公爵令嬢は結婚したくない!
お家騒動(3)
レイリトン子爵から預かった手紙を、スペンサー王子へ届けて頂くために白亜邸を警備していた騎士の方へ手渡してから一週間ほどが経過。
平和な日常をまったりと過ごしていた私は、いきなりの事に首を傾げてしまう。
「えっと……、もう一度、言ってくれるかしら?」
いきなりの事に、私は首を傾げながら私付きのメイドであるエリンさんに再度問いかけていた。
今は昼下がりであったけれども、日差しはそこまで強くもなく、私は締め付けの少ない若草色のワンピースを着て白亜邸の中に話で、紅茶を嗜んでいた。
そんな折、スコーンなどを取りにいったエリンさんが慌てて戻ってきたのだった。
もちろん手には、ケーキなどは持っておらず、もっていたのは封書のみ。
「はい。フィンデル・ド・アルドーラ大公が、ユウティーシア様にお会いしたいと――、こちらは、大公様から騎士が預かってきた手紙になります」
エリンさんから手紙を預かり蜜蝋を切り中身を取り出す。
中には2枚の手紙が3つ折りにして入っていた。
手紙を広げ、書かれている文字を読んでいく。
「そうなのね……」
「ユウティーシア様?」
「いえ、何でもないわ」
エリンさんに何でもないと答えながらも私は、背筋に冷や汗を掻いていた。
理由は、アルドーラ公国の大公でありスペンサー王子の父君にあらされるフィンデル大公が、私とスペンサー王子の婚約を知り聞きたいことがあると手紙に認めてきたから。
まさか、あの時に行った出まかせがここまで大きくなるなんて思ってもみなかった。
「すでに馬車の用意は整っています」
「――え? 早くないですか?」
そりゃ大公からの招待を断れる貴族など居る訳がないのは分かっているけれども……。
私の場合は、一応はリースノット王国の御三家の一つであるシュトロハイム公爵家の長女であり、この国の貴族とはまったく関わりがないわけで……もないんですよね……。
「ユウティーシア様が、スペンサー王子に恋文を出したことは白亜邸に居ります人間なら誰もが知っていますから」
「それって……、広めたのは……」
「もちろん、このエリンが責任を持って広めておきました!」
「そ、そう……」
彼女に悪気がないのは分かっているのだけれども、そのへんはコンプライアンスとか企業秘密とかで黙っておいてほしかった。
でも同じ女性として、噂話や恋愛が好きなのは分かるわけで……。
それに、スペンサー王子とは表面上は良好な関係を築いていると思うし、婚約の話もあるわけで――、彼女を責めるのは間違っていると思うし……。
「アルドーラ公国の王都には、スペンサー様も居られますから――、お会いになれますよ?」
「そうね……」
相槌を返しながらも、別に会いたいとは思わないのだけれど? と心の中で溜息をつきながら椅子から立ち上がる。
「それでは、フィンデル大公を待たせるのも失礼に当たりますから、アルドーラ公国の公都に向かうと致しましょう」
「はい。そう仰られると思いまして、すでにドレスなどは用意してございます」
手際が良いのねと心の中で突っ込みを入れた。
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