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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

凛緒side 自分の覚悟


「全員後ろに飛べ!!」

ロジャーの言葉に全員が一斉に飛び去る。そしてその瞬間魔物の軍勢に爆発が起きる。

後方から様々な種類の魔法が視界を埋め尽くすほどの雨となって降り注ぐ。炎、雷、土の塊、水弾、風の刃、様々な種類の魔法が魔物の軍勢を殲滅していき、軍勢の真ん中に巨大な穴を空ける。

しかし魔物の数は圧倒的ですぐにその穴も塞がってしまう。魔物はなおも増え続け、勇者たちを蹂躙せしめんと迫りくる。

「全員攻撃再開!!」

ロジャーの指示で再び自らの武器を握りしめ魔物と対峙する。

開戦から約一時間、ひたすら同じことの繰り返しだ。前衛組が魔物と直接対峙し、後方組が詠唱終えるタイミングで下がり、最大火力で魔物を殲滅する戦い方だ。

途中から前衛の人数では対処できなくなり、後方待機の騎士団や生徒たちも前線に出てきて戦っている。

いままのところ災害級の魔物は出ていないので何とか対処できている。平原とはいってもところどころには林や大きな溝があり、地形を活かしながら魔法の罠を張るなどして対処できている。

「《氷の刃よ》」

凛緒が一節で詠唱すると杖に水が纏わりつき、杖の先端に集まると水が氷に変化して氷の刃ができた。

「フッ!!」

横から襲い掛かるウサギの魔物に向けて鋭い突きを放つ。氷の刃は飛び上がったウサギの腹に突き刺さり串刺しにする。

凛緒はそのまま杖を振り回し別の魔物にぶつける。

「《集え暴風・嵐となって駆け抜けよ》!!」

凛緒はウサギをぶつけられたことでひるんだ魔物たちに向かって風の最上級魔法【嵐槌】を放つ。収束した暴風の鉄槌は地面を抉りながら魔物を吹き飛ばし、魔物は粉々にミンチされる。

凛緒は杖を血払いをして槍となった杖を回して構える。

「きゃあっ!」

次の魔物を狙おうと構えた時、近くで悲鳴が聞こえる。横を向くと武器を弾かれ尻もちをついたクラスメイトの女子がオークに襲われていた。

魔物の集団に刺激され、近くにいたモンスターもおびき寄せられてきたのだ。

オークは恐怖で動けなくなった女子生徒に向けて、大きく吠えると棍棒を振り上げる。

間に合わないと凛緒は判断すると杖をの氷の刃を向ける。そして氷の部分を射出しオーガを狙う。

『グゴァアアアアアーーーーーー!!』

氷はオーガの振り上げた腕に命中し、腕を押さえて凛緒の方を見る。その顔には憤怒の形相が浮かんでおり、叩き潰さんと凛緒の方に駆けてくる。

「《荒れ狂う暴虐の渦・圧制なる力を振るい・すべてを呑み込め》!!」

凛緒の周辺に水が渦を巻いて天に上がる。水の神級魔法【豪虐流】、その水の奔流はあらゆるものを砕き飲み込む暴虐の化身。

渦が天に昇った後、渦が唖然とするオーガ目掛けて突撃する。

渦はオーガを呑み込んでその肉を骨を砕き、粉々にして何もかも呑み込んだ。

渦はそのまま直進し、オーガ以外にも周りの魔物やモンスターさえも呑み込み辺り一帯を水浸しにする。

「大丈夫!?」

「う、うんありがとう綾乃さん」

水の奔流は女子生徒を避けており女子生徒は無事だ。辺り一帯の魔物を呑み込んだことで辺りには静けさが戻っており、凛緒は神級魔法で消費した魔力を魔力回復薬で回復させる。

そして魔力を回復させているその瞬間、奥から熊の魔物が飛び出してくる。熊の魔物の体表には血のように紅い線が奔っている、そう災害級の魔物だ。

「ーーッ!しまった!」

魔力が尽きかけており氷の刃を生成するには時間がかかる、すぐさま逃げようと考えたが後ろでは腰の抜けた女子生徒が動けずにいる。咄嗟に女子生徒を突き飛ばして熊の前に躍り出る。

(杖だけでどこまでできる!?魔力は・・・あと少しで回復できる!)

