公爵令嬢は結婚したくない!
束の間の日々(4)
「おいしいわ」
私は、サラダを咀嚼したあと目の前のお皿の野菜を見る。
「それは良かった」
彼の方を見ると、私をジッと見つめてきていた。
「スペンサー、どうかしたの?」
「いいや。最近、ティアが落ち込んでいたからな。今日は、君に元気になってもらおうと料理の趣向を変えてみたんだ」
「料理の?」
私は、首を傾げながら彼の言葉の意図を考えるけど、特にコレと言った答えには辿りつかないし、思い当たる節もない。
「くくくっ」
彼が口元に手を当てながら小さく笑っている。
「何がおかしいの?」
「――いや、君は貴族の食事よりも庶民が口にしている食事が好きだと言った事に少しばかりな――」
「――え? そうなの?」
彼に言われるまで気が付かなかった。
何時も屋敷で出されている食事――、それが貴族の口にしているものとは……。
「ああ、ミトンの町で話を聞いてきたが、君は家庭的な料理を好むとアドバイスされたんだ。食事は、娯楽の一つでもあるからな」
たしかに人間の三大欲求の一つである食事は、美味しければ満足した気持ちになって幸せにもなったりする。
それにしても、庶民の食べるご飯ね……。
味付けは、シンプルだけど私としてはメリハリの効いた味付けは好きだったりするので、貴族が食する料理よりも好みだと思う。
「スペンサー」
「――ん?」
食事していた私は手を止めて彼に気になることを聞くことにする。
「今日は、王城に行っていたってエリンに聞いたのだけど……」
「ああ、そのことか。反対派の貴族と会合を持っただけで特に問題などは無かったから安心していい」
私が聞きたいのは、そういう事ではなくて……。
リースノット王国とアルドーラ公国との間の問題がどうなっているのか伺いたいのだけれど……。
「……あの……、差し出がましい事だと思うのだけれど……、リースノット王国とのことは……」
「その事に関しては父が対応をしているからティアは気にしなくていい」
「お父様とお母様は?」
「それに関してもティアが気にすることではないよ」
何か隠しているのは分かる。
だけど、これ以上は――、たぶん聞いても答えてくれない。
「スペンサー、私は……」
「ティア。これは外交上の問題だ。あとは分かるな?」
「……はい」
基本的に女が政治に口を出すのは、好ましい事とは言えない。
そんな事は言われなくても分かっているのに……、それでも、どうしても気になってしまう。
もんもんとした気持ちのまま食事を終えたあとは、湯浴みをする間もなくエリンさんが言っていたとおり、彼が求めてきたので私は彼と床を共にする。
ベッドの中では彼も何か話してくれるかな? と期待していたけれど、やはり彼は何も語ってはくれない。
やさしく諭すように気にしなくていいと言ってくれる。
私を大事にしてくれているのは痛いほど伝わってくるけど……、私が関わったことで起きてしまった事案に関してはきちんと教えてほしい。
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