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魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

親子の再開

東から太陽が昇る。光が夜の闇を払い森を照らし、朝日がにつられて鳥の鳴き声が聞こえる。

カーテンから差し込む光で弥一は意識を覚醒させる。

「・・・寒いな。しまった、裸のまま寝ちまってか・・・ん?」

目を開き肌寒さに思わず呟くと、左腕に暖かく柔らかい感触がある。そして横を見ると同じく裸で可愛い寝顔で寝ているセナがいた。

弥一はそんなセナを抱き寄せ綺麗な蒼髪を撫でる。サラサラの髪の感触と体全体から感じる暖かさと柔らかさにずっとこうしていたい気持ちになる。

そうしてひたすら撫でていると「ん・・・。」とセナが身じろきし目を開ける。至近距離で弥一とセナの目が合う。しばらく二人とも硬直していると次第にセナの顔が赤くなり、シーツに潜る。

「おーいセナ。起きろー。もう朝だぞー」

「・・・朝はもう来ない・・・」

「いやくるよ!?そんなこと言わないで起きてくれ!」

「ううううう・・・。無理・・・恥ずかしい・・・」

セナがボケて弥一がツッコミという珍しいやり取りをする。肩をゆするってもセナはイヤイヤしてシーツから出てこようとしない。そんなセナにどうしたものかと考え、耳があるであろう部分に口元を近づけ囁く。

「起きないなら・・・キスするぞ」

「!!・・・・・・・・・・・」

その声を聞いて一瞬ビクッとなるがその後動かなくなる。何を期待しているか一目瞭然の行動に、思わず苦笑いしつつ顔の部分のシーツを捲ると、頬をほんのり赤くし目をプルプルと閉じて寝たふりをしているセナがいた。

頬に手を添え唇に軽いキスを落とす。

「起きたか?眠り姫?」

「・・・うん」

キスで目が覚めた眠り姫セナはそういって顔を赤くし、弥一の首に腕を回して引き寄せ今度は自分からキスをする。

「おはよう弥一」

「ああ、おはようセナ」

朝から二人の世界を作るその光景は完全にバカップルのそれであった。クラスメイトがこのことを知ったら死屍累々、阿鼻叫喚の地獄絵図になろうことは間違いないだろう。

そんな感じで朝は過ぎ、二人は着替えリカード邸に向かった。



リカード邸に到着すると応接室に通され、まっているとリカードが入ってきた。そしてその後に蒼い髪の女性が入ってきた。

髪と目の色はセナと同じ綺麗な蒼髪。年齢は20代前半辺りでとても若々しく美人な女性だ。しかしその顔には疲労が窺える。

そしてその女性はセナを見た瞬間口に手を当て目に涙を浮かべる。セナもそんな女性を見て立ち上がる。

「セナ!!」

「お母さん!!」

二人は駆け出しお互いを強く抱きしめる。

「ごめんなさい。セナ。本当にごめんなさい。」

「安心してお母さん。私はこうして生きてるから」

そういって二人は二度と離さないという様に強くお互いを抱きしめあった。

それからしばらく。二人は落ち着つき改めて席に着くとリカードが口を開く。

「ではまず改めて自己紹介をするとしよう。私はリカード・アイヤード。ここ、精霊の里で村長をやっている。弥一君今回は精霊の里、そしてセナを救っていただき感謝する。」

そういって深く頭を下げたリカードに続き今度はリカードの横に座る女性が発言する。

「私はエウラ・アイヤードと申します。弥一さん、今回は私たちの娘、セナを救っていただき本当にありがとうございます。」

そしてエウラ、セナの母親は同じように頭を深く下げる。それはもう本当に深く、深く頭を下げる。そんな二人に弥一は声をかける。

「頭を上げてください。俺は別に気にしてません。それに俺よりセナに言葉をかけてやってください」

そんな弥一の言葉に二人は顔を上げセナの方を向く。セナもそんな二人に少し緊張した顔で二人に向き直る。

「10年間本当にすまなかったセナ。私が無力なせいでお前に苦しい思いをさせて。何も言わず封印をしたりして」

「本当にごめんなさいセナ。あなたにひどいこと言って傷つかせてしまって。本当なら辛いときに支えて守ってあげるのが私たちなのに・・・本当にごめんなさい」

二人で一斉に再び頭を下げる。エウラは涙と嗚咽を漏らす。

二人は悔しかったのだ、リカードはセナを助けようと思っても結局助けることはできず、エウラは洗脳されてたとはいえ自分が何よりも守らなければいけない娘にいろいろな言葉を浴びせ、苦しめたことが。最愛の娘を守れなかった自分の無力さに。

