魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

ラッカン

エルネ街を出発してから数日後、草原をへカートが疾走していた。へカートに気が付いたほかの動物は逃げていき、稀に逆におびき寄せられてきた魔物が襲ってくる。

チーター型の魔物が草原の草むらに隠れ、地を這うようにこちらに疾走してくる。

そしてチーターはへカートの先で待ち構えるとへカートが来た瞬間に草むらから飛び出る。

『グァア!!』

瞬間、炸裂音と薬莢の音が響き、チーターが地に沈む。

弥一は発砲したレルバーホークの銃口を「フッ」と吹くと胸のホルスターにしまう。

「ここらあたりの魔物はやっぱりフェーズⅠしかいないんだな」

「ふつうフェーズⅡは森の奥深くなどに生息しているので、普段は出てこないんです。フェーズⅡはこちらの世界では災害級と呼ばれて、めったに発見されることもないそうです」

「へぇ~そうなのか」

本来フェーズⅡ、災害級の魔物は三パーティーで対処するような魔物だ。それを弥一たちは一人で倒しているのだが、本来は一人で倒せるようなものではない。

そんな会話をしながら助手席から外の景色を見ていると、後ろから小さな手が出てきて弥一の顔をペチペチと叩く。

「パパ~つまんない」

「そろそろつく頃だと思うからもう少し我慢してくれ」

「むー」

頬を膨らませてペチペチと不満をぶつけてくるユノ。まったく痛くないし、逆にそんな可愛さに癒されるのだが不満のままではいけない。

弥一は後ろに手をまわし、ユノを持ち上げるとそのまま膝の上に下ろす。すると途端に機嫌がよくなるユノ。

大好きなパパの膝の上で上機嫌なユノは「ふんふんふーん」と頭を揺らす。そんなユノをセナは少し羨ましそうな目で見ていたが、ユノの嬉しそうな表情を見ると微笑ましさの方が勝ったようだ。

そんなほんわかした空気のなか、へカートは草原を進む。

そしてそれから数時間後長い旅も終わりようやく目的地、【ラッカン】が見えてきた。




城門に着くと冒険者カードを取り出し、中に入る。【ラッカン】は異種族間の交流の場所でもある。そのため商業が盛んで毎日いろんな種族からの商品が並ぶ。南の城門近くは人間が多く住むところなのか、いまだ人間種しか見ていない。

弥一たちは周りを物珍しそうにしながら歩き回る。

「わかれて買い物でもして、夕方にまたここに集まるか?全員それぞれ見たいところもあるだろうし」

「そうだね、いろいろと見てみたい」

「それでは夕方にここでとゆうことですね?」

「ああ、それじゃあ分かれるか。ユノはどうする?」

「パパといく!」

「じゃあ各自夕方にここな?それじゃあまた後で」

そうして軽く探索をするため弥一たちは分かれる。セナとエルは二人で話をしながら街の中心街に向かった。

「さて行くかユノ」

「パパとでぇーと!でぇーと!」

「・・・セナから聞いたんだな。うん、わかってる、わかってた」

嬉しそうにはしゃぐユノを見てまぁ楽しそうならいいか、と開き直り、仲良く手をつないで街を散策する。

弥一とユノはまず先に街の西側を目指す。街の西側は主に工芸品や珍しい商品が販売されている店が立ち並ぶ場所だ。

そして街を歩いているととあるものが目に入る

「おお!本当にいた!」

頭から生えた猫耳に腰からはやした尻尾、そうケモミミがいるのだ!猫耳や犬耳、ウサギ耳などいっぱいいる!通りで行きかう人の半分近くは亜人で残りは人間だ。

獣人やドワーフなどの種類の亜人たちが多くおり、弥一はそんな光景にはしゃぐ。

するとユノが「むー!」と口を尖らせ弥一の裾をグイグイと引っ張ってくる。

「ママにパパがネコさんみみがはえてる女の人ばっかり見てたっていうもん!!」

「悪かったユノそれだけは勘弁してくれ。そんなことになれば俺は大変なことになる」

なんとも恐ろしいことを言ってくる娘に弥一は即謝る。そんなことになれば弥一は地獄を見ることになる、いや地獄で済めばいいが・・・

そんなわけで気を引き締めて改めて通りの店を見てみるといろいろな店がある。種族ごとのいろんな服を展示している服屋やよくわからない壺などを扱う骨董品店、珍しい宝石や魔石を扱う宝石店などがある。

