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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

似た者親子

コンコンとノックする音が聞こえる。それにつられてドアの方を向くとドアが開き、セナが現れた。

「弥一。調子はどう?」

「ああ、セナか。おう、随分と良くなったぞ」

「なら良かった」

そういってセナは弥一の横の椅子に座る。そしてその弥一はいうと全身包帯だらけの状態だ。

インサニアとの闘いと、ユノを救うために行った複数の儀式魔術同時行使によって当の昔に限界を超えていた身体が本当にガチの限界になり、身体中無事じゃないところがないくらいにボロボロになったのだ。

そのせいで弥一は【フェルセン大迷宮】の地下施設で丸々一週間目を覚まさず、一昨日ようやく目が覚めたのだ。

【治癒魔術】で身体を直せばいいと思うが、【治癒魔術】は連続で使用した場合効果が薄くなり、最終的には効かなくなってしまい、時間を置かなければいけない。

そのためにすでに【治癒魔術】の効果を受け付けない弥一は【治癒魔術】の効果が戻るまで自然治癒以外の方法がないのだ。まぁ弥一の身体は人外の化け物じみたスペックを持ち、自己治癒能力も高いため一週間もあれば、動けるようにはなる。ただ、ーーーー

「魔術の方はどう?」

「あー、それはまだダメだな。今のままじゃ魔術は一切使えん」

そう、弥一の魔術回路は儀式魔術の同時行使で回路を行使し過ぎたため、現在は一切の魔術が扱えない。

「どれくらいで使えそう?」

「あと四、五日ってとこだな。魔術が少しでも使えれば魔術回路の修復も少しづつ出来るから思いのほか早く治る」

「それなら良かった。あ、ごはん持ってきたけど今食べれる?」

そういって手元のお盆を見せると途端に弥一が目を輝かさせる。メニューは焼き鮭にご飯と味噌汁とそこまで胃に重くないものだ。

「おぉ!食べる食べる!お腹が空いてて死にそうだったんだ!」

「ふふ、大袈裟なんだから。はい、あーん」

「あーん。もぐもぐ・・・うまい!昨日までは味の薄いお粥だったから正直、食べた気にならなかったんだ」

「そう思って今日の味付けは少し濃いめにしてみたの」

えっへん!と胸を張るセナに弥一は流石俺の嫁!完璧過ぎる!、とセナを褒め次を要求する。腕はすでに治っているのだが、こんな時でもイチャイチャを忘れない夫婦なのである。

その後もセナに食べさせてもらいながら、もぐもぐ、イチャイチャ、もぐもぐ、イチャイチャ・・・と食べ進めていく。

「はー、美味しかった。ご馳走様でした」

「美味しかったなら良かった。・・・そういえばデザートもあるけどどうする?」

「ん?デザートもあるのか?」

セナが持ってきたのはお盆に乗った料理だけで、その料理はたった今食べ終わったばかりだ。どこにデザートが?、と不思議に思っているとセナが頬を少し上気させながら上体を乗り出してくる。

そして恥ずかし混じりの甘い艶やかな声で迫ってくる。

「デザート、食べる?」

そして弥一の理性は完全に崩壊した。

目の前の柔らかそうな唇に釘ずけになり、喉をゴクッと鳴らし目が獣になる。
セナはキスがしたくて建前のようにキスを要求し、結果は見事成功。むしろいつもとは違ったアプローチに弥一の興奮をさらに煽る。

「じゃあ、たっぷりいただこうか」

「うん、どうぞ。」

弥一はせなの後頭部に手を回し引き寄せる。そして胸の中から潤んだ目で見上げてくるセナの顎をクイッと持ち上げ、その柔らかい唇に食らいつく。

「んっ・・・ちゅ、はむっ・・・んちゅ・・・いきなり、大胆・・・んんっ・・・!」

柔らかい唇を奪い、その味を味わう。この世でもっと甘い極上のデザートは弥一の脳髄を痺れさせ、溶かしていく。

セナも久しぶりのキスに熱く、情熱的に燃え上がる。目をとろんとさせ、積極的に舌を絡ませて、セナもこの世でもっと甘い極上のデザートを堪能する。

お互いに息が続かなくなり、ぷはっ、と唇を離せば、二人の間を透明な糸が艶かしく結ぶ。

「美味しい?」

「最高だ。ずっと味わっていたいくらいに」

「ふふ、弥一のエッチ。」

そういって妖艶に笑うとさらに迫ってくる。

「・・・じゃあ、もっと食べて?」

そういって弥一のベットに片膝をついて乗り上げ弥一の頬に手を当て、もう片方の手でスカートの裾を少し摘んで持ち上げて誘惑してくる。一体誰がこの魔性の果実を前に断れるだろうか。いや、いない。

