『ザ・ウォリアー』 ~この世界を浸蝕するデスゲーム系の近未来SF&ラブコメディ~

チョーカー

第0話 バトル! バトル! バトル!


 ARゲーム『ザ・ウォリアー』

 ゲームテーマは―――

 『戦士としての本能を呼び覚ませ』

 このゲームで実装されている敵キャラは実際の動物のモーション、生態、運動能力を参考にされている。
 今回の主……キメラの戦闘能力は大型ネコ科生物と同等程度。
 例えれば

 ライオン

 トラ 

 ヒョウ

 ジャガー

 チーター

 これらの動物と同レベルの戦闘能力を再現されている。
 動物相手に人間は武器を持って互角という言葉はあるけれども、現在でもアフリカでは、片手に槍を手にしてライオンと戦う部族が現存している。
 デジタルと融合した世界で、原始の狩りを再現しろというコンセプトのゲームなのだ。
 だが、しかし、相手はライオンレベル。
 しかも、本来は集団で討伐する主を1人ソロで倒さないといけない。
 ビリビリと皮膚を焼き焦がすような緊張感。 そして、体を凍り付かせるような恐怖感。
 それらが同居して、俺を叩き付ける。

 「カナタ君!回避!」

 陽葵の叫び。
 俺は正気に戻る。
 気がつけば、キメラと対峙している。
 既に戦闘は開始されていた。キメラは上下のアギトを広げ、威圧の咆哮が発射される。
 俺は横に飛ぶ。ギリギリで回避。
 主は開幕にぶっ放す『威圧の咆哮』
 これは喰らっていけない。
 受けるとデバフ効果が発生して、攻撃力、防御力といったパラメーターが大幅に減少してしまう。
 主には、『威圧の咆哮』使用直後の膠着時間が設定されている。
 その隙に右手の短剣を投擲。

 短剣はキメラの顔面に突き刺さり

 Firstファースト Hitヒット

 文字が表示され、その下にはダメージを知らせる数字が浮き上がった。

 一瞬で表示が消滅。いくらのダメージを与えたのかわからなかった。
 だが、耳元で「ダメ1381」とボソリと呟かれる。
 後ろから追走していたらしい陽葵がダメージを読み取ったのだろう。
 全くなんて、動体視力だ。しかし、ダメージ1381か。
 クリスタルという素材アイテムがあり、ボスに対して30%ダメージを増加させる超高級アイテムを右手武器の短剣に3つ使用。左手武器の短剣には4つ。

 「計210%の攻撃力上昇……これは勝てる!」

 俺は自分の恐怖をコントロールして、前に飛び込む。
 キメラは顔面へのダメージで右側が死角になっている。
 俺はそこに入り込むと左手武器でキメラの胴体を切り裂く。
 そのタイミングで右手に投擲した短剣が戻ってくる。
 数秒間、武器を手放していると手元に戻ってくる仕様だ。
 それはキメラの顔面に突き刺さっている短剣が消え、視線が回復したという意味でもある。
 キメラの攻撃が始まる。 

 「だが、その前に!」

 俺は踊るように両手でキメラの体を切り裂いていく。

 Comboコンボbonusボーナス

 文字が浮き出ては消え、コンボボーナスで増加したダメージが表示される。
 それを背後の陽葵が丁寧にダメージ量を教えてくれる。

 (やっぱり、陽葵はすげぇな。流石……)

 「流石は上位ランカーさまのアドバイスだぜ!」

 しかし、調子の乗って攻撃を繰り出し続ける事は不可能だった。
 キメラの体は赤く変わり、灼熱の炎がエフェクトとして体を包んでいる。

 「……ッ!もうバーサーカーモードに入ったのか」

 1対1での戦いで俺に対してのヘイト値が大幅に貯まったらしい。
  タイマンだから『First Hit』『Combo bonus』も俺が全部出しているから当然と言えば当然だが、予想よりも早すぎる。
 ヘイト値……つまり敵キャラクターの恨みや憎しみは数字化されていて、それが貯まると攻撃パターンの変化や攻撃力、防御力、素早さの大幅増加が行われる。
 キメラの場合は1分間の攻撃力&素早さ3割増加。
 数字にしてみれば、たった3割。しかし、体感では3倍でもおかしくない素早さになってしまう。
 この1分間、俺は悲鳴を噛み殺し、逃げ回る事になった。

 
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・ 

 「キメラ、残り10回の攻撃で倒せるよ!」

 疲労によって膝を尽きそうなった俺に絶妙のタイミングで陽葵からの叱咤が飛んできた。

 「あと10回で始めて主のソロ狩り達成か、やってやるぜ!」

 飛び込んでくるキメラの攻撃を躱し、胴体に一太刀。

 (残り9回!)

 しかし、視界の端で何かが動く。
 それは蛇……キメラの尻尾だ。
 走馬灯のように時間が緩やかになる。スローモーションみたいだ。
 その時間、俺の脳内になるデータベースは高速で検索されていく。
 ライオンの尻尾。その攻撃力は馬鹿にならない。
 かつて、フルコンタクト空手の父と言われた高名な空手家が原作を務めてマンガに書いてあった。
 その尻尾の一撃は、死角から襲い掛かってきて、その硬さはレンガで叩かれるような痛みらしい。
 つまり、当たれば一撃死もあり得るダメージを受けてします。
 回避のタイミングは既に終わった。

 防御ガード?……いや、攻撃だ!

 2つの短剣とクロスさせた。その形は、まるでハサミのように見えるだろう。
 俺は、向かって来るキメラの尻尾に対して―――

 2本の剣を突き出した。

 シャッキン―――

 と音が鳴り響き、キメラの尻尾は宙を舞う。

 (このまま、連撃を!)

 1撃!

 2撃!

 3撃!

 放つたびにコンボボーナスが乗っていく。

 このまま、倒せる! そう確信したのも一瞬だけ。
 キメラの体は赤く変貌を遂げていた。

 (バーサカ―モード!この最悪のタイミングでか!)

 fuckと心で叫び、諦めの色が心に浸蝕を開始していく。
 キメラは俺の正面を向き、ニヤリと笑っているように見えた。
 その鋭い牙と爪の刃は俺に向けて振り落される瞬間―――

 「前に!」

 短い悲鳴が混じったような陽葵の声。
 俺はその声に背中を押されたように―――

 前に飛び出した。

 振り下ろされる爪より速く――― 噛み付こうとしてくる牙よりも速く―――

 キメラの胸に剣を叩き込んだ。

 

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