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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

不穏な知らせ

ユノの検証も終わり【ラッカン】に戻ってくると、宿に戻る前に鍛冶屋に向かう。この間整備を頼んだ【蒼羽】を取りに行くためだ。

街を歩いていると通りの人達が弥一たちに注目してくる。それもそうだろう、何故なら弥一達の横には、銀色の綺麗な髪の幼女と、同じく銀色の綺麗な幼い狼が仲良く歩いているのだから。

それに加えてセナとエルはどちらも絶世の美少女・美人だ。このメンバーで注目されない方がおかしい。

街の人達は、ユノとサニアを見てほっこりする者、セナとエルを見て息を呑む者、弥一を見て嫉妬と怨嗟の視線を送る者の三種類である。

女性陣三人と幼獣一匹は気にしていないが、人を殺せるのでは?と思うほどの視線を送られる弥一は、胃が痛い思いだ。

(また今度全員に認識阻害用の魔導器を作らないと・・・)

弥一はそんな事を考えながら、もう何回目になるかわからない認識阻害の魔術を全員にかける。毎度毎度街を歩く度に認識阻害の魔術をかけるのは面倒だ。

街の人の意識が外れ、弥一達に注目しなくなり、弥一はほっとすると、鍛冶屋に向かう。

鍛冶屋に着くとグウラがカウンターに座っていた。その表情は疲れ切っているがどこか晴れやかだ。

「こんにちはグウラさん。どうなりましたか蒼羽は?」

「ふん、ほらよ」

グウラはぶっきら棒に言うと蒼羽を投げつけてくる。弥一は蒼羽を受け取ると鞘から抜き、刃を確かめる。

刃は刃こぼれ一切なく、光を反射して白く輝く。

「流石ですね。前とは全然違う」

「ふん、当たり前だ。俺が整備するんだから当然だ」

グウラは自分の腕にプライドを持っているのか自信満々に答える。弥一は蒼羽を軽く振って感触を確かめた後別空間に転移させる。

「それで料金はいくらですか?」

「金はいらない。俺も多くの事を学べたからな。報酬はそれでいい」

「え?でもいいんですか?」

「ふん、いらねぇと言ってるだろうが」

「・・・そうですか、ありがとうございます」

「おう」

弥一はそうお礼をいって礼をするとグウラはそう一言言うと奥の工房に戻ってしまった。弥一はもう一度奥の工房に向かって「ありがとうございます!」と声を掛けて、鍛冶屋をあとにする。

「さて、用事は済んだわけだがどうする?俺は少し冒険者組合で依頼でもこなそうかと思ってるんだが」

「ならみんなで難易度の高い依頼を受けたらいいと思う。それなら手っ取り早くお金が稼げる」

「それもそうだな。よし、それじゃあ冒険者組合に行くか」

最近路銀が少し心細くなってきたので、ここでドンと稼いでおいた方が後々いい。

ラッカンの冒険者組合は多種族が集まるので依頼の内容も豊富で珍しい物が多い。どんな依頼があるのか楽しみにしながら、弥一達は冒険者組合に向かう。

鍛冶屋から街の中心街に向かって十分ほど歩くと、冒険者組合の看板が見えてきた。ラッカンの冒険者組合はエルネよりも大きく、人間以外にも大きな剣を持った虎の獣人や、トカゲの顔の戦士までいる。

弥一達はそんな周りの光景を物珍しく見ながら中に入る。

中に入るとそこはエルネとは違う雰囲気の冒険者組合だった。基本の配置はエルネの冒険者組合と同じだが、そこにいる冒険者たちの雰囲気が違う。誰も彼もがギラついた目をしており、ピリピリとしている。

亜人はそれぞれ高い身体能力を持っており、ここラッカンに集まる冒険者は誰もが強者揃いだ。そしてそれぞれ種族が違うため、お互いに張り合っているのだろう。

弥一達が入った瞬間、冒険者組合内の全員が弥一達を見たあと、「あのふざけた野郎殺す!」とばかりの視線を殺気と共に弥一に送りつける。まぁ当然といえば当然だろう。これほどピリピリと殺伐としたところに、美幼女・美少女・美人を連れた弥一が来ればそうなるのは必須。

弥一は「しまったー・・・」と言葉を漏らす。

(こうなるんならまだ認識阻害を掛けてれば良かった。うーん、こうなれば今からでも認識阻害を掛けて、穏便に・・・「パパ怖い!」オーケー、無事で帰れると思うなよお前ら。ア"ァ"?)

