手紙を手に取り、中を読む。そこには、こう書かれていた。

『世界に散らばる迷宮を攻略し、この世界の可能性を示せ。そしてどうか財宝が良き心の持ち主に渡らんことを』

手紙の内容はこのたった二行だけだった。

「なんだこれ。財宝は『世界を渡る船』の事だとわかるが.......世界の可能性を示せ?」

手紙の内容に弥一は困惑する。この手紙でわかることといえば、世界中に五つ迷宮があるということと、迷宮に財宝があるということ。甲明の手掛かりになりそうにない。

「弥一くんでも意味はわからないかい?」
「はい、世界の可能性を示せっていう部分がいまいち。一体何に示すんだ?」

頭を「うーん」とひねり考えるが、答えがわからない。なんらかの魔術がかけられてる可能性もあるので、手紙を【解析眼】で見てみるが、なにも反応がない。

「ダメだ。全く反応がない」
「となるとやはり意味は分からずじまいか」
「すみませんお力になれず」
「なに気にすることはないよ。それにこちらこそ君の力になれずすまない」

お互いに明確な発見が見受けられず苦笑いを漏らす。

「でも取り敢えずは大迷宮を全て攻略してみます。そうしたら何かわかるかもしれない」
「そうかい。そうなると次は【コーネリア大迷宮】に挑戦するのかい?」
「はい」

【コーネリア大迷宮】はここ王都から北に行ったところにあるコーネリア王国の近くにある大迷宮だ。

コーネリアはその地域の気候上、年中気温が低い雪の都市だ。そのせいで農作物はあまり育たないが、かわりに機械工学の技術力が高い国でもある。

「もうあと一週間くらいしたら出ようと考えてます。だいぶ準備が手間取りましたからね」

そう、弥一たちが王都から旅立たなかったのは何も迷宮攻略をサボっていたわけではない。マイホームで次の旅に備えて準備していたのだ。

そんな弥一の言葉に寂しそうに笑うヴィディル。

「君たちがいなくなるとメイが寂しがるな。最近はずっとユノくんとの事ばかり楽しそうに話していたからね」
「ウチもです。明日は何して遊ぼうか、とか楽しそうに話してましたよ。でもスマホのライブカメラがあるんで毎日話はできますよ」
「ふむ、君達の世界には便利なものが多いな」

改めて不思議そうに手元のスマホを見るヴィディル。自分たちからしたらこれくらい当たり前なのだが、電話のような長距離通信の技術がないこの世界にとって、手元の小さな箱で顔を合わせる事ができるなど、本当に不思議な魔法のようなものだ。