「ユノはどこか行きたいところはあるか?」

「あそこ!おようふく見たい!」

ユノがさしたのは服屋だった。やはりユノも女の子なので可愛い服は興味あるようだ。弥一は男には少し場違いな感じがして入ることに抵抗があったが娘のためを思ってそこは飲み込む。

店に入るとうさ耳のお姉さんが声をかけてくる。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご洋服をご所望でしょうか?」

「この子が服を見たいと言って、よければ店の服をいくつか見てもいいですか?」

そういってユノを見せると、ユノの綺麗な銀髪と蒼い瞳の可愛らしい容姿に、店員は興奮したように声を上げる。

「まぁ!可愛らしいお嬢さんですね!ええもちろんどうぞ。これだけ可愛らしいのならどんな服でも似合いますね」

「ユノいろいろと見せてもらってこい」

「うん!」

「それではこちらに行きましょうか」

ユノは店員に案内されて店の奥に行く。弥一はそんなユノを見送ると暇になったので少し辺りを見てみる。

「へぇ~、和服もあるのか。和服を作る種族があるのか?それともメイカイからの輸入か?ふ~ん・・・おっ」

辺りの服を見て感想を思っているとある服を見つける。それを手に取ってしばらく弥一は考えていると、奥のほうから店員が呼びに来る。

意外と早かったなと思いながら弥一は案内されると、そこには店員に勧められたであろう服に身を包んだユノがいた。

ところどこにフリルのあしらわれた白のワンピースに少し大きめの麦わら帽子といったシンプルな感じだがそれがユノの元からの綺麗さと可愛さを引き立てとても可愛らしい。この時期は気温も高くなってくて夏のような感じ何で、涼しげな印象で丁度いい。

ユノは新しい服に少し恥ずかしいのかちょっぴり頬を赤くしモジモジとしている。

「パパ、どう?」

「すごくよく似合ってるぞ。うん、やっぱりユノは可愛いな」

「ほんと!?ありがとパパ!」

弥一に可愛いと褒められギュッと抱きつく。弥一はその愛らしさにユノの頭を撫でると、さらにユノは頭をうずめる。

「どうですか?他にもございますが」

「それじゃあもう少し見てみるか?」

「うん!」

それからしばらくユノのファッションショーが開催され、その度に親バカ弥一はユノを褒めまくり、セナにも見せるか、とスマホで撮影会も行われ、店内の他の客もユノの可愛らしさに惹かれ店内がてんやわんやな状態になった。結局、最初のワンピース以外にもいくつかの服を買い、弥一とユノは店を後にした。