弥一は冒険者たちの鋭い視線に怯えるユノを片腕抱っこし、上着の内側のレルバーホークを掴む。パパは娘の敵を許さない!

レルバーホークのゴム弾で軽く四、五人撃ち抜いてやろうか、と考えレルバーホークを抜こうとした瞬間、ホール全体を極低の凍気が支配する。そして次の瞬間にはドンッ!という衝撃音が聞こえそうなほどの圧倒的存在感とプレッシャーが冒険者達に容赦なく浴びせられる。

空間が歪んでいるのでは、と思うほどのプレッシャーを浴びせられた冒険者達は、未熟な者は意識を刈り取られ、なんとか耐えられた者も足がガクブルガクブルと震え、顔面蒼白だ。

弥一はプレッシャーの発生源を見ると、そこには冒険者達に向けて凍気とプレッシャーを撒き散らすサニアの姿が。

二メートルほどの大きさになったサニアは、王者のように堂々と立っており、冒険者達を視線だけで静かに威嚇する。それだけで神話の魔物としての圧倒的存在感とプレッシャーを与えている。

大好きな主を怯えさせられサニアは怒っているようだ。弥一はそんなサニアを嬉しく思いつつ、同時に娘に関して先を越された事に少し嫉妬する。なのでその嫉妬を冒険者達に威圧としてぶつけ八つ当たりする!冒険者達は完全に倒れた!もうHPはゼロよ!

「サニアもういいぞ」

『わっふ!』

幼獣状態に戻ったサニアが元気よく吠える。弥一はユノにもう大丈夫だ、というとユノを降ろす。ユノはサニアをギュッと抱きかかえ、サニアはユノの頬をペロリと舐める。

冒険者組合の中は冒険者達が白目を剥き泡を吹いて死屍累々と倒れている。自業自得だな、となんとも身勝手な言葉を言うと、セナとエルも同じく頷く。

そして弥一たちは冒険者達を放って依頼の張られてあるボードに向かう。

「うーん、なんの依頼にするかな・・・」

「こんなのどう?『オーガ二十体の討伐』報酬は二百万ネクト」

「おお、随分と報酬が高いな。場所は・・・ここからすぐ近くの平原か。うん、いいんじゃないか?これならすぐ終わるだろう」

弥一は依頼書を取ると受付に持っていく。受付嬢は先ほどのホールでの出来事を見ていたらしく、顔面蒼白でガクブルだ。受付嬢が泣きそうな顔で奥の同僚に視線で、助けを求めるが、彼らは申し訳そうに眼を瞑り「・・・すまん。我々は無力だ・・・」と首を横に振る。

「ええっと、そんなに怖がらないでください。別に暴れたりとかしませんから。うちの娘を怖がらせた罰なんで」

「は、はい・・・!しゅ、しゅみません!」

よほどテンパっているようで受付嬢はテンプレのような噛みかたをする。弥一は苦笑いしつつ依頼用紙を受付嬢に渡す。受付嬢はガチガチに緊張しつつも依頼用紙を受け取って内容を確認する。

「え、えっと・・・『オーガ二十体の討伐』ですね。あ、あの、申し訳ありません。この依頼は第八階梯以上の冒険者じゃないと受注できないんですけど・・・」

「ああ、それなら心配いらない」

「ふぇ?」

弥一とセナ、エルは冒険者カードを取り出す。そこには金の冒険者カードが二枚と銀の冒険者カードが一枚。金は第十階梯の証、銀は第九階梯の証だ。ちなみにエルはこの前冒険者登録で第九階梯の冒険者を瞬殺した。どれだけ強い冒険者でも現代兵器で武装した者の前では無力だった・・・

