『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

キャノン砲の一撃

 モヤのように禍々しいオーラは空に向かって立ち上っている。

 「ならば、こちらも本気を出させてもらう」

 いつものパーシの言葉。
 だが、先手必勝。ルナさんが前に出る。
 そのまま、盾を叩き付けパーシの体を後方へ弾き飛ばす。
 後方に着地したパーシはルナさんをギロリと睨み付ける。
 まずは成功。パーシのヘイト値はルナさんに行く。

 そして―――例のステップだ。

 パーシは左右へ体を動かしフェイント。さらにルナさんの盾が死角になるように体を沈めた。
 俺の時にはなかった動作。対盾持ち前衛職用の動きか?
 しかし―――

 「ルナさん、右だ!」

 戦場の全体を見渡せる位置をキープして離れていた俺にはパーシの動きが見える。
 どんなにパーシが速くても、音速である俺の声のほうが速くルナさんへ届く。
 右に盾を構え直し、パーシの攻撃を弾いた。
 その一瞬、パーシの動きが止まる。

 「―――ッッッ!ここだ!」

 爆音!

 それは俺の右腕から鳴り響いた。

 『砲撃姫』の代名詞、キャノン砲が火を噴いたのだ。

 もしも―――仮に―――

 人間が至近距離で大砲を喰らったらどうなるか?

 パーシの姿は消えていた。遅れて爆風が通過して行き、土煙が舞い上がる。
 もちろん、それらは全てARの情報に過ぎないが……
 情報演算により忠実な再現なのだろう。

 人間が大砲を喰らったら?
 その答えの……

 だが、吹き飛び爆撃地のようなエフェクトがかかっている場所で立っている者がいた。
 もちろん、パーシだ。
 その姿をみた俺は―――

 「……怪物」

 そう、呟いて笑っていた。

 だが、パーシの体も十全ではない。
 (当たり前だ。無傷であってたまるか)  

 呪われた剣を杖代わりに体重をあずけ、ふらつきながらもそれでも立ち上がっていた。

 「カナタさん!」

 ルナさんの声で我に返る。
 このまま2撃目をぶっ放すのは当然の事。
 だが―――
 再度、轟音を震わせたキャノン砲は避けられた。

 「やはり練度が足りないか」

 苦々しい声を出す。
 しかし、後悔と反省の暇はない。
 一撃でヘイト値が俺に移ったらしく、パーシは俺に向かって疾走を開始してくる。

 「させません!」

 俺とパーシの間。盾を構えたルナさんが滑り込む。
 パーシは例のステップを開始。
 俺は括目して、その動きは―――

 「―――って!なに!?」

 その動きが今までとは違った。
 一瞬、身を屈めたパーシはダッシュの勢いを生かして地面を滑る。

 「スライディングだと!?」

 俺は一瞬の驚愕と膠着。
 しかし、それに反応できた人物がいた。
 もちろん、ルナさんだ。
 自身を抜き去り、置き去りにしようとするパーシに向かって―――
 その盾を振り下ろした。

 「うわぁ、痛そう……」

 その光景はまるでネットで転がる事故映像。
 流石のパーシも動きを止めて立ち上がる動作。
 だが、ルナさんも手を止めない。

 攻撃のラッシュが開始される。

 盾と剣のコンビネーション。
 それを剣技で受けて―――パーシの動きが止まる。

 3撃目―――

 HITしたパーシの体を後方で吹き飛んでいく。
 しかし、俺は見た。
 キャノン砲を発射する直前、パーシが視線を俺に向けて、剣を振るう瞬間を

 「アイツ、切ろうとした?自分に向かってきたキャノン砲の弾丸を?」

 成長してる。この戦いでパーシのAIは天井知らずで急成長してる。
 ここで倒さないと、やられる!

 俺は吹き飛ばされたパーシが倒れているであろう場所に向かってキャノン砲を乱射していた。
 それは恐怖に駆り立てられたから……

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