魔力が回復すれば魔法で吹き飛ばすことができる。魔力がない状態で凛緒は杖を構えて熊の魔物にどこまで対応できるか考える、そして熊の魔物は腕を振り上げてその凶悪な爪を振り下ろす。

凛緒が杖で防ごうとした瞬間、目の前にいつの間にか西原が現れていた。

「ふんっ!!」

西原は振り下ろされた腕を掴み、なんとそのまま綺麗な一本背負いを決めた!

熊はまさか自分が投げられるとは思わなかったのか、「うそ〜・・・」という呆けた顔をして、次の瞬間には頭から地面に突っ込み、犬〇家になってしまった。

「無事か?綾乃?」

「は、はい。え、えっと、あ、ありがとうございます、西原先生」

「ちょっと待ってくれ、すぐ"コレ"を処分する」

「ア、ハイ」

そう言うと西原は腰から大きなナイフを抜いて、犬〇家している熊に歩み寄り、ジタバタもがく首筋に刃を当て、一思いにザッ!といく。

目の前で起こったありえない事に凛緒はただただ無表情だ。

体長四メートルはあろうかという熊を魔法も使わず犬〇家したのである。【身体強化】などを使わず純粋な技術のみでの仕業であり、誰もが目を疑うだろう。

大量出血で死んでしまった熊を見下ろしたあと西原が二人を向く。

「大丈夫か?二人とも」

「はい、私は綾乃さんが助けてくれたので」

「私も大丈夫です」

「なら良かった。取り敢えず二人とも一度戻るぞ、魔物の波が一度治まった今のうちに作戦会議だ」

「他の方は大丈夫だったんですか?」

「ああ、軽いケガをした奴らならいるが今のところ重傷者はいない」

その言葉に二人は一安心する。そして女子生徒を支えながら集合地点まで歩く。

歩く途中、辺りの平原を見渡すと、いろんなところに魔物やモンスターの死体や血がぶちまけられている。月明かりがなく、暗いためその惨状をより詳しく見えないのは幸いだが、辺り一帯に漂う血の匂いと腐臭は、容赦なく三人の鼻孔をくすぐる。これが昼間なら、平原一帯が真っ赤に染まり、魔物の死体で溢れかえるそれこそ地獄のような光景を目の当たりにしただろう。

いままで数々の魔物を倒しては来て魔物やモンスターの死体は慣れたつもりではいたが、このように圧倒的な死の数を見ると、普通の戦場よりも恐ろしく気持ちの悪い。

漂う腐臭に女子生徒は吐き気を催してその場で吐いてしまい、凛緒も同じく吐き気を催すが、それでもなんとか気持ちを落ち着けて踏みとどまる。

ーーーこれが本当の戦場

ーーーこれが本当の戦争

ーーーこれが本当の・・・殺し合い

凛緒は平原の惨状を見ながら考える。自分たちは何をなそうとしているのかを、この戦いに自分たちはどれほどの覚悟を持っているのだろう、と。

そんな時ふと幼馴染を思い出す。

弥一は『大切』を失うのが怖いから戦う、という守るために戦う覚悟があった。自分たちが争いとは無縁の暮らしをしていた中、弥一は昔から覚悟を持って戦っていた。

凛緒は自分に果たしてどれだけの覚悟があるだろうと。

ーー弥一にもう一度会いたい。弥一ともう一度お話がしたい。弥一にもう一度触れたい。

凛緒は自分の『大切』を考えると少し胸が苦しくなくなるのを感じる。『大切』を守るためにはここで死ぬわけにはいかない。そう思うと凛緒のなかで自然と覚悟が決まっていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

集合地点は最初に魔物の軍勢と衝突したところで、そこではケガ人の手当てをしながら全員が少しばかりの休息を取っていた。まだ夜は暗く、視界も悪いが【気配感知】のスキルを持った生徒や騎士が辺りを警戒しているので取り敢えずは安心だ。