とここでヴィディルが顔を上げ、申し訳なさそうな顔で言う。

「ところで弥一君、引き止めた私が言えた立場ではないのだが、」
「はい?」

歯切れの悪いヴィディルの言葉に首を傾げ、

「.......時間。大丈夫かい?」
「.........................」

沈黙の後、まるで錆びれたロボットのような動作で、ギギッと壁時計を見る。そして、

「しまったぁああああああああああーーーーっ!?」











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「た、ただい........」
「パパおそい!!」

夜遊びをしてきた夫のようにビクビクしながら家の扉を開けると、最初に飛び込んできたには、愛娘の鋭い一喝だった。

頬っぺたをリスのようにいっぱいに膨れさせ、「むー!」と唇を尖らせる。両手を胸の前で組み、いかにも「怒ってます!」といった態度だ。

「す、すまん。ついヴィディルさん、メイのお父さんと長話してたもんで」
「む〜!!」

申し訳なさそうに謝る弥一だが、お姫様はご立腹らしい。なので弥一は最終兵器を持ち出すことにした。

「お詫びに美味しいケーキ買ってきたぞ」
「ーー!!けーき!?」

ケーキと聞いて表情をパァッと輝かせるユノ。これは帰る際に、交渉の材料にと途中のケーキ屋さんで購入したもので、どうやら効果抜群のようだ。

「ダメだよユノちゃん、誤魔化されたら」

そんな時柔らかく諭すような声が響く。声の主を見ると、奥からエプロン姿のセナが出てきた。

「ケーキで誤魔化されたらダメだよ。パパが遅れてきたのが悪いんだから」
「あっ!もうだまされない!」
「ぐっ........!」

セナに諭されハッとなって再び腕を組み「むー!」とする。しかしその目はケーキの箱に向かっている。

そして最終兵器が失敗に終わり呻く弥一。恨めしげにセナを見ると、ニコニコとした表情で「うんうん」と頷き、ユノと同じように胸の前で腕を組む。

完全にセナの術中に嵌まった弥一。夫の行動パターンなど、妻には全てお見通しなのだ。

「降参だ、ケーキで誤魔化そうとして申し訳ありません」

両手を上げて降参の意思を示す。するとユノが、怒った態度から一変、嬉しそうな笑顔を浮かべセナを見る。セナも「やったね」と微笑むと頷く。

それを見たユノが頷いて、期待の眼差しで弥一を見る。

「じゃあパパ!おねがいきいてくれる?」
「ああ、なんでも聞くぞ。それで、お願いってのは?」

喜びの表情のユノに弥一が勝てるわけがない。もちろん、ユノの願いを弥一が断ることなどないのだが。

「えっとね、みんなでいっしょにおふろにはいって、いっしょにねよ!」
「そんなことでいいのか?まぁもちろんいいぞ!」
「パパだいすき!」

そう言ってユノは両手を上げ弥一の胸に飛び込み、喜びを全身で表現する。受け止めた弥一は頬をすりすりしてくるユノの頭を優しく撫でる。そこで、ふと気づく。

「なぁ、ユノ。『みんな一緒』ってもしかして、エルもか?」
「?そうだよ?」

弥一の言葉に純真無垢な表情で返してくるユノ。その発言からしまった!と後悔するが遅い。

「.......だめ?」
「そ、そんなことないぞ!そうだな、みんなで入るか!」
「うん!」
「じゃあ、これエルに持って行ってくれ。あとでみんなで食べよう」
「けーき!」

ケーキを渡すと、ユノがトコトコと小走りにリビングに消えていく。

『エルおねぇちゃん!パパがけーきかってきてくれた!』
『あら、良かったですね。ではケーキに合うお紅茶を用意しましょうか』
『うん!あとね、ママといっしょにおふろはいろ!』
『ええ、いいですよ』
『パパもね!』
『マスターも!?』

リビングからそんな会話が聞こえてくる。

弥一はその場で振り返る。そこには微笑むセナが。

「......セナの仕業か」
「ふふ、うん。でも弥一が悪いんだよ?早く帰ってきてって言ったのに」
「その、すまん。次からは注意するよ」
「うん、でも、まだ許してあげない」

