公爵令嬢は結婚したくない!
婚姻式(7)
アルドーラ公国の王城に到着し案内された部屋は執務室でもなく王城の奥まった部屋であった。
以前に、スペンサーに教えてもらった近衛騎士団の方が4名、扉の前に立っている事から室内に居るのは誰かというのは考えるまでもない。
「シュトロハイム公爵家の方がお越しになられました」
私達を案内してくれた老齢の男性が室内に向けて声をかけると、アルドーラ公国の王でもあるフィンデル大公の入室を促す声が聞こえてくる。
両開きの扉が開いたところで、まず入室するのはシュトロハイム公爵家の当主であるお父様。
その後に、お母様が入室し最後に私の番となる。
室内に入ると、すぐにアルドーラ公国の王族のお姿が確認出来た。
「急がせてしまい申し訳なかった」
「いえ、こちらこそ――。無理を言ってしまい」
「まずは、座ってくれ」
フィンデル大公と、お父様が軽く言葉を交わしたあと、ソファーを勧められ――、両親が座ったのを確認したあと、私はソファーに座る。
「――さて、今回は結婚式を執り行う前に婚姻式を形式上とは言え執り行いたいと思う」
「そうですな」
フィンデル大公の言葉に、お父様も同意する。
「お父様……」
「そのような顔をするのではない」
不機嫌そうに声を上げたのはレイネシア王女殿下。
彼女は、どうやらスペンサーと私の結婚式には、あまり良い感情は持っていないみたいで――、室内に入った時から睨みつけてきている。
たしかに、私の彼を「お兄様!」と、言いながら抱き着いてきたりしていたのだから好きだと言うのは同じ女としては分かるけど、こういう場所では弁えて欲しい。
たしかに血は繋がっていないと教えられたけど、兄弟である以上――、結婚は出来ない訳なのだから、きちんと気持ちの整理をしてほしいと思ってしまう。
あと次期王女となる身なのだから婚姻式の場面であったとしても、苛立ちを表情に出すのは、どうなのかな? って、思う。
「はい……」
さすがのレイネシア王女殿下も、大公に窘められれば引かざるを得ない。
彼女は、私から視線を外すと、スペンサーの方へと視線を向ける。
その視線は、恋する乙女と言った感じで――、それを見た私は心の中で溜息をつく。
「フィンデル、時間が惜しいわ。早めに済ますとしましょう」
「うむ」
フィンデル大公の妹のリーズロッテ様が口を挟んでくる。
「スペンサー」
「はい。それでは、こちらに目を通してください」
渡された羊皮紙を手に取る。
目を通していくと、アルドーラ公国からシュトロハイム公爵家に対する援助などであった。
正直、シュトロハイム公爵家の財政は潤っているので、特に援助などは必要ない。
だけど……。
「なるほど、たしかに――」
お父様が頷くとサインをしてしまう。
この辺は、家同士の繋がりという形になるので現行の当主が契約を交わすのは当たり前といえば当たり前で……。
「大公様、それで娘が嫁ぐ家ですが――」
「うむ。そのことに関しては公爵家を新しく興す事になった。公爵家の新しい名前はハクアとなる」
「なるほど……。つまりハクア公爵家と言う事になる訳ですか……、名前の由来をお聞きしても?」
「不肖の息子ながら国の為に身を粉にして働き国内の問題点を片付けた事。そして、隣国のシュトロハイム公爵家のご令嬢と恋仲になり結婚を誓い合う仲となり公国の貴族内乱を抑えてくれた事に感謝の意を込めて2ヵ国間の改善を行った100年前に王妃に敬意を表して彼女が住まわれた白亜邸から公爵家の名前を決めるに至った」
「そういう事でしたか」
なるほど……、つまり白亜邸の白亜――、だからハクアという名前にしたと……。
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