公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

これって嫉妬!?

 私とアレクはフェリスさんに部屋まで案内されると、貴重品などが入った荷物を置いてから、アレクは部屋に置かれている椅子に座った。
 部屋の中はテーブルが一つと椅子が2脚それに大き目のベッドが一つとクローゼットがあるだけ。
 私は、バックの中に入っていた洋服を取りだすとクローゼットを開けて掛ける。
 バックの中に入れたままだと洋服に皺が出来てしまうし、型が崩れちゃうから。

 私は椅子に座りながらアレクの方を見る。
 するとアレクは私の方をずっと見ていたのか目が合った。
 部屋の中に入ってから、ずっと見られてた?
 私、変な事してなかったよね? 
 私は、腰まである自分の黒い髪の毛を触りながら部屋の中をもう一度、見渡しつつ。

「結構、大きな部屋だね」
「そうだな」
「うん。きっとアレクがエイダさんの子供だからかもね?」
「そうかもしれないな」

 アレクは私の言葉に相槌を打ちながらも、どこか落ち着かず部屋の中をせわしなく見渡している。
 私はいつもと違うアレクの様子に首を傾げてしまう。
 なんか、いつも違って落ち着きがない?
 うーん、男の人の気持ちって良く分からないけど……。
 もしかしたら!
 きっと私と同じ部屋にいるのが落ち着かないとか?
 それはないよね……?
 だってエイダさんの――アレクの実家に一緒に暮らしていた時は、忙しい素振りを見せる事何てなかったし。
 私が首を傾げて一人考えていると部屋の扉が何度か叩かれると。

「ティアさん」

 ――と、扉の外から声がかけられた。
 私は思わず、「はい」と答えつつ、椅子から立ち上がろうとするけど……突然、足に痛みが走ってすぐには椅子から立ち上がれなかった。
 そんな私の様子に。

「大丈夫か?」

 アレクがすぐに私がいつもと違う事に気がついたのか心配した表情で、私の足元で屈むと木で作られた靴を脱がせてくれる。
 すると指先から足首にかけて痛みを感じた。
 とても足が痛い……。
 よく見ると、指先にいくつも豆が出来ていて、それが潰れていた。
 それに木の靴が合わなかったのか……足首も青く腫れている。

「これは……痛むか?」

 アレクがやさしく私の足を触ってきてくれるけど、それでも痛みから小さく声が吐息が漏れてしまう。

「うう……痛いです」

 私は、あまりの痛みにポロポロと涙を零していた。
 そんな私の様子を見て、アレクが眉元を顰めると。 

「これはしばらく休んだ方がいいかも知れないな……」

 ……と、私にやさしく語りかけてきた。
 私としては、もっときちんと出来ると思っていただけにショックが大きい。

「うん……アレク……フェリスさんの対応お願いできる?」
「分かった」

 私のお願いをアレクは微笑んで頷いてくるとすぐに立ちあがると、物陰になっている扉の方へ歩いていく。
 すると――。

「あれ? ティアさんは?」   
「ああ、ティアは長時間歩いてきたから、少し足を捻挫して豆が出来て潰れたようなんだ」

 アレクとフェリスさんが私の話をしているとフェリスさんが、「まぁ!?」と言うと、音を立てて扉から離れていく。
 私は、ゆっくりと立ち上がると、物陰で見る事ができない扉の方まで歩いていく。
 はっきり言って脚が痛くて、指先が痛くて動かしたくないけど……歩きたくないけど……。
 なんか、私の見てない所で私の話をされるとモヤモヤする。

 アレクの近くまで歩いて行くと、フェリスさんが丁度戻ってきたところで、私は足の痛みに気を取られて、その場で転びそうになる所をギリギリで気がついたアレクが抱き支えてくれた。

「無理をするな。足が痛むんだろう?」
「う……うん」

 私は、さっきまで感じていたモヤモヤが晴れていくのと同時に、アレクの体をギュッと抱き締める。
 その様子を見ていたフェリスさんは私を見て微笑んでくる。

「ヤレヤレ、自分の息子と同じ年齢の子供を誘惑何てしないよ! だから安心していいよ」

 フェリスさんが何を言っているのか一瞬、分からなかった。
 でも、少し考えると。
 私は――。

「アレクのばかぁー……」

 私はアレクから離れようとしたけど、強く抱きしめてきてくれるから離れる事が出来ない。男の人って……こんなに力があるんだ。
 でも恥ずかしいから! 人が見ているから!
 私は顔を真っ赤にしてアレクから離れようとすると、気がつけばフェリスさんはいつの間にか居なくなっていた。
 部屋の扉も閉まっていて――。

 それでも私の顔は真っ赤になっていく。
 だって……私、フェリスさんとアレクが話しているのを聞いていて嫉妬していた……。

 だから、私は――。

「アレク、ごめんなさい……」

 エイリカ村を出てからアレクに迷惑ばかり私かけている……。
 もっときちんと出来ると思ったのに。
 まったく、わたし……だめだめ……。

「ティアが気にする事ない。ティアは記憶がないんだから、何をしていたのかも分からないんだろう? なら手さぐりで生活の基盤を作っていかないとな!」
「……う、うん!」

 私はアレクの言葉に頷く。
 アレクはいつも私にやさしいけど、やっぱり私を海岸で拾ったから……その負い目からなのかな。

「それじゃ怪我の治療でもするか?」
「怪我の治療?」

 私は首を傾げながら、フェリスさんが持ってきたと思われる緑色の液体と何枚もの清潔そうなタオルを見る。
 そして……。



 その日の夜の治療はとっても痛かった!
 もっと優しくしてほしいかも。



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