ああ、赤ずきんちゃん。

極大級マイソン

第11話「白雪姫は想う」

 狩人がおとぎ騎士団と戦っているその頃、騎士に保護された白雪姫は城内へ案内されていました。白雪姫にとって、数ヶ月ぶりとなる我が家。全く変わらない中の様子を眺めて、白雪姫は安堵と懐かしみを感じていました。
 そして、裏口から城の玄関口まで来たところで、先頭を歩いていた騎士が振り返ります。

 騎士「さて、ここまで来れば安全だな。……姫様、御無事で何よりでございます。貴女様が城を離れてからというものの騎士一同、輾転反側の思いでおりました」
 白雪姫「あの、ご心配をおかけしました」
 騎士「恐縮です。お疲れでしょう、至急使いを呼んで姫様が休まれる部屋までお連れしますのでお待ちください」
 白雪姫「はい。…………あっ、いや! 私、お城まで戻って来たのは確認したいことがあったからで…………」
 少年「騎士殿!」

 白雪姫の台詞を遮るように、1人の少年が2人に声を掛けてきました。
 彼は、昨夜赤ずきんのお世話をしていた『少年』でした。

 騎士「……使用人が来たようですね。それでは姫様、私はまた城外へ出て他の騎士達の加勢に参ります。それでは、またお会いしましょう!」

 騎士はそう言って、来た道をまた戻って行きました。
 呆然とする白雪姫の側で、少年がコホンと咳払いします。

 少年「それでは姫様、お部屋までお連れします」
 白雪姫「…………貴方、お城の使用人ですか? 随分とその、お若いですね」

 少年の体躯は、パッと見て白雪姫の数歳上程度。あの双子の兄妹くらいに見えました。城で仕事をするには、余りにも幼すぎですし、そもそも白雪姫は、この少年に見覚えがありませんでした。
 白雪姫の言葉を聞いた少年は、ビシッと背筋を伸ばします。

 少年「ハッ!! 少年と申します!! 白雪姫様の行方が分からなくなった頃に研修を終え、新米として最近仕事を任されることになりました! 以前は裏方での仕事ばかりで、城内での仕事は日が浅いのです! 白雪姫が僕をご存知ないのも当然かと!!」
 白雪姫「そうなんですか?」
 少年「そうです!!」
 白雪姫「あの、そんなに緊張しないでください。楽にしてくれて結構ですから」
 少年「わかりました」

 少年は楽な姿勢をとりました。
 白雪姫は、何となくこの少年に調子を狂わせながらも、今後の行動について考えます。
 赤ずきんが拐われ、4人で向かったものの、狩人は他の者を裏切り騎士団と対峙し、オオカミとケルベロスは何処かへ行ってしまいました。残されたのは白雪姫1人です。
 しかし、白雪姫の目的は赤ずきんさんを救出する事です。いなくなった動物2人の状況も気になりましたが、白雪姫は第一目的を遂行しようと決意しました。

 白雪姫(この城で生まれ育ったのです。城内のことは熟知しています。例え1人でも、私が赤ずきんさんを助けださないと!)
 少年「それで、少し休憩をされた後は国王様の元へご案内します。国王様も、姫様を大変心配されていましたので、きっとお喜びになるでしょう」
 白雪姫「その前に、貴方にお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
 少年「何でしょうか」
 白雪姫「……この城に、『赤ずきん』という方が連れて来られたという情報を耳にしました。彼女のことをご存知ですか?」

 白雪姫がそう言うと、少年はキョトンとした顔で答えます。

 少年「…………何故、姫様がその事を? はい。赤ずきん様なら、現在客室でお休みになられているはずですが」
 白雪姫「本当ですか!?」
 少年「は、はい! 間違いありません」

 少年の言葉を聞いて、白雪姫はホッと胸を撫で下ろしました。少なくとも、赤ずきんが酷い目に合わされていないことはわかったのです。

 白雪姫「今すぐに会うことは出来ますか?」
 少年「今すぐ、でございますか? しかし、まずお休みになられた方が……」
 白雪姫「大丈夫です! 私は全然疲れていませんから!! 早く赤ずきんさんの元へ!!」
 少年「か、畏まりました……」

 興奮気味の白雪姫に押されて、少年は首を縦に振ります。
 白雪姫も、自分が少々強引であるという事を自覚していましたが、それよりも一刻も早く赤ずきんと会いたいという想いが優先されました。

 白雪姫(今会いに行きますからね、赤ずきんさん!)
 少年「では、赤ずきん様が泊まっている客室までご案内致します」

 少年を先頭に、城内を進む白雪姫。果たして、赤ずきんに無事再会することは出来るのでしょうか!?
 次回、第12話「白雪姫の寝起き大作戦!」。ご期待ください。

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