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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

【七夕特別ストーリー】家族の願い

ユノを引き取ってから数日後。
弥一一家は現在、山の中を歩いていた。
冒険者組合で薬草採取の依頼を受注し、薬草を山に採りに行くと一緒にユノを連れてちょっとしたハイキングに出ていたのである。

山の麓で目的の薬草を採取し終え山を下っていると弥一に肩車をされているユノが何かを見つけたようで指を差す。

「パパ、あれなに?」

「ん?あっ、あれは竹じゃないか・・・!」

「たけ?」

ユノが差した方向に生えていたのは日本人に馴染み深く、松、梅とともに厳寒の三友と呼ばれる植物、そう竹だった。

その竹は道から少し離れたところに密集して生えており竹林を形成していた。
歩み寄って竹に触れたり観察したりすると本当に竹だった。

「パパ、たけってなに?」

「竹っていうのは俺の世界にも生えていた植物で、こんな風にしなるのが特徴的な植物なんだ」

そういって竹を軽く叩くと竹は折れることなくしなって曲がりまた元に戻る。ユノとセナも触ってみるとその曲がる竹に面白くなる。

「パパ!パパ!すごい!ぐいーんってまがる!」

「こんな植物は初めて見る。この植物は何かに使えるの?」

「工芸品や楽器、建築なんかの材料になったりもするな。工芸品なんかでいうとそこに生えている小さな竹、笹っていうんだがそれだけで籠なんかを作ったりできる」

「へぇ〜」

セナは笹だけで籠を作れることに驚いているようでユノと一緒に笹をいじっている。

「少し持って帰って籠でも作ってみるか?作り方なら知ってるし」

「つくるー!」
「面白そう!」

そういうわけで三人は数本の笹を回収し、エルネ街に戻っていった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「弥一くん」

「あ、クライトさん」

冒険者組合の受付で依頼完了の手続きをしていると秘書を連れたビルファが声をかけてきた。ビルファの手には書類の束があり眼鏡を掛けていることから仕事終わりだったのだろうか。
ビルファは弥一が手続きを終えるのを待って話しかけてくる。

「このあと少し時間はあるかい?よければ少し相談に乗って欲しいんだ。」

「はい、別にいいですよ。セナとユノも一緒でいいですか?」

「もちろん。それなら近くの喫茶店でお茶でもしながら話そう」

ビルファは秘書に一言いって別れそのまま組合の外に出る。弥一もセナとユノを連れて後を追う。



案内された喫茶店は、静かな雰囲気の古みのあるお店でビルファと弥一以外にはカウンターの向こうに店主がいるだけだ。

テーブル席に座り飲み物を注文した後ゆったりとビルファの相談が始まる。

「相談というのは毎年この時期流星群が見れてね。その流星群を祝ってエルネ街全体をあげて行うお祭りについてなんだ」

「お祭りですか?でもなんでビルファさんが?」

エルネ街全体をあげてのお祭りなのだからそういったことは街の領主などがやるべき事で冒険者組合の組合長であるビルファが関係してくるとは思えない。

「領主と知り合いでね。今年から新たにお祭りをさらに盛り上げる何かを追加しようということになってねそれで僕にも考えてくれと言われたんだがなかなか良い案が思いつかなくて。そこで異世界の勇者である君ならなにか良い案があるんじゃないかと思ってね」

「ああ、そういう事ですか」

「それでなにかないかい?」

「そうですね・・・」

地球の日本のお祭りでなにかそういったイベントはあっただろうか、と考える。弥一もお祭りは好きでよく凛緒とよく行っていたのでお祭りには詳しいがこの世界の文化に沿うものなどは考えつかない。

どうしたものかと悩みセナの方を見るとセナはユノと一緒に笹で編み物をしていた。
それを見て弥一は思いつく。

「七夕なんてどうです?」

「たなばた?それはどういったものだい?」

「俺たちの世界では七月七日に七夕という笹に願い事を書いた紙を括り付ける行事があるんです」

旧暦七月七日の夜に天の川の両側にある牽牛星と織女星が一年に一度相会するという伝説に基づいて行われる星を祭る行事で、今では笹に歌や願い事を書いて飾り翌日笹を川に流す。