「キスだけで終われる自身はないぞ?」

「いいよ、むしろ・・・私の全部を食べて、あ・な・た」

そういって二人は火傷しそうなほどの熱い視線を絡めて、セナの服のボタンをゆっくりと外して言いながら、徐々に顔を近づけーーーーー

「パパ〜!あそぼ〜!」

「「!?」」

ドアがバンッ!と勢いよく開き、登場したのは愛しの娘のユノだった。

サラサラの銀髪をなびかせ、夏の太陽のような天真爛漫な笑顔で部屋に入ってくると、絶賛イチャラブ中だったパパとママを見つけ「あー!」と指を差して声を上げる。

二人は「まずい!!」と思って咄嗟に距離をとり、セナは、ばっとはだけた服を隠す。

「ママずるい!ユノもパパとちゅーしたい!!」

そういってステテテー!と駆け寄ってくるとそのままパパにダイブする。バレなくて良かった、と安堵していると腹部に衝撃が奔る。

「ぐぼっ!ユ、ユノ、パパとママは決してちゅーをしようとしていたわけでは・・・」

「うそ!パパとママちゅーしようとしてた!ユノもパパとちゅーしたい!」

「え、えーと・・・セナ!助けてくれ!!」

「ユノちゃんもっとおねだりしたらパパしてくれると思うよ」

「セナさん!?」

セナの裏切りに弥一は思わず叫ぶ。するとセナは苦笑いしながら、ごめんね、と手を合わせてくる。それが、ユノの意識を二人がしようとしていたことから逸らす為だと理解すると、まぁしかたない、と諦める。