凛緒たちが帰ってくると、彩や健、雄也などのメンバーが安心したようにホッ、と胸を撫で下ろす。

全員が集まっているのを確認するとロジャーが話し出す。

「全員ご苦労、諸君らの奮闘で幸い重傷者は出なかったようだ。現在魔物はここから一キロほどのところで集まっており、どういうわけか近づいてこない。理由はわからないが今のうちにできるだけ体力を回復しておき、再度魔物が進行してきたときに備える。あと一時間近くすれば【都市メイカイ】の方から討伐隊が増援でやってくるはずだ。そしてそれ以降も近くも街からも増援が来る。あと一時間、それを乗り切れば我々の勝利だ」

そう宣言すると、全体に希望とやる気に満ちた声が広がり、先の見えない戦いにようやく希望が見えたことで全員の土気が上がる。

それからしばらくは全員体力回復に努めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

休憩に入ってから少し経つと、魔物の側の方に変化が見られた。

「騎士団長、たった今魔物の軍勢が動き出しました」

「うむ、わかった。全員戦闘態勢!!」

偵察の騎士の報告を聞き、ロジャーが全体に指示を出す。その指示に従って全員が、重い身体に鞭打って立ち上がり、それぞれの武器を握り締める。

残りは一時間、それさえ越えれば増援が駆け付ける。その希望を胸に、遠くだが目視できる距離まで来た魔物の軍勢を見て、全員が四肢に力を入れて構える。

「全員突撃ーーーー」

「ロジャー騎士団長!!」

ロジャーが指示を出そうとした途端、突然後方から馬で駆けてきた騎士がロジャーの言葉を遮る。ただ事ではない騎士の表情に全員が困惑していると、騎士は肩で息をしながら焦るように伝令してきた。

「で、伝令!城塞の左手側方面から魔物の襲撃です!数は一万近く!災害級も複数確認されています!!」

「なっーーー!!」

「そんな!?このタイミングで!?」

騎士の伝令に衝撃が走る。これから全面衝突というタイミングでの奇襲とは。まるで図ったかのようなタイミングだ。

「それだけの魔物がなぜ今現れる!?」

「そ、それが、どうやら夜の闇に紛れ城塞左手側の森に息を潜めていたらしく」

「くそっ!!やられた、魔物はあれが全部じゃなかったのか!!」

まさかの奇襲にロジャーは普段の口調も忘れ怒りを露にする。

・・・だが謎だ。魔物は通常本能のままに獲物を見つければ襲い掛かる、それが災害級になるとさらに顕著に表れる。なので騎士団の目をごまかしつつ夜の闇に潜み、タイミングを窺って待ち続けるなどありえない。

そもそも疑問だったのだ。なぜ、これだけの魔物が突然山から溢れてこちらに進行してくる?この辺りは確かに危険だが、定期的に冒険者や近くの街の騎士団が魔物狩りを行う。これほどまでに魔物の数が膨れ上がるまで放置されていたとは考えられない。

しかも溢れた魔物は一直線にこちらにすべて進行してきた。それに先ほどまでは魔物の進行は一度止まり、奇襲と同時に動き出した。まるで奇襲が成功するのを待っていたかのように。

これらの疑問を上げていくと、まるで一つの意思に魔物が操られているように思える。しかし魔物は誰にも従わない、例外があるとすればそれは魔物同士での圧倒的強者、それとーーーーーー

「・・・魔人」

「なに?魔人だと?」

凛緒のつぶやきにロジャーが困惑の表情を浮かべる。

「もしかしたら、あの魔物の本隊の方には魔人がいるんじゃないんでしょうか?確か魔人は魔物を操ることができたはずです。月がなく視界が見えない今晩に、魔人は魔物の大群を私たちにぶつけて、私たちが魔物の軍勢の波が引いて油断していたところに奇襲部隊を送り込んだんだと思います」

