公爵令嬢は結婚したくない!
迷宮区への足がかり(1)
「エルノの住人の代表者?」
アクアリードさんの言葉に、私は首を傾げる。
衛星都市エルノは、総督府が頂点として治めていた都市のはず。
その長が居なくなったとなれば、行政関連は一時的に停止するはずなのに、代表者がいるのも、おかしな話だとは思うけど。
もしかしたら顔役のような存在が居るのかもしれない。
「はい、名前はヘイルダムと呼ばれる方で――」
「ヘイルダム……」
聞いたことがない。
少なくとも、ミトンの町に居たときは、そんな名前の人物が各衛星都市の総督府要職についているという情報は無かった。
「会ってみる必要がありそうですね。用意を致しますのでって、そういえば、相手は男性? 女性? どちらですか?」
「男性の方ですが――」
「はぁー……」
私は小さく溜息をつく。
「ユウティーシア様?」
「いえ、男性相手だと相手が高圧的に出てくる可能性が高いと思いまして――」
そう、前世の行き過ぎたフェミニストは別として、この世界では政治や戦争などの大きな表舞台は基本、男性が主導で回している。
だから、国王は男性が継ぐことになっているし、男系の王様が普通。
相手が男女の問題を横に置いておいてくれればいいんだけど……。
「とりあえず、そのヘイルダムさんとはこういうホテルで会わないほうがいいですね。密室では他の方に邪推されますから」
「そうですね……」
「それよりも、私としてはエルノまで到着致しましたので、護衛の仕事を完了という形にしたいのですが?」
「……冒険者ギルドは閉鎖状態でしたので、依頼完遂を受けられるのはギルドマスターくらいです。ですので――」
「どちらにしても、グランカスさんに会わないと駄目みたいですね」
「はい――。それでしたら、ギルドマスターが言っていた市場近くの食堂で会うのはどうですか?」
「たしか、キッカと言ってたような――」
私は、冒険者ギルドマスターのグランカスさんが言っていたことを思い出しながら言葉を紡ぐ。
「それでは、そのように伝えておきますね」
「お願いします」
しばらくは、ゆっくりと休めると思っていただけに少しだけ憂鬱になりそう。
それでにしても同性と会うなら別に化粧とかいらないんだけど……。
第三者が見てる場所で、異性と会って話しをするなら、格好などもきちんとする必要もあるし、化粧もきちんとしないといけない。
化粧は女の戦装束とも言われているし……。
「面倒ですね」
私は小さな溜息と共に言葉を吐き出すと、持ってきた服の中でもっとも上等なワンピースを頭から被る。
スカートと袖の部分には繊細なレースが縫い付けられているし、布地は白で絹を使われていることもあり光沢があり、それがより一層高級感を醸し出している。
実はメリッサさんに貸し出していたもので、昨日返ってきたけど洗濯しなくて良かった。
旅行カバンを開けて白のオパール製のネックレスとイヤリングを選ぶ。
宝飾品としては、私の髪の毛は黒なので白色が映えると思っている。
真珠などがあれば一番なのだけど、この世界で存在しているのを見たことがない。
姿見の前で座りながら、ネックレスとイヤリングを舌あと、化粧をしていると気がつけば30分ほど経っていた。
やっぱり女性の用意は時間がかかる。
16年近く暮らしてきて慣れてきたとは言え、さすがに朝から、この作業をするのは面倒くさい。
宿泊施設と言っていいのか、ラーブホテルから出ようとしたところで「ユウティーシア様、アクアから話は聞きましたけど、本当に会うんですか?」とメリッサさんが話しかけてきた。
「はい、本当かどうかは分かりませんが村の代表と言ってますから、無碍にするわけにはいかないでしょう」
「ですが、私もヘイルダムという男を聞いたことがありません。アクアと一緒に、ずっとエルノで冒険者をしていましたけど、そのような話は……」
「そうですか……」
私は唇に人差し指を当てながら考える。
冒険者と言えば、町から町に移動することもある職業。
その情報は、なかなかな物で――。
しかも女二人だけの冒険者パーティなら、尚更、情報の取捨選択はしていると思う。
特に町の代表者や顔役となれば、それこそ知らないのはおかしい。
「メリッサさん、今から向かう市場のキッカさんが営業している酒場ですが、たしか冒険者ギルドマスターのグランカスさんと連絡が取れたんですよね?」
「そうですが……もしかして――」
「はい、少し気になりますので。この際、仕方ありません。グランカスさんにも同席してもらうとしましょう」