また七夕は魔術的な意味も持ち、笹を川に流すこれを神送りといい、神送りの際に穢れを祓う禊の儀の意味をもつ。

七夕を提案したのは昼に山に薬草採取の時に見つけた竹林を思い出したためだ。

「なるほどそれなら準備に時間を掛けず街全体で楽しめそうだね。それに山のあのタケの処分に困っていたからちょうどいい。ありがとう弥一くんおかげで助かったよ」

「いいえ、これくらいで良いならいつでも相談して下さい」

ビルファからの相談は意外とすんなり解決しその後ビルファは弥一の意見を書類にするため退出し、弥一たちも家族で少しお茶をしてその日は宿に戻った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

相談のあった日から三日後のお昼、エルネ街全体をあげて行われるお祭りの始まりだ。街の至る所には笹が並んでいる。

祭りの主催側が登録した露店でなにか一つ買うと短冊が貰えるようで街では様々な人達が笹に願い事を書いた短冊を飾っている。

大通りを散策しながら弥一一家も祭りを楽しむ。いつも祭りのように活気のあるエルネは今日はさらに一段と盛り上がっていた。

「パパあれなに?」

弥一とセナに挟まれて手を握っているユノが露店に目を向ける。そこでは子供たちが奥の棒に向かって輪っかを投げている。

「輪投げだな。あの輪っかを向こうの棒に投げて入れるんだ」

「ユノちゃんもやる?」

「やる!」

輪投げ屋に向かい、お金を払って輪っかを受け取る。
輪っかを受け取ったユノは豪快に振りかぶり「えい!」という可愛らしい声を上げて、投げる。
しかしユノの身長では届く距離に限界があり棒に届かない。

「パパとどかないよ・・・」

「それじゃあこれならどうだ!」

しょんぼりするユノを抱き上げ胸元辺りの高さに持ってくる。ユノはそのままパパに抱っこされた状態で輪を投げる。

高いところから投げた輪はそのまま落ちてゆきーー見事棒に引っかかった。

「ありがとうパパ!」

ギュッと弥一の首に抱き着き頬をくっつけてくるユノを片腕で抱っこし、店主から景品を受け取る。

受け取った景品は三枚の短冊。短冊は十枚集めると銀の短冊と交換ができ、銀の短冊を十枚集めると金の短冊と交換できるらしい。こうしてお店の景品として短冊を用意する事で短冊を集めやすくしている。

「三枚ゲットしたけど折角なら最高ランクの金にしたくないか?」

「する!キラキラのたんざくがいい!」

「家族全員の金狙ってみる?」

「そうだな。それならイベントの景品に確か金の短冊を出してるところもあったし、イベントでも出てみるか!」

「「おー!」」

親子三人は全員金の短冊にするべくイベント参加を決意する。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

街の中心部にある競技場は周りに比べより一層盛り上がっていた。

石とレンガで作くられた円形型の競技場。中央のフィールドを囲うように三層構造で外に行くにつれ高くなっている観客席は現在全ての席が埋まっていた。

『それではいよいよ魔法競技祭決勝戦の開始です!!』

会場全体が湧き上がり震える。今回の祭りの目玉イベントの一つである魔法競技祭には多くの観客が押し寄せていた。

普段あまり目にする事のない魔法を見る事のできるイベントはかつてないほどの盛り上がりを見せている。

この競技祭はお互いに一つ魔法を使ってどちらの魔法が凄いかを審査員が審査するという安全な競技だ。魔法での試合をしようとした場合観客に被害が及ぶかもしてないという理由で戦う試合ではなく魔法を披露するだけのお祭りだ。

『今回の魔法競技祭の参加者は過去最高の百二十人!そのほとんどが一流の魔法師ばかり!そんな彼らを押しのけ最後の決勝戦まで登りつめた二人をご紹介致しましょう!!』

司会がフィールドの中央で対峙する二人のうち、一人を指す。

『赤コーナー、冒険者組合所属で最高ランクの第十階梯の冒険者でなんと全ての魔法を【無詠唱】で扱う女、セナ・アイヤード!!』

セナが紹介されると会場全体が湧き上がる。セナの美しい容姿に見惚れ息を呑む声も所々聞こえる。

『続いて青コーナー、こちらも同じく第十階梯の冒険者にして、なんと、信じられないことに!!あの四天武神の『紅碧の拳神』と『碧撃の弓神』を倒した男、ヤイチ・ヒイヅキ!!』