受付嬢は差し出された冒険者カードを見て驚愕をあらわにする。第十階梯の冒険者は全冒険者の中で五十人しかいない。また第九階梯の冒険者は八十一人だ。

そのため第十階梯と第九階梯の冒険者の名前や特徴などの情報は各冒険者組合で共有されている。そしてもちろんこの受付嬢も全員は無理でも第十階梯の冒険者の情報はすべて頭に入っている。

だが弥一とセナ、エルはここ最近冒険者になってしかも最初から第十階梯と第九階梯になったので、情報がまだいきわたっていなかったので受付嬢は弥一たちのことを知らなかったのだ。

受付嬢は焦った様子で依頼用紙を受け取、頭を下げる。

「も、申し訳ありません!!はい!大丈夫です!!お気をつけてください!!」

受付嬢の言葉を受け取って弥一たちは冒険者組合を出る。それからしばらくは冒険者組合の中で妙な静寂が流れていた。

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 「シッ!」

一呼吸とともに腕を振るい、銀線を奔らせる。銀線は緑色の大きな角の生えた鬼、オーガの首に奔ると次の瞬間、オーガの頭がごとりっと音を立て地面に落ちる。遅れて綺麗に切断された断面から血が滝のように噴き出る。

弥一は血の一切付いていない蒼羽を軽く二度振るうと、満足したように腰の鞘にパチンっと鍔鳴りをして収める。

「いい切れ味だな。やっぱり整備前とは比べ物にならないな、しかし擬似空間切断を発動しなくてもこれだけ切れるように刃を整備できるグウラさんの腕ってすげーな」

弥一はそんな事を言いながら、背後から襲いかかってきたもう一体のオーガに後ろを向かず、脇の下からレルバーホークを向けて発砲。弾丸は寸分違わず、オーガの眉間を貫き、絶命させた。

「意外と弱いな」と言いながらオーガの角を回収していく。討伐の確認の為だ。

オーガはモンスターの中でも強力で、大型の魔物も殺してしまうほどだ。オーガの討伐はパーティー単位で行うもので、しかも一体に集中してだ。二体以上と遭遇した場合は直ぐに退避するのが一般常識なのだが、あいにくここにはその一般常識が通用する者はいない。

弥一はオーガの角を回収し終わると、少し離れた所で同じくオーガと戦っている三人と一匹を見る。オーガの数は七体。普通の冒険者から見たら悪夢以外の何物でもないだろう。

「【風炎砲】!!」

セナがお得意のミサイルを放つ。濃縮された三本の風の矢とそれに纏う炎は三体のオーガ目掛けて殺到する。

一体のオーガは矢を撃ち落そうとして、その手に持った大きな棍棒を振り下ろす。しかし近距離でミサイルを撃ち落とせばどうなるか。ミサイルと棍棒が衝突した瞬間、風の力によって威力が増した炎が爆ぜ、爆炎と衝撃波がオーガの体を吹き飛ばし、飛び散った肉片を炭に変える。

『『グルゥアアアアアアア!!』』

残りの二体の魔物はその爆発で吹き飛ばされ、矢を躱す。オーガはすぐさま起き上がりセナに向かって走ってきた。

「まだ!」

走ってくるオーガを見据えそう叫び腕を振るう。オーガが棍棒を振り上げる。その巨体から繰り出される一撃は小さな人間など簡単に潰せる。しかしその凶悪な一撃を前にしてもセナは怯むこともなく、勝利を確信した目でオーガを見る。

そして振り降ろされる寸前、オーガの背後で炎が爆ぜた。

オーガ達は一体何が起きたか理解する事なく、その命を終えた。

その正体はオーガが躱した矢だ。セナは飛んで行った矢を風で操り方向を曲げて、背後からオーガを強襲したのだ。

この矢に風を纏わせ矢を自在に操る技術はビルファから盗んだ技術。【疾風加速ゲイルアクセラレイション】を完全にマスターしたセナにとって、矢を風で操る事など容易いことだ。

オーガは爆発で上半身が吹き飛び、辺りに肉片と血を飛び散らせるが、セナは自分の周りに風の壁を作ることで、肉片と血がかかるのを防ぐ。

そんなセナを見て弥一は感心する。やはり属性魔法に関してはセナは天才だ。特に風の魔法はそれが顕著に現れる。六大属性の中でもセナは風に大きな適性があるようだ。

弥一はセナから視線を外し今度はユノを見る。

ユノはサニアを召喚して二体のオーガを相手している。心配になるが、しかしそれは必要ないようだ。

「サニア!十万ボ○ト!!」

「なんでそのネタ知ってんだ!?」

『グルゥアウ!!』

ユノが意気揚々とサニアに命令を出す。気分はポ○モントレーナーだ!

