『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

ファミレスで作戦会議

 パーシの正体は、それは―――
 一流アスリートのモーションデータをフィードバックされた情報アノテーション
 思い返してみれば、パーシが目前で消えた動き。
 たぶん、サッカーのブラジル代表選手を前に素人が立てば、同じように選手が消えたように見えるんだろうなぁ。

 「トップアスリートの身体能力を有した敵に私たちが勝つ方法ってありますか?」

 ルナさんからの言葉に「う~ん」と少し悩む。
 たぶん、パーシはトップアスリートの身体能力そのものを有しているわけではない。
 一定の条件下で、トップアスリートが持っている技術テクニックを再現しているだけだ。
 そうじゃないと、俺たち平凡な高校生が戦いを継続することすら難しい。
 では勝てるのか?勝つ方法はあるのか?

 「……」

 結局、その質問への返答は無言となった。
 おそらく、この『クエスト』の難易度レベルを表現するなら『高難易度クエスト』に分類カテゴライズされるに違いない。
 上位プレイヤーが複数人でPTパーティを組み、トライ&エラーを繰り返して攻略する事を想定されている。

 「安易に勝てるとは言えない……けど、縛りプレイの攻略は嫌いじゃない」

 自身に発破をかけるため、ハッタリの言葉を放つと同時にニヤリと笑って見せる。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「例の動きをする直前、パーシはフェイントのため左右にぶれるだから、ルナさんは前に出て……」
 「接近戦インファイトで距離を潰していくのですね」
 「うん、俺は武器を変えて、遠距離でダメージソースになれる攻撃を考える。本当は客観的に戦場を見渡す司令塔コマンダー役がほしいところだけど……」

 それを言い始めたら、PTパーティに必要な人数は足りてない。
 一番、司令塔に相応しいのは陽葵だが、アイツは最近、このクエストに関わる事を嫌っているようだ。

 「パーシの危険な所は、通常攻撃でも俺たちを翻弄していくフェイント。緩急をつけた攻撃。それの対処方法だけど……」

 「あんた、何やってるの!」

 鋭い声が飛んできた。
 誰だ?反射的に相手の顔を覗き込む。しかし、その顔は俺の記憶にない人物だった。

 「……アキちゃん」

 どうやらルナさんの知り合いらしい。
 しかし、どうにも剣呑な雰囲気が2人にはあった。

 「ルナ、今日も学校をサボって、みんな心配してるよ」
 「……」

 ルナさんは俯いて顔を隠した。そのまま、無言。
 ルナさんが無言になったため、アキちゃんと呼ばれた少女は、矛先をルナさんから俺に変えた。

 「貴方はだれですか?」
 「お、俺?俺は……阿澄彷徨って名前で……」
 「そうですか?貴方は彼女が不登校だとわかって、こんな場所に彼女を連れまわしているのですか?」
 「別に連れまわしているわけじゃなくて……」

 シドロモドロになって舌が回らなくなっていく。

 「アキちゃん、違う。この人は『砲撃姫』とお付き合いをしていた人で……」

 がっ!ルナさん?

 「そうなのですか?」

 慌てて俺は陽葵との関係を説明しようとしたが、明らかにアキちゃんがトーンダウンしたため、下手に口を出すのを止めた。

 「すいません、私は秋坂亜紀と言いまして、この子、ルナと同じ学校へ通う同級生―――『砲撃姫』さんの彼氏ならルナと私は同じギルドメンバーと言って通じますよね?」
 「ん?あぁ、もちろんわかるよ。ギルメンね」
 「ルナは……ご迷惑をかけてないでしょうか?あの事件の直後、ルナは自分を責めて……」

 「え?」と俺はルナさんを見る。
 彼女は下を向いたままだった。そのまま力なく、こう話した。

 「自分は守るのが役割なのに、守れなかった……だから……」

 ガタっ

 ルナさんは最後まで話せなかった。
 そのまま、途中で勢いよく席から立ち上がったからだ。
 「ルナ……」と呆けるアキちゃんをそのままにルナさんは駆け出し、店から飛び出して行った。

 「あっ!く~」と俺は財布から1000円だけ取り出し、テーブルに置く。

 「彼女を連れ戻してくる。もしも帰らなかった支払いは頼んだ!」

  そう言い残して、ルナさんを追いかけた。

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