セナの時の歓声に劣らず弥一への歓声も大きい。それぞれの武を極め英雄と名高い四天武神の二人も倒したのだから観客からの関心も高い。

『それでは先行はセナ選手、始め!』

「【豪炎鳥】!【冥水竜】!」

開幕と共にセナが魔法を発動。炎と水の柱が渦を巻き立ち昇り天に登る。

柱は天に舞って、爆散する。そして中から炎でできた巨大な鳥と水でできた竜が現れた。

『ピァアアアアアーーーーー!!』
『グオァアアアアーーーーー!!』

炎が鳴き、水が吼える。二体はフィールドの上空を飛ぶ。二重の螺旋のようにお互いが絡み合って空に昇り、轟く咆哮を響かせる。

その光景に誰もが圧倒され、次の瞬間には会場全体が湧き上がり、震え上がる。

「弥一とは一度勝負がしたいと思ってた。どう弥一?私の力作」

「ああ、流石セナだな俺にはここまでの属性系魔術を操るセンスはない」

現代の魔術師同士での戦闘では属性系魔術はあまり使われない。例えば火の魔術で敵を焼くより銃弾一発の方が早いなど多くの理由はある。現代魔術師の戦闘スタイルは銃火器、武器での遠距離、近距離戦闘プラス魔術が多いというのも理由の一つだ。

戦うための魔術を多く学んでいたため属性系魔術についてはあまり詳しく無くその点ではセナに劣る。それに炎と水のまったく違うものをあそこまで制御出来る技量は地球にもおらず、手放しの賞賛に値する。

しかしーー

「それは属性系魔術に限っての話。いくらセナとはいえ魔術で負けるわけにはいかない。魔術師の本気を舐めるなよ!」

そういって弥一は蒼い魔力を迸らせる。

「《響け、響け、響かせろ、その声で歌うのは破魔の歌。その声は天の声、その歌は魔を祓う歌。》」

「え!?その魔術って・・・!?」

セナが弥一が発動しようとしている魔術を見て「うそでしょ!?」と動揺する。

嘘ではないこれが現実だ!

弥一が発動しようとしているのは大魔術【女神の福声】。この魔術は声を聞いた範囲内の魔を祓い、指定した相手には癒しをもたらすというもの。

弥一さんどうやら嫁が相手でも全力で挑むようだ!

球技場全体が明るい光に包まれる。弥一からは光の柱が天に昇り、その柱が球技場上空に巨大な魔術陣を形成。

「《姿を示しその甘美なる声を響かせろ。響かせた歌は身を焦がし、その歌に捧げよ。》」

弥一はここで少し改変した詠唱を唱える。すると魔術陣から黄金の光が漏れだす。
そして最後の言葉を紡ぐ。

「《あぁ、そのたはなんと甘美なる声か》」

刹那、天空の魔術陣から六枚の翼を広げたこの世のものとは思えない女性が現れた。

全てが白くそして輝いている。翼をはためかせて存在するその女性は神話の女神そのものだった。そして女性は胸に手を当て声をその甘美なる声を響かせる。

声は球技場を埋め尽くし全ての者が息を呑みただただ立ち尽くし、その甘美な声を聞いて皆一様に涙を零す。

「女神・・・」

誰が言ったか、その声は会場全体に伝わり会場の全ての人が膝をつき祈りを捧げる。泣きながら一心に祈る。
弥一はその光景を見て

(やべぇ、やり過ぎたかも・・・)

と頬を引きつらせる。声を響かせるだけでも十分かと思ったがどうせならインパクトのある方が良いから姿を現わすか、と思い即興で【女神の福音】に【幻影魔術】の応用技術で想像上の神を一時的にこの世に投影させる、という全力の大魔術改変を行い実行したのだ。

完全なる才能の無駄使いである。

『け、結果、勝者ヤイチ・ヒイヅキ』

泣きながらの結果発表で弥一が優勝するが、周りの観客は未だに祈りを捧げている。

優勝は最初と打って変わって静かに決まった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ひどい弥一・・・」

