ヘタレ魔法学生の俺に、四人も美少女が寄ってくるなんてあり得ない!
花火と少女と朴念仁
縁日の場所から離れて、数分歩いたところに、俺達はいた。
「ん?先輩。ここで花火見るんですか?」
「はい。ここは比較的混雑しないので、適していると思います」
場所は某公園。結構広いな。
「あっ!始まりましたわよ!」
花火大会のオープニングは、千発の花火が打ち上がる。一発が炸裂する度に、腹にドンッという衝撃がやってくる。ものすごい迫力だ。江戸川区に旅行に来たら、見ていくと良い。
その千発の花火が終わると、今度はパステルカラーの花火が打ち上がる。これはさっきのと比べて打ち上げ速度こそ遅いものの、色とりどりの花火が打ち上がる様は見てて飽きない。
「綺麗ですわね……」
ポツリと、先輩が呟く。
俺は無言でうなずき、空を見上げる。
数分、花火を眺めていると、唐突に先輩がこんなことを言い出した。
「この間海に行ったとき、一緒に寝ましたよね?」
「あ、はい」
先輩の昔話を聞いたあとに寝たっけな。
「その時、私はこう言いました。『あなたの話が聞きたい』と」
「ああ。言ってましたね」
顔すげー赤かったな。
「その時は夜も遅かったので聞けなかったのですが、今なら良いですよね……?」
あー、うん。まあ、今なら良いかな。めっちゃ重たいけど。
「俺の昔話ですか……。どこから話そうかな……」
ちょっとの間逡巡すると、
「俺、母さんが事故で死んでるんです」
目を見開く先輩。いきなり事故死の話されればねえ……。
「それは……どのような事故ですか?」
「確か……魔法の暴走事故……だったかな」
「暴走、ですか」
本来魔法は、抑制文、発動文の二つの文で構成される。
例えば爆破魔法の【我に爆裂の力を。『炸裂する紅蓮』】という魔法文。
これは『我に爆裂の力を』が抑制文、『炸裂する紅蓮』が発動文だ。
抑制文は、発動部位(手とか足とかね)への魔力の過剰な流入を抑えるための『保険』。
発動文は、文字通り魔法を発動する為の文。これを言わない状態で魔力を使っても、ただ消費するだけで何も起こらない。
「俺の母さんは、魔力操作のセンスが他人より低かった。でも、無理して抑制文無しで魔法を使ったらしいんです」
魔力操作のセンスが低い人が抑制文無しの詠唱を行えば、結果は見えている。
「結果は暴走。魔導警備隊の魔法鎮圧部隊が呼ばれて、対処にあたったんですが……」
「どうなったのです?」
「部隊の魔導衛師が精神防護魔法、魔力抑制魔法をありったけかけたんですが、手遅れでした」
防護判定E。『救命不能』の判定を下された母さんは、
「『処理』されましたよ。電撃魔法で眉間ぶち抜かれて」
『救命不能』と判断された魔導師は、『処理』される。暴走状態でも五感は生きているので、なるべく楽に処理されるように、電撃魔法で処理される。
「事故の次の日に、魔導省から役人が来たんです。『事故の事は公にしない。周りには交通事故で死んだと言ってくれ』ってね」
『君の生活も保障する』と言って、魔導省の生活支援金受給口座の通帳渡されたときはさすがにビックリした。いくら入ってたと思う?百億入ってた。しかも共同口座じゃなくて個人口座。
「それは……何年前の事ですの?」
「五年前。俺が十一歳で、先輩が十三歳の頃ですね」
正直十一歳の子供に百億は色々マズい。
でも、その辺は魔導省で調整してくれた。
百億の半分は父さんに押しつけて、残りの五十億のうち、当分は困らないだろう額を取って、残りは魔導省の口座に残しといた。
「まあ、父さんの稼ぎがあったから、結局支援金は使いませんでしたけども____」
俺の言葉は、先輩のハグによって打ち切られた。
「え、あの、先輩……?」
しどろもどろになる俺とは反対に、どんどん速くなる鼓動。
「相当……辛い人生を送って来られたようですわね……」
「まあ、他の人と比べたらかなりへヴィーな人生送ってますね……」
ハハハと乾いた笑いを洩らすが、空気が無駄に重くなるだけだった。
気まずくなった俺は、堪えかねて目をそらした。
そこから数十秒、口を開いたのは先輩だった。
「______好きです。雨宮さん」
