『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~
デスゲームを告げる男
近づくと、入り口は簡単にわかった。
平凡な銀色のドア。工場でよく見るタイプのドアだ。
素材までは、よくわからないが、なんとなくアルミじゃないか?と連想するタイプのドア。
そのノブを捻ると「カッチャ」と音がする。
「開いた」
ドアを開くと―――驚いた。
開かれたドアの先には立ちふさがるように男が立っていたのだ。
外国人、大柄な白人男性。黒いサングラスに黒いスーツ。
倉庫には不釣り合いな用心棒だ。
「招待状を拝見させていただいても宜しいでしょうか?」
流暢な日本語だった。
先行していた陽葵が招待状を渡す。『ドラゴンアーマー』さんも、それに続いた。
「プレイヤーネーム ヒナタ様とルナ様ですね。確認いたしました。どうぞ、お入りください」
陽葵も俺もゲーム中に表示されるプレイヤーネームを、本名の片仮名表示に設定している。
『ルナ様』は『ドラゴンアーマー』さんのプレイヤーネームなのだろう。
俺も陽葵の付き添いとして、中に入れた。
倉庫の内部は光景は―――
本物のパーティー会場だった。
白い布が敷かれたテーブルの上には豪華な食事がある。
会場に隅には、バーカウンタ-もあり、バーテンダーが常備していた。
つまり、アルコールもOKなのだろう。
一方で客の服装もバラバラで、ドレスアップされた正装の男女は半数。
残り半分は私服か、コスプレだった。
「すごい!これ本物だよ」
周囲のオブジェクトも立体映像ではなく、本物の芸術品のようだ。
たぶん、どれも高額なのだろうが、陽葵は遠慮なく素手でペタペタと触っていた。
「……陽葵、知っているランカーや有名プレイヤーはどのくらいいる?」
あまりにも非日常的な光景に、逆に俺は警戒心を強めた。
「ん~、あそこにいる赤髪は『魔法撃ちの達人』ケン・石さんかな。
有名ギルト大島組のギルドマスター『大島組長』ミスターオオシマ。
『対空戦最強』の銀錦さん。『赤い咆哮』のドルお茶さん。 『嫌われユル戦車』の右サイドさん。『デジタルお兄ちゃん』のラインハルトさん。『第11サポーター』のヤンさん。
他にも県外から上位ランカーが見える範囲で来てるのが2~3人……かな?」
「……ゲームプレイ中には気にならないが、実際に二つ名と登録名とを声に出されると凄い違和感だな」
「……それは失礼だよ」とジト目で苦言を呈された。
とりあえず、俺は『砲撃姫』のヒナタさんに肩をすくめてみせた。
そのまま暫くは御歓談。
何事もなく、パーティは続いた。
そこに俺は危機感を抱くべきだったのだろう。
開始時刻を経過しても、運営サイドからアナウンスが何もなかったのを―――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
今更、思い出されたが、桃林陽葵さんは有名上位ランカー様なのだ。
現在、陽葵は他の上位プレイヤーに取り囲まれているように会話を楽しんでいた。
俺は、完全に蚊帳の外ってやつだ。
隣には、俺と同じで上位ランカーの群れには入れなかった『ドラゴンアーマー』のルナさん。
ルナさんは、羨望の眼差しを陽葵に向けていた。
「やっぱり、凄い方ですね。『姫』さんは」
俺は「そうですね」と答えだが、その感覚は常に俺が抱いているものだ。
上位ランカーであり、このゲームでは俺の師匠の立場ではあるが―――
俺に取って陽葵は、どうやっても陽葵のままだったはずだが―――
やはり、一部で有名人と化している陽葵を距離感を、壁を感じてしまう。
考えてみると、俺がこのゲーム『ザ・ウォリアー』を始めたのは、その距離感を埋めるためだったのではないだろうか?
じゃ、俺がこのゲームを辞めようとしている理由は?
「飽きた」なんて口にしているが、結局は、その距離感を埋める事ができなかったからではないか?
ゲームでよく使われる「分らされた」ってやつだ。
なんとなく―――俺は漠然と考えていた。
異変が起きたのは次の瞬間だ。
会場のライトが次々と切れていき、暗闇が場を支配する。
一瞬、会場から騒めきが起きるも、すぐにイベントの開始だと勘付いたのだろう。
このゲームから心が離れている俺でも鼓動の高まりを感じる。
そして、漆黒の中―――
スポットライトが1ヶ所に光を集められた。
そこには男が座っていた。
黒いスーツに黒いネクタイ。……喪服?
