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ああ、赤ずきんちゃん。

極大級マイソン

第15話「白雪姫の寝起き大作戦!フォー」

 ……何もなかったよ?
 そんな訳で赤ずきんと白雪姫は身を清め、何事もなくお風呂から上がりました。
 何事もなくお風呂から上がりました!

 赤ずきん「ううっ、酷い目にあった……」
 白雪姫「ご、ごめんなさい赤ずきんさん! 私、何というか、我を忘れていたみたいで……!」
 赤ずきん「ああ、良いのよ。誰だって我くらい忘れる時はあるわ」

 落ち込んでいる白雪姫を宥めつつ、赤ずきんは脱衣所に常備されていたタオルで身体を拭きます。流石はお城のタオルだけあり、赤ずきんが普段使うタオルとは比べ物にならないくらい柔らかでした。

 白雪姫「赤ずきんさん、客室に服が用意されていました。サイズが合うか袖を通してみてください」
 赤ずきん「ありがとう白雪姫」

 白雪姫に渡されたのは、上質な布で仕立てられた白のドレスでした。普段の赤ずきんでは着慣れないような豪華な衣装。赤ずきんがドレスに袖を通すと、最初から彼女専用に作られたのではないかと疑うほどにピッタリのサイズでした。

 赤ずきん「あはは、ちょっと恥ずかしいわね。いつもは、もっと大人しい物を着ているから、こういう派手なのは私には似合わないかも」
 白雪姫「そんな事ありません! とっても素敵ですよ!!」
 赤ずきん「そ、そうかな?」

 赤ずきんは、珍しく照れたように頬を染めてはにかみます。

 赤ずきん「まあ、私は頭巾さえあればどんな服でも……………………あれ?」
 白雪姫「どうかしましたか?」
 赤ずきん「頭巾が、無い」
 白雪姫「えぇええっ!?」

 この時になり、ようやく2人は赤ずきんの頭巾が無くなっていることに気がつきました。



 *****



 赤ずきんの頭巾。彼女のチャームポイントとも言えるアイテム。
 別に何か特殊な力が施されている訳でも、たった1つしかない唯一のものという訳でもありませんが、それは赤ずきんにとって、とても大事な物でした。
 家に帰れば何着もスペアがあり、手に入れたいと思えば赤ずきんのママに頼んで作ってもらえば良いのですが、あいにく今の赤ずきんに帰る手段は無く、仮に帰れたとしても家が壊れた事でママに怒られるのは明白だったので赤ずきんは帰りたがりません。
 結果、赤ずきんは紛失した頭巾を探すため捜査に乗り込みます。幸いにも、赤ずきんは昨夜客室のベッドで眠るまでは確かに頭にあったのは憶えていたので、容疑者を絞ることは容易でした。

 赤ずきん「つまり一番怪しいのはこの人になるわね」
 白雪姫「お兄様……」

 2人の少女が眺めているのは、客室で横になっている王子様です。彼はうつ伏せの状態で微動だにしません。
 赤ずきんが改めて王子を調べると、完全に亡くなっている事がわかりました。
 そもそも、何故王子がこの客室にいたのか? 先の状況を分析すると、

 1.男が少女の部屋に入る
 2.少女の衣服が乱れていた
 3.密室

 この事実に直面した赤ずきんと白雪姫は、1つの結論に至ります。

 赤ずきん「間違いない。『夜這い』だわ」
 白雪姫「よ、夜這い!?」

 赤ずきんは核心を突いた顔で頷きます。白雪姫がこの場所にくる以前から部屋にいた王子が、何故どういう理由で来たのかは憶測でしか語れません。しかし、可能性としては一番高いと断言できるでしょう。

 白雪姫「た、たたた大変です!! すぐにお医者様を呼ばないと赤ずきんさんが……!」
 赤ずきん「あ、まず私の心配をしてくれるのね」
 白雪姫「当たり前です!!」
 赤ずきん「でも大丈夫よ。私は何もされていないと思うから。その証拠に、王子様が死んでるし」
 白雪姫「……どういう事ですか?」
 赤ずきん「私はね。眠っている間に近づいて来る男の人を迎撃する癖があるんだけど、おそらく王子様は、私に夜這いをかけようとした際に私に殴られて、その衝撃で死んでしまったのよ」

