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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

戦場に立つ魔術師

雄也たちが前線でコルトアと戦っている時、後方の古城付近でも激しい戦闘が行われていた。側面から回り込んだ魔物は思いのほか多く、災害級の魔物も複数現れたため苦戦を強いられている。さらには魔物以外にも強力なモンスターも複数混じっている。

『ブフォオオオオオオオオーーー!!!』
体長二メートルはあろうかというほどの猪の魔物が、その大きな牙で貫くべく迫ってくる。猪の質量からは想像できないようなスピードで、一歩踏み出すたびに地面に足跡が残る。そんな強力な一撃が迫る新路上に、クラスメイトの佐野海斗さのかいとが飛び出す。その手には大きな体が丸ごと隠れるほどの巨大な盾が掲げられている。そして海斗はその盾を掲げ、腰を落として構える。

「ふんっ!」

構えた盾と猪の突進が激突する。衝突した瞬間辺りに衝撃が奔り、地面には亀裂が奔る。そして少しの拮抗の後、海斗は猪の突撃を完全に受け止め、押し返す。

「今だ大地!」

「シッ!」

押し返されて猪が怯んだその瞬間、海斗の後方で待機していた大地が飛び出し猪の横を駆け抜ける。駆け抜けた刹那、猪に銀の一線が奔り次の瞬間には胴体と首が切断された。

「大地後ろ!」

「なに!?うおっ!」

大地が後ろを振り返るとそこには骸骨が手に持った錆びついた剣を振り下ろしているところだった。咄嗟に横に転がり振り下ろされた剣を回避する。

「な、なんだあいつ!?骨が動いてる!?」

成人男性ほどの骸骨が『ケカカカ』と笑いながら、振り下ろした剣を肩に担いで大地を見る。その目は暗く深淵のような深い闇で、その中に赤い光が宿っている。

「気をつけろ!そいつはスケルトンだ!斬撃系の攻撃はあまり効果がないぞ!」

「そんな!?うおっ!誰かヘルプ!!」

斬撃系が効かないスケルトンは、剣術師の大地にとっては天敵だ。大地は意外と速いスケルトンの斬撃を刀で捌き、回避しながらひたすら防御に回る。

「どっせい!!」

大地がスケルトンの剣を捌いていると、横から重格闘家の磯部大輔いそべだいすけがをスケルトンに全力の肩タックルをかまし吹き飛ばす。

「大丈夫か大地?」

「助かったぜ、サンキュー大輔」

「それよりあいつまだ起き上がるぞ。骨だが意外と耐久力あるんだな」

重格闘家の攻撃をくらっても立ち上がるスケルトンに大輔は再び構えを取る。

「そんじゃ、あとよろしく!」

「は!?おい!ちょっと待て、くっ!大地覚えてろぉおおおおーーー!!」

スケルトンの相手を大輔に任せて大地は戦略的撤退を図る。その際大輔がなにか叫ぼうとするが、スケルトンが斬りかかってきて悪態をつきながら対峙する。

大地はそんな大輔に感謝しながらその場を離脱し、別の戦いに参戦しに行く。

「大地!!」

「智花!無事か!?」

「うん、ケガはないよ」

途中で智花と合流する。智花は土などで服が汚れてはいるが目立った外傷はないようだ。

「他のみんなは?」

「中島くんと勇美があっちで戦ってる」

そういって智花が指を指した方向を見るとそこでは、巨大な蟻の魔物を相手に二人で挑んでいる中島健斗と近藤勇美がいた。

健斗の職業は槍術師、その手には二メートルほどの巨大な槍を巧みに振り回しながら蟻の注意を引き付けている。そして勇美は軽戦士特有の身軽な動作で、蟻の周囲を素早く動き回り、蟻を短剣出切り刻んでいく。

