ヘタレ魔法学生の俺に、四人も美少女が寄ってくるなんてあり得ない!

神楽旭

汗と涙の体育祭 一日目・余興戦

魔導大祭一日目。最後の種目は余興戦エキシビションだ。魔導衛師五人と、学園の選抜された三年生五十人が戦う。
「魔導衛師とやり合うのか……」
思わずそんな事を呟いてしまう。相手は魔導師の中でもプロ中のプロ。その中でも特に対人戦を得意とする魔導師達だ。
「まあ、魔導衛師側はハンデがあるから幾らかは楽……なのか?」
魔導衛師が電撃、水流魔法しか使用できないのに対し、学生側は学園で習った全ての魔法と……平たく言うと殴る蹴る等の行為が許されている。
「これだけ見りゃ圧倒的なハンデだけど……」
二つの魔法を組み合わせた感電攻撃を仕掛けてくる可能性もある。
そして、少々手荒だが、感電しない程度の電撃を水に浴びせ、水分子同士を結合させ、軽度の二酸化炭素中毒に持っていくという戦術もありだ。


『さあ今年もやって参りました!魔導大祭一日目の一番の目玉!魔導衛師五人と魔導学園の三年生選抜五十人による余興戦エキシビションの始まりです!』
俺も昔テレビで見ていたから分かる。この熱気。学園の生徒に対する羨望、魔導衛師に対する重圧の入り雑じった熱気だ。
『ルールは簡単。相手を行動不能にすれば勝ちとなります!』
『魔導衛師側はハンデとして、電撃魔法と水流魔法、物理攻撃をいなす為の体術以外は禁止とし、学生側は習得した魔法、打撃等の行為が認められます』
北海道、東北、関東の三校から選抜された三年生五十人がグラウンドに立った。芝生の敷き詰められたグラウンドだ。
『学生側、準備はよろしいでしょうか!?』
代表であろう学生が手を振る。
『魔導衛師側はどうでしょうか!?』
青色の式典用ローブを身に纏った魔導衛師が軽く手を振った。
『では、両者準備が整った様ですので、始めさせていただきます!……それでは、スタートッ!』
先手を打ったのは学生側だった。無数の風の刃が、魔導衛師目掛けて迫る。
が、相手もプロ。焦る様子も無く、
「稲妻よ、風を纏いて地を駆けよ。『轟烈の駿脚』スプリント・サンダー
魔法文を詠唱した刹那、魔導衛師の男が消えた。
否、あまりの速さに『消えたように』感じたのだ。
同じく他の四人も同様の魔法を発動する。
『轟烈の駿脚』スプリント・サンダーは、広義的には身体強化系魔法だが、厳密には電撃魔法の応用という事で通っている。
魔導衛師達は一気に距離を詰めると、まず最初に水流魔法を発動した。
「感電攻撃……。やっぱりかあ」
一度に大量の『敵』を仕留めるなら広範囲に及ぶ魔法を使用するのが定石だ。
「招かれざる者、極雷の天誅受けん。『紫電の裁き』ライトニング・サンダー!」
その一言で、都合二十の学生が吹っ飛ぶ。電撃魔法単体の威力もさることながら、水を通せば更に威力は強くなる。対人戦では絶対食らいたくないコンボだ。


一面を焼き尽くさんとするような火炎魔法も、魔導衛師の水流魔法に消され、学生側の水流魔法も電撃魔法を使われ逆に攻撃されたりするなど、戦況は終始魔導衛師側が圧倒していた。
結果から言えば、魔導衛師側の圧勝だった。
観客も学生がプロ相手に勝てるわけ無いと分かってるし、競技に参加した学生も、そして俺も最初から勝ち目の無い試合だと理解していた。
が、勝者のはずの魔導衛師側が、悔し泣きしていた敗者学生選抜の代表を慰めに行ったときは、さすがだなと感動した。
斯くして、魔導大祭一日目は終了した。

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