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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

魔術師の従者は無双する

暗闇に奔る一条の銀線。銀線の先には針が付けられており、針は虎の魔物の目に突き刺さる。

『ゴァアアアアアア!!』

針の痛みに悶絶する魔物。しかしその瞬間、ワイヤーから電撃が伝わり脳髄に伝わると、魔物はそのまま地に沈んだ。

エルはワイヤーを引き戻して、再びアクセルを回す。ウォオオオオン!!と音を立て走る黒いバイクは戦場を自由に駆け回り、魔物を撹乱して周る。

「意外にも数が多いですね。武器は足りるでしょうか?」

サブマシンガンを構え、走りながら弾丸を魔物の集団に無差別に撒き散らす。身体中蜂の巣になった魔物が次々と倒れていく。だが、弾丸が通ら無い魔物も複数おり、そういった魔物が追いかけてくる。

「《展開・光滅爆撃》!!」

黄色の宝石を背後に投げて、詠唱する。宝石が光り、エルの背後に十五の小型魔術陣が発生する。

そして次の瞬間、魔術陣から光のレーザーが無数に放たれ、背後から追いかけてくる魔物の集団に着弾。地面を抉り、土煙が舞うと共に魔物の悲鳴が聞こえる。

「宝石は、あと五つ。少し厳しいかもしれませんね。元々、多数対一の戦いはあまり得意ではないですし」

エルの得意分野は暗殺や諜報で、多数対一の戦いは得意ではない。確かに現代兵器は強力だが、弾丸などの制限がある。敵がその数を上回る数であった場合、こちらの武器が無くなるのは時間の問題だ。

残りの戦力を考えていると、背後の上空から、鷹の魔物が襲い掛かる。直ぐさま接近を察知したエルは、振り向きざまに鋭く右腕を振るう。

その右腕の先から、しゅぱっ、と空気を裂いて飛ぶ無数のワイヤー。それが鷹に縦横無尽に走りーーー

「焼けなさい」

エルの義手から、超高熱が発生しワイヤーを直ぐさま伝走る。

刹那ーー鷹の魔物が、超高熱でバラバラに焼き切られる。

「全く、人が考え事をしている時に来るなんて無粋です」

はぁ、と溜息をつくエル。しかし、休憩する間も無く、次の魔物が接近してくる。

『ゴァアアアアアア!!』

エルの正面から巨大な亀の魔物が走ってくる。その巨大な図体に似合わず、移動速度は意外と速い。

「鬱陶しいですね」

押し潰さんとばかりに迫ってくる亀を見て、エルは更にアクセルを蒸し加速する。そして両者が衝突する直前、

「ふっ!」

ヴァイツァーが地面の岩を乗り越え大きくバウンドする。それと同時にエルはヴァイツァーの前輪を上げて、亀の頭上に乗り上げ、そのまま甲羅の上を疾走する。

そして甲羅の頂点でジャンプ。空中でバックフリップの状態で、エルは両手にサブマシンガンを構える。

世界が逆さまの中、エルは引き金を引く。

バババババババババババッ!!