「健斗!いくぞ!外すんじゃねぇぞ!!」

「うっせー!わかってらぁ!!」

勇美が【加速】スキルを使って高速で動き回り、蟻の足を一斉に切断する。

『グギャヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!』

「オラァア!!」

蟻が足を切られたことでその場から動けなくなった瞬間健斗が鋭い槍の一撃を眉間に突き刺す。脳を貫かれた蟻は少しの間、痙攣をおこした後絶命する。

「お疲れお二人さん」

「おお、健か。どうだったそっちは?」

「こっちはスケルトンが出てきたんで大輔に任せてきた。今頃スケルトンと仲良く楽しく遊んでるだろうよ」

「ハハハ、ひでー奴」

「うるせ」

二人が話していると、奥から勇美が戻ってくる。勇美の方は腕を少し痛めたようだが、智花が治療してなんともないようだ。

「みなさん無事みたいですね」


「うお!?出た!!」

「誰が出たですか!?」

「って木村さんか、脅かさないでくれ」

そういって突然背後からの声に振り向くとそこには全身黒ずくめの衣装を身に纏った美奈が、木にぶら下がって逆さの状態でいた。

大地は【気配感知】のスキルを持っており、さらには剣道で辻かった気配の読みで気配には敏感で、気配感知の能力では英雄の相川と並ぶ実力を持っているのだが、なぜか美奈の気配はいつも読めない。

地球のころから神出鬼没で、壁に耳あり障子に目あり背後に木村あり、と言われていた美奈はこっちに来てからさらにレベルアップしていた。

そんな美奈はよっ、と軽い声とともにくるりと着地すると四人に話しかけてくる。

「木村さん、無事ってのは?」

「他のところでは災害級が出現し、数人のケガ人が出ています。すぐに向かいましょう」

「マジか・・・ならいそごう」

災害級魔物の報告に大地は焦る。生徒たちでは災害級は1パーティーで対応は可能だ、それでも被害が出ているということはそれなりの数の災害級が出ているのだろう。

そして、大地たちは少しの休憩のあとすぐ他のパーティーの助けに入ろうとしたその時、横の林から虎の魔物が飛び出してくる。体表には赤い線、災害級のお出ましだ。

『グォオオオオオオーーーーーーー!!!』

「っ!ここでか。来るぞ!!」

虎の魔物が大きく吠え、ビリビリと空気が震える。大地たちがすぐさま武器を構えると、虎は駆けだす。

「健斗!俺とお前で虎の注意を引き付ける。近藤さんと木村さんはその間に攻撃を!智花はアンデット呼び出して支援を!!」

「「「「了解!!」」」」

健斗と大地が駆けだす。健斗は槍を構えて正面からぶつかりに行き、大地は健斗の横を並走する。

『グワァオ!!』

「ハッ!!」

虎が近づく二人に向けて腕を振り下ろす。大地は一歩先に前に出ると、刀を振り上げ凶悪な爪と拮抗する。

「セアッ!!」

その隙に健斗は鋭く槍を突き出す。突き出した槍の先端は虎の喉に突き刺さり、辺りに血を撒き散らす。

『グォオオオオーーー!!』

虎は痛みに暴れ、無差別に辺りに攻撃した後健斗と大地に向けて憤怒の眼差しを向ける。その瞳には健斗と大地以外映っていない、ゆえに背後からの攻撃に気付けなかった。

「よっと!!」

勇美と美奈が虎の後ろ脚の腱を断ち切る。右足の腱が斬られて後、今度はすぐに左足の方も切断される。両前足を切断されたことで虎は倒れるが、最後の足掻きとでもいうように暴れる。

とそこへ、数匹の狼の魔物が現れる。狼は低くしゃがみ唸るとーーーーー虎に飛び掛かる。

この狼の魔物は智花が魔物の死体を使って操っているものだ。智花の職業である死霊術師は、死体に魂を入れて復活させ操ることができる。もちろんすべての死体を操ることはできず、操ることができるのは死んだ直後の死体だけだ。しかも操ることのできるものにも限界があり、普通は知能の低い魔物やモンスターなどしか操れず、しかも操れるのは大体2,3体だけだ。

しかしチートな死霊術師である智花は、ある程度の強力な魔物を複数操ることができ、時間を掛ければ災害級も操ることができる。

降霊術によって操られた魔物は虎の動けない虎を囲み、一斉に群がり肉を喰らう。最初は災害級の魔物らしく地面に倒れながらも狼を迎撃していたが、次々と襲い掛かる狼に徐々に抵抗が弱くなり最後はのどを噛みちぎられて絶命した。

流石のグロテスクシーンに自分でやっておいて吐きそうになっている智花は、大地に背中をさすられて気分を落ち着ける。

「結構早く片付いたな。よし、他の助けに行くか」

「う、うん、あと途中で魔物を増やしていこう。そうすれば少しでも助けになる」

「よし、できるだけ途中で魔物を狩って智花の戦力を増やしながら行こう」

「おう!わかった!」

「負けないぜ!」

「いや、勝負じゃないですからね?」

どちらが魔物を多く狩れるか勝負し始めた健斗と勇美に美奈が呆れ交じりの声を掛ける。そんな二人を頼り強く思いつつ、大地は先頭で駆けだす。



魔物を狩りながら他のパーティーのところに来ると、そこでは大型の猿、亀、ゴリラの三体の災害級と戦っていた。前線には西原が立ちながら生徒に的確な指示を出しつつ、ナイフや剣で皮膚の柔らかいところを見つけ切り刻んでいく。

