公爵令嬢は結婚したくない!
逆鱗のユウティーシア(ティアside)
「私が……アレクを殺した……?」
「ええ、貴女が彼を――アレクを殺したの。分かるでしょう? だってユウティーシア・フォン・シュトロハイムの貴女なら、それが理解できるはずよ? だって貴女がいたからミトンの町の住人に迷惑がかかって、アレクも死んだのよ? そのくらい分かるわよね?」
アレクは、私がいたから殺された?
私は、立って居られなくなってその場に膝をついてしまう。
どうして……私なんかのために私が何をしたって言うの……。
分からない。
分からないよ……。
彼の方を見ても、彼は目を瞑ったままで――もう語りかけてくれない。
これも、全て私がいたから……私のせいで、全て私のせいで……。
「どうすれば……どうすればいいんですか?」
どうすればアレクを助けることができるの?
私は、何をすればいいの?
だって、目を覚ましてから色々な人にやさしくして貰って、そして嫌な思いもしたけどそれでもエイダさんやエイリカの村の人達と交流して子供達とも仲好くなって、それが全て私のせいでおかしくなってしまったと言うなら、私はどうしたら償えるのか分からない。
だから私は恥知らずにもアウラストウルスと言う私そっくりの女性に問いかける。
すると女性は、とても嬉しそうな顔をして微笑みながら私の問いかけに頷いてきた。
「どうすれば、皆を助ける事ができるの? 何を約束すればいいの?」
どんな約束でもいい。
アレクが助かってくれるなら、それでいい。
だから――。
「約束は唯一つだけ。地球に来てもらうことだけよ」
「地球?」
「ええ、そして私と会ってくれるだけでいい。どう? 約束してもらえるかしら?」
そんな事でいいの?
そんな事で、アレクを助けてもらえるの?
地球なんて場所は知らないけど、そこに行く約束をするだけで助けてもらえるの?
「わかり……」
私が途中まで承諾の言葉を言いかけたところでアウラストウルスと言う女性に唇と人差し指で押さえられて言葉を発する事ができなかった。
「あとは大事な事を一つ忘れていたわ」
「大事な事?」
「ええ」
アウラストウルスは私の目を見ながら言葉を紡いでくる。
「私は輪廻を司りし神の一柱。でもね――私の力は無限ではないの。力を使う上では代償が必要になるわ」
「代償? それは、さっき地球という場所にいくという約束ではダメなんですか?」
私の言葉に、アウラストウルスと呼ばれる女性は否定的な意味合いを込めて頭を振ってくる。
そして――。
「代償が足りないわ……だって貴女の求めるのは、アレクの生き返りなのでしょう? なら代償が足りないわ」
「代償……」
私は、彼女の言葉を心の中で繰り返す。
代償が何なのか分からない以上、聞かないと判断がつかない。
「どんな……代償が必要なんですか?」
「代償は、貴女の記憶よ……そうね。貴女が浜辺で目を覚ましてからの全ての記憶を代償として私に捧げるなら全てを無かった事にできるわね」
「わ、私の……記憶ですか?」
「そうよ。輪廻を司ると言っても理を捻じ曲げるのだから、そのくらいの代償が無いと出来ないわ」
「そしたら私は……」
「消えるわね」
あまりにもアッサリと彼女は私が消えると告げてきた。
私が消える?
私が消えるってどういう事なのか……想像もつかない。
この感情が、いま思って感じて考えている全てが消えてしまうこと?
それって――。
体の震えが止まらない。
怖い――。
でも、それ以上にアレクが死ぬのはもっと嫌だ。
「悩む必要もないじゃない? だって貴女は偶然、発生した泡のような存在なのだから。ユウティーシア・フォン・シュトロハイムが寝ている間に見ている一時の夢のような存在なのだから。だから貴女が消えても少し立てば元通りよ?」
悩んでいる私に、彼女は――アウラストウルスは語りかけてくる。
たしかに私は、浜辺で倒れていた前の記憶がない。
でも、その後の記憶は確かに私の記憶。
たくさんの人に出会って、これからだと思っていた希望のある記憶。
でも、それは私自身が壊してしまった。
その責任は私にあるし、その責任は私が取らないといけないと思う。
でも、それでも……記憶が無くなるのは嫌だ!