艶やかな笑みで弥一に近づくと、胸板に手を添え、顔を近づける。その瞳は熱く、期待と共に潤んでいる。

弥一はその深く綺麗な青の瞳に思わず胸が高鳴る。湧き上がる衝動を抑えるように、右手をそっとセナの頬に当てる。

セナはその手に擦り寄り、手を重ねる。そして熱を帯びた眼差しで弥一を見上げる。

「私のお願いも聞いてくれる?」
「当たり前だろ?それで、何がいいんだ?」
「もう、わかってるくせに......んっ」

少し背伸びをして弥一の唇にキスをする。しばらく無言の時間が続き、合図もなくそっと離れる。

「おかえりなさい」
「ただいま」

いつもの挨拶を交わしお互いに微笑む。そして再び見つめ合うと、弥一はセナを抱きしめセナも弥一の背中に手をまわす。

「んっ、んちゅ.....はむっ、んっんっ、......んはぁ、んちゅ、んんっ........んぁ、」

脳髄が痺れるよな快楽が二人を後押しし、玄関ということも忘れ互いに激しく求めあう。口内で濃厚に舌を絡ませ、唾液の交換をする。二人の間で淫らな水音が響く。

二人が離れても、二人の口は銀の糸で繋がったまま。快楽による恥じらいと息ができなかったからか、セナの顔は赤く、目がトロンと潤んでいる。

弥一は今すぐ押し倒したい衝動に駆られるが、そこはグッと我慢する。代わりに、

「続きはあとでな」
「ひゃんっ!」

セナの耳元で囁き、その可愛らしい小さな耳を甘噛みする。突然のことに、セナは声を上げ体がビクンッと跳ね、そのまま弥一にしなだれかかる。

セナは弥一の腕の中から口を尖らせ、抗議の眼差しで見るが、弥一が頭を撫でると目を細め気持ちよさそうにする。

「さ、早く飯を食おう。腹減って死にそうだ」
「きゃっ!」

セナの膝裏と背中に手を回し、重さを感じさせない動作でヒョイっとお姫様抱っこで抱き上げる。

「は、はずかしい、降ろして.......!」
「いいじゃないか、さ!飯にしよう!」
「もう!」

恥ずかしがるセナをお姫様抱っこしてリビングに向かう。すると案の定ユノとエルに見られさらに顔を真っ赤にする。弥一なりの軽い意趣返しなのだ。

「ママがタコさんみたいに赤くなってる!」
「み、見ないでぇ〜〜!!」



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あれからしばらく、食事と風呂を終えた四人はリビングのソファに座っていた。

風呂場ではエルが恥ずかしがったりなどがあったが、なんとか無事に終えた。

「さて、それじゃあ始めるか」

そう切り出して弥一は部屋の電気を消す。そして手元のタブレット、【解析器】の画面を触ると、テーブルの横の壁に画面が映し出される。

そこにはアーセラム聖堂王国を中心とした周辺の地図が映し出されている。

「一週間後、俺たちはこの街から出発し、ここから北に10日ほど進んだところにある【技術大国コーネリア】に向かう。そしてその近くにある【コーネリア大迷宮】を攻略する」
「.....メイちゃんとはあえないの.......?」

旅立つと聞いてユノが寂しそうに呟く。せっかくできた友どちと別れるのが辛いのだろう、目に見えて落ち込む。

弥一はユノの前でしゃがみ笑顔で優しく頭を撫でる。

「大丈夫だ。別に一生のお別れってわけでもないんだし。この迷宮攻略が終われば帰ってくるから」
「......うん」
「なら、明日はウチでお泊まり会でもするか!沢山遊んで来い!」
「いいの!?」
「もちろんさ!しっかり遊ぶといい」
「うん!」

寂しさを紛らわせればと思うと、ユノは嬉しそうにはしゃいでいる。ユノの問題が解決したところで旅の説明の続きを始める。

「さて、続きを......」

とそのタイミングで玄関のチャイムが鳴る。現在は十時を回っている。こんな時間での訪問となると、人物は絞られてくる。

「はーい」

呑気に返事して玄関の鍵を開ける。そしてそこにいたのは

「こんばんは、やいくん」
「よっ!弥一!」
「遅くにごめんね」
「こんばんは」
「四人とも、どうしたんだ?」

厚手の外套を被り、やってきたのは凛緒、健、彩、雄也の三人だ。取り敢えず中に入ってもらい、リビングへ通す。

「いらっしゃいませ凛緒様、健様、彩様、雄也様。外は冷えたでしょう、今飲み物をお出しします」
「あっ、ありがとうございます、エルさん」
「むっ、凛緒.....と健と彩、雄也。どうしたの?」
「こんばんはセナ、ちょっと野暮用でね」
「こんばんわ!」
「こんばんわユノちゃん。なんだか嬉しそうね、何かいいことでもあったの?」
「うん!あのねパパがね......」

リビングに入るなり、皆思い思いに話し出す。セナと凛緒はバチバチと火花を散らしながらも同じソファーに座り、ユノは彩にお泊まり会のことを話しながら、彩の側に行く。彩の方もユノの話を楽しそうに聞きながら、ユノを抱きかかえて座る。

健と雄也は弥一の横に座り、やがてエルが暖かい紅茶を持ってきてみんなで一息つくと、弥一が切り出す。

「それで、こんな時間に一体なんのようだ?わざわざウチまで来なくてもスマホがあるだろうに」
「........やいくんもう旅立つんだって?ヴィディルさんから聞いたよ」
「一ヶ月近く滞在してたからな。それそろ次の迷宮に向かわないと」
「その旅に私達も連れて行ってくれない?」
「え?」

突然の申し出に困惑で返す。その反応を見越していたのか、雄也が言ってくる。

「迷宮を攻略してもっと力をつけたいんだ。前回の闘いでわかった、魔王軍は今の僕達の力じゃ倒せないって」
「それで大迷宮か」
「うん」

雄也はこの間の魔王軍の襲撃で魔王軍六属との力の差を感じて悩んでいたのだ。英雄という強力な力を持ってしても、軽くあしらわれたこと。自分の全力でも魔王軍六属にも魔王にも届かないのだと。だから大迷宮を攻略することで、さらに自分の力を高めようというのだ。