夜闇を切り裂無数の線条は、辺り一帯魔物を貫く。雨あられと降る銃弾に、魔物は逃げる暇もなく蹂躙され、辺り一帯が赤く染まる。

やがて世界が戻り、ヴァイツァーが二、三回バウンドすると、地面に跡をつけながら止まる。

自分を踏み台にされた亀は、すぐさま振り向き、エルに突撃してくる。

「だから、鬱陶しいと言ったでしょう」

そういったエルは、手に取った宝石に魔力を注ぐ。

瞬間、亀の口内が赤く発光したかと思うと、頭部が爆発する。

爆炎に呑まれた頭部は、跡形も無くなり絶命した。

「やっと片付きました」

エルは亀の頭部を超える際に、亀の口内に爆発の魔術が刻まれた刻印宝石を投げ込んでいて、遠隔で爆破したのだ。

辺り一帯に魔物は無い。さっきまで空を埋め尽くさんだかりいた飛行型魔物も、今では数えるほどしか確認できない。

はてどこに行った?、と思っていると、

『オォオオオオオオーーーンッ!!』

少し遠くの方から狼の猛々しい遠吠えが聞こえる。その声から分かる、力強さは普通の魔物ではない。そして、その上空には無数の紫電が煌めいている。

「どうやら飛行型はユノ様とサニアが終わらせたようですね。では、私は取り零しを処理しますか」

エルは、【グレーク】を取り出し、弾倉を装填する。

「【身体強化】は無くても良さそうですね」

レベルが上がった事で、グレークの反動を身体強化無しで、耐えることが出来ると判断し、スコープを覗き込み、空高くを飛んでいる魔物に標的を合わせる。

ズドォン!と重低音な音とマズルフラッシュが炸裂。プラズマの一条の閃光は、闇を切り裂き、魔物の上部を吹き飛ばす。

命中した弾丸の威力に、魔物の腹部が引き千切られ、声を発すること無く絶命を向かえる。

「次っ」

スコープの倍率を下げ、広範囲を視認し、次のターゲットに狙いを定め、一条の閃光を放つ。

「次っ」

閃光が貫き、魔物の部位を吹き飛ばす。頭が爆ぜ、腹部が引き千切られ、上部が消し飛ぶ。

「次っ!」

空薬莢を排出し、直ぐさま次弾を装填、そして、放つ。しばらく戦場には、炸裂音と空薬莢の音だけが響く。

エルの周りには、空薬莢が散らばり、排出され宙を舞った空薬莢が、月明かりに照らされ輝く。

空薬莢の数は、撃ち落とした魔物の数。エルは遥か上空の魔物を一発も外すこと無く、撃ち落としているのだ。

時間が経つにつれ空薬莢の数が、十、二十、と増えていく。

「これで最後です」

エルはスコープ越しに最後のターゲットを視認する。倍率を上げ、狙いを定めると、引き金を引いた。

最後の魔物が撃ち落とされ、空に魔物がいなくなった。

エルは周囲を探査する。所々に魔物はいるが、数は少数だ。これくらいなら問題無く対処出来るだろう。

「取り敢えずユノ様と合流して、周囲の残党を殲滅。その後セナ様のところに合流ですね」

ヴァイツァーに跨がり、ユノに合流しようとしたその瞬間、【気配探知】に急速に接近してくる反応が出現した。

「ーーーッ!速い!!」

反応はこちらに凄い勢いで近づいてくる。エルは即座にヴァイツァーを走らせると、先程いた地点に巨大な何かが墜落してくる。

土煙が上がり、エルは拳銃を油断無く土煙に向けて構える。

緊迫した空気の中、土煙が晴れ、姿が見える。

「な!これは!」

驚くエルの前に現れたのは、体長五メートル程の生物。上半身が鷲、下半身が獅子。そう、グリフォンだった。

「まさかこんなところで、珍しい幻獣種に出会えるとは。しかし、厄介な事になりましたね」

グリフォンは綺麗な山脈の山頂などで、極稀に見ることのできる幻獣種と呼ばれるモンスターだ。

グリフォンの気性は普段は温厚なのだが、繁殖期に入ったグリフォンは、栄養を蓄える為に、山脈を降り、目につく生き物を片っ端から食いつくす。

繁殖能力が低く、個体数が少ない為、グリフォンによる被害は数年に一度なのだが、その度の被害は甚大だ。普通は騎士団や冒険者などの師団単位で対処するモンスターである。

『キュァアアアアアアアアーーー!!』

グリフォンは天高く鳴くと、凶悪な鷹の爪を振り下ろしてくる。エルはヴァイツァーを走らせ、その場から離脱する。

「ふっ!」

爪を回避すると同時に、鋭く右腕を振り、ワイヤー付きナイフを投擲する。しかしグリフォンは、その一撃を後ろに飛んで回避する。

その隙にエルはヴァイツァーを走らせる。グリフォンは、もう一度鳴いた後エルを追うべく駆け出す。そしてそのまま走りーーー空を駆ける・・・・・

足で空を踏み締め、駆ける。空を飛ぶのでは無く、まるで地面の上を走るように駆けてエルを追う。

グリフォンは、空を飛ぶのでは無く、空を踏み締めて駆けるモンスターだ。翼は風やバランスなどを調整する器官で、たとえ羽を切断されても、空を駆けることが出来る。

そのスピードは最高で、時速三百キロ。新幹線以上のスピードで、空を自在に動くことが出来るのだ。

「くっ!」

グリフォンはすぐにエルに追いつき、爪を振り下ろしてくる。エルはヴァイツァーを操り、次々と振り下ろされる爪をくちばしを回避する。

「流石にこのままじゃもたないですね」

そういうとエルはハンドルから手を離し、座席に立って後ろを向く。そして、肩に担いだ箱をグリフォンに向ける。

『キュァアアアアアアアア!!』

グリフォンはチャンスだと判断し、突撃してくる。エルは慌てること無く、箱についたスコープを覗き、グリップの引き金を引く。

バシュゥウウウウウーー!!