弥一の驚きを余所にサニアは十万どころではない紫電を放つ。紫電の槍は瞬く間にオーガとの距離を吹く飛ばし、心臓部を撃ち抜いた。アバババ!どころでは済まなかったらしい・・・

ユノはえらいえらい、とサニアの頭を撫で、サニアは気持ち良さそうに鳴いた後ゴロンと寝転ぶ。もう完全にペットと化していた。

色々な意味で逞ましく育っている娘にこれまた色々と戦慄していると、ズドンッ!ズドンッ!と重い発砲音が響く。

何事かと思ってその方向を見ると、そこには胸に巨大な穴を開け地面に倒れている二体のオーガと、【グレール】を構えたエルがいた。

強靭な肉体を持つオーガも、戦車の装甲をも貫く弾丸の前には無力だったらしい。

「パパ!」

「おっと、お疲れユノ」

「えへへへ」

オーガを倒し終わったユノが背中に飛び乗って来て頬ずりをしてくる。弥一が頭を撫でて労うとユノは嬉しそうにする。

「終わったよ弥一」

「一気に七体倒せて手間が省けて良かったです」

「お疲れ二人とも。確かにまとめて倒せたのは良かったな。この調子で出てきてくれれば助かるんだがな」

エルとセナも角の回収が終わり集まってくる。弥一はユノが倒したオーガの角を回収しながら二人も労う。

オーガの集団など悪夢以外の何物でもないのだが弥一たちにとってはいいカモだ。

弥一は【探査魔術】を発動させ、周囲の状況把握を行う。するとここから350メートル離れた所と500メートル離れた所にオーガと同じ反応があった。

「おっ!ラッキー!エル、ユノ。二人はここから東に350メートルの所にいる三体のオーガを任せてもいいか?俺とセナは西に500メートルの所にいる十二体のオーガの群れを殲滅する」

弥一が見つけたのはオーガの住処だった。これを殲滅すれば余裕で二十体討伐は達成だ。エルとユノに三体のオーガを頼んだのは、オーガを余分に倒せばその分の追加報酬がもらえるからだ。

エルとユノは頷き、サニアは『ワン!』と元気よく吠える。

「わかりました、それではユノ様行きましょう」

「いってきまーす!」

「気をつけてな。エル、ユノを頼む」

「頑張ってね二人とも。ユノちゃん、エルに迷惑かけないようにね?」

「うん!」

弥一とセナが送り出すと、エルに続くようにしてサニアに乗ったユノが追う。オーガ三体程度ならエルとユノ、サニアが負けることはない。何かあったとしても、サニアが神獣化すれば問題ない。今のユノならサニアが神獣化しても問題はないだろう。

二人が森に消える。するとセナが腕を絡めて嬉しそうに微笑む。その顔には隠しきれない嬉しさと興奮が現れていた。

「ふふっ、デート。久しぶり」

「今から行くのはモンスター狩りなんだが」

上目遣いで見上げてくるセナに弥一は視線を逸らす。

「二人っきりになるためにエルとユノちゃんにあっちのモンスターを頼んだんでしょ?」

「・・・ばれてたか。セナには敵わないな」

セナの指摘に弥一は苦笑いを浮かべ「全く敵わないな」と思う。最近は二人っきりになる機会がなかったので折角ならオーガを倒しに行くついでにちょっとしたお散歩デートでも、と思ったのだが、どうやらセナには全てお見通しのようだ。

「弥一のことならなんでもわかる。・・・だって夫婦だもん。大好き、弥一」

「俺もだ。大好きだ、セナ」

お互いに至近距離で熱い視線を絡ませる。

突如森に発生した熱々の空間に誰も止める者はいない。周りの空気がどんどん砂糖になっていく。二人はここがモンスターの発生する危険区域だということを忘れ、ただただ見つめ合う。

