公爵令嬢は結婚したくない!
揺れる気持ち(6)
そんな風に思ってしまう自分がいる。
――でも……、彼が――、スペンサーが言うなら……、両親のことを信じて見ても良いと思ってしまう。
肯定してしまう自分も居るわけで……。
だけど気持ちがぐちゃぐちゃになって判断がつかない。
「すぐに全部を理解するのは難しいと思う。ただ――、これだけは知っておいて欲しい。ティアを――、君を大事に思っている人はたくさんいるってことを……」
「本当に?」
「ああ、本当だ。それに前にも言ったよな? 世界全てが敵に回っても俺はティアの味方でいると」
「…………」
私は、無言のまま頷く。
「ねえ? どうして……、スペンサーは私のことを、そこまで大切に思ってくれるの?」
「――ん? ああ――、どうだろうな……」
「はぐらかさないで! さっき私、言ってくれないと分からないってスペンサーに言ったよね! 私の! どこか気にいったの?」
「そうだな……。表情がコロコロ変わる所とか――」
「そんなに……、私は表情に出ているの?」
「ああ、いまなんて顔が真っ赤だぞ?」
「――え!? う、嘘!?」
これでもポーカーフェイスは得意だったのに……、私は思わずベッドから立ち上がって姿身に向かう。
姿見には全体像が映っていて――、顔は真っ赤になっている。
そんな私自身に気が付いて後ろを――、スペンサーが腰かけているはずのベッドの方を振り向こうとしたところで後ろから彼に抱きしめられた。
「――ち、ちょ! ちょっと!」
「本当に思ったとおりのリアクションを取ってくれるよな」
彼は、微笑みながら私の首筋をキスしてくる。
優しいキス。
――でも、すごくムズがゆくて……、「――んっ!」と、思わず声が――、身悶えしてしまう声が唇から漏れてしまう。
「ほら、鏡の中に映っているティアは、すごく魅惑的で扇情的だ」
「スペンサーは、いじわるです」
潤んだ瞳――、上気した頬――、そんな自分の表情を見て恥ずかしくなって思わず両手で顔を隠してしまう。
「すまない。――つまり、俺はティアの全てが愛おしいということだ」
「もう、いいです……」
彼の気持ちは十分に理解できましたし……。
「――さて、今日は色々とあって疲れただろう?」
「はい……」
思ったより、神経をすり減らしてしまっていたのか疲れてしまっていたようで……、彼の言う通り少し眠い。
「あの、お願いがあるの」
「お願い? ティアにしては珍しいな」
その言葉に私は少しだけイラッてくる。
2か月も放置しておいて! と、思ってしまう。
「――わ、わかった! 寝るまで一緒に――」
「今日は、ずっと一緒に居てください」
私は、後ろから抱きしめてきている彼の腕の中で振り返って体に抱き着く。
「どうして――、匂いを嗅ぐ?」
「好きな殿方の匂いを嗅ぐ女は嫌いですか?」
「――いや、そうでもないんだが……」
「それでは我慢してくださいね? 添い寝を、私は所望します!」
「分かった」
彼と一緒にベッドで横になり、彼の腕の中で私は目を閉じる。
愛おしい人の匂いに包まれているようで、とても安心して――、すぐに眠気が襲ってくる。
「最近ね、私――、ほとんど眠れていなくて……」
「そうか……」
「スペンサーが悪いんですからね!」
「わかった。今日は、一日一緒にいてやるから」
「うん」
久しぶりに私は、安心して眠りに落ちることが出来た。
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