そうして大地が見ている間にも、魔物は徐々に弱っていきついに最初に猿の魔物が倒れた。猿の魔物が倒れたあとすぐさま残りの二体に集中する。この調子でいけば倒せるのは時間の問題だろうと判断すると、大地たちは早く終わらせるべく参戦する。

「「【縮地】!!」」

大地と健斗が同時に【縮地】を使い、大地はゴリラに健斗は亀にそれぞれ向かう。ゴリラの方では西原が相手をしていた。

『ウホッ!!』

「ふんっ!」

ゴリラが繰り出す拳を半身でかわし、そのまま前に踏みだして腕の関節に拳を入れる。しかし意外とダメージはなかったようで、ゴリラが腕で西原を薙ぎ払う。

そしてゴリラが腕を振り払うと、そこには西原はいなかった。吹き飛ばされたか!?、と息を呑んだその時、ゴリラの腕の関節から血しぶきが舞う。そしてゴリラの腕の外側には西原がいた。

振り抜かれる寸前、西原はしゃがんで腕を回避しすれ違いざまに関節の筋を切断したのだ。関節を切られたことで右腕が動かなくなったゴリラが、今度は左腕を振る。

「セアッ!!」

大地が素早く飛び込み刀を振る。巨大な爪を刀身が衝突し、ギギギギッと拮抗するが刀の角度をずらして刃で滑らせる。すぐ横を爪が通り過ぎると同時に一歩踏み込んで腕を薙ぐ。

「先生無事ですか!?」

「山崎か、助かった」

『ゴァアアアアアアアア!!!』

「「--ッ!!」」

両腕から血を撒き散らせながら使えない腕をぶんぶん振り回してやけくそ気味に暴れる。大地と西原は後ろに飛びずさる。

「くそっ!めちゃくちゃに暴れやがって!」

「山崎下手に近づくなよ!」

「でも!」

「《孤高に叫ぶ怨嗟・灼熱なる炎で示し・すべてを呑み込む柱となれ》」

大地が抗議の声を上げようとしたその瞬間静かな詠唱が響く。するとゴリラの周囲に灼熱の燃え盛る炎の柱が複数出現し、炎が昇り頭上から炎が襲い掛かる。

炎がゴリラを燃やし、体の端から炭に変えていく。大地は術師を探して後ろを向くと、そこには右手に大きな本を持ち左手をゴリラに向けている後藤浩美がいた。

浩美がパタンと本を閉じる。そして炎が収まりそこには全身が炭になったゴリラがいた。

「助かったぜ後藤さん」

「・・・別に大したことない」

「いいや、お前のおかげで倒せた、ありがとうな後藤」

「・・・いいえそれほどでも」

大地と西原の言葉に浩美は淡々と返していく。あまり感情を表に出さない彼女はいつものように淡々と静かに話すと、魔力回復薬を飲む。

するとほどなくして近くの亀の魔物も討伐されたのか歓声が上がる。

「先生、これからどうしますか?」

「魔物はまだ多くいる、今のうちに休憩して体力を温存しながら戦うんだ。援軍が来るまではまだ時間がかかるらしい。おそらく向かう途中で魔物とでも遭遇してうまくこちらに着けないんだろう」

「ま、マジか。なら今の内に休憩しとかねぇと、さすがに疲れた」

「・・・私も。魔力切れで体がだるい」

「なら二人は休むといい。ここは俺が周りを見ておいてやる」

お言葉に甘えて大地と浩美は近くの岩場に身体を預け、しばし休憩をする。一方西原は徹夜であれだけの戦闘をしていながらも疲労の色は見えない。さすがとしか言いようのない。

