『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~
老人と剣の正体
俺たちは洋食屋をあとにして、橋を目指した。
たしか―――
『植守川橋』
アプリの地図から距離と歩行時間を表示させると20分。
20分も歩けば、張った腹部も運動可能レベルまで回復すると思う。
「もう少し、どこかで休憩しますか?」
俺の様子から何かを感じ取ったのだろう。ルナさんは休息と提案してくれた。
「ん~ 少し休みたいかも、どこかに休める場所でもあればいいけど」
「あっ、予定ルートより少し離れますが、近くに公園があります」
公園に到着するとベンチを発見。
そのままに座り込む。公園では、子供が走り回っている。
そういえば、今日は土曜日だったなぁ。
「なんか平和だ」
「平和ですね」
自分では思っていた以上に張り詰めていたみたいだ。
さっきのハンバーグ相手の激闘も無論、日常生活でも……
思い返してみれば、デスゲームが始まって以来、起床は太陽が昇るよりも早く出かけ、主狩りへ行き、学校の昼休みにも外へ抜け出し、主狩りへ向かう生活。
それを止めるわけにはいかないけれども、俺の中で苦しいや辛いといった感情をコントロールできているわけではない。
もしかしたら、陽葵がやたらルナさんと会う事を「デートだよ!デート!」と囃し立てていたのは、それを見越して、癒しと安らぎを……いや、そんなわけないか……
まどろみの勧誘に誘われて、どうやら俺は意識の手綱と手離してしまった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
(あれ?寝ちゃったのか?なんだか柔らかい……)
「あっ、起きましたか?」
「?」
なぜだかルナさんの声が上から振ってきた。
上から?
俺を目を開く。すると、ルナさんが上からのぞき込んでいた。
(ん?妙……不自然に顔が近い気がする…って!?)
俺は跳ね起きた。
なぜなら、ルナさんに膝枕をされていたから……
「す、すいません。寝てしまって」
「いえ、構いません。疲れていたみたいなので……」
それから俺たちは―――
「……」
「……」
と、しばらく無言だった。
チラッとルナさんの様子をのぞき込むと、その顔は真っ赤に染まっていた。
たぶん、俺と同じ色だ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
―――植守川橋―――
「……到着しましたね」
「……はい」
俺たちは会話にぎこちなさを残して、植守川橋に到着した。
矢印のアイコンが示している場所は……
「やはり、河川敷になるみたいですね」
取りあえず河川敷へ降りる。
すると、直ぐにクエスト開始のサークルが見つかる。
俺たちは、そのサークルの中へ―――
「よくぞ、この剣を取り返してくれた」
そのセリフと共の老人の姿が現れた。
そしてパーシから奪い返した剣を抜き、こちらに見せるように向けた。
「その剣の名前は黄金の剣。呪われた剣だ」
「クリュ……なんだって?」
思わず、俺は聞き返したが、隣からルナさんが「クリュサオルです」と教えてくれる。
「確か、ギリシャ神話で登場する怪物で、メドゥーサの子供と言えばわかりやすいかもしれません。メドゥーサの死後、その血からペガサスと共に生まれた存在です」
「メドゥーサ……」
それは俺でも知っている。
ゴルゴーン3姉妹の1人。
毒蛇でできた髪。黄金の羽。下半身は大蛇の尻尾。
それ以上に有名なのは魔眼だ。
紅の魔眼を持ち、その目を見る者を石に変えてしまう怪物。
しかし、メドゥーサに子供がいたとは知らなかった。
ん?あれ?
「メドゥーサの子供って、どう見ても剣なんだが?」
「そうですね。クリュサオルと言うのは剣を持って生まれた人間……あるいは怪物の事のはずですが……」
「つまり、クリュサオルは剣の名前じゃなくて、本来は持ち主の名前だったという事か」
なるほど、例えばフランケンシュタイン。
元はフランケンシュタイン博士が作った人造人間の怪物が、後の世で製作者の名前で呼ばれるようなものなのだろう。
そういう実例はいくつもある。
老人の話は続く。
「この剣を生み出した原因はわしにもある」
老人は跪くと剣先を地面に付け、片手で手刀を作ると振り上げた。
「わしの……我が名は『ペルセウス』。アルゴスの守護者の責務において、我が因縁は破壊する」
ペルセウス。
その名は、メドゥーサを倒してた勇者の名前。
飛翔するサンダル、メドゥーサを封印するキビシス、冥王の兜。
そして、メドゥーサの首を切り取った金剛の鎌。魔眼封じの鏡の盾。
それらの神具、魔具、宝具を駆使して、メドゥーサを討伐し、他にも多くの伝説の持ち主。
その老人―――ペルセウスがクリュサオルを叩き割った。
その光景に思わず、息を飲む。
老人だったはずのペルセウスの姿は、若く戦士の姿に変わる。
そして、砕けたクリュサオルの破片からは、黒いモヤが天に向かい舞い上がっていく
これでクエストが終了したのか?
