魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

凛緒side 私も


「ただいま凛緒。体大丈夫?」
「ただいま。」

王城の凛緒の部屋。訓練から帰ってきた彩と健が部屋着姿で入ってきた。

「おかえり。彩ちゃん、健君。」

そうしてベットから起き上がる凛緒。そうして部屋に入ってきた二人に声を掛ける。

魔人の襲撃があった日から数日、凛緒は襲撃の際ヘンリとメイを庇いながら魔物と戦い軽く負傷し、弥一が消えてしまったショックで体調を崩しそのま寝込んでしまったのだった。

コンコン

「失礼します。凛緒様お体は大丈夫ですか?」

そういって入ってきたのは弥一の専属メイドであの日から凛緒の専属メイドと変わったアーシアだった。アーシアは凛緒以外にも彩と健がいたことに気づく

「美波様、赤木様おかえりなさいませ。」
「ただいまアーシアちゃん」
「ああ、ただいま」

そういって彩と健もただいまの挨拶をする。

「それでお体はどうでしょうか?」

「うん。大丈夫だよ、だいぶ落ち着いてきたし。ありがとうアーシアちゃん。」

「それならよかったです。」

「そういえば彩ちゃん、みんなはどう?」

あれから訓練に参加することができなかった凛緒は尋ねる。

「それがね・・・」

魔人の襲撃があった日からクラスメイトのなかから戦えなくなる者もでてきた。本物の戦いの惨たらしさ恐ろしさを実感し、さらに弥一が魔人との戦いで消えたことによって心を折られたのである。

「・・・そっか。彩ちゃんと健君は大丈夫なの?」

「私たちは大丈夫だよ。たしかに戦うのは怖いけど弥一君は私たちを戦って守ってくれたんだから」

「それに弥一が戻ってきたとき無様な姿見せてたらあいつに笑われそうだ」

そう3人はまだあきらめていない。弥一は必ず生きている、魔王を倒す旅にでて必ず弥一を探し出す。そう信じて3人はあれから過ごしていた。

「そうだね。私ももう大丈夫だし、明日から頑張るね。」

「無理をしないで下さいね。凛緒様。」

「そうだよ凛緒。」

「うんうん。」

その後アーシアは仕事のため退出し、彩と健も部屋に戻っていった。そして部屋には凛緒だけになった。

「・・・よし!」

そういって凛緒は動きやすい服に着替え部屋を出て行った。

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月明かりが照らす静かな王城の裏庭に一つの影があった。凛緒だ。その手には凛緒の武器である国宝武具クルシスの杖が握られていた。

「はっ!やっ!てやっ!!」

杖を木に取り付けた人型の的に掛け声とともに額、喉、心臓部分に三点突きを繰り出す。

凛緒はあの日から動けるくらいに体調が戻ってから隠れて欠かさづ毎晩こうして杖術を練習している。

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・よし!次!」

そういって気合を入れ直し今度は一心不乱に魔法の練習を始める。

あの日、自分の力不足を痛感した。さらに弥一が居なくなり失う怖さを経験した。

怖くなった、戦うことが。もう戦えないとも思った。でも、そう思うとあの時の言葉が脳内に浮かんでくる。

(『俺は魔術を使って守る。大切な人を、大切な何かを、それを失わないように。だから俺は戦える。』)

以前弥一に言われた言葉。この言葉を思い出すと怖くても不思議と戦える気がした。

それから凛緒はとっても大切な人、大切な何かを守るための力をつけるためこうして毎晩黙って練習していた。

そこからしばらく練習を続けていると普段誰も来ない裏庭に誰かがやってきた。

「こんばんは、凛緒さん」

「こんばんは!」

入ってきたのは手に杖を持ったヘンリと、タオルをもって水筒をぶら下げてたメイだった。

「こんばんは。ヘンリ、メイちゃん。」

「りお、はい!」

メイはその手に持ったタオルと水筒の水を笑顔で凛緒に渡してくる、そんなメイの笑顔に癒されつつタオルを受け取り汗をぬぐい、水を飲み干し一息つく。

「それじゃあ、やろっか」

「はい。そうですね。」

そして少し休憩した後、今度はヘンリを加えて魔法の練習を再開した。ヘンリもあの時凛緒に守られているだけだった事に思うことがありそんな中、偶然練習をしていた凛緒を見つけこうして一緒に魔法の練習をしていた。メイはまだ幼く魔法も使えないのでこうして二人のサポートのようなものをしている。

そこから1時間くらい練習をし、時間的にも遅くなったのでヘンリとメイと別れ凛緒は部屋に戻って、着替えベットに入った。

(やいくん、私頑張るよ。だから・・・)

そうして意識をまどろみの中に沈めていった。



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