少し休憩をしているとほどなく健斗や智花、勇美などのクラスメイトも集まってきた。ケガ人はなく全員無事だったが、全員の顔には疲労が滲み出ている。

そうして全員で休憩を取る。連続の激しい戦闘で張り詰めた緊張の糸が、休憩をすることで緩んだのかホッとため息をつく。

そうしてしばらく安息な時間が続く。しかしそれは長く続かなかった。

「ッ!?全員構えろ!!」

「「「!?」」」

現れた大きな気配に西原が即座に戦闘態勢を取り、それに続き全員武器を構える。

「気配が無くなったと思ったらお前らの仕業か。まさかこんな簡単に俺の魔物がやられるなんてな。まぁ、試作品だったからいいんだが」

そう言って現れたのは頭部には角、背中には羽を生やした男。魔人だ。

「さっきの三体の災害級はお前の仕業か」

「ああ、そうさ。どうだったよ?なかなかだろ?」

そういうと魔人は愉快に笑う。しかし大地たちは笑えない。何故ここに魔人がいるのか。

「ちっ、よく考えれば予想できたな。この魔物の奇襲部隊はお前が操っているわけか」

「半分正解だ。この奇襲部隊は俺が預かってるが、操ってるのはコルトア様だ。俺は俺が作った災害級を見に来たのさ」

西原と魔人の会話で大地たちもその可能性に気付いた。

「さてそれじゃあ最後の試験と行くか。出てこい!エレクマガラ!!こいつらを蹂躙しろ!!」

魔人が叫んだ瞬間地面が大きく揺れたあと隆起し、そこから大き魔物が現れる。

体長は六メートル程で四足歩行の亀の様な生き物だ。背中には岩石や鉱石が混じった甲羅を身に付け、そして顔には鋭く大きな牙が並んでいる。まるで竜のように。

「これが俺の魔物、エレクマガラだ!」

エレクマガラの凶悪な姿に大地たちは震え上がる。今までの災害級がとは雰囲気が違う。いや同じ災害級だが何かが違うのだ。それはおそらく素体となる生き物の違い。

「亀・・・?いや、竜・・・?」

「そうだ、これは竜種の亜種である地竜を素体に使った災害級だ。大変だったぜ、竜を従えるのは」

「竜・・・」

こちらの世界に竜がいる事は知っていた。いつか見て見たいと思ってはいた、しかし今はただこの場から逃げたいと思った。でも体が思うように動かない、凶悪な敵を前に体が動かないのだ。

「行け」

「ッ!全員ここから逃げろ!!」

魔人がエレクマガラを動かす。西原は動けない生徒に大声で怒鳴る。西原の一括で正気を取り戻した大地たちは、即座に駆け出す。

「逃すかよ!!」

魔人がエレクマガラと共に後を追う。
地竜というだけあってそのスピードは巨体からは想像できないほど速く、このままではいずれ追いつかれてしまう。そう判断すると、西原は立ち止まりエレクマガラの前に躍り出る。


「先生!?」

「早く行け!ここは俺が時間を稼ぐ、その間にお前たちは逃げろ!!」

「先生一人じゃ無理だろ!!」

「それでも誰かが残らないよりかはマシだ!早くしろ!!」

必死な西原の姿に大地はどうするべきか考える。このまま逃げてもいずれ追いつかれてしまう。しかしここに西原が残った場合、自分たちは助かるかもしれないが西原はどうなるかわからない。

大地は必死にどうするべきか考え、そして、刀を取る。

「先生、俺も戦います!みんなはその間に残りの人達に知らせて援軍を呼んでくれ!」

「山崎!?早く逃げろと言っただろう!!」

「逃げません!どのみちこのままなら捕まってしまいます。それなら残る人数を多くして援軍を待つ方が良い。それにですね・・・彼女の前で男が無様に逃げ出すわけにはいかないでしょうが!」