そんなははずはない。
天に帰ってくように見えたモヤは一ヶ所に留まり、みるみるうちに黒い固体に変わっていく。
黒い球体。
それが完成したかと思うと落下。
川へと落ちていく。
何が起きるのか?そんなのは分かり切っている。
これは現実の世界であり、同時に現実の世界ではない。
ここは『ザ・ウォリアー』
戦士として戦う者を生み出すゲームだ。
たしか―――
『植守川橋』
アプリの地図から距離と歩行時間を表示させると20分。
20分も歩けば、張った腹部も運動可能レベルまで回復すると思う。
「もう少し、どこかで休憩しますか?」
俺の様子から何かを感じ取ったのだろう。ルナさんは休息と提案してくれた。
「ん~ 少し休みたいかも、どこかに休める場所でもあればいいけど」
「あっ、予定ルートより少し離れますが、近くに公園があります」
公園に到着するとベンチを発見。
そのままに座り込む。公園では、子供が走り回っている。
そういえば、今日は土曜日だったなぁ。
「なんか平和だ」
「平和ですね」
自分では思っていた以上に張り詰めていたみたいだ。
さっきのハンバーグ相手の激闘も無論、日常生活でも……
思い返してみれば、デスゲームが始まって以来、起床は太陽が昇るよりも早く出かけ、主狩りへ行き、学校の昼休みにも外へ抜け出し、主狩りへ向かう生活。
それを止めるわけにはいかないけれども、俺の中で苦しいや辛いといった感情をコントロールできているわけではない。
もしかしたら、陽葵がやたらルナさんと会う事を「デートだよ!デート!」と囃し立てていたのは、それを見越して、癒しと安らぎを……いや、そんなわけないか……
まどろみの勧誘に誘われて、どうやら俺は意識の手綱と手離してしまった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
(あれ?寝ちゃったのか?なんだか柔らかい……)
「あっ、起きましたか?」
「?」
なぜだかルナさんの声が上から振ってきた。
上から?
俺を目を開く。すると、ルナさんが上からのぞき込んでいた。
(ん?妙……不自然に顔が近い気がする…って!?)
俺は跳ね起きた。
なぜなら、ルナさんに膝枕をされていたから……
「す、すいません。寝てしまって」
「いえ、構いません。疲れていたみたいなので……」
それから俺たちは―――
「……」
「……」
と、しばらく無言だった。
チラッとルナさんの様子をのぞき込むと、その顔は真っ赤に染まっていた。
たぶん、俺と同じ色だ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
―――植守川橋―――
「……到着しましたね」
「……はい」
俺たちは会話にぎこちなさを残して、植守川橋に到着した。
矢印のアイコンが示している場所は……
「やはり、河川敷になるみたいですね」
取りあえず河川敷へ降りる。
すると、直ぐにクエスト開始のサークルが見つかる。
俺たちは、そのサークルの中へ―――
「よくぞ、この剣を取り返してくれた」
そのセリフと共の老人の姿が現れた。
そしてパーシから奪い返した剣を抜き、こちらに見せるように向けた。
「その剣の名前は黄金の剣。呪われた剣だ」
「クリュ……なんだって?」
思わず、俺は聞き返したが、隣からルナさんが「クリュサオルです」と教えてくれる。
「確か、ギリシャ神話で登場する怪物で、メドゥーサの子供と言えばわかりやすいかもしれません。メドゥーサの死後、その血からペガサスと共に生まれた存在です」
「メドゥーサ……」
それは俺でも知っている。
ゴルゴーン3姉妹の1人。
毒蛇でできた髪。黄金の羽。下半身は大蛇の尻尾。
それ以上に有名なのは魔眼だ。
紅の魔眼を持ち、その目を見る者を石に変えてしまう怪物。
しかし、メドゥーサに子供がいたとは知らなかった。
ん?あれ?
「メドゥーサの子供って、どう見ても剣なんだが?」
「そうですね。クリュサオルと言うのは剣を持って生まれた人間……あるいは怪物の事のはずですが……」
「つまり、クリュサオルは剣の名前じゃなくて、本来は持ち主の名前だったという事か」
なるほど、例えばフランケンシュタイン。
元はフランケンシュタイン博士が作った人造人間の怪物が、後の世で製作者の名前で呼ばれるようなものなのだろう。
そういう実例はいくつもある。
老人の話は続く。
「この剣を生み出した原因はわしにもある」
老人は跪くと剣先を地面に付け、片手で手刀を作ると振り上げた。
「わしの……我が名は『ペルセウス』。アルゴスの守護者の責務において、我が因縁は破壊する」
ペルセウス。
その名は、メドゥーサを倒してた勇者の名前。
飛翔するサンダル、メドゥーサを封印するキビシス、冥王の兜。
そして、メドゥーサの首を切り取った金剛の鎌。魔眼封じの鏡の盾。
それらの神具、魔具、宝具を駆使して、メドゥーサを討伐し、他にも多くの伝説の持ち主。
その老人―――ペルセウスがクリュサオルを叩き割った。
その光景に思わず、息を飲む。
老人だったはずのペルセウスの姿は、若く戦士の姿に変わる。
そして、砕けたクリュサオルの破片からは、黒いモヤが天に向かい舞い上がっていく
これでクエストが終了したのか?
そんなははずはない。
天に帰ってくように見えたモヤは一ヶ所に留まり、みるみるうちに黒い固体に変わっていく。
黒い球体。
それが完成したかと思うと落下。
川へと落ちていく。
何が起きるのか?そんなのは分かり切っている。
これは現実の世界であり、同時に現実の世界ではない。
ここは『ザ・ウォリアー』
戦士として戦う者を生み出すゲームだ。
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