もっと! たくさんの事を知りたい! もっともっとたくさんの事を見てみたい。
でもそれはきっと私の我がままで、私の一人よがりで、私が居る事で誰かに迷惑をかけるなら、私が存在することで誰かを傷つけるのなら。
それは……私が望む物ではないし、望んだら行けない事だと思う。
「……お願いがあります」
「何?」
「彼が生き返った後に、彼の記憶から私に関する記憶を消して頂く事は可能ですか?」
「出来るわよ? 貴女はそれでいいの?」
「はい……」
私の言葉に、彼女は微笑んだように見えた。
「それじゃ契約は成された。契約は貴女の魂に埋め込まれる。さて、始めましょうか?」
彼女は――アウラストウルスはそう言うと私の額に手を宛てて何か言葉を紡いでいる。
その言葉が進むにつれ、私の記憶が欠如していく。
フェリスさんに出会ったこと、嫉妬してしまったこと。
アレクにキスをされて嬉しかった事、初めて人を好きだと自覚した事。
エイリカ村での出来事に、新居が出来た事。
次々と、記憶が思い出が気持が指の隙間から零れ落ちていくように消えていく。
そして、目の前の男性が誰かもう分からない。
瞳から自然と涙が零れていく。
男性に私は何かを伝えないと、「好き」と言うただ一つの言葉を伝えないと行けなかった気がする。
でも……どうして好きだったのかもう思い出せない。
私の意識が消えかかったところで、声が聞こえた。
「おい! 目を開けろ!」
私は、ゆっくりと目を開ける。
白い空間の中には、私と見た事もない洋服を着た一人の男性が立っていた。
その男性は中年の男性で、腕を組みながら私を見て溜息をついてくる。
「まったく……記憶精神構造体が違うだけで、こうも形に影響が出るとは思わなかったな」
「記憶精神構造体?」
私は首を傾げながら言葉を紡ぐ。
そんな私に目の前の中年の男性は、襟元を正すと。
「簡単に言えば、精神と思考の在り方の事だ。お前が女性のような思考回路を持ち、その体を自身の器と理解している事と、この俺が元の男としての肉体を理解し男としての思考回路を持つ事の差というところだな」
「はあ、そうなんですか?」
私には、彼が何を言ってるのか良く分からないけど、それは女性と男性の差みたいなもの?
理解が追いついてない私に彼は額に手を宛てて見せると。
「まあ、いい……とりあえずだな。お前が懇意を抱いてる男がな、お前が自分の身を犠牲にしてるから助けてほしいと俺に語りかけがあったんだよ。お前、本当に愛されてるな」
私は、中年の男の人の言葉に耳まで真っ赤に染まってしまう。
そんな私の表情を見て。
「まあとにかくだ。俺も良くは知らないがアレクという男のおかげで、こうして俺は目を覚ます事が出来たんだ。だから力を貸してやるよ。お前を助けることはできないが、力を貸す事くらいは出来るからな。それに……相手の弱みに付け込んで契約を持ちこんでくるのは、営業マンとしては下の下だからな」
「ごめんなさい……」
「まぁいいさ、あとは任せておけ」
中年の男性は、白い空間から姿を消した。
「ええ、貴女が彼を――アレクを殺したの。分かるでしょう? だってユウティーシア・フォン・シュトロハイムの貴女なら、それが理解できるはずよ? だって貴女がいたからミトンの町の住人に迷惑がかかって、アレクも死んだのよ? そのくらい分かるわよね?」
アレクは、私がいたから殺された?
私は、立って居られなくなってその場に膝をついてしまう。
どうして……私なんかのために私が何をしたって言うの……。
分からない。
分からないよ……。
彼の方を見ても、彼は目を瞑ったままで――もう語りかけてくれない。
これも、全て私がいたから……私のせいで、全て私のせいで……。
「どうすれば……どうすればいいんですか?」
どうすればアレクを助けることができるの?
私は、何をすればいいの?
だって、目を覚ましてから色々な人にやさしくして貰って、そして嫌な思いもしたけどそれでもエイダさんやエイリカの村の人達と交流して子供達とも仲好くなって、それが全て私のせいでおかしくなってしまったと言うなら、私はどうしたら償えるのか分からない。
だから私は恥知らずにもアウラストウルスと言う私そっくりの女性に問いかける。
すると女性は、とても嬉しそうな顔をして微笑みながら私の問いかけに頷いてきた。
「どうすれば、皆を助ける事ができるの? 何を約束すればいいの?」
どんな約束でもいい。
アレクが助かってくれるなら、それでいい。
だから――。
「約束は唯一つだけ。地球に来てもらうことだけよ」
「地球?」
「ええ、そして私と会ってくれるだけでいい。どう? 約束してもらえるかしら?」
そんな事でいいの?
そんな事で、アレクを助けてもらえるの?
地球なんて場所は知らないけど、そこに行く約束をするだけで助けてもらえるの?