「パパ、ユノとちゅーイヤなの・・・?」

「うっ、・・・!」

泣きそうになっているユノの表情を見て断れるわけもなく、ユノの頬っぺたにちゅっとキスを落とす。

すると途端に泣きそうな顔から嬉しそうな顔になり、「パパ大好き!」とギュッと抱きついてくる。そして綺麗な蒼い瞳・・・でこちらの瞳を覗き込んだ後、にへらと笑う。

ユノの目は移植手術のあと紅い瞳から蒼い瞳に変化した。それはおそらくセナの魔術回路を組み込んだからだと思われる。

魔術師にとって目は最も重要だ。そして目と魔術回路は深い関係性がある。

そのため今回セナの魔術回路を組み込んだからだため、セナと同じ蒼い瞳に変化したのではと弥一は推測したのだ。

もちろん根拠などないただの推測だが、目の機能には問題がないようなので、そういった結論のままだ。

ユノの目とセナを見たとき弥一は、本当の親子みたいだな、と思った。いや、実際に本当の親子だろう。

ユノは二人の魔術回路を授かり、そして何よりとても深い愛情を受け取っている。それは血縁上の親子ではなくとも正真正銘、本当の親子の姿だ。

愛娘の頭を撫でながら弥一は思っているとユノがお返しとばかりに頬にキスをしてくる。そんな幸せがとても嬉しく弥一はさらに頭を撫ぜて可愛がる。

「む。ユノちゃんばっかりずるいな〜」

「じゃあママも一緒にパパにちゅーしよ!」

「え?あ、ちょ・・・!!」

「いいね。いくよユノちゃん!えい!」

「えい!」

「どわぁ!!」

ユノとセナが同時に弥一に飛び込んでくる。それを優しく弥一は抱きとめるが、その際身体中が悲鳴を上げ、思わず涙目になる。

でもそれ以上にこんなやりとりが幸せで弥一は心から笑う。

セナとユノの両頬に同時にちゅっとキスをするとお返しとばかりに弥一もキスをする。そしてそのまま親子三人で横になる。

「そういえばユノ。何して遊ぶ?」

「いい!このままパパとママとお話ししたい!」

「ハハ、そうかそうか」

「だったらどこか行く予定でも立てる?」

「そうだな、王都までの道のりの間には幾つかの観光地があったはずだし」

「おでかけ!?どこでもいいの?」

「ああ!ユノはどこか行きたいところはないか?」

「えーとね、えーと・・・」

そんな風に幸せな一時を感じながら、家族三人で旅行プランを考えていく。

するとドアがこんこんとノックされ、入室を促すと現れたのはエルだった。

「皆さんここにいらしてたのですね」

「どうかしたのかエル?」

「ユノ様の定期診断の結果が出ましたのでお持ちしたのですが、出なおしましょうか?」

「いや、いい。ありがとう、診断結果を見せてくれ」

「畏まりました」

そして差し出された診断結果を見て、ほっと一安心する。数値も軒並みどれも標準で、着実に魔術回路にインサニアの魔術が適合していっている。

このまま順調に行けばもうインサニアの魂に侵食されることはない。しかも逆にインサニアの力をユノ自身が引き出して利用することも出来るかもしれない。

診断結果をエルに渡すとそういえば、と聞いてくる。

「皆さん何をなさっていらっしゃったのですか?随分と楽しそうでしたけど」

「ん?ああ、旅行プランをーーーー」

「パパとママちゅーしてたからユノもちゅーしてた!!」

と弥一が旅行の説明をしようとした
瞬間、ユノが嬉しそうに爆弾を投下してくる。

弥一とセナは焦ってあたふたしていると、それで当時の状況を瞬時に理解したエルが頬を少し赤く染めつつ、苦笑いでユノに話しかける。

「ユノ様、次からマスターのお部屋に入る際は必ず中に確認を取ってからにしましょうね?」

「・・・?わかった!エルお姉ちゃん」

「本当にユノ様は可愛らしいですね」

元気よく返事したユノが愛らしく、エルはユノの頭を撫でながら横目で弥一たちを見る。

二人はありがとう、とエルに感謝し、エルはいえいえ、と少し頭を振る、とーーーー


「エルお姉ちゃんもパパにちゅーする?」


ユノが今度は核爆弾を投下してくる。その爆弾のせいで和んだ場に、一瞬にして終末期が訪れる。弥一、セナ、エルはピシッと石像のように固まり、終末期の原因である魔王ユノ様は、可愛く顔をコテンッと傾げている。

「ユ、ユノ?俺の嫁はセナでエルは違うからな?キスってのは好きな人同士でしかしちゃいけないんだ」

とその言葉にユノはうーん、と考える。考え直してくれたか、と安心するとユノが言ってくる。

「パパはかいしょうなし?」

「ちょっと待てユノ。いったいそんな言葉どこでも覚えてきた」

「パパのけんきゅうしつの本にそう書いてあった!」

「あのクソ親父!!ユノが変なこと覚えたらどうしてくれる!!ユノそれは没収だ!」

「ひどいパパ!まだ『正しいキスのしかた』までしか読んでないのに!!」

「すぐに没収だ!てかそれどんな本だよ!?そんなものペイしなさい!ペイっ!」

「やー!この方法でパパをめろめろにしてちゅーするの!!」

「もう既にパパはユノにメロメロだしキスなんて幾らでもしてやるからすぐにゴミ箱にボッシュートしてきなさい!!」

そんな漫才みたいなやり取りを見ながらセナとエルは、ははっ、と苦笑いしながら戯れる親子をほっておいて二人でガールズトークをする。

それから結局、ユノは、おはようの挨拶とおやすみの挨拶にはキスをするという条件をつけ、弥一はそれを快く承諾し、本をゴミ箱にシュゥウート!した後、セナにゴミ箱ごと焼き払ってもらい地下施設を全力でまた本がないかを探し回り、片っ端からセナが焼き払った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