いきなり告白だと……。うーむ……どうしよう。
数秒の逡巡の後、俺は意を決して言った。
「______________」
花火がバンッ!と花開き、俺の返答が周囲に聞こえる事は無かった。
「ん?先輩。ここで花火見るんですか?」
「はい。ここは比較的混雑しないので、適していると思います」
場所は某公園。結構広いな。
「あっ!始まりましたわよ!」
花火大会のオープニングは、千発の花火が打ち上がる。一発が炸裂する度に、腹にドンッという衝撃がやってくる。ものすごい迫力だ。江戸川区に旅行に来たら、見ていくと良い。
その千発の花火が終わると、今度はパステルカラーの花火が打ち上がる。これはさっきのと比べて打ち上げ速度こそ遅いものの、色とりどりの花火が打ち上がる様は見てて飽きない。
「綺麗ですわね……」
ポツリと、先輩が呟く。
俺は無言でうなずき、空を見上げる。
数分、花火を眺めていると、唐突に先輩がこんなことを言い出した。
「この間海に行ったとき、一緒に寝ましたよね?」
「あ、はい」
先輩の昔話を聞いたあとに寝たっけな。
「その時、私はこう言いました。『あなたの話が聞きたい』と」
「ああ。言ってましたね」
顔すげー赤かったな。
「その時は夜も遅かったので聞けなかったのですが、今なら良いですよね……?」
あー、うん。まあ、今なら良いかな。めっちゃ重たいけど。
「俺の昔話ですか……。どこから話そうかな……」
ちょっとの間逡巡すると、
「俺、母さんが事故で死んでるんです」
目を見開く先輩。いきなり事故死の話されればねえ……。
「それは……どのような事故ですか?」
「確か……魔法の暴走事故……だったかな」
「暴走、ですか」
本来魔法は、抑制文、発動文の二つの文で構成される。
例えば爆破魔法の【我に爆裂の力を。『炸裂する紅蓮』】という魔法文。
これは『我に爆裂の力を』が抑制文、『炸裂する紅蓮』が発動文だ。
抑制文は、発動部位(手とか足とかね)への魔力の過剰な流入を抑えるための『保険』。
発動文は、文字通り魔法を発動する為の文。これを言わない状態で魔力を使っても、ただ消費するだけで何も起こらない。
「俺の母さんは、魔力操作のセンスが他人より低かった。でも、無理して抑制文無しで魔法を使ったらしいんです」
魔力操作のセンスが低い人が抑制文無しの詠唱を行えば、結果は見えている。
「結果は暴走。魔導警備隊の魔法鎮圧部隊が呼ばれて、対処にあたったんですが……」
「どうなったのです?」
「部隊の魔導衛師が精神防護魔法、魔力抑制魔法をありったけかけたんですが、手遅れでした」
防護判定E。『救命不能』の判定を下された母さんは、
「『処理』されましたよ。電撃魔法で眉間ぶち抜かれて」
『救命不能』と判断された魔導師は、『処理』される。暴走状態でも五感は生きているので、なるべく楽に処理されるように、電撃魔法で処理される。
「事故の次の日に、魔導省から役人が来たんです。『事故の事は公にしない。周りには交通事故で死んだと言ってくれ』ってね」
『君の生活も保障する』と言って、魔導省の生活支援金受給口座の通帳渡されたときはさすがにビックリした。いくら入ってたと思う?百億入ってた。しかも共同口座じゃなくて個人口座。
「それは……何年前の事ですの?」
「五年前。俺が十一歳で、先輩が十三歳の頃ですね」
正直十一歳の子供に百億は色々マズい。
でも、その辺は魔導省で調整してくれた。
百億の半分は父さんに押しつけて、残りの五十億のうち、当分は困らないだろう額を取って、残りは魔導省の口座に残しといた。
「まあ、父さんの稼ぎがあったから、結局支援金は使いませんでしたけども____」
俺の言葉は、先輩のハグによって打ち切られた。
「え、あの、先輩……?」
しどろもどろになる俺とは反対に、どんどん速くなる鼓動。
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「まあ、他の人と比べたらかなりへヴィーな人生送ってますね……」
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