そんな二人を見てセナは立ち上がるとエウラに歩み寄りその背中を優しく抱きしめる。

「大丈夫だよお母さん、お父さん。確かにあの時はとっても辛かったけど、それでも今はこうして二人にあえて幸せだから。二人が無事で本当に良かった。それに私は大丈夫だったよ」

そういってセナは弥一を見てにっこりとほほ笑む。そんなセナのほほ笑みに弥一も笑顔で返す

「弥一が居てくれたから私はここまでたどり着けた。お父さんやお母さん、里のみんなを取り戻すことができた。本当にありがとう、弥一」

そうして今度はセナも交じって三人で頭を下げてくる。流石にこんな状況に弥一も困ったように頭をかく。

「ああ、もう。そんなに謝らないで下さい。俺はただセナの力になりたくてこうしただけですから。そんなに感謝されても困りますって」

弥一の言葉に三人は頭を上げ、セナは顔を赤くし嬉しそうに笑い、リカードとエウラは「おっ。」「あらあら」と嬉しそうに娘を見ている。そんな光景が張りつめた場の暗い雰囲気を和らげ、次第に皆笑みを浮かべていた。

「そうか。うむ。弥一君がそういうならそうしよう」

リカードも気持ちに整理がつき晴れたのか、最初のころとは違った優しげな表情をしている。エウラも涙を拭い明るい笑みを浮かべ頷く。

「そうねあなた。そういえばまだ朝ご飯はまだだったわね、待ってて下さい今作りますから」

「あっ。まって私も一緒に作るから。弥一またあとでね」

「おう」

そういってエウラとセナは二人で部屋を出て台所へ向かう。二人を見送ると部屋にはリカードと弥一だけになる。お互いに沈黙していたが唐突にリカードが発言する。

「改めてだが弥一君。君はいったい何者だね?あのような魔法は見たことも聞いたこともない。」

と弥一に対し質問をする。弥一も聞かれることは予想していたのではっきりと答える。

「俺は異世界から召喚された勇者で、あれは魔法ではなく魔術と呼ばれる俺達の世界、地球に存在するものです。といっても魔法と魔術のにさしたる差はないですが」

そうして弥一は召喚されてからここに至るまでの出来事を話していく。

「それでは弥一君はこの後一度王都に戻るのかい?」

「いいえ、王都に向かう途中に迷宮があるので取り敢えず、すぐ近くのエルネ街に向かうことにします。迷宮を攻略してから向かおうかと」

「なるほど。弥一君なら迷宮攻略も難しくはないと思うが、気をつけたまえ。弥一君達が突破したグリノア迷宮は六大迷宮の中でも難易度が低い迷宮だ。それ以外の迷宮は攻略難易度がとても上がる。なにせ他の迷宮では5階層も突破出来ないほどのらしいからね。十分に注意してくれ」

「そんなにですか?わかりました。気をつけます。」

一通り区切りのいいところで会話を中止し用意された紅茶を飲んでいるとこれまた突然にリカードが言葉を零す。

「そういえば弥一君。セナと付き合っているのかい?」

「ぶぅうううっーー!!!げほっげほっ!!い、いきなり何を!?」

弥一が思わず吹き出した紅茶を首の動きだけでヒラリとかわし、落ち着き払った態度で再び聞いてくる。

「いやなに、さっきの会話と態度からそうでないかと思ってね。で、実際どうなんだい?」

「・・・はいそうです。セナとは付き合っています」

「そうか。あの子は素直で優しい子だ。でも少し泣き虫なところがあってね。迷惑をかけると思うが宜しく頼むよ」

「いいんですか?普通こう言うのって怒ったり反対する様なところですよね?」

「確かにそういうところもあるのかもしれないが、私はもうセナを縛りたくないんだ。あの子がそう決めたのならそれを全力で押すのが私の罪滅ぼし、いや、父親としての役割だと思うからね。」

そう言ったリカードはやはり娘が離れて行くは寂しのか、何処か寂しげな雰囲気だが、それ以上に父親としての役割を果たすことが出来て嬉しそうにしている。

そんなリカードの信頼を裏切るわけにはいかない。

「わかりました。セナは必ず守ってみせますし、大切にします」

「頼んだよ弥一君」

二人は自然と手を出し合い、硬い男と男の約束を結んだ。




「「「「いただきます」」」」

四人でテーブルを囲み朝食を食べる。メニューは焼き鮭に味噌汁、お米と日本食メニューだった。この世界では主食はパンで米はないので弥一が地下施設から持ってきた米を使っている。初めての日本食にエウラとリカードは興味津々なようであった。