優勝が決まった後弥一とセナは控え室にいた。一時間後の行われる授賞式まで待機中だ。

部屋に入ってくるなりセナが弥一に愚痴を零す。それも無理ないだろう渾身の力作の火の鳥と水の竜を出した後に女神様降臨である。酷いとしか言いようがない。

「わ、悪かった、俺もあれくらいしなきゃ勝てなかったんだ」

弥一も自覚はあり、申し訳ない気持ちで一杯になる。

「許さない」

そういってセナは腕を組みプイッと弥一から顔を逸らす。

弥一はうーんと参った表情を浮かべどう機嫌をとったら良いかと悩む。

「・・・じゃあ、なんでも一つセナのお願いを聞くっていうのはどうだ?」

「・・・本当?」

「ああ本当だ」

「じゃあ許す」

するとセナはあっさりと許して機嫌が良くなり、明るい表情で弥一の隣に座る。

「それじゃあ、ギュッてして」

「そんなことでいいのか?」

「うん、それがいい」

「わかった」

弥一はセナの後ろに回って背後から抱きしめる。暖かく柔らかい感触に心が安らぐを感じる。セナはとても嬉しそうに抱き締められている。

しばらくこうしているとセナが顔を向けて、艶やかな甘い声でいう。

「弥一、キス、して」

「お願いは一つだったはずだが?」

「いや?」

こてんっと首を傾げて笑う。ユノといるときはしっかりしたママだが弥一と二人きりのときはとても甘えてくる。そんな表情がとても愛らしくてお願いがなくとも、なんでも叶えたい気分になる。

「いいや、むしろ大好きだ」

「んっ・・・」

セナの肩越しに長く、触れるだけのキスをする。二人はしばらく唇から全てが繋がるような感覚に酔いしれる。

「こういうの久しぶり」

「そうだな」

久しぶりに感じるキスはとても優しく暖かいもので二人は小さく笑う。そして今のキスでスイッチが入ってしまった二人は見つめ合い、熱い視線を絡ませる。セナは頬を少し赤く染め弥一を物欲しそうな目で見る。

「ねぇもっと、しよ・・・んっ」

熱く甘い声で呟くと我慢できなくなり今度はセナからキスをする。首に腕を絡め正面から抱き着き、膝の上に弥一の方を正面にして座る。
弥一もセナの後頭部に手を当てもう片方の手を細い腰に回し引き寄せる、するとセナが積極的に舌を絡めてくる。
熱く、溶けてしまいそうなキスはお互いをさらに感じたいと求め合う。

「んんっ・・・んちゅ・・・はむっ・・・んぁっ・・・やいち・・・だいすき・・・んっ・・・!」

「俺もだ。愛してるセナ」

深く情熱的なキスをしながらお互いに熱く上気した声で愛を呟く。

ここが控え室だということも忘れてしまいそうになるくらい今の二人は燃え上がっている。久しぶりな分その反動が大きいのだ。

二人はそのままキスをしている状態でベンチに倒れる。セナを押し倒す状態になると弥一は唇を離す。

セナの目はとろんとして潤んで、上気した頬と少し荒い息で弥一を見つめる。この後の事を期待しているがしかしドアが気になるようだ。

「人来ちゃうかも」

「心配するな、すでに人払いの結界は張ってるし表彰式までまだ一時間はある」

「いつのまに・・・それじゃあ、いっぱい愛して」

「もちろんだ。愛してるぞ、セナ」

「あんっ、んっ・・・!、んちゅ・・・やいち・・・私も、愛してる・・・んっ!」

服に手を入れそのふくよかな胸を直接揉み、柔らかな唇を唇で塞ぎ口内を貪る。そしてそのまま手を下腹部へ伸ばしーー

それからしばらく、誰も居ない廊下に控え室から二人の息遣いが聞こえていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「パパー!ママー!」

その後表彰式を終え競技場からでると観客席から二人の試合を見ていたユノがタタターー!と駆けてくる。

二人の近くに来るとユノはジャンプし二人に飛び込む。
弥一とセナは二人で飛んでくるユノを抱きとめる。

「パパとママすごかった!かっこよかった!!」

興奮冷めやらぬといった具合でユノははしゃぐ。
するとユノが走ってきた方向からビルファが歩いてくる。

「二人ともお疲れ様」

「ビルファさんユノを預かって貰ってありがとうございます」

「いいや別にいいよ。それで二人とも景品で金の短冊は集まったかい?」

「ええ、ここに」

弥一は金の短冊を二枚とセナは金の短冊を一枚取り出す。
今回の魔法競技大会の景品は優勝すると賞金百二十万ネクトと金の短冊が二枚。準優勝には賞金六十万ネクトと金の短冊が一枚、といった具合で祭りのイベントにしては豪華だ。