このような状況になれば、二人の距離が縮まるのは必然。セナは静かに目を閉じ、小さく柔らかな唇を突き出してくる。弥一はセナの頬に手を添え、顔を近づける。

頬を上気させ、プルプルとまつ毛を揺らしながらセナは静かにその時を待つ。弥一はそのまま柔らかな唇に唇を合わせーーーーーー

『『『グゥオオオオオオオオーーーー!!!』』』

「「・・・」」

唇が触れる寸前で弥一とセナは固まる。
現れたのはオーガの集団。どうやらこれから倒しに行くオーガ達が巣から離れ、たまたま弥一達を見つけて襲いかかってきたようだ。

オーガは棍棒を天に掲げ、勇ましく声を森に響かせる。そのオーガには額に大きな傷があり、周りの個体より二倍近くでかい。どうやらこのオーガがオーガの集団のボスのようだ。

ボスオーガが声を上げると、周りのオーガも同じように棍棒を掲げ、あらん限りの声を上げる。

そんな光景に弥一とセナは顔を俯かせる。前髪に隠れて表情は伺えない。しかしその瞬間、二人の身体からは濃密な殺気が漂う。

その殺気に触れ、ようやくオーガ達は理解した。自分達は触れてはいけない者の触れてはいけない部分に触れてしまったことを。


「「邪魔をするなぁあーーー!!」」


ーーチュドォオオオオオオオオン!!!


森に巨大な爆発と爆炎が発生する。爆発は森の一部を綺麗に放射線状に吹き飛ばし、森に巨大なクレーターを作り出した。

クレーターの中心には弥一とセナが立っている。周りには吹き飛ばした木々と、オーガだった肉片の塊が散らばっている。

周りでパチパチと燃える残り火をセナと弥一が消化すると、辺りには静寂が訪れた。

「あっ、しまった。ついやっちまった・・・」

「角まで溶けてる・・・でも、邪魔したあいつらが悪い」

「ああ」

爆炎のせいでオーガの角まで溶けてしまい、弥一とセナはやっちまった、といった表情になる。しかし二人の辞書に反省という文字はない。せっかくのイチャイチャを邪魔された弥一たちに情けと容赦はありえない。

弥一とセナは「よし、残りも殲滅するか」「塵一つ残さない」と反省した様子がない。その目には殺意が漲っている。この時点でオーガ達の未来は決まった。「「戦争がお望みか?良かろう。ならば戦争だぁ!!」」と完全に殺るき満々だ。

それからしばらくした後、再び森に巨大なクレーターが出来たのは言うまでもない。

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「これで全部か。えーっと、十四体だけだな」

「エル達が三体で、さっきのが七体だから二十四体で、四体分の追加報酬」

「嬉しい臨時報酬だな。これだけ余裕があれば市場で上質なミスリルが買る」

「珍しい香辛料や食材も買える。あっ、弥一、余裕があったら大き目の鍋もいい?」

「ああいいぞ、とゆうかセナの料理関係優先で買おう。ミスリルなら今すぐ必要ってわけでもないし。美味いセナの料理が食べられるならそっちの方が重要だ」

「本当?ありがとう!」

追加報酬で手に入るお金の使い道を検討しながら、二人はエルとユノがいる場所に向かう。エルと先程、端末で集合場所の確認をしたのでもんだいない。

端末とは要はスマホだ。地下施設にあった数個のスマホを弥一が魔力で充電が出来るように改造し、通信も魔力を使って通信が出来るようにした、電話機能やL○NEも使える異世界対応スマートフォンだ!