凛緒の説明を聞いて全員が騒然となる。たしかにその仮説で行くとすべてが腑に落ちる、魔物の大群も側面からの奇襲も。

「でも凛緒、魔人でもこれだけの魔物を操るなんてさすがにできないと思うんだけど」

「・・・いや、できる奴はいる」

いくら魔人でも数十万にも及ぶ魔物の軍勢を操れるとは思えない。すると彩の疑問に凛緒に代わってロジャーが答える。

「それができる魔人は魔王ともう六人、魔王軍六属と呼ばれている奴らだ。魔王がいることはないだろうから、おそらく魔王軍六属のうちのだれかだろう」

「魔王軍六属?」

「魔王軍のなかでそれぞれの属性で一番の魔法の腕を持った六人のことだ。魔法以外にも他の魔人とは比べ物にならない強力な力を持っている。正直今の勇者たちでもギリギリ勝てるか怪しい」

「そ、それほどの魔人がいるかもしれないんですか?」

「綾乃の話が正解ならおそらくな。これだけの魔物の数となると六属以外ありえん」

経験では劣るがすでにステータスは王宮騎士団より上の数値である自分たちが敵わない敵がいる。その事実に生徒の中に不安と絶望が奔る。

しかしそうこうしている時間はない。今もなお、後方では高火力の魔法組が魔物と戦っている。籠城しながら戦っているとはいえ、前衛がいなければいずれ魔法だけでは限界が来る。すぐに後方にも前衛を送らなければならない。

「ロジャーさん、正面の魔物と魔人は僕たちが持ち堪えます。その間に後方へ支援を」

雄也が進み出ると、凛緒と健、彩も進み出る。この中では一番レベルの高いパーティーで、レベル以外にも戦闘の実力はすでにロジャーの王宮騎士団精鋭パーティーを凌ぐ。雄也たちなら万が一魔王軍六属と相対しても簡単には負けることはないだろう。

そう判断するとロジャーが指示を出す。

「分かった、ただし私のパーティーもここに残ろう。他の者は後方の魔法組の支援に向かえ!災害級も現れている、気を抜くな!!」

ロジャーが指示を出すと全員が即座に動き出す。雄也パーティーとロジャーパーティーは残り、残りの騎士団と生徒たちは後方の魔法組のもとへ。的確な指示を出せる人材ということで西原はロジャーが抜けた穴を埋めるべく後方へ向かった。

後方へ向かうメンバーの姿を見送りながら、雄也は凛緒たちに謝る。

「みんなごめん、僕の勝手な判断に巻き込んで」

「いいって、別に気にしてねぇから。ここを守らなきゃどのみち全滅だろ?だったらやるしかねぇさ」

「健、言っておくけどまたバカみたいに殴り合いなんかしたら・・・帰った後覚えておきなさい」

「ひっ!?」

「ま、まぁまぁ彩ちゃん落ち着いて?健君が雨に濡れた子犬みたいに震えてるから」

無表情の圧力に健は縮こまってガクブルガクブル震え、凛緒がなだめると彩は「はぁ~」とため息をつく。雄也はそんな三人に感謝しながら、いよいよ迫りくる魔物の軍勢に目を向けて、聖剣ルナ・エルームの柄を握りなおし正眼に構える。三人も同じように各々の武器を構えなおす。

