『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~
第一チェックポイントのAI
ロボットの最終地点は、限りなく人間になる事。
なるほど、一理ある、と俺は唸る。
ロボット特有の利便性すら捨て去り、人工的に人間そのものを作る事は、ある意味では究極的な目標だろう。
人間が人間を作る世の中……
それは自然の摂理に反するどころか、自然の理そのものだ。
だが、しかし……
逆に人間の最終地点は何かと考えた時、思いつく答えは―――
人間の最終目標地点は限りなくロボットに近づくことではないだろうか?
いやいや、そんな事はない。 誰だって自分が機械化なんてしたくないって意見もあるだろう。
当然だ。
その意見は、あってしかるべきだと俺は思っている。
だが、しかし……
機械の利便性は、常に俺たちの身の回りに存在していて、人間を強化している事を否定する事はできないだろう。
例えば、こんな話がある。
漫画などの創作物では、作者よりも頭が良い登場人物は作れない。
これは、正しいと思うかい?
俺個人の意見としては―――
作者より頭が良い登場人物なんて作ることは可能だ。
なぜかだって?
それは―――
今の時代なら外部の脳として使える端末を2つ3つ、持っているのが普通だからだ。
外部の脳と言えばSFチックな妄想が進みそうだが、そんなサイエンス・フィクション的なものではない。
昔から、みんな持っていただろ?
スマホなり、パソコンなり…… 外部に自分の脳の一部を……
閑話休題。
話がズレた。
つまり、AIという物は、限りなく人間的だという話だ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「それは、このおじいさんの事をおっしゃっているのですか?」
ルナさんは、目の前の老人。ARによって追加された情報である老人を指差した。
「そうだよ。この情報は人間の小さなフォルムに合わせて、限界ギリギリまで情報量を詰め込んでいるみたいだ」
「小さいのですか?人間のサイズで?」
「? 動きでわからない? たぶん、通常の主と同等の情報量を持っている。もしもプレイヤーと対戦することになったら、戦闘に使う情報力は……正直、想像すら嫌だね」
「そこまで見た目で判断するとは……」とルナさんは、呆れ顔だった。
陽葵のご指導で、見た目から敵が有している情報力を読み取る力を鍛えられたから、むしろ上位プレイヤーは普通にできる事だと思っていたのだが……どうやら、違うみたいだ。
ふわふわと空中に浮遊していた陽葵に「どういう事だ?お前、プレイヤーなら常識。できて当たり前って言ってたじゃないか」と視線で抗議してみた。
「わたし、し~らない~」とそのまま、ふわふわと離れていった。
逃げやがったな!
「……では、攻撃を仕掛けない方が良いですね」とルナさん
「そうだね。……え?攻撃って選択肢を考えてたの?」
「 ? 私のギルトでは、不可解な物には先制攻撃を……それがモットーでしたので」
予想に反して脳筋ギルト所属らしい。
「では、私から話しかけてみましょう」
「そうだな。頼むよ」
2人だけのPTだが、あくまでルナさん主導の『クエスト』だ。
決定権は彼女にある。
しかし―――
「隠し要素なのに、ここまで完成度の高い人間のモデルを作って……この情報力か」
嫌な予感がしてきた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「おぉ、旅の方。そこの旅の方。どうかお助けください」
ルナさんが近づくと、おじいさんは話かけてきた。
「何があったのですか?」
「実は孫を探しているのです」
「孫を?」
俺は後ろで聞きながら―――
「ハハ~ン、さてはヒントを元に孫に探すお使いクエストだな!」
と確信した。
「実は―――孫がある日突然、別人のように暴れ出して、村人たちに襲い掛かってしまったのです」
うん、知ってた!地図に『呪われし長剣の在処』って浮かび上がってたからね!
「そのまま、孫は山の方へ消えて行ってしまったのです。どうか、孫を連れ戻してください。お礼はなんでもいたしますから……」
『依頼を受けますか? YES/NO』
ルナさんにも同じ画面が見えているのだろう。
視線を交え……
『YES』
を押した。
「では、孫の事は頼みました」と言い残し、老人は姿を消した。
それと同時に視界に『第二チェックポイント』の文字が現れ、矢印が行き先を教えてくるみたいだ。
しかし、その前に―――
「凄い、数ですね」と俺は呟き、ルナさんは同意するように「えぇ」と頷いた。
既に行く手には、複数の敵が現れ、こちらの行く手を阻んでいる。
「シンボルエンカウントってやつか。これは少しばかり骨が折れそうだ」
「その割に、顔は笑っていますが?」
「それは、お互いさまだよ」
俺とルナさんは笑いながらモンスターに向かって駆け出していた。
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