セナにも同じようにスマホを渡している。スマホを渡した時のセナとエルの驚き様は面白かった。ユノの分は必要な鉱石が尽きた為まだ出来ていない、【都市ラッカン】で購入する予定だ。

たまに出てくる小さなモンスターも狩りながら集合場所に向かうと、集合場所にはエルとエルの膝の上でサニアに包まっているユノがいた。そして、その後ろには巨大な熊の魔物も一緒にいた。

「お疲れ様です。マスター、セナ様。ユノ様は疲れて寝てしまったようです」

「ああそれはいいんだが・・・どうした?そのフェーズⅡ」

そう倒れている熊の魔物はこちらの世界では災害級と呼ばれる魔物、フェーズⅡの魔物なのだ。この森は確かに危険区域だがフェーズⅡの魔物が出るほど危険でもない。

「先程待っている時、ユノ様が眠っていらっしゃるのに空気を読まなず襲ってきたのでこう、ビリッと」

そう言ってエルは未だ熊の魔物の額に刺さっているナイフにワイヤーから電気を流す。既に死んでいる熊の魔物はその電気でピクピクしている。

ピクピク、ビリビリ、ピクピク、ビリビリ。気持ち悪い。

エルは電気を流しては止めて、流しては止めてを繰り返す。電気を流すたびに白目を剥いてピクピクする熊は正直気持ち悪いのだが、エルは止めないらしい。ユノの睡眠を邪魔されそうになって怒っているようだ。最近エルもユノに対して過保護になっているところがある。

「ん、んにゅ・・・クー、クー・・・」

膝の上で寝ているユノが可愛い寝言と共に寝返りを打ち、エルの腰に抱き付いて再び規則正しい呼吸を繰り返す。

エルはしがみつくユノに嬉しそうに微笑んだ後、優しい手つきで頭を撫でる。セナはそんなエルを羨ましそうに見つつも、気持ちよさそうに眠るユノが可愛くて微笑みながらスマホでパシャリ。

弥一はその光景をみながら、熊の魔物の部位を削ぐ。災害級の魔物が出たのだ、流石に報告しないとまずいだろう。

「よし、オーガの角も全部回収したし、魔物の肉も回収したから帰るか」

「エル、ユノちゃんをお願い。サニアは私が」

「わかりました。んっ、ユノ様そこは・・・て、寝ているので聞こえませんか」

セナがサニアを抱きかかえ、エルがユノを抱きかかえると、ユノはエルの胸に顔をうずくめる。エルはそれがくすぐったくて、少し艶かしい声を発するが、当の本人はぐっすり眠っている。

弥一はへカートを呼び出し、三人はへカートに乗り込む。運転席には弥一、後部座席にはセナとエルだ。

「・・・パパぁ、ぎゅー・・・」

『く、くぅ〜ん・・・』

エルの膝の上で眠るユノが、隣のセナの膝の上で眠る幼獣サニアに弥一の名前を呼びながら、サニアの首元にギュッと抱きつく。サニアは少し苦しいようでジタバタ足を動かすが、ユノが抱きつく力を緩めると、ユノの顔に鼻を摺り寄せる。

三人は子狼と戯れる幼子の光景を見て萌えて悶える。弥一は後部座席の写真を撮ると、シートベルトを締めてへカートを発進させた。

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「え、えーっと、まず依頼報酬で二百万ネクト。次に追加報酬で四十万ネクト、さらに災害級魔物討伐の報酬で百五十万ネクト。全額、さ、三百九十万ネクトになります」

「おお、そんなに」

冒険者組合で依頼達成の報告を行い、今は報酬を受け取っている。

まさかたった数時間でオーガ討伐の依頼を完了してくるとは思わず、受付嬢はもちろん周りで見ている冒険者達も唖然としている。さらには災害級魔物も討伐して帰ったことにまたもや驚愕し、もう言葉も出てこない。

しかし弥一はそんなことは気にせず目の前の報酬額にホクホクだ。全員の要望の物を買っても全然余裕がある。

「えっと、書類と金額に間違えなければここにサインをお願いします」

「わかりました」

「はい、ありがとうございます。またの依頼をお待ちしております」

弥一は三百九十万ネクトの入った袋をコートのポケットにしまうと、テーブル席で待っている三人のテーブル席に座る。席に座るとユノがテテテと駆け寄り弥一の膝の上に座る。

「どうだった弥一?」

「聞いて驚け、全部で何と三百九十万ネクトだ!」

「「「おおー!」」」

ちょっとした大金に全員が声を揃えて驚く。個人にそれぞれ十万ネクト分けて残りは全員の共同管理だ。ユノのおこずかいは弥一が預かり、欲しいものがあればその度に渡すようにしている。