そんな音と共に箱から出てきたのは、煙の尾を引くミサイル。グリフォンは危険だと判断し、横に避けるが、ミサイルもグリフォンの後を追う。

エルが発射した追尾ミサイルは、ジグザグと避けるグリフォンの後を追う。しかし引き離せないミサイルに、グリフォンはくるっと反転し、火の玉を放つ。

火の玉はミサイルに命中し、ミサイルを撃墜する。そのまま二発目、三発目と撃ち落としていく。

「固有魔法持ちでしたか」

モンスターや魔物の中の一部には、固有の魔法を持つものが存在する。このグリフォンはその固有魔法持ちのグリフォンだったのだ。

ただでさえ厄介なグリフォンが固有魔法持ちと分かって、嫌気が指すエルは、ヴァイツァーを止める。

「でしたらそろそろ本気を出しましょう」

突然止まったエルに、グリフォンは突っ込む。しかし、エルはグリフォン目掛けて爆裂の宝石を投げ、至近距離で爆発させる。

爆ぜる紅蓮にグリフォンは一度距離を取る。その隙にエルは首元から、チェーンに繋がった一つのドックタグのような物を取り出す。

そしてそれを掴み、唱える。

「起動。攻魔武装、【世界樹ユグドラシル】!!」

掴んだ手から翠と銀の輝きの糸が溢れ出し、エルを包む。

それはまるで、自然が包み込むように。

光が一際輝きを増し、光が晴れるとそこには、今までの装いとは違うエルが佇んでいた。

全身を包むのは翠と銀で構成された、近未来的な騎士のような外装。手足の人工皮膚は無くなり、黒い義手義足に翠と銀の籠手と膝当てが装着されている。

背には、バックパックにはスラスターと翠色の機械の葉のようなものが付いており、そして一メートル位の長方形型の盾が付いている。

攻魔武装【世界樹ユグドラシル】。これはかつて甲明が開発した、エル専用の最終兵器外装。

「装着完了」

エルは手を開けて閉じてを繰り返して、感触を確かめると、上空を旋回しているグリフォンを見つめて、口を開く。

「さぁ、戦闘開始と行きましょう」

そういうとエルは少ししゃがみ、次の瞬間、エルが空へと飛んだ。

緑の粒子に包まれたエルは、一条の線となってグリフォンのすぐ横を通り過ぎる。

『ギュア!』

先程まで地上にいたエルが、次の瞬間にはもの凄いスピードで自分の横を通り過ぎ、最速の空の王者たる自分と互角のスピードに驚愕する。

グリフォンは慌てて後ろを向くと、そこには、月明かりを背景に、緑に包まれたエルが、右手に緑の片刃のブレードを持ち、悠然と微笑んで佇んでいた。それはまるで、"お前など相手にならない"と言っているようで。

『ギュァアアアアアアア!!!』

その姿を見たグリフォンは怒りを覚え、天高く鳴く。通り過ぎる際に右手のブレードを振るっていれば、今頃決着は付いていたのだ。なにせあの時、自分は反応出来ていなかったのだから。