「おお。うまいなこの米というものは」

「ええ、もちもちしてておいしいですね。セナあなたいつの間にこんな料理作れるようになったの?」

「弥一に教えてもらったの。おいしいでしょ?」

「ええ、本当においしいわ。弥一さんは料理もできるのね」

「いえ、料理は趣味だったので。でも今はセナの作る料理が一番おいしいですから」

「もう。そんなことないよ。あっ、弥一、ご飯粒ついてるよ」

セナの手が伸びてきて頬についた米粒を取り、その米粒を自分の口に持っていく。そんなセナに弥一は赤くなる

エウラとリカードがそんな二人を見て「あらあら」「むっ」とそれぞれ反応をする。そして朝食を食べながらお互いに親睦を深めていく。

エウラとリカード、セナはこれまでの傷や後悔などは消えることはないだろうそれでもこうして仲を戻していって失った十年を取り戻していけたらいいと、弥一はそう思った。

朝食を食べ終わりテーブルで家族団らんとしていると、リカードがおもむろに立ち上がる。そして弥一に向け威圧をする。そんなリカードに弥一は瞬時に警戒心を上げ、椅子から立ち上がる。

「お、お父さんなにを!?」

「・・・」

セナはリカードを糾弾し、弥一は右手の人差し指と中指を揃え構える。リカードはすぐに威圧を解き、言う。

「ふむ。反応は悪くないな。」

「・・・いったい何を?」

「弥一君私と決闘しろ」

「「えっ?」」

そんな言葉に思わず呆ける。

「セナを欲しければ私を倒し、その強さを証明してみせろ」

そういって高圧的に言い放つリカードはその言葉に少なからずの殺意を宿していた。

「君の強さは相当なものだろう、だがセナを守れるのかは自分で見定めるのが一番だ。」

「・・・わかりました。その決闘受けましょう」

リカードのその眼差しに弥一は決闘を受ける。

こうして弥一はリカードと決闘をすることになった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

向かったのはヨーロッパにあるコロッセオのようなところだった。コロシアムは野球球場くらいの広さ周りのコロシアムを囲むように設置されている客席にはエウラやセナ以外にも多くの人が詰めかけている。
そんな多くの観客が見守る中弥一とリカードはコロシアムの真ん中で向き合っていた。

「・・・随分と人がいますけど?」

「・・・すまない。気が付いたらこうなっていた・・・」

エウラが里の人に声を掛け、里を救った英雄を一目見ようとこうして観客が詰めかけてきたのだ。リカードは溜め息をつき観客に向き直り声を上げる。

「皆の者!我々はこの十年間魔人に支配されていた。そして私たちはセナを追い詰めそして封印した。私たちは何もできず無力だった」

リカードの言葉に観客は皆暗い表情を浮かべる。それぞれ洗脳されていたとはいえ傷つけてしまったことに罪悪感をおぼえているのだろう。そんな観客にリカードはさらに声を上げる。

「しかし、セナを、我々の里を、この少年日伊月弥一が救ってくれた!魔人を倒し私たちの十年の屈辱を倒してくれた。改めて礼を言う」

その言葉に観客席から「ありがとう!!」と感謝の言葉が聞こえてくる。弥一は少し照れくさくなる。

(セナは里の人に愛されているんだな)

里の人の暖かさに弥一は嬉しく思う。しかしリカードの顔を見るとその顔には少し悪い笑みを浮かべていた。そしてリカードは観客に向け爆弾を投下する。

「そして皆に発表することがある。このたびこの少年、日伊月弥一と私の娘であるセナは結婚をする!」

リカードが何を言っているか理解できず沈黙する。

「え、えぇええええええええーーー!?!?。い、いったいなにを!?」

「そして今二人は恋人である!」

「だからなにいってるんですか!?」

「今日はそんな弥一君の力量を見定めるためこうして決闘を行う!!」

次から次へと進めていくリカードにあわてる弥一は、観客席の一番前にいるセナに目を配ると、セナは頬に手を添え幸せそうにイヤンイヤンしている。そしてその後ろにいる観客からさっきの歓声とは一変して殺気が漂ってくる。

(本当にセナは愛されているんだな・・・)

そうして顔を引き攣らせている弥一を尻目にリカードは子供がいたずらが成功したような顔で笑っている。

「や、やってくれましたね・・・」

「うん?なんのことかな。そういえばセナももうそんな年頃だとふと思ってね」

恨めし気に見る弥一の視線をリカードはとぼけた様に答える。はぁ。とため息を溢すがすぐに意識を切り替える。

リカードもそんな弥一を見て意識を切り替える。お互いから絶大な威圧が放たれぶつかる。空気を歪めるかと思うほどのぶつかり合った威圧はコロシアムから音を消し去る。

「さぁ、始めようか」










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