Spiral Labyrinth……螺旋の迷宮
2
全身を強く打ち意識のない里鶴夢には、人工呼吸器と、脈を確認する機械などが取り付けられる。
一応、弱々しいが呼吸はあるが、4階から転落したと言うことで、いつ容態が急変するか解らない予断を許さない状態だった。
その上見た通りの両腕、両足だけでなく、肋骨などもきっと折れており、内臓に支障がないか……それ以上に脛椎等や頭部に骨折や出血はと、救急隊員は病院と連携しつつ準備に追われていた。
その横で、折れているため手も握ってやれず、見守るしかない高飛は、もう少し早くいっていれば……もしくはもっと里鶴夢の傍にいられればと悔やんでいた。
「あの、このお嬢さんはお名前をもう一度伺ってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。志摩……志摩半島の志摩が名字です。名前は里鶴夢。里に鶴に夢と書きます。私たち兄弟の末っ子で……今日は久しぶりに家族が揃うので、一番最初に帰ってきていた私が迎えに来ていたんです。妹は中学の吹奏楽部で、あの学校は4階にある音楽室が校舎の中の階段から遠く、吹奏楽部の生徒は当たり前のように外の螺旋階段を近道として使っていたんです」
「そうだったんですか……いえ、自殺と言う様子ではなかったので、足を滑らせた……とか、でも……」
「……リズ……妹の幼馴染みだった生徒が先程言っていました。『自分はしていないが、別の生徒が引っ張った』とか『押した』と……それよりも、リズは……妹は、無事でしょうか?」
すがるように言う。
「リズ……妹は、私たちの大事な妹で、本当に……可愛いがっているんです。お願いします。妹を!」
「私たちも最善を尽くします。病院とも連絡をしていますので、すぐに治療に入れるかと思います」
「お願いします……リズ……リズを……」
一方、海音の車で一旦学校にやって来た志摩家一行は、高飛の車を運転する蓮斗を残し、救急病院に向かっていった。
蓮斗は兄の車ですぐに出るのかと思いきや、一旦校舎に入った。
学校から出ていく生徒たちとは逆に進んでいった蓮斗は4階まであがり、警察官と共にいる3人の生徒に近づいていく。
「……ねぇ?」
足音もさほどさせず進んできた蓮斗はオペラ歌手で、バレエレッスンを当然受けており、身のこなしが優雅である。
驚き振り返る3人と教師、警察官に、無表情で淡々と繰り返す。
「ねぇ?リズを傷つけたのはどの子?……もしかして敬太郎?」
「て、手を出してない……彼女が、リズが自分を苛めたって言うから、聞いてて……リズは急いでるし、嘘ついてない!退いてって、そうしたら、彼女の手が伸びてきて……階段に突き出したんだ……転げ落ちて、途中で柵が緩んでたのか外れて、そこからリズが……」
「私のせいだって言うの?私はリズちゃんが最近そっけないって、相談したのよ?貴方だって、一緒に問い詰めたじゃない!人のせいにしないでよ」
蓮斗をはじめとして志摩家の全員には、『里鶴夢ラブラブフィルター』がかかっており、リズが一番可愛く、一番お利口で、一番……延々と続くために略す……のため、中学生で化粧をして、きれいな顔立ちをしていても、
「ふーん、その程度?」
となる。
特に見た目は落ち着いた貴公子だが、口を開くと恐ろしい毒舌魔王となる蓮斗は、
「不細工が化粧しても不細工だ、やめておけ。ついでに、僕の可愛いリズが人をいじめる?あり得ないし、下手な言い訳するくらいなら、吐け!この化粧お化け。まだのっぺらぼうの方がましだな。ギャンギャンわめかないし」
腕を組み言い放つ。
そしてちらっともう一人の少年をみる。
「君は?」
「守谷和真です。敬太郎と同じクラスで、俺、追試サボってたんですよね。そこで、香也と敬太郎が喋っていて、で、階段から入ろうとする志摩がいて、志摩は焦ってました。『お兄ちゃんたちに会える』とかそういう風にいってて、そうしたら、香也の手が外に押し出すように引っ張ったんですよ。で、志摩が消えて、転がる音と、柵にぶつかる音と、ドーン……地面に叩きつけられた音が聞こえて、そうしたら、香也は『この男が突き飛ばした!』って、敬太郎に罪を擦り付けようとしたので……志摩のことも心配だったし、見ましたって。でも、サボったのバレちゃったけど、志摩の方が大丈夫かなぁって」
ヘラヘラしているようだが、かなり判断力があり、知恵もある。
最初は学校でも問題児っぽく、リズの近くにいたのかと怪しんだが、説明がきちんと理路整然としており、何が大事か理解できている。
「じゃぁ、守谷くんだっけ?悪いんだけど、リズ……妹の荷物をもって帰りたいんだ。教室とか解る?」
「えぇ。俺、時々辞書借りたし、でも、行って良いんですかね?」
「突き飛ばしたか、リズを苛めたかは警察と学校が判断するだろう。君は発見者。今説明したし、それ以上ないよね」
「はーい。志摩のお兄さん、ありがとう!こっちです」
和真は歩き出した。
蓮斗は里鶴夢の荷物をすべて兄の車に押し込み、そのまま病院に向かったのだった。
そこにはちゃっかりと和真も助手席に座っていたのだった。