それから数日後、弥一はまだ魔術は使えないが身体の方はある程度回復し、ユノの魔術回路も完全に馴染んだのでエルネに戻ることにした。

「それじゃ、運転頼むなエル」

「お任せ下さい」

鍵でへカートを呼び出し、運転席にエル、補助席にはセナ、後部座席には弥一と弥一の膝の上にユノが座る。

「それでは出発します」

床かが沈んでいき例の通路に降りる。手前から奥に向けてライトが点灯し通路が現れる。

「すごい!かっこいい!」

ユノが目をキラッキラッに輝かせ弥一の膝の上ではしゃぐ。弥一もその気持ちはよくわかるため、「そうだな」と目の前の銀色の髪を撫でる。

はしゃぐユノが落ちないようお腹に腕を回してしっかりと固定する。それを確認してエルはアクセルを踏み込む。

ギュワァアアーーー!!とタイヤを回し地面を蹴り、発進する。ぐんぐんと加速していきやがて奥の扉が開くと光が差し込む。

光を抜け、外の世界に飛び出す。一度大きくバウンドすると悪路を走り、山を下る。真上から照らす太陽の光を浴びながら、エルネ街に向けてへカートは走り出した。






走らせること一時間、ようやく城門が見えてきた。城門から離れたところでへカートを停める。

膝の上で身体を弥一に預けて、夢の世界へ旅立っているユノの顔はとても幸せそうで、起こすのが忍びないが声をかける。

「ユノ起きろ〜」

「ん、んにゅ・・・スー、スー」

「はは、ダメだな」

声をかけても起きないユノに三人は微笑み、弥一は起こさないよう慎重にユノを抱きかかえて降りる。

へカートをしまうと城門まで歩いて向かう。城門に辿り着くと、門番に冒険者カードを見せて、中に入る。

久し振りのエルネは相変わらず祭りのような賑わいを見せており、そんな雰囲気に弥一はすごく懐かしい気分になる。

セナも同じようでスーッと空気を吸っている。エルは周りを珍しそうに眺めている。

時間はお昼前、街は昼食をする人で溢れている。そんな人々を見ていると弥一たちもお腹が空いてきた。

「弥一、あそこのお店いかない?」

「俺もそう思ってたとこだ」

「マスター、あのお店とは?」

弥一とセナだけで通じる会話にエルは疑問を投げ掛ける。

「よく俺たちがいく露店があるんだ、ユノが好きなお店でな」

そう言って広場に向かって歩き出し、程なくしてそのお店が見えてくる。すると肉の香ばしい香りが漂ってきて、その匂いにつられユノが目を覚ます。

「ん・・・んん、おはよう、パパ・・・」

「ああ、おはよう」

「・・・」

「・・・?どうした?」

眠たげな目でこちらをジーッと見つめるユノに話しかける。

「パパ、ちゅー・・・」

「え!?ここでか!?」

「おはようの時はちゅーって言ったもん」

「それはそうだがなぁ・・・はぁ、わかったよ」

こういった弥一を翻弄する手口は本当に親子だな、と思いながら弥一はおでこにキスを落とす。

「おはようパパ!」

「ああ、おはよう。全く本当にそっくりだな」

キスした後の嬉しそうな表情も、蒼い瞳と相まって本当に親子そっくりだ。

そしてその母親は今現在エルと、お店やエルネ街のことを話しながら、今度は一緒にお買い物しよう、とガールズトークに花を咲かせている。

と、四人は露店の近くまで来る露店のおっちゃんがこちらに気がついて手を挙げれくる。

「よう!にいちゃん随分と久し振りだな!また買いに来てくれたのか!?」

「お久しぶりです。ええ、エルネ街に帰ってくるとどうしても食べたくなって。それでガル豚包みを四つ下さい」

「嬉しいことを言ってくれるね!はいよ!ガル豚包み四つね!おっ、この間のお嬢ちゃんじゃないか!」

「こんにちは!おじちゃん!」

おっちゃんに声を掛けられてユノは元気に挨拶をする。

「それでそちらのお嬢さんは?」

「初めまして、私はマスター・・・弥一様の従者でございます」

声を掛けられてエルが丁寧に挨拶するとおっちゃんは弥一を見る。

「にいちゃん、会う度に女増えてねえか?」

「そ、そんなことは・・・」

弥一はハハハッ、と乾いた苦笑いをしながら、煮え切らない返事をする。

そうしているとおっちゃんは笑いつつ、完成したガル豚包みを差し出してくる。

「はいよ!ガル豚包みお待ち!サービスで千ネクトでいい!」

「ありがとうございます。はい、千ネクト」

「毎度!またな、にいちゃん!」

おっちゃんに手を振って別れた後は四人で座れる場所を探して座る。

「ママ!早く!」

「はいはい。待ってね」

大好物を前に待ちきれないユノはセナを急かし、セナは微笑みながら袋を開けてユノに渡す。

ユノは目を輝かせ「いただきます!」と言ってその小さな口を豪快に開けて、かぶりつく。

それを見て三人も「「「いただきます」」」とガル豚包みを食べ始める。

弥一とセナは久し振りの味に懐かしく感じ、エルは初めての美味しさに目を見開いて驚いている。

弥一は、はじめに食べ終わるとそのまま
背もたれに身体を預けて未だ食事をしている三人を見る。

口の周りを汚しながら食べているユノをセナとエルが甲斐甲斐しく世話を焼き、ユノはそれでも食べ進めて、太陽の笑みを浮かべている。セナとエルもそんなユノの表情を見て笑っている。

弥一が守った本当に何気ない幸せがそこにはあった。

(本当に守れてよかった・・・父さん、俺、守りたいものちゃんと守れたよ)

上を向き、そこに広がる青空を見ながら一人、そう思った。

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