魔術がない世界で魔術を使って世界最強

海月13

セナ


「う、うーん。あれっ、わたし・・・」

「おっ、気が付いたか。」

弥一は武器の整備を中断し、少女のもとに歩み寄る。そのまま少女は弥一が掛けたコートをどけ、上半身だけ起き上がる。

「あなたは・・・」

まだうまく頭が回らないのか少し虚ろな表情で聞いてくる

「俺は日伊月弥一。」

「ヤ、イ、チ。や、い、ち。・・・弥一?」

「そうそう。お前の名前も聞いていいか?」

「私は、セナ。セナ・アイヤード。セナと呼んで、弥一」

そう言ったセナという少女は、腰まで届くくらいの綺麗な蒼い髪とその髪の色と同じ透き通るような蒼い眼が特徴的な女の子で年齢は弥一と同じくらいだろうか。背丈は弥一より少し小さいくらいでその顔は少し幼さは残っているが美しく整っており文句無しの美少女と呼べるだろう。

そんな美少女、セナに名前で呼んでと言われ少し頬を染めつつ名前を呼ぶ。

「ああ、わかった、セナ」

そういって弥一は恥ずかしさを誤魔化すように水の入った木のコップを渡す。

セナはそのコップを受け取りつつ疑問を口にする。

「水なんてどこから?ここには川なんてないけど?しかもコップも」

「ん?コートの中に入れてた。」

「コートに水は入らないよ?」

なにを言っているんだろうこの人は?という目で見つめてくるセナ。

「そうじゃない、こうゆうことだ」

そういって弥一はコートのポケットから【蒼羽】を取り出す。ちなみにこのポケット、ブレザーの四次元ポケットとつながっており収納しておいたものはどちらからでも取り出せる。また水などはもしもの時にということで王城で調達しておいたもので、水以外にも少しの食糧が入ってる。

明らかにポケットに入れるには大きすぎる武器が出てきた事にセナは驚く

「!!すごい!!どうゆうこと!?」

「これは簡単にいえば【空間魔術】を利用して別の空間に物を収納してるんだ。」

「くうかんまじゅつ?」

するとやはり伝わらなかったのかセナが首を少しかしげる

「あー、魔術について話すとなると俺のことも話さないといけないんだが・・・長くなるけど聞くか?」

「うん。聞きたい。」

どうやらセナは弥一の話に興味心身なようで体を前のめりにし聞いてくる。

そんなセナに少し苦笑いしつつ話始める。

そうして弥一は魔術のこと、勇者のこと、自分が別世界の人間であることなどこれまでの経緯を話し出した。

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「てなわけで、こうしてここにいるわけだ。」

一通りの出来事を話した弥一は新しく用意した水を飲み干した。

「驚いた。まさか弥一が召喚された勇者なんて、でも納得。あれだけの強さなら勇者と言うものも納得出来る。」

「俺はそこまで強くない。父さんどころか、今じゃまだ昔の俺にすら届かない。」

「そうなの?」

「ああ。」

そう言って弥一は話を逸らしてセナに質問する。

「セナはどうしてこんなところに閉じ込められていたんだ?ああ、別に無理ならいいんだが。」

その言葉にセナは少し顔をしかめるが、決心を決めたように弥一の顔を見て、ゆっくりと語ってゆく。

「私は精霊の里って言う精霊神マーダーを祀る村の出身で、私はそこで精霊の巫女だった。」

「精霊の巫女?」

「私は人間の身で精霊神を宿した半人半霊の身、だから精霊の巫女と呼ばれていた。」

「精霊を体内に!?」

精霊などの霊的存在は人間に恩恵を与える事はあっても、人間にの体内には宿る事はない。なぜなら人間の魂、アストラル体が耐え切れず崩壊してしまうからだ。

地球でも精霊を宿す事の出来るほどのアストラル体を持った人物は歴史上一人しかいない。そして弥一はもちろん、弥一の父親もそれほどのアストラル体は持っていない。

つまりセナは精霊を宿す事の出来る程の強力なアストラル体を有している事になる。

弥一はいろいろと質問したいという逸る気持ちを抑えセナの話の続きを聞く。

「そうして私は崇められていた、だけど10年前、当時7歳だった私はこの部屋に閉じ込められた。」

「一体どうして」

「わからない。みんなが私を愛してくれた、私もみんなが大好きだった、でも少しづつ何かがおかしくなっていった。そして「お前は忌み子だ」「お前はなんか」って言われて、お父さんやお母さんもみんなと一緒に私を責めた。」

セナの頬を一粒の涙が流れた。

「悲しかった!辛かった!苦しかった!寂しかった!私は何もしてないのに!みんな揃って私を!私を・・・!」

そうしてセナは溜まったものを吐き出すように感情を吐き出すし、泣き出した。

そんなセナに弥一は正面から優しくけれど強く抱きしめ言い聞かせた。

「心配するなセナ。誰もがお前を責めるのなら俺がお前を認めてやる。誰もがお前を傷つけようとするなら俺の魔術で全て守ってやる、俺の魔術はそのためにある。だから、俺がずっとそばにいてやる。」

その言葉を受けてセナはより一層大きく泣き出した。

暗く静かな部屋にセナの泣き声が響き、弥一はいつまでも抱きしめ続けた。



コメント

  • ノベルバ愛読者

    セナがメインヒロイン?
    幼馴染の子かメイドの子だと思った(*ºчº*)
    めちゃくちゃ面白い!

    4
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