大地はそう言って腹から声を出し震える身体を無理やり沈める。西原はそんな大地を怒鳴ろうとしたが、大地の一歩も譲らないという覚悟の瞳を見て何も言えなくなる。

西原は、「はぁ〜」とため息をつくと、何も言わず剣を構える。大地はそれを了承と判断し、刀を構えて西原の横に立つ。

すると今度はその横に健斗と智花が並ぶ。

「大地が残んなら俺もだな。槍術師の本気を見せてやるさ」

「彼氏のカッコイイ姿ちゃんと見届けなとだしね」

二人が並ぶと残りの全員が並ぶ。そして勇美も並ぼうとすると、健斗が止める。

「勇美がこの中で一番速い、頼む、勇美は援軍を呼んで来てくれねぇか」

「・・・死んだら承知しねぇからな」

「アホか、俺が死ぬわけないだろ」

悪態を付き合うと勇美は【加速】を使い全力で駆け出す。その光景を大地はニヤニヤと見ている。

「・・・なんだよ」

「いいや、別に〜」

ニヤニヤした視線を向けられ健斗は独りごちるが、そうこうもしていられない。すぐ目の前にはエレクマガラが迫って来ている。

「行くぞ!!」

「「「おおおおお!!!!」」」

迫るエレクマガラを正眼に定め、西原が合図を掛ける。大地たちも腹から声を上げ、各々武器を手に駆け出す。

「来るがいい勇者ども!!」

果敢に立ち向かう大地たちを見て魔人は両手を掲げ、声を張り上げる。

そして両者が衝突しーーーーー


ーーー刹那、轟音と光が支配する。


連続する光の爆裂。大地たちの目の前で眩い光と大量の火花が弾け飛び、その爆裂で地面が揺れる。

目の前で突如発生した光景に大地たちは何も出来ずただただ立ち尽くし、爆裂の衝撃でそのまま尻餅をついて倒れる。そうしている間にも光の爆裂は続き、やがて光の爆裂が止まる。

爆弾による爆撃のような光の爆裂が止まり、ストロボの点滅の如き光の発光が晴れると、そこにはエレクマガラだったもの・・・・・があった。

エレクマガラは全身が引き千切られて粉々の状態で、焼けた肉片が散らばっており僅かに残った大体の形がこの肉片がエレクマガラと判断出来る唯一の材料だ。爆裂の跡は激しく、エレクマガラ周辺の地盤は激しく陥没し焼け焦げている。

「い、一体何が起こった・・・!?」

驚愕の声の方を見ると、爆裂に巻き込まれたせいでか右腕がない魔人が立っていた。あの爆裂をギリギリのところで回避したらしい。

大地たちはまだ魔人が生きていた事に、驚愕から立ち直り直ぐさま武器を構える。

と、そこへ殺伐とした戦場に似合わない呑気な声が聞こえてきた。

「え?ウソだろ?竜、ドラゴンの種族だからと思って少し警戒したが・・・所詮は亜種、純粋種には届かないって事か・・・はぁ〜竜種だからどれ位のものかと期待したのに、ハズレじゃねぇか」

頭上から少し不満気な声が聞こえてきて、その場の全員が上を向く。

そこには小さな光の輝く魔術陣の大群を背に、銀の刺繍の入った黒衣を纏った男が空に浮かんでいた。

黒衣の男はまるで地面に立つように空に浮かんでおり、後ろに並ぶ魔術陣の数はゆうに五十は越える。一つ一つの魔術陣に込められた魔力と術式は強力で、差し詰めそれは砲台。五十を越える砲台を背に悠々と空から見下ろす男は一人軍隊ワン・アーミーと言ったところか。

そしてその黒衣の男を見て大地たちは驚愕の眼差しを向ける。その男は数ヶ月前に行方不明になったクラスメイト。

「日伊月か!?」

「おう、久し振りだな山崎」

空に浮かぶ男ーーー日伊月弥一はそう言うと手を挙げる。大地はまさかの再会に驚き他の面々も男の正体が弥一だとわかると「日伊月くん!?」「え!?あの日伊月か!?」と驚きを隠せない。

そして色々と問いただそうとした瞬間、弥一の付近で叫び声が響く。

「人間如きが、俺を見下ろすんじゃねぇえええええええ!!」

先程の攻撃から立ち直った魔人が空を飛んで弥一の背後から奇襲したのだ。

「日伊月!逃げろ!そいつは強いーーーー」

と大地が弥一に注意を促そうとした瞬間、あり得ない光景を目の当たりにする。

「よっと」

気の抜けた掛け声と共に弥一は魔人の頭部に踵落としを入れる。木を割る斧のような力強い一撃は魔人の頭部の骨を砕き、魔人を地面に叩き落とす。

砲丸のように加速して落ちてきた魔人。受けた威力の激しさを表すように、魔人が受けた威力が肉体越しに伝わり、地面に放射線状のヒビを入れ陥没させる。

「がっ!ハッ!!」

魔人が口から大量の血を撒き散らしそのまま動けなくなる。

その暴力的なまでの圧倒的な力を目の当たりにし今度こそ大地たちは衝撃を通り越して沈黙する。巨大な地竜の魔物を粉々にミンチし、襲い来る魔人を一撃で沈める。自分達が届かない強さを大地たちは肌で感じる。

