二面性男子の鏡

山本慎之介

プロローグ

─鏡のない家のないように、裏のない人間もまた1人としていない。 
 紀谷浩太郎きのやこうたろうもまたそうであった……
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「眠……………。」
なんで学校なんてあるんだろうか、着替えながらふとそんなことを思う。
 この時すでに始業5分前、さてどんな言い訳をしようか、朝から気は重かった。


「なんでこうも上手くいかないかなぁ。」
学校へ走りながら思いついた壮大な人助け話はすぐにバレてしまった。
    密かに「馬鹿正直男」と揶揄されるほど嘘が下手なのを浩太郎は気づかない。
「しかし、高校生ってのはこんな暇でいいのか?」
そう思うのも仕方が無い。
─夕方に2時間もベットで暇を持て余してそう思わない人はいないだろう。
 ……トイレ
2時間振りの運動がこれだ、運動といっていいかもわからないが。


用を足し、手を洗っていると鏡に虫がいるのを見つけた。この時、浩太郎は愕然とした。
──鏡に自分が写っていない。
鏡は、自分や自分の後ろを見るために造られている。
その鏡に自分が写っていないとはどういうことか。

「お、おいこの鏡、どうなってんだ?」
恐る恐る鏡に触れて状況を確認しようとしたとき、


───紀谷浩太郎はこの世界から存在を消した。

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