なのに、ブレードを振るわなかった。それは、挑発以外の何者でもない。

そう判断してからのグリフォンの動きは速かった。空を思いっきり踏み締め、一気に飛び出す。それと同時に、エルに向かって火球を放つ。

連続して爆発する火球。合計二十にも及ぶ火球の紅蓮がエルを呑み込む。

爆炎で見えなくなったエルに向かって、グリフォンは両爪を振り下ろす。あれ程の火球を喰らったあとに、グリフォンの鋭い一撃を防ぐことは無理だ。だが、

「この程度ですか」

ガキンッと音が響き、グリフォンの爪が止まる。風のない中、不自然に爆煙が晴れるとそこには、二つの盾がエルの前に存在していた。

バックパックからアームが伸び、盾がエルを守るように展開している。表面には一切の傷はなく、グリフォンの爪を完全に防いでいる。

「【世界樹の盾ユグドラシル・シールド】」

そして盾がグリフォンの爪を押し返すと、盾に守られていたエルが前に出てブレードを振るう。

グリフォンは咄嗟に後ろに飛んで、ブレードを間一髪で防ぐ。

後ろに飛んだグリフォンはそのまま逃走を図ろうとする。だがしかし、それを許すエルではない。

盾からガシュッと音がすると、盾が変化する。盾の先から二つの突起が出てき、そこから銃弾が発射される。

一つの盾から二つの銃弾、計四発の銃弾がグリフォンに殺到する。グリフォンは空を蹴って横に回避したが、避けられなかった一発の銃弾がグリフォンの羽を貫く。

『グェッ!!』

羽から血を流し、グリフォンは苦痛を叫び、空を制する王者としての野生の本能が、痛みに悶えながらもその場から離れる事を優先させる。

死に物狂いで、初動で二百キロ近くのスピードを叩き出し、その場から離れる。

しかしーーー

「ここまでしておいて今更逃すと思いますか?」

バックパックのスラスターを展開し、エルはグリフォンに追走する。グリフォンはまさか、自分の速度に追い付くなんて思ってもみなかったようで、グリフォンは驚愕する。

グリフォンはさらに加速して、エルを振り切ろうとするが、エルは更に加速して後に続く。

夜の闇を、グリフォンとエルが飛び回る。グリフォンは火球を放つが、そのことごとくを盾が防ぐ。

「このままじゃ、らちがあきませんね。一気に畳み掛けるとしましょう」

長くこう着状態のこの状況に、エルは嫌気が差すと、一気に畳み掛ける。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】展開!」

バックパックに付いてた六枚の機械の葉のようなものが、分離パージされ、空中に投げ出される。しかしその直後、葉に緑の紋様が現れ、葉が浮遊しまるで生き物のように素早く動くと、エルの周囲を並走する。

「行きなさい!」

そう命令すると、六枚の葉は俊敏に動き、グリフォンの周囲を囲む。そして葉の先が、一斉にグリフォンの方を向く。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】全機『レーザーモード』、放て!」

エルの号令と共に、葉の先から光のレーザーが発射される。グリフォンは上に跳んで逃げるが、その後を葉が追い、次々とレーザーを放つ。

動く葉の正体。それは【世界樹ユグドラシル】の兵装の一つ、自立稼働ユニット【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】だ。【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】は、合計六枚の葉からなり、様々な攻撃・防御手段として使える。例えば、今の様にレーザーを放つなどだ。

『グェエエエエエエエエッ!!』

避けきる事の出来なかったレーザーが、グリフォンの身体を貫く。グリフォンは足を貫かれ上手く跳ぶことが出来ず、地面に落下していく。

落下の衝撃で、グリフォンの身体の骨がバラバラになり、グリフォンは苦しそうに蠢めく。

「チェックメイトですね」

グリフォンのそばに降り立ったエルが、ブレードの先をグリフォンの眉間に構える。周囲には【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が展開しており、グリフォンに勝ち目は無くなった。

『ギュァアアアアアアーーー!!!!!』

グリフォンが最後の力を振り絞って声を上げる。それはまるで最後の足掻きだと言わんばかりに声を上げ、力尽きた。

「一体何を・・・」

すると突如、遠くの方から魔物の唸り声が響き、地面が揺れる。

「ーーッ!面倒になりましたね」

世界樹ユグドラシル】によって拡張された【気配探知】が、ここに近ずく気配を察知する。その数、300。

「まさか、最後の足掻きに周囲の魔物を呼び寄せるとは」

グリフォンが最後の力を使って魔物を呼び寄せたことに、エルは頭を悩ませる。魔物との接触まで、あと一分。

「限界稼働時間は・・・あと五分ですか」

強力な兵器外装である【世界樹ユグドラシル】は【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】を使った状態だと限界稼働時間が設けられている。その時間は僅か二十分。それ以上の使用は、【世界樹ユグドラシル】自体の損傷に繋がってしまうのだ。

エルは残りの限界稼働時間を確認すると
、もう既に目視でも確認できる位まで接近した魔物の集団を見つめる。四方八方から土煙が迫って来る。

そんな状況の中、エルは悠然と笑みを浮かべて言う。

「そちらから集まって来るとはありがたい。・・・お陰で探す手間が省けます」

エルが演奏者の様に手を薙ぐと、周囲に【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がエルを守る様に回転しながら浮遊するl。そして葉の先は魔物の集団を向いている。

そしてエルは、挙げた手を振り下ろす。

「全機一斉掃射!!」

無数の線条が走る。

世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】から放たれたレーザーは、迫る魔物の集団に着弾し、魔物を貫く。

次々と襲い来るレーザーに前線の魔物は血の海に沈む。魔物はその光景を見て進行を止めると、レーザーの雨が止む。

「とりあえず150近くですね。ということは残り150。余裕ですね」

敵の損害状況を見て、今度は二つ目の外装を起動する。

「【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】展開」

展開を宣言した瞬間、二つの盾がガシュッと変形し、三角柱のような形の剣になる。そしてその剣が両腕のところまで来ると、義手と剣が接続され、剣の刃の部分が緑のブレードに変化する。

世界樹ユグドラシル】兵装の一つ、近接外部兵装【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】は盾と剣が一体化した武装。あらゆる攻撃を防ぎ、あらゆる防御を斬り裂く、攻防一体の兵装だ。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】一番機から三番機、『ソードモード』」