「グボッ、ガッ!クソ、てめぇ、一体、何もんだ・・・」

「答える義理はないな」

一つの発砲音

一条の光が大気を切り裂き魔人へと吸い込まれ、魔人はむくろと化す。

余りの呆気なさに大地たちはしばらくフリーズし、やがて正気に戻る。それを見計らって弥一は空から降りてきて大地たちに尋ねる。

「山崎、一体何が起こってる」

「え?あ、ああ、それが魔王軍六属っていう魔人が大量の魔物を引き連れて襲って来たんだ」

「魔王軍六属?・・・ああ!そう言えばセナの故郷を支配していたクソ野郎がそんな事言ってたな。そうか、あいつらが魔王軍六属なのか・・・ちっ、どこまでも面倒な奴らだ」

「知ってたのか!?」

「ついこの間ブチのめした奴がそんな事言ってた」

「ぶ、ブチのめしたって・・・」

もう何度目になるかわからない驚愕に大地たちは呆れるしかない。先程魔人を一撃で沈めた事に加え、魔王軍最強戦力の内の一人を既に倒したと、まるで何事も無いようにいうのだから。

その巨大な力に確かな恐怖を覚える。しかしそれでも今は、その力が途轍もなく頼りに感じる。

「それで、そのクソ野郎二号はどこにいる?」

「多分、ここから少し離れた所にある本隊の所にいるんじゃないかと思う。俺たちは最初は前線の方にいたんだが、途中でここを襲撃されて戻ったんだ。今は前線には雄也と健、美波さんと綾乃さん、それとロジャーさんたちが戦っている」

「・・・そうか、わかった」

前線に残ったメンバーに弥一は「やっぱりか」と言うような気持ちになる。家族のような幼馴染の姿を思い浮かべ、弥一は静かに拳を握る。

するとその時戦場にこの世界には存在しない音が響く。それはまるでエンジンのような音。

音のする方を向くと暗くてよく見えないが、土煙を上げながら何か大きな物が近づいて来るのが見え、「魔物か!?」と警戒する。しかし次の瞬間には(もう何度目になるか考えるのが面倒くさい)驚愕の表情になる。

ギュワァアアアアーーー!!!

と音を立ててスピンしながら弥一の横に止まったのは黒い大きな箱型の物体ーーー車だ。

黒い大型の軍用車のような車だ。大地たちが警戒する中、車のドアが勢いよく開き、中から飛び出してくる。

「パパー!」

「おっと、ユノ、戦場でいきなり出てきたら危ないだろ?」

「ごめんなさ〜い」

「わかったならよろしい。ユノは偉いな〜」

そう言うと弥一は抱えた銀髪の幼女の頭を優しく撫でる。ユノと呼ばれた銀髪幼女は弥一に褒められて嬉しそうに目を細め弥一の胸に顔を埋める。

突如発生した心温まる光景を見せられて大地たちは唖然とする。突然車が現れて、綺麗な銀髪の美幼女が弥一に抱きついて、弥一に褒められて嬉しそうにしている。という光景だけでも十分大地たちの処理は追いついていないのだが、それを遥かに越える衝撃の言葉を聞いてしまった。

あの銀髪幼女は出てきた時、なんと言って弥一に抱き付いた?パパ?それはあれだろうか、アダ名や何かだろうか?あるいは名前の省略だろうか?

大地たちの中で様々な憶測が馳け廻る。しかしこれではまだ終わらない!

「弥一、大丈夫だった?」

「ああ、魔人と魔物が思いの外弱くてな。竜種だから少し期待したんだがな」

「お疲れ様ですマスター」

「エルも運転お疲れ」

車から出て来たのは今度は二人の女性だ。一人目は風になびく綺麗な蒼髪と深い蒼の瞳を持つ、思わず息を呑むほどの美少女、二人目は薄い緑色の髪と瞳に、長い耳とメイド服が特徴な美人。

突然絶世の美幼女・美少女・美人の登場に、もう処理が追いついている者は居ない。

そんな大地たちを放って弥一たちは作戦会議を始める。

「セナとエルはここにいる魔物の掃討を頼む。数は・・・三万ってとこだな、報告の時より増えてるな」

「わかった。それで弥一は?」

三万という途方もない数を聞いてもセナとエルは動揺することもなく承諾する。そして質問された弥一は遠くに見える魔物の軍勢をみながら、不敵な笑みを浮かべる。

「約束を守りに行く」

何時ぞやの"守る"という約束を果たしに、魔術師がその身を翻す。

「さぁ、魔術師の本気を見せてやる」













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