「もう夕方だから少し早いけど外食に行くか?近くに王宮御用達の料亭があるらしい。なんでも肉が凄く柔らかくでジューシーだとか」

「いくー!おにくー!」

「じゃあ一度着替えないとね。みんな少し汚れてるし、そんな料亭に行くならそれ相応の格好にしないと」

「よし!それじゃあ一度戻って行くか!」

今日の夕食が決まったという事で弥一達は一度宿に戻ることにした。行くならこの際そういった場所に相応しい服とか買っておくべきか?、などと考えながら冒険者組合を出ようとした、その時。

「緊急依頼!緊急依頼です!!今この場にいる第八階梯以上の冒険者の皆様は至急大会議室に集合してください!!」

カウンターの奥から物凄い勢いで組合の職員が駆け出して来る。そして職員はホールに響く大きな声でそう叫ぶと、ホールにいた冒険者達が騒がしくなる。

緊急依頼とは各都市や王国が冒険者に緊急で依頼すること。都市や王国だけではどうにもならないと判断された場合に、近くの冒険者組合に依頼するもの。

そして対象は第八階梯以上の高ランク冒険者となると、第八階梯以下では対処できない案件。つまりそれほどの脅威がすぐ近くで起きているということ。

職員はホールをぐるりと見渡すと、丁度出て行こうとした弥一達を見つけ、凄い形相で迫ってくる。

「第十階梯のヤイチ・ヒイヅキ様とセナ・アイヤード様、第九階梯のエルネウィア様ですね!?直ぐにお越し下さい!」

「一体何が?」

「説明は大会議室で行います!急いで!」

職員の剣幕に押され、ユノとサニアを受付嬢に預けた後弥一とセナ、エルは大会議室に連れて行かれた。

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案内されると中には、二十四人の冒険者達がいた。第十階梯の冒険者は弥一とセナだけだが、誰も彼も纏う雰囲気が強者の者である。

弥一達が着席してしばらくすると、組合長と思われる六十代のおじさんと、猫の獣人の女秘書が入ってきた。二人とも顔に緊張が現れている。そして組合長は会議室内を見渡すと、重々しく口を開く。

「冒険者組合ラッカン支部組合長コーネルです。忙しいなか及び立ててしまい申し訳ない。しかし、これは一刻の猶予もないのです」

組合長はそう言うと、一度深呼吸し、再度口を開く。

「つい先程冒険者組合同士の連絡石から、ここから馬車で十時間進んだところにある【都市メイカイ】近くの平原で、魔物とモンスターの混合の大軍による襲撃との報告が入りました。その数およそ二十五万」

その言葉に会場は騒然となる。魔物とモンスター、どちらも相当厄介なのにましてやその数が二十五万などという馬鹿げた数字。会場中から様々な声が上がる。

そんな中、弥一は嫌な予感に駆り立てられる。そして弥一のその予感は的中してしまった。

「その平原は昨日から勇者一同が訓練を行っていた場所です。いま現在は魔物の進行を勇者の方々が食い止めていますが、それも時間の問題です。王国からは
この事態に対し各冒険者組合から応援要請が掛かっています」

その言葉に弥一は息を呑む。組合長がまだ何か言っているが、耳に入ってこない。

脳裏には親友の健や彩、クラスメイトの姿。そしていつも幼い頃から側にいた、凛緒の姿が浮かぶ。

「弥一・・・」

「マスター・・・」

セナとエルが心配して弥一に声をかける。弥一はハッ、と意識を戻すと、顔を覗き込んでくる二人を見て「大丈夫だ」と一言言うと、一度深呼吸し、立ち上がる。

「セナ、エル、行くぞ。俺たちで殲滅する」

「うん、行こう・・・!」

「了解いたしましたマスター・・・!」

弥一の言葉にセナとエルも立ち上がる。弥一は頷くと、もうすでに暗くなった東の空を見る。

(もう失うもんか、絶対に。俺の魔術はそのためのものだ・・・!)



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