公爵令嬢は結婚したくない!
お家騒動(29)
食事を終え湯浴みをしたあとは、ベッドの上に横になったまま天井を見上げる。
「私……」
食事の時も、湯浴みの時も、私の様子がおかしい事に気が付いたエリンさんが付き添ってくれたけれど、一人にされると――、どうしても妹のアリシアのことを思い出してしまう。
「私にもっと力があれば……」
今更、嘆いたことで何も変わらないのは分かっている。
だけど……、昔の私なら――、一人で何でも出来たのに……。
どうしようも出来ない無力感と、焦燥感に寝付くこともできず――、さりとて解決案も出すこともできない。
溜息交じりに寝がえりを打つと、無意識に視線が部屋の中の椅子に立てかけられている杖に吸い寄せられた。
「あれは、エルノの町のダンジョンで貰った杖よね」
たしか、私専用に作ったとダンジョン最奥――、神代文明時代の遺跡で出会った草薙雄哉と言う人物は言っていた。
あの時は、急いでいたから何気なく納得して杖や辞書らしき魔法書を受け取った。
だけど、よく考えてみたらおかしくない?
「そうよ! おかしいわよね」
ベッドから出て絨毯の上を歩きテーブルの上に置かれている辞書を手に取る。
手紙には、私が作られた存在と書かれていた。
そして、それには役割があると――。
「でも、問題はそこじゃない……」
手紙には、私が時空転移してきたと書かれていた。
そして、杖の作成に手紙に書かれていた内容――、全てが未来の私からの依頼だとも記載されていた。
それは、私が何かしらの手段を持って神代文明時代に行ったと言う事になる。
「――それって……、つまり私は時間を超えることが出来る?」
時間を超えるなんて普通は夢物語としか考えられない。
何故なら時間の動きというのは一方通行でしかありえないから。
でも、それが出来るということは……。
「何かしらのヒントがある……?」
辞書もとい魔法書のページに目を通していく。
そこには魔法の基礎理論が日本語で書かれているけど、取り立て珍しい内容は……。
「――え? 魔法特性……?」
魔法特性なんて聞いたことがない。
そもそも魔法というのは魔法陣と魔法言語を使い魔法を発動させていることから誰でも水・火・水・風・光・闇の6大属性は扱うことが出来る。
だから、魔法特性なんて本来は存在はしないはず。
「どういうことなの?」
ページを捲る。
そして文章を読んでいく。
「世界を構成している精神物質は、精神波を放ち続けている。そして精神波と言うのは世界に語りかける為の謂わば触媒となる。精神波に語りかけるためには適切な方法が必要となる。その一つがイメージであり発動言語――、つまり日本語である」
「日本語が魔法の発動言語?」
今までは、私は魔法を扱う際には、この世界アガルタの大陸共通言語を使って魔法を使ってきたけど……。
「そういえば……」
魔法を放つ際に魔法陣を展開するときは必ずと言っていいほど日本語の漢字が魔法陣の中に含まれていた。
つまり――、そこから考えられるのは……。
「もしかして、魔法を放つ手順で今まで使われていた既存の方法は――」
私は、立ったまま手のひらを天井に向ける。
「この魔法書に書かれているのが本当なら……」
頭の中で思い浮かべるのは――、私に刻み込まれた他人の記憶の中にあるLEDライト。
それが薄暗い部屋の中を照らすイメージ。
「光(・)よ」
大陸共通言語ではなく日本語で――、漢字を意識して言葉を紡ぐ。
すると手のひらに眩く光輝く光球が生み出される。
「魔力も殆ど……、ううん。まったく消費されていない」
今までは一度でも魔法を使えば魔力が根こそぎ消費されてしまっていたけれど、魔力が減ったという感覚がない。
「すごい……、でも……」
この魔法の運用は間違いなく危険。
何故なら誰でも仕様が分かれば使えてしまうから……。
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