「ふんふんふーん!」

くるっと回りワンピースの裾をフワッとはためかせながら上機嫌に鼻歌を歌うユノ。周りの通行人はそんなユノを見て微笑んでいる。

弥一はそんなユノに微笑みつつ、ユノを担いで肩車する。

ユノは頭の上でキャッキャはしゃいでいる。そのまましばらく歩くと少しの小道に入ったところにある店を見つける。

「なんだここ?」

気になって中に入るとそこは鍛冶屋のようだ。壁には盾や剣が飾ってあり、店の中には誰もいない。

ユノを降ろし中を色々と見てみる。どの武器も質が良く職人の高い技量がうかがえる。剣を手にとってみると見た目の割に軽い。おそらくミスリルが混ぜ込んであるのだろう。

しばらく武器を見ていると奥の方から物音が聞こえて来た。

「なんだ客か?」

高圧的に奥から出て来た男が言う。声と顔の厳つさ似合わず背は低い。おそらく土妖精ドワーフだろう。

顔の厳つさに怯えたユノは弥一の後ろに隠れる。

男は「ふん」と鼻を鳴らした後言う。

「それで何をしにきた」

「少し気になって立ち寄っただけです。ところでここは鍛冶屋でいいんですか?看板も何もないので」

「ああ、ここは俺の鍛冶屋だ。俺の名前はグウラ」

「ヤイチ・ヒイヅキです。それでここって武器の整備とかってやってもらえます?」

「・・・見せてみろ」

弥一はリュックから【蒼刃】を取り出してグウラに渡す。【蒼刃】は普通の武器とは違い耐久力は凄まじいのだが、だからと言って手入れしないわけにはいかない。

弥一自身も手入れはできるのだがあくまで応急処置程度のもの。地球では知り合いの鍛冶屋に整備をお願いしていたのだが、こちらに来てからは本格的な手入れは一度もしていない。

王都で腕のいい職人を見つけてやってもらおうと考えていたのだが、さっきの武器を見て十分な腕だと判断したのだ。整備するなら早いほうがいい。

グウラは【蒼刃】を抜くと一瞬目を見張る。そして【蒼刃】を鞘にしまう。

「三日だ。確かに手入れはされているが根幹の部分がボロボロだ。それにこれだけの業物になると整備に時間がかかる」

「それじゃあお願いしてもいいですか?」

「料金は整備が終わってからだ」

「ありがとうございます」

礼を言った後弥一は怯えるユノを抱っこして店を出てくる再び散策をする。

それからしばらく、ユノが面白がって、よくわからないゲテモノ料理を食べたり、工芸品店で魔石を購入したりして街を散策していると気がつけば夕暮れどきだ。

歩き疲れて眠ってしまったユノをおんぶして集合場所に向かうとすでにセナとエルが待っていた。

「二人ともどうだった?」

「うん、エルと二人で買い物できて楽しかったよ」

「私も装備品の補充と"たけぼうき"という箒を買えたので満足です。これでお部屋の掃除がはかどります」

「エル、竹箒って落ち葉とかを掃く室外用の箒だからな?」

「そうなのですか!?」

室外用だと知って肩をしょんぼりさせるエル。弥一とセナは苦笑いしつつ、三人は宿屋へ向かう。

宿屋で部屋を四つ借り、宿屋の一階で夕食をとる。

その後風呂にも入り、四人は弥一の部屋で喋っていると疲れたユノがそのままぐっすり眠ってしまったので今日はここでお開きだ。

弥一はユノをユノの部屋に運んで寝かしつけると部屋に戻る。部屋に戻るとエルはもうすでに部屋に戻っており、部屋にはセナしかいない。

「セナにプレゼントがあるんだ」

「え?プレゼント?」

弥一はそういうとリュックからプレゼントを取り出す。それは女性物の浴衣だった。これはユノの服を買った時に一緒に買っておいたものだ。

「うわー!きれい」

「セナに似合うと思ってな。どうだ着てみてくれないか?」

「うん!ちょっと待っててね」

浴衣を大切そうに抱え部屋から出て行くセナ。弥一は浴衣姿のセナに期待を膨らませながらしばらく待っているとセナが戻って来た。

「は、入るね」

少し上擦った声でセナがドアを開けて中に入ってくる。

そして弥一はその姿に息を呑む。

「どう?似合ってる?」

少し深い青色に、華やかな花の柄の浴衣。綺麗な蒼髪を結っていて白いうなじが見えている。全体的に青い浴衣がセナの蒼髪を相まってとても素晴らしく似合っている。
化粧などしなくてもきめ細かい白い肌は、深い青と反対的で逆にセナ自身の綺麗さを引き立てる。

