公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

否定されし存在(1)

 私はメリッサさんのほうへ向かう。

「どんな状態ですか?」

 座りこんでいるメリッサさんに話かける。
 彼女は、カベル海将と思われる男性の胸元や口元に手を置いているが顔色から芳しいようには見えない。
 メリッサさんは小さく肩を落とすと「もう呼吸が止まっています……、服の濡れ方から見ておそらく……」と、言葉を続けようとしてくる。
 まるで言い方からして、私が殺したような言い方をしているような……。

「失礼します!」

 私は軽く魔力で強化した掌底をカベル海将の横隔膜に打ち込む。

「ぐぼっお!!」

 掌底を打ち込んだ瞬間、カベル海将が大量の水を吐き出して「げふっ、ごほっ」と何度も、咽るように水を吐きながら空気を吸い込んでいる。

「――い、生き返った!?」
「落ち着いてください。人間は、呼吸が止まったからと言って、すぐに死ぬわけではないのです」
「そ、そうなのですか?」

 メリッサさんの言葉に私は頷くと、倒れている全員の横隔膜を掌底で打ち抜く。
 全員が苦悶の声を上げながら水を吐き出し地面の上で、転げまわっている。

「ふう……」

 私は額をスカートのポケットに入れておいたハンカチで拭く。
 どうやら、全員の蘇生が間に合ったよう。

まったく、あと少しで蘇生が間に合わなくなるところでした。
今回は、運が良かったと思うべきでしょうね!

カベル海将と、カーベル・ド・ルグニカを含めた人たちには、私が救急活動を迅速に行ったことで助かった事実をあとで説明して恩義を受けてもらうとしましょう。

「おっと、その前に……」

 私は地面の上に落ちていた、箱から出た3つの武器を拾う。

「メリッサさん、これを!」
「こ、これは?」

 私に渡された赤い刀身のロングソードを受け取りながらメリッサさんは不思議そうな表情を私に見せてくる。

「たぶん、刀身が赤いので炎っぽいアレな感じのモノが出るかと――」
「はぁ、そうなのですか」

 なんか納得いかないメリッサさんは、ロングソードを両手で振るう。
 すると、刀身から炎が吹き上がり周囲の草を焼き尽くす。

「こ、これは……炎の魔剣!?」
「みたいですね」
「こんなものを頂いていいのですか?」
「はい、どうやら3人分出たようですので――」

 私は残りの武器である、エルヴンボウと、メタリック色のメリケンサックを見せる。

 エルヴンボウは、緑と白の色合いで美しい装飾が施されている。
 それに対して、メリケンサックは無骨なまでのメタリックな色合い。
 とても実用的な感じ。

「それは、何か特別な力があるのですか?」

メリッサさんが、メリケンサックちエルヴンボウを指差して聞いてくるけど、そんなの私が知るわけがない。

「さあ。どうなのでしょう?」

 エルヴンボウとロングソードには、大きめの宝石のようなものがついているけど、メリケンサックには何もついていない。

「どうみても何もついてなさそうなんですよね」

 私はメリケンサックを装着して振るうけど、何も起きない。
 どうやら、メリケンサックには何か特殊な効果が付与されている感じがないような……。

「メリッサそれは……」

 どうやら、アクアリードさんも目が覚めたようで近寄ってくると、興味津々と言った感じでメリッサさんが持っている武器を見てから、期待の眼差しで私が持っていた弓を見てきた。
 これは、どうやら上げないわけにはいかないみたい。

「これは、たぶんアクアリードさんのモノだと思います」

 私は弓をアクアリードさんに渡す。
 彼女は、嬉しそうな表情で受け取り弓を引く動作をすると突然、少し先の岩が砕けた。
 思わず、私は「え?」と、呟いてしまっていて……。
 それでも何度も、彼女は弓を引いて離す。
 その都度、風が舞い起こり岩が砕ける。

「――それって……不可視の矢を放つ弓なのかも知れないですね」

 私は横目で、弓の弦を引いては放つアクアリードさんの嬉しそうな姿を見て、いいなー、あの弓とか思いつつも、カベル海将の頭を膝の上に乗せていた。
 最初の印象が肝心。

 私みたいな美少女の膝上で目を覚ませば、どんなお願いごとも叶えてくれる可能性がある!
 ――と、いうか絶対叶えてくれるはず!
 たとえ、中身が親父でも見た目は美少女だから!


 



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