 赤ずきんは、先ほど少年を襲った赤ずきんの寝相の事を話しているのでしょう。
 確かに、壁を砕くあの拳を生身で受ければ、一般人はひとたまりもないはずです。

 白雪姫「で、では! お兄様は赤ずきんさんに殺された事になります! それでは赤ずきんさんが犯罪者に!!」
 赤ずきん(ていうか白雪姫、自分のお兄さんの事は全然心配してないなぁ……)

 赤ずきんはそう思いながら、客室の丸い椅子に腰掛け、テーブルに肘を着けます。

 赤ずきん「もぐもぐ。でも王子様、見たところ身体に怪我らしいものが見当たらなかったから、もしかしたら私が殺したんじゃないかもね」
 白雪姫「確かに! という事は、やっぱり赤ずきんさんは無実なんですね!!」
 赤ずきん「じゃあ何で王子様が死んだかって話になると…………、王子様が吐血で何か書いているわね」

 2人は血塗れの王子の指の先に書かれた文章を読みます。

 白雪姫「『犯人はリンゴ』? まさか、お兄様はリンゴに殺されたのでしょうか!?」
 赤ずきん「はっはっはっ! ナイナイ、リンゴで人が死ぬなんて聞いた事がないわよ! もぐもぐ」
 白雪姫「そうですよね! 流石にリンゴで死ぬなんて有り得ませんよね! …………ところで、赤ずきんさんは先程から何を食べてるんですか?」
 赤ずきん「んっ? テーブルの上にリンゴが盛られていたから1つ。もぐもぐ。……あんまり甘くないわね、このリンゴ」

 それは昨夜、お后が赤ずきんを殺害するために用意した毒リンゴでした。ウサギ型に模られたリンゴを、赤ずきんは無造作に口にします。

 赤ずきん「王子様がどういう経緯でここに来たのかは不明、頭巾の在り処も分からず。何とかして王子様から情報を聞き出したいけど、既に亡くなっているならそれも難しいわね。方法が無い訳ではないけど……」
 白雪姫「そんな方法があるんですか? 死んだ人が生き返るような…………あっ」
 赤ずきん「白雪姫も気付いたようね。前に毒にやられた白雪姫を助けた時に使ったもの。……『黄金のリンゴ』よ」

 黄金のリンゴ。
 食べた物を不老不死にすると言われる神々の果実。死んだ者にも効果があるあのリンゴを王子に食べさせる事が出来れば、王子を生き返らせられるかもしれません。

 白雪姫「しかしあのリンゴは、森のリンゴ園にしか実っていないはずでは?」
 赤ずきん「実はここにあったりします」

 赤ずきんは黄金色にリンゴを掲げました。それは間違いなく、白雪姫の命を救った果実、『黄金のリンゴ』です。

 白雪姫「わぁっ! どこに隠し持っていたんですか!?」
 赤ずきん「それは乙女の秘密よ。これを使えば死んだ王子様を蘇らせて情報を聞き出せるわ。早速試してみましょっ」

 赤ずきんは王子の歯にリンゴを充てがいます。
 しかし、

 赤ずきん「駄目ね、上手く噛んでくれない。死んでるんだから当然だけど」
 白雪姫「どうしますか?」
 赤ずきん「大丈夫。白雪姫にやったのと同じように食べさせれば良いわ」
 白雪姫「なるほど、私と同じようにですか。私と同じように……………………っ!?」

 と、白雪姫が目を見開いている間に、赤ずきんは黄金のリンゴを囓り、咀嚼して、自分の唇を王子の唇に……。

 白雪姫「ストォオオオオオオオオオオオオオオップ!!!!」
 赤ずきん「わわっ!! どうしたのよ白雪姫!?」
 白雪姫「あ、赤ずきんさん駄目です! それは駄目です!! お兄様とキ、キキキキキスなんて!! 神様が許しても私が許しません!!」
 赤ずきん「で、でも、白雪姫の時はこれで助かったs
 白雪姫「そういう問題ではありません!!」
 赤ずきん「な、なんか今日の白雪姫怖いんだけど……」