二人の目的は短冊で賞金のことは表彰式で初めて気が付き、思わぬ臨時収入にホクホクだ。

「それはよかった。それじゃあ僕はこの後街を回って視察してくるよ。またね」

「ありがとうございました」

「ありがとうビルおじさん!」

最後のユノの言葉に遠ざかっていくビルファがカクンッと傾く。「僕もそんな歳、かな・・・」そんな声が聞こえて来がして弥一はなんだか居た堪れなくなった。




その後夕食の代わりに露店で買った食べ物を食べて、通りを歩きながら(歩いていると道行く人人が弥一を見て拝んで来るので、認識阻害の術式を掛けながら)短冊を掛ける竹を探す。そして目的の竹を見つけた。

「おお、見つけた。ここの竹にしよう」

「うん!」
「大きいね」

探していた竹は街の中心にある大聖堂の横に立てられた竹だ。全長は約十メートルでビル三階分の高さでとても立派な竹だ。

三人は近くに設置された机で思い思いの願いを書く。
弥一は特に悩む必要も無くスラスラと書き終える。顔を上げるとセナとユノも同じタイミングで顔を上げた。どうやら悩むこと無く書き終わったようだ。

「パパ見て!」

「ん?ユノはなんて書いたんだ?」

ユノが短冊を見せてくる。そこには可愛らしく大きな字でこう書かれていた。


『ずーとずーとパパとママとあそべますように!!ユノ』


そんな少女のささやかだけども最も大きな幸せへの願いを見て弥一は笑みを浮かべて笑う。

「ユノと一緒だな」

そう言って弥一も短冊を見せる。


『こうしてずっとセナやユノと暮らせますように 。弥一』


ありふれた願いだ、でもそんなありふれた願いが今の一番だ、それが弥一の最も正直な気持ちだ。

「いっしょ!パパといっしょ!」

「ふふ、パパだけじゃないよ」

そう言って今度はセナが短冊を見せる。


『大好きな弥一とユノちゃんとずっと楽しく暮らせますように。セナ』


「ママもいっしょ!ユノもパパとママだいすき!!」

家族三人一緒の願いにユノは嬉しくて二人にギュッと抱き着く。二人もユノと同じ気持ちでとても嬉しい気持ちで一杯だ。弥一は抱き着くユノを片腕抱っこし、もう片方の手でセナの手を握る。

「よし、飾りに行くか!飾るなら一番上だ!」

「かざる!」

「でも一番上ってどうやって?」

竹の高さは十メートル近くもある。どうやったって届かない高さだ。

「この竹は街にある竹の中で一番の大きさでな、金の短冊を持っている人は特別に一番上に飾らせてもらえるんだ」

「もしかしてその為に金の短冊にしたの?」

「星に願うなら星に一番近い方がいいだろ?」

教会の中に入ると神父が弥一達を案内する。教会の塔のベランダに案内されるとベランダにはあれ程高かった竹の頂点があった。
金の短冊は見当たらない。どうやら金の短冊まで集める物好きはいなかったようだ。

「ユノ飾ってくれるか?」

「うん!」

家族全員分の短冊を持って弥一に抱きかかえられる。竹の一番高いところに結んでいく。そしてユノを下ろす。

竹のには同じ場所に三つの金色の輝きがあった。

親子三人で並んで夜風になびく短冊を眺める。
すると夜空を見上げた弥一が【解析眼】であるものを捉える。

「セナ、ユノ空を見てみろ」

「「空?」」

なんだろうと空を見てみるが空には星が綺麗に輝く夜空しかない。

「もうすぐだ・・・来たぞ!」

目を凝らし、夜空を見上げる。

瞬間、夜空に光の線が横切った。

その線は徐々に増えていき気がつけば夜空一面が輝く線で埋まる 。

流星群だ。

「うわー!きれい!!」

「凄い・・・!!」

「ああ、本当に凄いな・・・!」

空を埋め尽くす流星群に弥一もその美しさに感嘆する。

三人は揃ってその美しさに魅入って空を眺める。

三つの金の短冊は夜の帳に輝く流星を背景に仲良く夜風に吹かれている。

こうしてちょっとした日常が過ぎてゆく。

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