努力という名の才能を手に異世界を生き抜く〜異世界チート?そんなのは必要ない!〜

かひろ先生(ケダモノ)

勇者の本心

「おいどういうことだ! 君のこの魔眼全く役に立たないじゃないか! オカマ!  」

「んー? それはそうに決まってるじゃない。あの子前に似たような力受けて抗体が出来てるもの。君に渡した下位互換の力でどうにかできるかじゃないのよー」

僕の叫び声にも冷静に目の前の男? 女? は対応する。
 ふざけやがって。こいつの渡した能力のおかげで確かに僕は特をしているだろう。だが全てが手に入らないことが気に入らない。
 憎たらしくオカマを見ていると奴はニヤついてこちらにくねくねと近づいてくる。無駄にガタイがいいので気持ちが悪い。

「な、なんだ! 」

「うふふふーん。あなた今の力に不安を感じてるのーん? 」

「そうに決まってるだろう! 中途半端な力をよこしやがっむぐっ! 」

無駄に白い指が僕の方を塞ぐ。
 ほのかに漂う甘く優しい花の香りでさらに僕の苛立ちが増す。

「うふふ、そう怒らないの。かっこいい顔が台無しじゃないー。」

「むぐごへいでおほっへるんほおほっへるんは! (誰のせいで怒ってると思ってるんだ! )」

「まあまあ。……あなたこの学園の女の子みんなが欲しいんでしょう? 」

手を離すとオカマは真剣な顔をして僕の目を見てそう言った。
 
「勿論だ。この学園だけじゃない。僕は世界中の美女美少女を僕のものにしたい。」

「うふ、うふふふふ、うふふふふふーーんん! いいじゃない! いいじゃない! ビクンビクン来るわあー! 」

オカマは突然股間を抑えるとビクビク震えだした。
 な、なんだこいつ気持ち悪い! 
 がっしりと僕の腕を掴むとぐいっと顔を近づける。

「な、なんだ! 」

「そんなよく深いあなたに素敵なプ・レ・ゼ・ン・ト! 魔王様からよー! 」

オカマはそういうと足を数回地面にタップする。
すると地面が揺れだし巨大な植物がはえてくる。
 驚いてそれを凝視するとその植物になにか人間のようなものが植物に絡みつかれて拘束されているのがわかった。

「あれはなんだ? 」

「あれがあなたへのプレゼント……カトウ君よ」

「……カトウ? 」

「グルアアア!!! 」

カトウと呼ばれた物体は突然暴れだし僕を睨みつけた。よく見るとそれは目鼻立ちのしっかりしたなかなかのハンサム(僕には及ばないが)な男であることがわかった。

「セイケン! セイケンノツカイテ! コロスコロスコロス! ワレヲジャマスルセイケンノツカイテコロス! 」

「うふふふーん。相変わらずの壊れ具合ねカトウ君」

「おい。あんな奴がプレゼントだと? どう見ても僕を警戒してるじゃないか」

「大丈夫よ。ちゃんとしつけてあるから。」

「そうかい。それで? こいつを使ってなにをやるんだオカマ」

暴れるカトウをオカマは撫でながら僕の問いに答える。

「試合をぶち壊そうと思ってるのよ」

「なるほど、確かにあの試合には将来魔族の危機になるであろう優秀な人材がいるかもしれない。それを今のうちに叩き潰すと言うことか」

「正解よーん」

「グルアアア! 」

「くくく、大会がつぶれて混雑いている中ミアを拐えば」

「誰もあなたがあの子をさらったなんてわからない。そして行方不明のあの子は死亡扱いさ・れ・る。完璧でしょーん? 」

「確かにオカマにしては中々の案だ。」

オカマはニコニコしながらこちらに近づき僕の頭をがっしりと掴むとドスの効いた声で

「オイゴラ、さっきからオカマオカマって……おれの名前はエリザベスだっつってんだろ? 調子乗ってんじゃねえぞカス勇者が。お前ごときのもやし男俺の手にかかれば枯れた葉を粉々にするのと同様だぞゴラ」

「わ、わるい。エリザベス」

エリザベスはいつもと同じ余裕のある笑みを作り頭を撫でて来る。

「うふふいいのよー。あなたは大事な駒ですもの。来るべきまで大切にするわよ。じゃあ私はもう行くわねーん。」

そういうと奴はカトウを拘束している植物に乗り植物とともに地面に潜っていった。

僕はそれと同時に地面に崩れ落ち体を震えさせる。

「は、ははは……来るべきが来るまでか……。殺されてなんてたまるか。絶対に魔王を出し抜いて生き抜いてやる。絶対に」

その為にも僕は弱そうで野心深くカスな勇者を演じ切ってやる。
 例えどんなクズに成り下がろうとも……同じ人族を裏切ってでも

「スゥーハァー……さあ! んぼくのいとしrrrrrrrrrディたちぃ! 今君達の勇者が帰還するヨォ! 」

僕は今日も自分を偽り生活をする。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品