まるで不幸が服を着ているかのような男だった。
誰もが、その光景に目を奪われた。
その男に―――ではない。
全員が目を奪われたのは、男が座っているモノだ。
それは、無造作に積み上げられた札束だった。
そして、男は口にした。
「100キロだ」
唐突に言われた「100キロ」の意味が理解できた者はいなかっただろう。
男は、こう続けた。
「100キロの札束を用意した」
平凡な銀色のドア。工場でよく見るタイプのドアだ。
素材までは、よくわからないが、なんとなくアルミじゃないか?と連想するタイプのドア。
そのノブを捻ると「カッチャ」と音がする。
「開いた」
ドアを開くと―――驚いた。
開かれたドアの先には立ちふさがるように男が立っていたのだ。
外国人、大柄な白人男性。黒いサングラスに黒いスーツ。
倉庫には不釣り合いな用心棒だ。
「招待状を拝見させていただいても宜しいでしょうか?」
流暢な日本語だった。
先行していた陽葵が招待状を渡す。『ドラゴンアーマー』さんも、それに続いた。
「プレイヤーネーム ヒナタ様とルナ様ですね。確認いたしました。どうぞ、お入りください」
陽葵も俺もゲーム中に表示されるプレイヤーネームを、本名の片仮名表示に設定している。
『ルナ様』は『ドラゴンアーマー』さんのプレイヤーネームなのだろう。
俺も陽葵の付き添いとして、中に入れた。
倉庫の内部は光景は―――
本物のパーティー会場だった。
白い布が敷かれたテーブルの上には豪華な食事がある。
会場に隅には、バーカウンタ-もあり、バーテンダーが常備していた。
つまり、アルコールもOKなのだろう。
一方で客の服装もバラバラで、ドレスアップされた正装の男女は半数。
残り半分は私服か、コスプレだった。
「すごい!これ本物だよ」
周囲のオブジェクトも立体映像ではなく、本物の芸術品のようだ。
たぶん、どれも高額なのだろうが、陽葵は遠慮なく素手でペタペタと触っていた。
「……陽葵、知っているランカーや有名プレイヤーはどのくらいいる?」
あまりにも非日常的な光景に、逆に俺は警戒心を強めた。
「ん~、あそこにいる赤髪は『魔法撃ちの達人』ケン・石さんかな。
有名ギルト大島組のギルドマスター『大島組長』ミスターオオシマ。
『対空戦最強』の銀錦さん。『赤い咆哮』のドルお茶さん。 『嫌われユル戦車』の右サイドさん。『デジタルお兄ちゃん』のラインハルトさん。『第11サポーター』のヤンさん。
他にも県外から上位ランカーが見える範囲で来てるのが2~3人……かな?」
「……ゲームプレイ中には気にならないが、実際に二つ名と登録名とを声に出されると凄い違和感だな」
「……それは失礼だよ」とジト目で苦言を呈された。
とりあえず、俺は『砲撃姫』のヒナタさんに肩をすくめてみせた。
そのまま暫くは御歓談。
何事もなく、パーティは続いた。
そこに俺は危機感を抱くべきだったのだろう。
開始時刻を経過しても、運営サイドからアナウンスが何もなかったのを―――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
今更、思い出されたが、桃林陽葵さんは有名上位ランカー様なのだ。
現在、陽葵は他の上位プレイヤーに取り囲まれているように会話を楽しんでいた。
俺は、完全に蚊帳の外ってやつだ。
隣には、俺と同じで上位ランカーの群れには入れなかった『ドラゴンアーマー』のルナさん。
ルナさんは、羨望の眼差しを陽葵に向けていた。
「やっぱり、凄い方ですね。『姫』さんは」
俺は「そうですね」と答えだが、その感覚は常に俺が抱いているものだ。
上位ランカーであり、このゲームでは俺の師匠の立場ではあるが―――
俺に取って陽葵は、どうやっても陽葵のままだったはずだが―――
やはり、一部で有名人と化している陽葵を距離感を、壁を感じてしまう。
考えてみると、俺がこのゲーム『ザ・ウォリアー』を始めたのは、その距離感を埋めるためだったのではないだろうか?
じゃ、俺がこのゲームを辞めようとしている理由は?
「飽きた」なんて口にしているが、結局は、その距離感を埋める事ができなかったからではないか?
ゲームでよく使われる「分らされた」ってやつだ。
なんとなく―――俺は漠然と考えていた。
異変が起きたのは次の瞬間だ。
会場のライトが次々と切れていき、暗闇が場を支配する。
一瞬、会場から騒めきが起きるも、すぐにイベントの開始だと勘付いたのだろう。
このゲームから心が離れている俺でも鼓動の高まりを感じる。
そして、漆黒の中―――
スポットライトが1ヶ所に光を集められた。
そこには男が座っていた。
黒いスーツに黒いネクタイ。……喪服?
まるで不幸が服を着ているかのような男だった。
誰もが、その光景に目を奪われた。
その男に―――ではない。
全員が目を奪われたのは、男が座っているモノだ。
それは、無造作に積み上げられた札束だった。
そして、男は口にした。
「100キロだ」
唐突に言われた「100キロ」の意味が理解できた者はいなかっただろう。
男は、こう続けた。
「100キロの札束を用意した」
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