アクアリードさんの言葉に、私は首を傾げる。
衛星都市エルノは、総督府が頂点として治めていた都市のはず。
その長が居なくなったとなれば、行政関連は一時的に停止するはずなのに、代表者がいるのも、おかしな話だとは思うけど。
もしかしたら顔役のような存在が居るのかもしれない。
「はい、名前はヘイルダムと呼ばれる方で――」
「ヘイルダム……」
聞いたことがない。
少なくとも、ミトンの町に居たときは、そんな名前の人物が各衛星都市の総督府要職についているという情報は無かった。
「会ってみる必要がありそうですね。用意を致しますのでって、そういえば、相手は男性? 女性? どちらですか?」
「男性の方ですが――」
「はぁー……」
私は小さく溜息をつく。
「ユウティーシア様?」
「いえ、男性相手だと相手が高圧的に出てくる可能性が高いと思いまして――」
そう、前世の行き過ぎたフェミニストは別として、この世界では政治や戦争などの大きな表舞台は基本、男性が主導で回している。
だから、国王は男性が継ぐことになっているし、男系の王様が普通。
相手が男女の問題を横に置いておいてくれればいいんだけど……。
「とりあえず、そのヘイルダムさんとはこういうホテルで会わないほうがいいですね。密室では他の方に邪推されますから」
「そうですね……」
「それよりも、私としてはエルノまで到着致しましたので、護衛の仕事を完了という形にしたいのですが?」
「……冒険者ギルドは閉鎖状態でしたので、依頼完遂を受けられるのはギルドマスターくらいです。ですので――」
「どちらにしても、グランカスさんに会わないと駄目みたいですね」
「はい――。それでしたら、ギルドマスターが言っていた市場近くの食堂で会うのはどうですか?」
「たしか、キッカと言ってたような――」
私は、冒険者ギルドマスターのグランカスさんが言っていたことを思い出しながら言葉を紡ぐ。
「それでは、そのように伝えておきますね」
「お願いします」
しばらくは、ゆっくりと休めると思っていただけに少しだけ憂鬱になりそう。
それでにしても同性と会うなら別に化粧とかいらないんだけど……。
第三者が見てる場所で、異性と会って話しをするなら、格好などもきちんとする必要もあるし、化粧もきちんとしないといけない。
化粧は女の戦装束とも言われているし……。
「面倒ですね」
私は小さな溜息と共に言葉を吐き出すと、持ってきた服の中でもっとも上等なワンピースを頭から被る。
スカートと袖の部分には繊細なレースが縫い付けられているし、布地は白で絹を使われていることもあり光沢があり、それがより一層高級感を醸し出している。
実はメリッサさんに貸し出していたもので、昨日返ってきたけど洗濯しなくて良かった。
旅行カバンを開けて白のオパール製のネックレスとイヤリングを選ぶ。
宝飾品としては、私の髪の毛は黒なので白色が映えると思っている。
真珠などがあれば一番なのだけど、この世界で存在しているのを見たことがない。
姿見の前で座りながら、ネックレスとイヤリングを舌あと、化粧をしていると気がつけば30分ほど経っていた。
やっぱり女性の用意は時間がかかる。
16年近く暮らしてきて慣れてきたとは言え、さすがに朝から、この作業をするのは面倒くさい。
宿泊施設と言っていいのか、ラーブホテルから出ようとしたところで「ユウティーシア様、アクアから話は聞きましたけど、本当に会うんですか?」とメリッサさんが話しかけてきた。
「はい、本当かどうかは分かりませんが村の代表と言ってますから、無碍にするわけにはいかないでしょう」
「ですが、私もヘイルダムという男を聞いたことがありません。アクアと一緒に、ずっとエルノで冒険者をしていましたけど、そのような話は……」
「そうですか……」
私は唇に人差し指を当てながら考える。
冒険者と言えば、町から町に移動することもある職業。
その情報は、なかなかな物で――。
しかも女二人だけの冒険者パーティなら、尚更、情報の取捨選択はしていると思う。
特に町の代表者や顔役となれば、それこそ知らないのはおかしい。
「メリッサさん、今から向かう市場のキッカさんが営業している酒場ですが、たしか冒険者ギルドマスターのグランカスさんと連絡が取れたんですよね?」
「そうですが……もしかして――」
「はい、少し気になりますので。この際、仕方ありません。グランカスさんにも同席してもらうとしましょう」
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