世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】の葉の部分が鋭く変化し、短剣のようになる。

準備が完了したエルは、周囲で警戒する魔物を見据えて、構える。

「これより殲滅を開始します!」

スラスターを点火し、魔物の集団に一直線に突っ込む。

「ふっ!」

魔物の横を通り過ぎる際に、両腕を振るえば魔物の首が二つ飛ぶ。

両腕を魔物に向ければ、ドパン!という音と共に魔物の頭が爆ぜる。

『キシャアアアアアア!!』

蜘蛛の魔物が鋭い足を振り上げエルを突き刺そうとする。

しかしその時には、足を振り下ろす先に『ソードモード』の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が現われ、足を受け止める。

爪と【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が拮抗するがその時、別の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が蜘蛛の魔物に突き刺さり、そのまま身体を引き裂く。

「はっ!」

倒れた蜘蛛の方を見ることなく、別の魔物に斬りかかる。固有魔法による攻撃を、腕を掲げ【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】で防ぎ、【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がレーザーを放つ。

「その程度では、止まりませんよ!」

エルが【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】でXに斬り裂き、『ソードモード』の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が離れた魔物を斬り裂き、『ソードモード』の【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がレーザーで魔物をまとめて貫く。

たった一人の相手に150の魔物が、成す術もなくやられて行く。その時間、僅か三分。

「ふぅ、終わりましたか」

最後の魔物を倒し息を吐くと、辺りは静寂に包まれていた。

あれ程の数の魔物が、今では全て血の海に沈み、動くことはない。

「三分ですか。意外と掛かってしまいましたね。久し振りに使ったので、こんなものでしょうか」

と、エルが【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】を解除しようとした瞬間、エルの背後から何かが襲い掛かる。

エルはスラスターで横に避けると、そこには身体中血塗れのグリフォンが、血走った目でこちらを見ていた。

『ギュァアアアアアアア!!』

「まさかまだ生きていたとは。流石幻獣種なだけはありますね」

感心しているエルに対して、跳ぶことの出来ないグリフォンは、刺し違えてでもという勢いで突撃してくる。

振り下ろされる爪の乱舞を、スラスターでホバリングのように滑らかに危なげなく回避する。右へ左へと身体を半身に捻り、回避出来ない攻撃は、【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】で受け止める。

『グルゥアアアアアア!!』

攻撃が当たらない事に業を煮やしたグリフォンは、最後の大技を放つ。

打ち出された風の刃の嵐は、地面を抉りながらエルに向かい、エルを呑み込む。

強力な幻獣種であるグリフォンの風のまは、さながら台風の如き威力。加え風の内部では、鋭い風の刃がエルを襲う。これだけの大威力。死は明確だ。しかしーーー

嵐の風が徐々におさまる。巻き上げられた土やほこりが晴れると、そこにはグリフォンにとって信じられない事が起きていた。

「【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】『シールドモード』」

エルの周囲に【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】が浮遊し、緑に輝くシールドがエルを守るように円形状に広がっている。

世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】の機能の一つである、『シールドモード』は【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】同士で結界を作り出す機能だ。

シールドが解除されると、限界稼働時間を迎えた【世界樹の葉ユグドラシル・リーフ】がバックパックに収まった。

「【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】解除」

義手と【世界樹の剣ユグドラシル・ソード】の接続が解除され、剣が盾の形に変形し、元に戻る。

兵装を解除したエルは、腰からブレードを引き抜くと、既に立つことも出来ないグリフォンの眉間に切っ先を向け、再び最後の言葉を突き付ける。

「チェックメイト」

取っ手の引き金を引く。すると、ブレードの先から電磁加速した弾丸が発射され、グリフォンの眉間を撃ち抜いた。

グリフォンを倒し、【世界樹ユグドラシル】を使って【気配探知】を行うと、遠くの方にユノの反応はあるが、魔物の反応はない。

「終わりましたね。すぐにユノ様と合流して、セナ様の所に行くとしましょう。と言っても、セナ様なら問題ないと思いますが」

そんな事を言いながら、【世界樹ユグドラシル】を解除すると、エルの周囲を銀と翠の線が包み、眩く光ると、元のメイド服のエルがいる。

ドックタグに戻った【世界樹ユグドラシル】を仕舞い、ヴァイツァーを呼び出すと、サドルにまたがりエンジンを蒸し、ユノの元へ向かう。



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コメント

  • 読み手

    アクセルを蒸すではなく、アクセルを吹かすだと思います!

    3
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