「俺も頼む弥一。無様に何もできず何かを失うのが嫌なんだ」
「健....」

健のその言葉に、弥一は自分を重ねる。自分も大切な何かを失うのが怖いから戦い、力をつけてきた。今の健の言葉は弥一の戦う理由と同じなのだ。

そして理由が同じだからこそ、弥一は深く、その真意を理解することができた。

「.....わかった。そういうことなら次の大迷宮攻略ついてくればいい」
「サンキュ弥一」
「まったく、困った親友を持ったもんだな」

苦笑いな弥一は差し出された健の拳に拳を当てて笑う。それを見て雄也と凛緒、彩も安心したように息をつく。

「でもいいのか雄也?健たちはともかく勇者最強の英雄であるお前が国を離れても。国のお偉いさん方が黙っていないだろ?」
「勇者最強なのはそっちだけどね。ともかくそれは大丈夫だったよ。確かに結構言われたけどヴィディルさんが一言言ったら『いえ、どうぞ行ってらしゃいませ!!』って簡単に承諾してくれた」
「なるほど脅迫か.....」

その時の大臣たちはそれはもう青春ドラマのような爽やかな笑顔と汗で雄也を送り出した。ただしかく汗は冷や汗だが。

それはともかく、こうして雄也たちが次の迷宮攻略に加わることが決定した。セナと凛緒は軽く揉めていたので、今後が思いやられる弥一だった。









それからしばらくし、時間も遅いので雄也たちは王宮に帰り、弥一たちも寝ることにした。今日はユノの希望とあって4人全員での就寝だ。

「エル、明日からヘカートの改装と点検を行うから手伝ってくれ。健たちが来るとなると、外付けの台車も必要になるからな」
「わかりましたマスター。格納庫の整備用ゴーレムもいくつか回します」
「頼む」
「ねぇママ、あしたメイちゃんといけにおさんぽにいきたい!」
「じゃああしたはお弁当持っていこうね。朝一緒におにぎり作る?」
「つくるー!」

といってもすぐに寝るわけでなく、弥一とエルは並んでパソコンとタブレットとにらめっこして、ヘカートの改装を設計していき、一足先にユノとセナはベットに入り、明日の予定を楽しく立てている。

しばらくするとユノとセナの息遣いが聞こえてくる。抱き合うようにして仲良く眠る二人を見て、弥一とエルは微笑むと、そろそろ自分たちも眠るか、とベットに入る。

「そういえばマスター。ひとつ言い忘れていたのですが」
「ん?なんだ?」

唐突に切り出してきたエルに切り返すと、エルはこっちを向いて言ってくる。

「実は迷宮は内部がそれぞれ全く趣旨の違う内部構造をとっているそうなのです」
「なに?でも【グリノア大迷宮】と【フェルセン大迷宮】はまったく同じような構造だったぞ?」
「【グリノア大迷宮】はそもそも本来の大迷宮ではないので。ほかの大迷宮を作るための試作品、と甲明様はおっしゃっていました。【フェルセン大迷宮】はいわゆる『最初の迷宮』であり、内部構造は【グリノア大迷宮】をもとに作ったそうです」
「つまり俺は試作品の迷宮で死にかけたわけか.....」

【グリノア大迷宮】最深部の魔導人形との戦いを思い出して乾いた笑みを浮かべる。爆発の中を突っ走った記憶がよみがえってくる。もっともそれを作戦立案したのは自分だが、今思うとだいぶ無茶苦茶な作戦である。

「しかし、迷宮の構造が毎回異なるとなると、次の【コーネリア大迷宮】はどんな構造なんだ?」
「すみません。私は【フェルセン大迷宮】について教えられていませんので。なんでも『知らないほうがワクワクすんだろ!』とおっしゃっていましたよ?」
「何考えてんだ父さん.......」

父親のあまりにもフリーダムな考えに弥一は頭を痛める。とはいえ、毎回大迷宮は環境が異なるということは分かったのでそれはそれでいろいろと対策を考えるとしよう。

「それにしても、父さんはなんで大迷宮に『世界を渡る船』なんてものを収めたんだ.....?それに、世界にいったい何を示せば....」

手紙の内容を思い出して一人呟く弥一。

結局その日は答えが出ることはなかった。




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