一応、弱々しいが呼吸はあるが、4階から転落したと言うことで、いつ容態が急変するか解らない予断を許さない状態だった。
その上見た通りの両腕、両足だけでなく、肋骨などもきっと折れており、内臓に支障がないか……それ以上に脛椎等や頭部に骨折や出血はと、救急隊員は病院と連携しつつ準備に追われていた。
その横で、折れているため手も握ってやれず、見守るしかない高飛は、もう少し早くいっていれば……もしくはもっと里鶴夢の傍にいられればと悔やんでいた。
「あの、このお嬢さんはお名前をもう一度伺ってもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。志摩……志摩半島の志摩が名字です。名前は里鶴夢。里に鶴に夢と書きます。私たち兄弟の末っ子で……今日は久しぶりに家族が揃うので、一番最初に帰ってきていた私が迎えに来ていたんです。妹は中学の吹奏楽部で、あの学校は4階にある音楽室が校舎の中の階段から遠く、吹奏楽部の生徒は当たり前のように外の螺旋階段を近道として使っていたんです」
「そうだったんですか……いえ、自殺と言う様子ではなかったので、足を滑らせた……とか、でも……」
「……リズ……妹の幼馴染みだった生徒が先程言っていました。『自分はしていないが、別の生徒が引っ張った』とか『押した』と……それよりも、リズは……妹は、無事でしょうか?」
すがるように言う。
「リズ……妹は、私たちの大事な妹で、本当に……可愛いがっているんです。お願いします。妹を!」
「私たちも最善を尽くします。病院とも連絡をしていますので、すぐに治療に入れるかと思います」
「お願いします……リズ……リズを……」
一方、海音の車で一旦学校にやって来た志摩家一行は、高飛の車を運転する蓮斗を残し、救急病院に向かっていった。
蓮斗は兄の車ですぐに出るのかと思いきや、一旦校舎に入った。
学校から出ていく生徒たちとは逆に進んでいった蓮斗は4階まであがり、警察官と共にいる3人の生徒に近づいていく。
「……ねぇ?」
足音もさほどさせず進んできた蓮斗はオペラ歌手で、バレエレッスンを当然受けており、身のこなしが優雅である。
驚き振り返る3人と教師、警察官に、無表情で淡々と繰り返す。
「ねぇ?リズを傷つけたのはどの子?……もしかして敬太郎?」
「て、手を出してない……彼女が、リズが自分を苛めたって言うから、聞いてて……リズは急いでるし、嘘ついてない!退いてって、そうしたら、彼女の手が伸びてきて……階段に突き出したんだ……転げ落ちて、途中で柵が緩んでたのか外れて、そこからリズが……」
「私のせいだって言うの?私はリズちゃんが最近そっけないって、相談したのよ?貴方だって、一緒に問い詰めたじゃない!人のせいにしないでよ」
蓮斗をはじめとして志摩家の全員には、『里鶴夢ラブラブフィルター』がかかっており、リズが一番可愛く、一番お利口で、一番……延々と続くために略す……のため、中学生で化粧をして、きれいな顔立ちをしていても、
「ふーん、その程度?」
となる。
特に見た目は落ち着いた貴公子だが、口を開くと恐ろしい毒舌魔王となる蓮斗は、
「不細工が化粧しても不細工だ、やめておけ。ついでに、僕の可愛いリズが人をいじめる?あり得ないし、下手な言い訳するくらいなら、吐け!この化粧お化け。まだのっぺらぼうの方がましだな。ギャンギャンわめかないし」
腕を組み言い放つ。
そしてちらっともう一人の少年をみる。
「君は?」
「守谷和真です。敬太郎と同じクラスで、俺、追試サボってたんですよね。そこで、香也と敬太郎が喋っていて、で、階段から入ろうとする志摩がいて、志摩は焦ってました。『お兄ちゃんたちに会える』とかそういう風にいってて、そうしたら、香也の手が外に押し出すように引っ張ったんですよ。で、志摩が消えて、転がる音と、柵にぶつかる音と、ドーン……地面に叩きつけられた音が聞こえて、そうしたら、香也は『この男が突き飛ばした!』って、敬太郎に罪を擦り付けようとしたので……志摩のことも心配だったし、見ましたって。でも、サボったのバレちゃったけど、志摩の方が大丈夫かなぁって」
ヘラヘラしているようだが、かなり判断力があり、知恵もある。
最初は学校でも問題児っぽく、リズの近くにいたのかと怪しんだが、説明がきちんと理路整然としており、何が大事か理解できている。
「じゃぁ、守谷くんだっけ?悪いんだけど、リズ……妹の荷物をもって帰りたいんだ。教室とか解る?」
「えぇ。俺、時々辞書借りたし、でも、行って良いんですかね?」
「突き飛ばしたか、リズを苛めたかは警察と学校が判断するだろう。君は発見者。今説明したし、それ以上ないよね」
「はーい。志摩のお兄さん、ありがとう!こっちです」
和真は歩き出した。
蓮斗は里鶴夢の荷物をすべて兄の車に押し込み、そのまま病院に向かったのだった。
そこにはちゃっかりと和真も助手席に座っていたのだった。
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