「わかり……」
私が途中まで承諾の言葉を言いかけたところでアウラストウルスと言う女性に唇と人差し指で押さえられて言葉を発する事ができなかった。
「あとは大事な事を一つ忘れていたわ」
「大事な事?」
「ええ」
アウラストウルスは私の目を見ながら言葉を紡いでくる。
「私は輪廻を司りし神の一柱。でもね――私の力は無限ではないの。力を使う上では代償が必要になるわ」
「代償? それは、さっき地球という場所にいくという約束ではダメなんですか?」
私の言葉に、アウラストウルスと呼ばれる女性は否定的な意味合いを込めて頭を振ってくる。
そして――。
「代償が足りないわ……だって貴女の求めるのは、アレクの生き返りなのでしょう? なら代償が足りないわ」
「代償……」
私は、彼女の言葉を心の中で繰り返す。
代償が何なのか分からない以上、聞かないと判断がつかない。
「どんな……代償が必要なんですか?」
「代償は、貴女の記憶よ……そうね。貴女が浜辺で目を覚ましてからの全ての記憶を代償として私に捧げるなら全てを無かった事にできるわね」
「わ、私の……記憶ですか?」
「そうよ。輪廻を司ると言っても理を捻じ曲げるのだから、そのくらいの代償が無いと出来ないわ」
「そしたら私は……」
「消えるわね」
あまりにもアッサリと彼女は私が消えると告げてきた。
私が消える?
私が消えるってどういう事なのか……想像もつかない。
この感情が、いま思って感じて考えている全てが消えてしまうこと?
それって――。
体の震えが止まらない。
怖い――。
でも、それ以上にアレクが死ぬのはもっと嫌だ。
「悩む必要もないじゃない? だって貴女は偶然、発生した泡のような存在なのだから。ユウティーシア・フォン・シュトロハイムが寝ている間に見ている一時の夢のような存在なのだから。だから貴女が消えても少し立てば元通りよ?」
悩んでいる私に、彼女は――アウラストウルスは語りかけてくる。
たしかに私は、浜辺で倒れていた前の記憶がない。
でも、その後の記憶は確かに私の記憶。
たくさんの人に出会って、これからだと思っていた希望のある記憶。
でも、それは私自身が壊してしまった。
その責任は私にあるし、その責任は私が取らないといけないと思う。
でも、それでも……記憶が無くなるのは嫌だ!
もっと! たくさんの事を知りたい! もっともっとたくさんの事を見てみたい。
でもそれはきっと私の我がままで、私の一人よがりで、私が居る事で誰かに迷惑をかけるなら、私が存在することで誰かを傷つけるのなら。
それは……私が望む物ではないし、望んだら行けない事だと思う。
「……お願いがあります」
「何?」
「彼が生き返った後に、彼の記憶から私に関する記憶を消して頂く事は可能ですか?」
「出来るわよ? 貴女はそれでいいの?」
「はい……」
私の言葉に、彼女は微笑んだように見えた。
「それじゃ契約は成された。契約は貴女の魂に埋め込まれる。さて、始めましょうか?」
彼女は――アウラストウルスはそう言うと私の額に手を宛てて何か言葉を紡いでいる。
その言葉が進むにつれ、私の記憶が欠如していく。
フェリスさんに出会ったこと、嫉妬してしまったこと。
アレクにキスをされて嬉しかった事、初めて人を好きだと自覚した事。
エイリカ村での出来事に、新居が出来た事。
次々と、記憶が思い出が気持が指の隙間から零れ落ちていくように消えていく。
そして、目の前の男性が誰かもう分からない。
瞳から自然と涙が零れていく。
男性に私は何かを伝えないと、「好き」と言うただ一つの言葉を伝えないと行けなかった気がする。
でも……どうして好きだったのかもう思い出せない。
私の意識が消えかかったところで、声が聞こえた。
「おい! 目を開けろ!」
私は、ゆっくりと目を開ける。
白い空間の中には、私と見た事もない洋服を着た一人の男性が立っていた。
その男性は中年の男性で、腕を組みながら私を見て溜息をついてくる。
「まったく……記憶精神構造体が違うだけで、こうも形に影響が出るとは思わなかったな」
「記憶精神構造体?」
私は首を傾げながら言葉を紡ぐ。
そんな私に目の前の中年の男性は、襟元を正すと。
「簡単に言えば、精神と思考の在り方の事だ。お前が女性のような思考回路を持ち、その体を自身の器と理解している事と、この俺が元の男としての肉体を理解し男としての思考回路を持つ事の差というところだな」
「はあ、そうなんですか?」
私には、彼が何を言ってるのか良く分からないけど、それは女性と男性の差みたいなもの?
理解が追いついてない私に彼は額に手を宛てて見せると。
「まあ、いい……とりあえずだな。お前が懇意を抱いてる男がな、お前が自分の身を犠牲にしてるから助けてほしいと俺に語りかけがあったんだよ。お前、本当に愛されてるな」
私は、中年の男の人の言葉に耳まで真っ赤に染まってしまう。
そんな私の表情を見て。
「まあとにかくだ。俺も良くは知らないがアレクという男のおかげで、こうして俺は目を覚ます事が出来たんだ。だから力を貸してやるよ。お前を助けることはできないが、力を貸す事くらいは出来るからな。それに……相手の弱みに付け込んで契約を持ちこんでくるのは、営業マンとしては下の下だからな」
「ごめんなさい……」
「まぁいいさ、あとは任せておけ」
中年の男性は、白い空間から姿を消した。
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