そしていよいよ魔物の姿一体一体の姿がはっきりとわかる距離まで来る。魔物の軍勢の中にはゴブリンやオーガなどのモンスターも複数混じっている。

全員が内に迫る恐怖を抑え込み、いざ攻撃開始というところで、突如魔物の足が止まった。

「え?」

突然の停止に全員が困惑する。いつでも対応できるように警戒していると、正面の魔物が左右に避けて道ができ、奥から一人の男が歩いてくる。

黒く禍々しい蝙蝠のような翼、頭に生えた角ーーー魔人だ。

魔人の襲来に全員が武器を構えて今にも飛び掛からんとする。この戦場に現れる魔人となると魔王軍六属のうちの一人。

魔人は魔物の道を抜けると声を発する。

「貴様らが勇者か、ふん、存外に大したことないな。いくら強力な力を持っていようが使うも者の技量がその程度では話にもならん」

「・・・お前が魔王軍六属か?」

「ほう、我のことを知っておったか。その通りだ、我は魔王軍六属が一人『土』のコルトア。偉大なる世紀のゴーレムマスターよ!」

「ゴーレムマスターだと?」

魔王軍六属、コルトアはそう宣言する。雄也たちはゴーレムマスターという聞き覚えのない言葉に首を傾げ、騎士団はその名を聞いて驚愕し驚く。

「さてそろそろ無駄話もこの辺にして再開するとするか、いけ、我が軍勢」

「くっ!戦闘開始!!」

コルトアは名乗りを上げると、すでに興味ないのか雄也たちの言葉を聞く前に魔物の軍勢を動かして消しかける。

いきなりの再開に驚く間もなく、全員武器を構えて魔物を倒しに行く。

「【身体強化】!!【精霊付与】!!」

ルナ・エルームに炎の帯が絡まると、雄也はルナ・エルームを横に薙ぐ。それに目前まで迫っていたゴブリン数匹の首をはね、さらにその後ろに迫っていた魔物を炎で焼く。

返す刃で今度は横から棍棒を振り下ろしてきたオーガの攻撃を受け止め押し返し、体勢が崩れたところで首を刎ねる。

「【豪腕】!!どぉおらぁあああ!!」

雄也の横では拳に炎を纏った健が大きな虎の魔物の真下に滑り込み腹に拳を入れ、そこで炎を爆発させる。

『グガォオオオオオオオオオオ!!!』

拳と爆発の攻撃で浮かび上がった虎が悲鳴を上げた後、内臓を直接焼かれて絶命し地面に力なく倒れる。

他の魔物は虎がやられた瞬間を狙って健の背後から迫ろうとするが、眉間を矢が貫通した。

彩は周りの注意がおろそかになっている健のサポートをしつつ、遠くから魔物を狙い撃つ。鳥の魔物が空から奇襲をしようとするがことごとく彩の正確な射撃に撃墜していく。

だがしかし、いくら正確に射撃をしようが数が多ければ撃ち落とせない魔物も出てくる。隣が撃ち落とされたのをチャンスと見たか、他の鷹の魔物たちが一斉に羽をたたんで彩に急降下してくる。

彩は迫る鷹を一匹、また一匹と落としていくが、数が多く四匹が撃ち落とせないままこちらに迫ってくる。

「《暴虐なる嵐の刃よ》!!」

迫る鷹目掛けて横から風の刃の嵐がぶつかる。

風に呑まれた鷹はバラバラに切り刻まれてあたりに血の雨を降らす。

「彩ちゃん、撃ち落としは任せて!」

「助かるわ凛緒!」

彩の撃ち落としを凛緒が魔法を使い撃ち落としていく。

英雄にふさわしい力で魔物を倒していく雄也と、確実なコンビネーションで魔物を倒していく凛緒達を見てコルトアが呟く。

「やはりこれくらいの雑魚ではさすがに相手にはならんか」

「よそ見が過ぎるぞ!」

離れたところで傍観しているコルトア目掛けて、背後から近ずいたロジャーが上段からの一刀を振り下ろす。その鋭さと重さは王都最強に相応しい歴戦の戦士の一撃だ。だが、

「ふむ、ただの人間にしてはそれなりだな」

「なに!?」

完全なる背後からの一撃をコルトアは剣を鷲掴みにして防いだ。鋭い剣の一撃を鷲掴みにして防ぐという常識外れにロジャーは呆気に取られる。しかもその力は強く、まるで大地のようにビクともしない。