セナは少し頬を赤らめながらも、微笑んでその場で回ってみる。

弥一はしばらくその美しさに目を奪われ放心状態になった。

「どうしたの弥一?」

セナは弥一のところまで来て目の前で手をヒラヒラさせると、ハッ!と弥一が戻ってくる。

「あ、ああ、すまん。セナがあまりにも綺麗だったから、魅了されてた」

「・・・!!そ、それならよかった」

弥一の真っ直ぐな気持ちにセナは顔が真っ赤になる。その赤くなり恥ずかしがる姿が、浴衣の奥ゆかしさと相まって弥一はさらにグッとくる。

「・・・も、もう一回言って」

「綺麗だ。本当によく似合ってる」

「もう一回」

「綺麗だ」

「もう一回」

「綺麗だ」

「もう一回!」

「すごくきれ、んっ!」

弥一が言葉を続けようとした瞬間、セナが飛び込んできて弥一の口をふさぐ。唇で。

弥一は突然のことに驚くもすぐに受け入れ、細い腰に手を回す。

しばらくそうして唇を触れ合わせているとセナが唇を離して、俯く。

「やっぱり、もういい。これ以上は恥ずかしい・・・」

「何度でも言ってやるぞ?セナ、すごく綺麗だ」

「う、うう・・・でも、ありがとう弥一。私すごく嬉しい」

「ならよかった」

二人は抱き合った状態のまま見つめ合い、お互いにクスクス、と笑う。しばらくそうして見つめ合っていると、自然と二人の距離は縮まっていき、もう一度唇を触れ合わせる。今度は深く。

「ちゅ、んちゅ・・・くちゅ、はむっ・・・くちゅ、んっ・・・はぁ、はぁ、んっ」

弥一とセナはお互いに強く抱き合い、お互いの舌を濃厚に絡めさせる。何度も息継ぎをしながら、求めるままに身を任せひたすら熱いキスを続ける。

「んちゅ、んっ・・・あんっ!やいち、いきなりだいた、んっ!」

弥一は浴衣の胸元から手を入れて直接、柔らかく汗でしっとりとした胸を揉みしだく。セナがビクンと喘ぐが、弥一はその口をキスでふさぐ。そしてあることに気づく。

「セナ、もしかしてつけてないのか?下着」

「んっ、はぁ、はぁ、だって着付け手伝ってもらう時にエルが浴衣は下着を着けないってそう言ってたから」

「それ騙されてるぞ。日本でも浴衣に下着を着けない文化なんかない」

「ーーーッ!!エル、許さない・・・!」

その言葉にセナが一気に赤くなり、エルへの恨みを吐く。外国人がよく間違えたりすることだが、まさかそれが異世界でもだとは思わなかった。

まぁでもそれで恥ずかしがって涙目のセナは愛らしく、ナイスエル!と内心ガッツポーズだ。

「全くセナはドジだな」

「う、だ、だって・・・」

「でもそれが凄く可愛い。愛してるセナ」

「んっ!ちゅっ、んんっ・・・やいち、はげしい!・・・んんっ!もっと、もっと、きしゅ、はむっ・・・んっ」

二人はさらに燃え上がる。熱いキスは二人の脳髄を溶かしていき、理性を忘れさせる。セナは腰に力が入らなくなり、ガクッと弥一にもたれかかる。

弥一はそのままベットにセナを押し倒す。大きくはだけた胸元と裾から覗く、艶かしい胸と太ももは、セナの上気して潤んだ瞳と相まって一種の幻想を生み出し、その魅力に弥一は完全に取り憑かれる。

「まって弥一、このままじゃせっかくの服が汚れちゃう」

「【復元魔術】をかけるから大丈夫だ。それにもっと綺麗なセナを見ていたいんだ」

「もう、弥一の変態さん、目が凄くエッチ」

「そうゆうセナだって下履いてないじゃないか」

そう言って意地悪くいうとセナは顔を真っ赤にして裾を抑える。

「も、もう知らない!」

プイっと顔を背ける。弥一は「ごめんごめん」と笑いながら謝り、セナの頬に手を当てキスをする。

「許してくれるか?」

「・・・いつもよりたくさんしてくれないと許さない・・・」

涙目で恥ずかしそうに呟くセナは、とても可愛く弥一の感情は更に高まる。

「ああ、もちろんだ。今夜は寝かせないぞ」

「うん、来て」

再び唇を熱く合わせる。そして熱く燃え上がり、弥一の手は魅惑の太ももに伸びていきーーー 


その夜は港の夜風に紛れて、二人の息遣いと声が響いていた。

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