 赤ずきんは、普段より幾分か過激になっている白雪姫にたじろぎながらも、おそらく彼女は久しぶりに実家に帰った事で興奮しているのだろうと考え、自分を納得させます。

 赤ずきん「じゃ、じゃあ、代わりに白雪姫がキスする?」
 白雪姫「いや、流石に兄妹でキスするのはちょっと……」
 赤ずきん「じゃあ誰が王子様にリンゴを口移しすれば」

 赤ずきんに問われ、白雪姫は言葉に詰まってしまいます。赤ずきんも、う〜んと腕を組んで良い案はないものかと思考を凝らします。
 その時です。



 少年「あぁぁぁぁやっと部屋に戻って来れたぁぁぁぁ……。あんな高さから投げ出されて、危うく本当に死ぬところだったよもぉぉぉぉ!」



 ガチャリと客室の扉が開かれ、その奥から木葉まみれの少年が入ってきました。彼は全身土と埃だらけで、半分涙目ながらも苦闘して赤ずきんのいる客室に戻ってきたのです。

 赤ずきん&白雪姫『…………………………………………』

 沈黙する女子2人。
 そして赤ずきんは、少年の姿を捉えるや否やニヤリと嫌な笑みを浮かべました。

 少年「ただいま戻りましたお二方。赤ずきん様は、もう目は覚めましたか?」
 赤ずきん「ええ、もうすっかり! それにしてもよく戻って来たわね」
 少年「僕はおとぎの国を治める国王様の召使い。このような事で職務を投げ出すはずがありません」
 赤ずきん「私は貴方を投げ出したけどね」
 少年「誰うま…………いえ、何でもありません。しかしもう2度と投げ出されるのは勘弁です」
 赤ずきん「わかったわ。私も、さっきは寝起きでイライラしていてあんな酷い事を……、本当に申し訳ないと思っているわ」
 少年「わかってもらえて嬉しいです」
 赤ずきん「ところで…………1つ頼み事があるんだけど良いかしら」

 凄く嫌な予感がしながらも、少年は赤ずきんを促します。

 少年「……何でしょう?」
 赤ずきん「実は貴方に、王子様とキスをして欲しいのよ」
 少年「お暇を頂きますそれでは」

 少年は脇目も振らず部屋の出入り口に向かってツカツカと進みます。
 させるものかと、赤ずきんが少年の服を掴み捕らえました。

 赤ずきん「逃しわせんぞ!」
 少年「離してください! 僕はパワハラには屈しないぞ!!」
 赤ずきん「王子様が死んだままだとお互いに色々と困るでしょう!? キスの力で王子様を生き返らせるのよ!!」
 少年「どこの世界にキスをしただけで生き返るようなメルヘン補正の人間がいるっていうんですか!? もし本当にそんな方がいるのなら僕は『アナタの命はわたがしのように軽いんですか?』と問うてみたいですね!!」
 赤ずきん「あぁ〜っ! 今貴方、白雪姫に喧嘩売ったわよ!? そして私にも喧嘩売ってる!!」
 少年「喧嘩を売れない男はただの臆病者です!! 僕は腐女子の妄想には断固として拒絶する!!」
 赤ずきん「聴きなさい! 王子様を生き返らせるプランがあるのよ!!」

 そう言って赤ずきんは、少年に黄金のリンゴについて説明をしました。
 少年は説明の途中、半ば信じられないといった素振りを見せましたが、しばらく俯いて納得したように頷きました。

 少年「なるほど……。でしたら別に口移しでなくとも、リンゴを磨り潰すなりして食べ易くすればよろしいのでは?」
 赤ずきん&白雪姫『ああ、確かに』

 という訳で3人は、王子に黄金のリンゴを食べさせる為に、食堂へと向かいます。
 王子様の死。彼を蘇らせる為に向かった赤ずきん達に、この先どのような運命が待ち受けているのでしょうか!?
 次回、第16話「赤ずきんちゃんの冷凍保管」。ご期待ください。

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