「ッ!《苛烈なる風》!!」

呆気に取られたがすぐさま風の爆発をぶつけて、無理やり剥がす。コルトアにダメージはないが、剣を剥がす事には成功し、吹き飛ばされて距離を取る。

「はぁあああああーーーっ!!」

そんな中背後から雄也が斬りかかる。

その攻撃もコルトアは反応し、振り下ろされるルナ・エルームの刀身を掴む。だがーー

「ぐっ!」

ルナ・エルームはコルトアの手のひらを深く斬り裂き指指の筋を断ち切った。

斬りかかる前に雄也はルナ・エルームに風の精霊を付与して、ルナ・エルームと風の刃で、高い防御力を持つコルトアの手のひらを斬り裂いたのだ。

「その剣聖剣だな、そうか貴様が英雄か」

「だったらどうした!」

そう言うとコルトアは声を上げて笑う。

「なにがおかしい!」

「なに、さすが英雄だと思っただけさ。その身に宿る忌々しい女神の強力な加護と力、確かに脅威だろう。だがーーーーーーまだ弱いな」

そう呟いた瞬間、コルトアの姿が搔き消え、刹那目の前にコルトアが現れる。そして次の瞬間には腹部に重い衝撃が奔り、地面に二本線を引きながら数十メートル飛ばされる。

「ーーッツ!かはッ!!」

止まった後雄也は吐き出し、その場に膝をつく。

咄嗟に腹部を腕の籠手でガードし、直撃を貰うことを避けたが、籠手越しに腕、腹、内臓へと衝撃が貫通した。幸い内臓にケガはないが胃の中の物を吐き出してしまう。

「ほう、今の攻撃に耐えるか。それなりの威力は込めたのだがな」

「くっ!な、なんて威力だ」

コルトアは突き出した足を静かに下ろし雄也を眺める。雄也はルナ・エルームを支えに立ち上がり、再び剣を構える。バラバラに砕けた籠手が足元に散らばる。

英雄の効果でダメージはすぐに回復し痛みは引いたが、コルトアのスピードとパワーに驚愕する。

「雄也!!彩、凛緒サポートを頼む!!」

「了解!《灼熱なる憤怒の炎》!!」

「《大いなる風の息吹》!!」

雄也をサポートするべく健が駆け出し、彩が炎を生み出し凛緒が風で炎を煽る。

炎がコルトアを呑み込み、灼熱の熱風がコルトアの全身を嬲る。

「くっ!鬱陶しい!!」

「オラァアア!!」

コルトアが顔を顰めて腕を思いっきり振ると、その衝撃で炎が散る。そしてその瞬間、炎の奥から健が現れ【豪腕】で強化した拳の一撃をコルトアに叩き込む。

「だから甘いと言っているだろう!」

「ぐはっ!」

繰り出した重い拳の一撃はコルトアに直撃する事なく、刹那横腹に鋭く重い一撃が奔った。

コルトアは繰り出された拳を半身で避けてすれ違いざまに膝蹴りを繰り出したのだ。

その衝撃で健が空中に浮かび、コルトアが浮かび上がった健に拳を叩きこみ水平に吹き飛ばす。

「健!!」

「健くん!!」

「ぐ、あっ、だ、大丈夫だ、くそっ、あいつ、どんだけ強いんだよ」

吹き飛ばされた健に駆け寄ると健は痛みに顔を顰めながら、なんとか膝で立ち上がる。凛緒はすぐさま健に治癒魔法を施し折れた肋骨を繋げる。

するとコルトアが、吹き飛ばされてもなお立ち上がるロジャーと雄也、健を見て忌々しげに顔を顰めると言う。

「全く忌々しい、鬱陶しい。人間如き羽虫が俺に届くと思ったか。だが、貴様らは俺の攻撃を受けきった、褒美に貴様らに見せてやろう。俺の最高傑作を!!」


そう言って腕を広げコルトアが高らかに宣言する。

「いでよ!ミスリルゴーレム!!」

地面が、大地がゴゴゴォオオ!!と揺れる。直後、地面が隆起しそこから巨大な腕が飛び出す。

そして続いてもう一つ腕が飛び出し、そのまま地面が大きく隆起すると、地面から巨大な人型の人形が現れる。

立ち上がると体長は十メートルほどの全身銀色の輝きの人形だ。腕や足の関節は繋がっておらず宙に浮いており、顔は何も無い能面だ。

その巨大な姿を見て雄也たちは驚愕し、強大な敵の前でもあるのに硬直してしまう。武器を握る手には大量の手汗と背筋には大量の冷や汗が伝う。

その姿を見てコルトアが満足げに叫ぶ。

「ハハハハハ!!見よ!これが世界最高のゴーレムだ!!貴様らにもう勝ち目など無い!!」

全員の瞳には絶望の色が浮かぶ。

その巨大な姿を見ながら雄也たちはただただ立ち尽くす。

「さぁ、二回戦と行こうではないか」



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